ホロ学園の「俺」君物語   作:零円

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登場ライバー
桐生ココ
紫咲シオン
不知火フレア
白銀ノエル
天音かなた


九割を当てた魔法使い

「シオーン。飯出来たぞー」

 夕飯時。食事を作り終えた家主の少年が、縁側に座る紫咲シオンを呼ぶ。

 呼ばれたシオンは、しかし反応を見せない。どうしたのかと、少年が近づく。

「どうした、シオン。飯だぞ?」

「……風が騒がしいわね」

「本当にどうした」

 熱でもあるのかもと考え、シオンの額に触れようとする少年。

 しかし、それより早く、シオンは立ち上がった。少年の脇を抜け、家の中に入ると、少年を手招きする。

 訳の分からぬまま、少年はそれに従う。家に入り、シオンの元へ向かうと、ソファへと座らされる。

「シオン。本当にどうした?」

「ちょっと出かけてくる」

「え? 飯は?」

「帰ってきてから食べる」

 有無言わせぬ口調に、こくこくと、少年は首を縦に振る。

 それを確認してから、シオンはこの世界での保護者代わりでもある癒月ちょこへと一報入れると、

「全く。どこの誰だか知んないけど、近所迷惑だっての」

 そう言いながら、リビングの戸を開けた。指を鳴らすと、玄関口に展開される幾何学模様によって構成された魔法陣。

 シオンは両手足首を解すと、勢いよく床を蹴った。

 直後、玄関に置かれていた靴が飛んだ。ポールハンガーにかけられた帽子も、靴に負けるかとばかりに飛ぶ。

 飛んだそれらは、廊下を疾走するシオンへと自ら集まり、それぞれの定位置へ納まる。

 数秒で出掛ける支度を整えたシオンは、玄関の縁へと足をかけ、そこを勢い良く蹴り、魔法陣へと入っていった。

 

 ***

 

「煩い。近所迷惑」

 シオンの言葉に反応するように、ココが動く。

 一撃与えんと尻尾を振るうが、シオンはそれを上昇して回避。ココもそれを追って、上昇する。

 上昇しながら、下を確認。追いかけてくるココを見て、シオンは自身の魔力を練った。

 練り上げた魔力を放出し、空中で成形。瞬く間に行われたそれにより、作り出されたのはバスケットボール大の、魔力の球が計5つ。

 動きを止め、下を向く。迫る此処へ、銃のような形にした、右手を向ける。

「ばん」

 声とともに、5つの魔力球が放たれた。

 弾丸程の速度で、ココへと向かう魔力球。それを前に、ココは先に降りかかった矢の雨同様、羽ばたきによる風圧での迎撃を実行するが、その軌道は逸らせない。

 忌々しそうに歯噛みするココは、迎撃を諦め、回避に移行する。

 試しに1つ、この身に魔力球を受けてみる事も考えたが、それを実行するには、シオンの存在は異質であった。一撃で落とされるとは勿論思っていないが、試してみるには、聊かリスクが大きい。

 竜種の巨大な体を支える強靭な筋力と、魔法による身体能力向上を伴った羽ばたきをもってすれば、その慣性をもって、羽ばたかずとも暫しの上昇は可能であることを利用して。一際強く羽ばたいたココは、翼を閉じ、体を小さくして、魔力球の間を縫って進む。

 進行上のシオンが、その光景に僅かに驚きの表情を見せる中。

 魔力球を抜けたココは、翼を広げて体を固定。力を籠め、竜の息吹を放った。先程使った時より、幾何か威力は落ちるが、それでも個人に使うには過剰な高火力。

 迫る光。力の奔流。シオンは、静かにそれを見て、見極める。

 防げるか。逸らせるか。自身の使える魔法を思い起こし、想像し、辞める。

 魔力を練り、放出。魔法陣を形成し、その中へと消える。

 直後、息吹を吹くココの鼻の上へと降り立つ。そこを足場に、加速。ココの眉間へと、拳を叩きつけた。

「硬っ」

 驚きの声を上げたのは、シオンだった。魔法で保護したにもかかわらず、痛みの走った手を、パタパタ扇ぎながら、八つ当たりとばかりにココを蹴りつける。

 2つの衝撃に息吹が止まるのを感じつつ、追撃を防ぐ為に、ココは体を回転させ、シオンを弾く。

「おっと」

 弾かれたシオンは、暫く飛ばされた後、空中で制動。浮遊し止まる。帽子の感触が無い事に気が付き、周囲を見渡して、落下してく帽子を見つけた。すかさず魔法陣を展開して、そこに手を突っ込み、帽子を掴み、引き寄せる。

 帽子の埃を落とし、かぶり直すシオンを見ながら、ココは相変わらず理解しきれぬ魔法使いを分析する。

 息吹に対する手段や今の光景を見るに、転送魔法を個人単位で自由に使えることは分かる。しかも、転送場所に吐き出されている息吹の直上を選んだ当たり、かなりの自信も伺えた。

 あの速度で転送魔法を発動し、自在に飛び回れるのなら、足を止めて、広範囲を焼き尽くす息吹は相性が悪い。威力は下がるが、移動しながら撃て、連射と加速に優れた必要があった。

