ホロ学園の「俺」君物語   作:零円

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登場ライバー
天音かなた


エピソード・オブ・かなた ep.02生徒会室

 天音先輩と共に、ポスターを貼っていく。その傍ら、無断で掲示板を使用していたり、提示可能期間を過ぎているようなら、それらも剥がす作業を行っていき。

 そうやって、全ての掲示板を回ってから、俺は剥がしたポスターを手に生徒会室の前に居た。

 

「どうぞ。入って」

 

 天音先輩が、生徒会室の扉を開ける。「失礼します」と挨拶しながら、戸をくぐった。

 飛び込んできたのは、片付けもままなっていない様子の、室内。

 

「……えぇ」

 

 少し引く。「いや」と天音先輩。

 

「忙しいから、仕方が無いんだよ」

「……そうですか」

「うん」

 

 自信満々に頷かれてしまい、自分が間違えているのだろうかと思いながら、再度室内。

 段ボール、書類、ファイル……やっぱり散らかっている。やりっぱなしなのか、今からやる所なのかの、判別もつかない。

 

「あ。とりあえず、ポスターはその辺に置いといて」

 

 指を差されたのは何個かある段ボールの山の一個。

 

「何かに使うんですか?」

「後で捨てるから、とりあえず」

「……」

 

 じゃあ、直ぐに捨てればいいんじゃ無かろうか。

 

「この辺の段ボールの山は、ごみですか?」

「分別してないけど、一先ず要らない物の筈」

「……掃除手伝いますよ」

「でも悪いし」

「気になるのでやらせてください」

 

 有無言わせぬために、制服の袖を捲り、段ボールの山に向かった。

 一先ず検分。先程のポスターを除けば、何に使っていたのか分からないパーティーグッズ的な物や書類など、段ボールの中身は多岐にわたる。

 

「ゴミ袋はありますか?」

「そこらへん?」

「……」

「ごめんなさい」

 

 何故か天音先輩に謝罪される。理由は分からなかったが、とりあえず指の差された当たりに近づき、捜索。

 日用品箱みたいな具合に、使いそうな物をごちゃごちゃと仕舞っている感じだ。ゴミ袋を見つけ、えいやと引き抜く。

 

「パーティーグッズは全部捨てます」

「いや何かに使えるかもしれないし」

「最後に使ったのは?」

「……」

「その何かが来た時にまた買って下さい」

「はい」

 

 ぽいぽいとゴミ袋に投げ込み、開いた段ボールを潰す。

 そんな事を続けながら、ふと気になった事を聞いてみる事にした。

 

「今日、他の生徒会のメンバーは?」

「誰も来ないよ。今日は生徒会の活動日じゃないから」

 

 なら何故、この人は生徒会の活動をしているのか。

 

「……回ってないんですか?」

「正直、引継ぎしたてでバタバタはしてる」

 

 言われてみれば、生徒会選挙が行われたのは今月の頭だ。もうすぐ1ヶ月経つかどうかといった頃合いである。

 時期的に、確かに引継ぎの時期かもしれない。

 

「ただ、去年の生徒会メンバー、生徒会長と僕以外は全員最高学年だったから、年度初めの生徒会が実質機能してなくて」

「ふむふむ」

「生徒会長は任期満了に伴い引退。生徒会経験者は僕1人」

「成程」

「そしてこの度、めでたく生徒会長に就任」

「おめでとうございます」

 

 生徒会長だったのか、天音先輩。正直部活が忙しくて全然覚えていない。

 選挙演説はうとうとしている間に終わったから、投票した記憶も無い。

 

「ただ、生徒会長から引き継がれたから、各業務を覚えてはいるけど、忙殺されて他の役員メンバーに引き継げてはいないよね」

「ダメじゃないですか」

 

 そもそも生徒会長なら、ポスター張りなんて雑務、後日他の人に任せた方が良かったのではないだろうか。

 それこそ、庶務って役職があるらしいし。

 

「結果的に私1人で回していてこの状況です」

「だから室内の掃除もままならないんですね」

「……そうだよ」

 

 今の間で色々察して、口を噤む。

 しかし、成程。そういう事なら、多分俺の抗議文を先生に提出した生徒会役員は、忙しそうな生徒会長を気遣っての事だったのだろう。

 泣ける話だ。いろんな意味で。

 

「とはいえ、生徒会室がこのザマじゃ、引継ぎもままならないですね」

「このザマ⁉」

「明日は生徒会の活動ありますか?」

「ねえ、今このザマって言わなかった⁉」

 

 でも、それ以上の感想が思いつかなかったし。

 

「どうなんですか?」

「……その予定だけど」

「なら明後日は?」

「明後日は休みだよ。まあ、僕は生徒会室にはいると思うけど」

「じゃあ、明後日来ます。俺は掃除するので、天音先輩は生徒会長の仕事をしてください」

 

 俺の言葉に、天音先輩はぽかんとして、それからいやいやと首を振る。

 

「流石にそこまでして貰うのは。生徒会の子達……僕が掃除するから」

「引継ぎも出来て居なくて、仕事、溜まってるんじゃないですか?」

「……」

 

 視線が逸らされた。決まりである。

 

「乗りかかった船ですから。最後までお付き合いさせて下さい」

「……ありがとうね」

「どういたしまして」

 

 結局この日は、1時間程掃除をしてから、天音先輩と帰路に就いた。

 

 ***

 

 一日挟んだ翌々日。

 スマホを手に、生徒会室を検分する。

 

