ホロ学園の「俺」君物語   作:零円

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登場ライバー
紫咲シオン
大空スバル
赤井はあと


確認

 夕食後のリビングで、俺は日中、そらさんと共に行った神社跡地について、調べていた。

 見せて貰ったサイトに、画像検索から出て来た他のサイト等へ一通り目を通し、記事の内容、コメント欄、投稿日を逐一確認していく。

 

「やっぱ、1年前くらいか」

 

 コメント欄は特に重要な要素は無く。

 記事の内容については、個人の感想を除けば凡そ同じ内容が書かれていた。

 そして、投稿日については、新しい記事は1年と数ヶ月前の日付が殆ど。中には1つだけ、半年程前の記事があったが、記事の中に訪れた日についての記載があり、その日付もやはり、1年数ヶ月前の日付と合致している。

 何の因果か、丁度俺がこの家に引っ越してきた辺りである。

 

「この辺で何かあったのか?」

 

 一瞬流行る時期があったのかと思いそれも調べたが、そういう訳でも無いらしい。数カ月に1本程度の頻度だが、色々なブログで何年にも渡って記事は投稿されている。記事を読んだ限りでは、古き良き社と、そこに居た巫女さんの美貌も相まって、人気は低くなかったようだ。

 

「んー」

 

 もやもやとした気持ち悪さを感じながら、ネットで調べるのに限界を感じた俺は、スマホを操作した。

 とりあえず他の人にも確認してみようと、トークアプリからスバルの名前を探し、トーク画面を表示させる。

 

【今、電話しても大丈夫?】

【大丈夫!】

 

 メッセージを送れば、秒で返信が帰ってきた。

 待機してたのかと思わずにいられない速度に感心しながら、電話を掛ける。

 ワンコールで、繋がった。

 

「もしもし?」

『ちわーっす』

「ちわー」

 

 電話越しに、スバルの声。

 

「ごめん、急に電話して。今大丈夫?」

『平気。どうしたの?』

「ちょっと聞きたいことがあって。スバルって、ずっと、この町に住んでるんだっけ?」

『そうだよ。産まれも育ちもここッス』

 

 どうした急にと、そんな副音声が入っていそうな声色で返ってくる。

 本当にそう思う。変なこと聞いてご免と、心中で謝りながら言葉を続けた。

 

「じゃあ、山の上の神社知ってる?」

『神社?』

 

 住所を告げれば、『うーん』と、電話口に唸り声が上がる。頭を捻ってくれているらしい。

 その反応の見ただけで、俺の中では目標の半分は達成できたようなものだった。

 

『あったような……無かったような……。その住所なら、行ったこと無い筈は無いけど、ただ覚えも無くて』

「そっか。やっぱ、そんな感じか」

『どうして急に?』

「いや。俺もそんな感じでさ。それで何かもやもやして気持ち悪かったから、スバルにも同じ思いをさせようかと」

『おい!』

「冗談冗談」

 

 残り半分の目標も達成して、満足した俺は、とりあえず別の人にも確認しようかと思い電話を切ろうとするが、それより早く、スバルが口を開いた。

 

『……ダメだ。気になるからかーちゃんに聞いてくる。ちょっと待ってて』

 

 消音にしたらしく、スバルの方からの声が途切れる。

 マイクをスピーカーにして掛かってきたらすぐ気が付くようにしつつ、俺も同じく消音にして、スマホを脇に置いた。

 丁度いいので、この間に別の話も進める事にする。

 

「シオン」

 

 声を掛ければ、ダイニングチェアに腰掛け、本を読んでいたシオンが、こちらに視線を動かした。

 

「何?」

「目の訓練さ、一時的に中断してもいい?」

「魔力を吸い取るなって事?」

「そういう事」

「……頁探しに、魔界の目は必要ないでしょ」

「そんな事無さそうでさ」

 

 猜疑心に満ちた目を、シオンに向けられる。

 とはいえ、察してはいたのだろう。「はいはい」と、少し呆れた様子を見せたシオンは、そのまま読書へ戻った。

 

「すまん、シオン」

「魔力を取ってたのは、魔力が無い状態を思い出す為だったんだから、魔力が戻った後は、しっかりと魔力がある事を意識してなさい。そうしたら、訓練まで中断する必要ないから」

「はーい」

 

 返事をするのに合わせ、『おーい』とスマホから声。

 消音とスピーカーモードを辞め、耳に当てる。

 

「ごめん、ちょっと席外してた」

『そっか。さっきの話、かーちゃんにも聞いてみたけど、同じような感じだった。本当にあったの?』

「多分。ありがとうな、スバル」

『うーん……分かった。じゃあまた。明後日ね』

「ああ」

 

 通話を終え、トーク一覧から別の連絡先を探す。

 スバルやスバルの親も同じような状態らしい。だったら、他の人もそうなのだろうか。

 一先ず自分と同じ条件の、この町に住んでいて異世界出身ではない者を探し、見つける。

 とはいえ、顔を合わせて話す事はしても、トークアプリで話したことが無い。最初に連絡先を交換した時に、よろしくーみたいな感じで、スタンプを送りあった位。

 