 先程シオンが魔力を練って、空中で球を形成したように。息吹を放たず、固め。

「ん?」

 放つ。

「ちょっと⁉」

 慌ててシオンが動いた。直後、寸前までシオンのいた場所を、球形になった息吹が飛んでいく。

 余波を受け、シオンの姿勢が崩れる。

 シオンの視線の先では、ココが2発、3発と放つ追撃の球形の息吹。

 組んでいた転送魔法を発動させる。

 ただ、魔法発動直前に指定する転送先の座標は、緊急発動の為、細かく指定することが叶なかった。

 仕方なくログに残っていた、先程の帽子を拾った際に掴んだ座標への魔法陣を作成。

 そのまま魔法陣を抜ける。

 出た先で、一度態勢を整える──つもりでいたが。

 ココの顔は既にシオンの方へと向いていて、既に息吹は放たれていた。

「なんっ」

 で、と、言葉は最後まで出ず。

 腕を十字に構え、防御魔法を出しうる限りの力を使って張るシオン。

 衝撃。防いだ息吹は、シオンの目の前で輝きを増す。

「いやいやいや」

 防御魔法越しに感じたエネルギーを前に、シオンは慌てて周囲を見渡し、見つける。

 直後、爆発した。周囲を、閃光が包む。

 地上から、その光景を眺めていたフレアとノエルは、その光量に、目が眩んだ。

 思わず目を閉じる。それ故、正面からの衝撃に、反応が遅れた。

 ドンと、何かがぶつかり、2人はその場に倒れる。

 背中をぶつけながら、何事かと確認するべく、薄めを開ければ、フレアの目に、自分達の上で倒れているシオンが見えた。

 そして、周辺を紫色に発光する壁が覆っている。その壁が、光量と、爆発の衝撃を抑えている事が分かった。

 視線を下げれば、シオンが体を起こしているところだった。

 パッパッっと、体に着いた埃を落とすシオン。

 多少傷を負っているようだったが、その目に揺らぎは無い。

 一通り、埃を落としてから、シオンは魔法陣を再度展開。手を突っ込み、引き抜くと、その手には厚手の本が一冊、握られている。

「さすがにこれしか持ってきてないんだけど」

 言うや否や、本が勝手に開いた。それに合わせ、シオンの雰囲気が変わる。

 ぞくりと、フレアの肝が冷える。

 気づけば、周囲を覆っていた、壁が消えていた。

 空の爆発も治まっていて、ココがゆっくりと降りてきている所。

 ズシンと、音を立て、ココが地面へと降り立つ。

 歯を剥き威嚇するココ。その口からは、息吹と同色の光が漏れ。

 わずかに足を動かし、腰を落とすシオン。その手に持つ本は、バチバチと音を立て、雷のように明滅する光をまとう。

 一触即発の空気が、周囲を覆う。

 ~♪ 

「「……」」

 不釣り合いな軽快な音楽が2つ。あたりに響いた。

 フレアとノエルが、目を合わせ、それぞれの音源へと目を向ける。

 音源の1つであるシオンが、本を閉じた。スカートのポケットをあさりだし、取り出したるはスマートフォン。

 タプタプと操作して、耳に当てる。

「何? いい所なんだけど? ……え? 帰る時間? えっと……あんまり遅くならないと思うけど。買い物? 面倒くさーい」

 そのまま話し始めた。

 一方。もう1つの音源であったのは、ココであった。

 光に包まれ、人間の姿に戻る。先程、竜の姿に戻った際に破けた服は、元通りになっていて。

 ココはシオンと同じくポケットを漁ると、やはりスマートフォンを取り出し、操作して、耳に当てた。

「もしもし? あー、かなたん? 今忙し……あ、いえ。何でも無いです。今から帰ろうと思ってた所だって。ほんとほんと」

 通話を辞めたのは、ほぼ同時。

 それぞれのスマーオフォンを、ポケットにしまうのもほぼ同時。

「……あー、このくらいで見逃してあげるわ」

「き、奇遇ですね。私もそうしてあげようと、思っていたところなんですよ」

「……言っとくけど、今度またこの辺で暴れようものなら、容赦しないからね」

「今度、戦う時は決着つけて、あげますね」

 そう言うとココは翼を広げ、飛び去る。

 その背を見送り、シオンの視線はフレアとノエルの方へ向いた。

「あんた達も。この辺……いや。この街で騒がしくしないでよ」

「あ、はい」

「分かりました」

 こくこくと、首を縦に振る2人を見て、シオンは振り返ると、足元に魔法陣を形成。

 そこに飛び込み、同じく姿を消す。

「……私達も行こうか」

「そうだね」

 

 ***

 

「そういえば、街の近くに、おっきいクレーターが出来たよね」

「そうですね。朝からヘリが凄く飛んでましたし、ニュースもその話題ばっかり」

 放課後の生徒会室。

 少年と天音かなた、そして生徒会長である百鬼あやめが、作業をこなしながら談笑していた。

「宇宙人説とか核実験説とか、色々出てたよね」

「なんかドラゴンを見たとか、女の子を見たとか、そんな目撃情報もあるっぽいですけど」

「「……」」

 竜や、それと戦える女の子と言われ、心当たりしかない2人は、この話題止めとこうかなと、話題を変えようとする。

 しかし、それより早く、「あれは」とあやめが口を開いた。

「なんかこう、凄いのが戦った跡だな。余、詳しいんだ」

「……ソウナンデスカー」

「ビックリダナー」

「……なんか片言だな?」

「「ソンナコトナイデス」」

 どや顔をしていたあやめは、不思議そうに首を傾げながらも、まあいいかと、話を続ける。

「まあ、余には劣るけどね」

「そうなんですか?」

「これでもバリバリの武闘派だったからなー」

「「……」」

 想像出来ず、かなたと少年は同時に首を傾げる。

 その姿に、おいおいとあやめ。

「しょうがない。これは極秘なんだけど、話してやろう。余の超かっこいい戦いの歴史を」

「……楽しみだなー(ココに遅くなるって連絡しとかなきゃ)」

「……わくわく(シオンに遅くなるって連絡しないと)」

 




あやめVSフブミオにつづ……かない
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