「この山はゴミ、この山は日用品類多め。この束は年次資料で……」

 

 現状の写真を撮ったり、メモを取ったりしながら、片付けのスケジュールを組み立てる。

 写真については、後で必要になった道具がどの辺にあったかを思い出す為、メモはどんなものがあるのかや片付けの優先順位を決める為だ。如何せん、量が多いし、明らかに生徒会室の収納に対して荷物が多い。もしかしたらここ数年、ずっとこんな感じだったのかもしれない。

 流石に勝手に捨てる訳にもいかないので、書類の束の分別を頼もうと、俺はタプタプとスマホを操作しながら、天音先輩の方へ振り返った。

 紙面に走らせるべきシャーペンをくるくると手の上で回される慰み物に変えていた天音先輩は、俺が振り返ったのを見て、その手を止めた。

 

「さぼってないよ?」

「思ってないですけど」

 

 寧ろ、本来活動日で無いのだから、どう過ごしていようと構わないし。

 ただ、勝手に分の悪さを感じたらしく、「あー」と天音先輩は何かを考え。

 

「手際良いね」

 

 とそんな無難な言葉を口にした。

 気にしていないアピールも兼ねて、その話に乗る。

 

「両親が転勤族だったんですけど、仕事大好きで引っ越し当日まで仕事しているような人だったんで、荷造りとか家の事は俺の仕事だったんです」

「……え? 引っ越し当日に仕事していたの? 引っ越し作業は?」

「流石に家には居たので手続き等は父ないし母でしたけど、基本対応は俺でしたね」

「……大変だったね」

 

 まあ、そのおかげで友人付き合いをしなくても、人と問題無くやり取りできる程度のコミュ力は身についた。

 

「引っ越し先の片付けも1人?」

「はい。しかも荷物置場程度にしか考えて無いのか、ろくに内見もしないで部屋を決めていたのか知りませんけど、部屋のサイズが同じでも収納量が低いとか、部屋の形がおかしいとかあって、毎回ドキドキでしたね」

「ドキドキの対象、そこなんだ⁉ 本当に大変だったね!」

「いえ。そんな両親だから、家にある荷物なんて数える程度でしたし、大して苦ではなかったですよ。なんなら、この生徒会室の方が荷物多いんじゃないかな」

「嘘でしょ」

 

 大袈裟かもしれないが。大差は無いと思う。実際、今住んでいる家にも、絶賛転勤中の両親の私物は殆ど無い。

 因みに、今の家は流石に俺が内見した。一番使うの俺だろうし。一軒家と言うのもあっただろうが割と大変だった。二度とやりたくない。

 

「とりあえず、明日急に引っ越しってなっても問題ない程度には片付けます」

「うん。生徒会室の引っ越しは多分無いけど、意気込みは伝わったよ」

 

 伝わったらしい。良かった。

 

「伝わった所で、天音先輩。お手透きですか?」

「いや、仕事あるから暇では無いけど。何?」

「書類の分別をお願いしたいんですけど」

「書類は生徒会の印鑑がある奴は基本捨てないって認識でいいよ」

「印鑑……」

 

 書類を1枚、手に取ってみる。

 書面左下に、仰々しい判子があった。両親が使っていた実印のような四角形の大きい物。

 

「これですか?」

「そうそう。それで、書類の日付が直近で5年以内の書類なら生徒会室の戸棚、それ以前の奴は生徒会の物置……いや。物置なんて無かった。いいね?」

「良くないですけど。何処ですか?」

「……右隣の部屋」

 

 見た所、生徒会室内に隣室へと繋がる扉は無い。

 一旦廊下に出て、言われた通り右側に行けば、生徒会倉庫と銘打たれたプレートの着いた部屋が、確かにある。

 ドアノブに手をかけ、下げようとするが、開かない。

 

「そこはね。生徒会七不思議の1つ。呪われた秘密の開かずの扉なんだよ」

 

 横合いから声。

 視線を向ければ、当然ながら天音先輩の姿がある。

 

「属性盛りすぎでしょ」

「でも開けたら最後、身の毛もよだつ恐怖に襲われるという、恐ろしい扉って言い伝えは実際にあるんだよ」

「いいから鍵貸してください」

「無いよ」

「……はい?」

 

 聞き返せば、天音先輩が胸を張る。

 

「言ったでしょ? 開かずの扉って」

「いや。鍵穴があるのに鍵が無いなんてこと……」

 

 言葉の途中で、ある可能性が頭を過った。

 いや、そんなまさかなと思いながら天音先輩を見る。

 すると、俺の視線から自分を守るように、天音先輩は俺に両の掌を向け、自分の顔を隠した。

 

「そ、そんな胡乱な目で見ないで」

「……何年前からですか?」

「……分かりません。少なくとも一昨年の時点ではもう無かったらしいです」

「因みに、生徒会室の惨状は?」

「……それも、少なくとも一昨年の時点では。そこから、悪化はしています」

「職員室に予備は?」

「確認したけど無かった」

 

 成程、つまり。

 

「せめて、生徒会室にはありますよね?」

「……神のみぞ知るかな」

 

 運否天賦らしい。

 

「……とりあえず、掃除を、します」

「お願いします」

 

 とりあえず、ゴミと必要な物の分別から始めて、物を減らそう。

 




いつも読んでいただき、ありがとうございます。
活動報告へも、暖かいコメントをいただき、ありがとうございました。
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