「……まあ、いいか」

 

 背に腹は代えられないので、連絡する。

 

【赤井。今大丈夫?】

 

 こちらは即レスではなく、少し間があってから。

 

【大丈夫よ。何かしら?】

 

 と返ってきた。

 

【電話していい? 聞きたいことがあるんだけど】

 

 そう送ると、【ごめんなさい】と返ってくる。

 

【ベッドの中でこっそり打ってるから、喋れなくて】

 

 そういえば、家の規則が厳しいと、以前赤井に聞いたことを思い出した。

 部活等の理由が無ければ、門限は6時。

 勉強のノルマが課せられており、それが終われば基本就寝時間。

 夜の9時を過ぎれば、スマホの使用は禁止。

 その他、細々としたルールがある。

 そんな感じの事を、言っていた。

 

【すまん。迷惑かけた】

【いいわよ。それで、聞きたい事って何?】

 

 逡巡し、素直に聞いてみる事にした。

 

【山の上の神社って知ってる?】

 

 そう送り、神社について書かれていたブログのリンクを合わせて送る。

 ブログ記事の確認をしているのか、返信には間があり。

 

【ごめんなさい、分からないわ】

 

 との返信が来たのは5分程経った時だった。

 

【そっか。ありがとう、赤井】

【急にどうしたの?】

【いや。ちょっと思いだせなくて。若年性健忘症なのか確認する為に、色々な人に聞いてる】

【何それ】

 

 くすくすと、そんな笑い声が聞こえた気がした。

 

【まあ、それだけ。ごめん、寝てたよな】

【大丈夫。でも、次はもう少し早い時間がいいわね】

【分かった。気を付ける。改めて、ありがとう、赤井。おやすみ】

【おやすみ、先輩】

 

 トークを辞め、別の人間を暫し探し。

 スマホをポケットに収めた。

 

「シオン。驚くべき事実に気が付いたんだけどさ」

「なに?」

「スマホの連絡先でこの世界出身なの4人しか入ってなかった」

 

 スバルと、赤井と、後両親。比較的顔は広めの筈なのだが。

 

「やっぱりアンタ、友達いないんじゃないの?」

「……連絡先交換してないだけだし」

 

 多分。ちょっと自信が無くなった。

 

「……寝ます」

「そう。おやすみ」

「おやすみ」

 

 ソファから立ち上がり、寝支度を整えるのに洗面所へ向かう。

 ……いや、友達はいるし。別世界出身だっただけだし。

 

 ***

 

 翌朝。

 誰にするでもない、友達少なくない自慢を延々と脳内でやっていたら、すっかり寝るのが遅くなって、寝坊した。

 起きてから掃除したり食事を作ったりとしていたら、気付けば時計は昼の2時を指している。

 まあ、余り早くに行っても迷惑だろうから、多分問題無い。

 

「……でも、予約とかってした方がいいのか?」

 

 こういう取材みたいなことは、正直やったことが無いから分からない。

 とりあえず、行くだけ行ってみて、ダメだったら出直す事に決めた。

 念の為、服装は学生の正装ともいえる制服にして、髪型も登校時と同じにして。

 鏡の前で、最後の身支度を確認。

 髪型良し、制服良し、瞳の色もバッチリ紫。眼鏡が無い事に、若干心細さを覚える。

 

「なんか久々だな」

 

 以前は気付かなかったが、体の内に何かがある感覚に気が付いた。目元が一番多く、時点でタロが乗っている右肩が多く思える。

 これが魔力……なのだろうか。良く分からないけど、フレアさんに翻訳魔法を掛けられたり、シオンに翻訳魔法の解析をされた時に感じた奴に似ている気はする。

 肩に乗るタロが、嬉しそうに尻尾を振っているのが見え、構ってやろうと左手を伸ばしたら、体の内に感じる何かが、左手でも感じるようになり、タロへ触れる事が出来たから、恐らく間違いないと思う。

 とりあえず、意識するようにだけは心がける事にして、俺は身支度を整え終えると、リビングを覗き込んだ。

 

「じゃあ、行ってくる」

「行ってらっしゃーい」

 

 此方を見ずにひらひらと手を振るシオンに、同じく手を振り返して、俺は家を出た。

 久しぶりと言うにはやや期間が短いが、それでも懐かしさを覚える賑やかな世界。

 獣耳や角や尻尾や羽。半透明の体は幽霊か。Halloween Nightも真っ青な人外率。

 正直慣れたものだから、一々視線を向けるようなことはない。若干感じる寝足りなさに、欠伸を噛み殺しながら、歩を進める。

 目的地は、この街のもう1つの神社。今となっては、唯一と言った方が正しいかもしれない、名物巫女のいるさくら神社だ。

 

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