ホロ学園の「俺」君物語   作:零円

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登場ライバー
癒月ちょこ
白上フブキ
紫咲シオン


転校初日、保健室

 最後に目を覚ましたのは、最後に殴った相手であった。

 暫しぼんやりとした後、痛みを認識して、殴られた頬を抑えるまで一緒。

 本当に仲がいいんだなぁと、そんな事を思う。

 少しして、痛みがマシになったらしく、後輩は周囲を見て、俺を見つける。

 

「──あ、先輩」

「よう、起きたか」

 

 周囲を探り、ベッド脇に座る俺の姿を目で捉えた彼が、俺に声をかけてくる。

 

「ここは、保健室ですか?」

「ああ」

「二人は?」

「怒られてるよ」

 

 あそこ、と指を差せば、正座した状態で、眼鏡の後輩はちょこ先、ケイ君とやらはフブキ先輩に怒られている。

 俺の自業自得の側面もあるし、告げ口は可哀想かなと思わなくも無かったが、保健室を利用する以上は経緯を話す必要があるし、フブキ先輩は保健室まで乗り込んできて、どうしようもなかった。一応便宜を図ってもらう事はお願いしておいたので、強制送還のような事は無いとは思うけど、暫くお説教は止まらないだろう。

 

「……因みにどれくらい寝ていたんでしょうか?」

「今は4限の途中だから、まあ2時間弱くらい。運動部とか入って、もっと筋肉つけた方がいい」

「考えておきます」

「ところで、お前さんはあれか? 異世界出身なのか?」

 

 それなら不知火さん辺りに差し出せばいいかなと思いながら尋ねると、後輩は驚いた顔を見せる。

 

「……先輩、どこまで知っているんですか?」

「あの眼鏡が魔界、あのケン君とやらが幽世出身なのは知っているし、お前と一緒に居たような精霊の知り合いもいる」

「……何でも知っています?」

「まぁな」

 

 詳しく説明する気も無いので、適当に返す。

 察しがいいようで、きちんと意思は伝わったらしい後輩は、苦笑いを浮かべた。

 

「僕は普通にこの世界生まれの此処育ちです。みたらし──精霊とは、たまたま出会って、意気投合しただけですよ」

「成程。なら、差し出し先は居ないわけか」

 

 ストレートに学校かこいつの親にでも告げ口すればいいだろうか。ただ、色々説明がしんどいのはある。

 少し悩み、言って聞かせればいいかと思いなおし、口を開いた。

 

「きちんと考えろよ」

「え?」

「お友達の事だ」

 

 視線で、絶賛怒られ中の二人を示す。しっかり正座させられ、くどくどと延々お説教されている二人。

 聞こえてくる内容は、魔界でのルールとか現世に生きる者としてとか、そんな内容。

 もし一般的な生活をしていたら、今聞いていたのは──今日の4限は体育だから、特に無いか。多分持久走させられていたと思う。

 

「それは……人間ではない彼らとの付き合いはやめろという事ですか?」

「違う。正体の秘密の方だ。君達がどういった経緯で、お互いの秘密を知ったのかは知らん。ただ知った後、忘れる選択を取らなかった以上、君には普通に生きていれば起こりえなかったことが起こるかもしれないし、それは命に係わる事かもしれない。今日もそうだ。君達は多分、お互いの秘密を知らない、全員ただの人間同士と思っていれば、3人仲良く俺の闇討ちに行こう、なんて考えなかっただろ?」

「……そう、ですね」

「でも来た。秘密を知っていて、3人ならやれると思ったから。結果、俺にぶん殴られて気絶だ。だが、もし俺がもっと過激で、敵は殺すって考えているような奴なら、今頃全員死んでいたぞ」

「……」

 

 自覚があるのだろう。押し黙る後輩。

 

「何かあった時、君には自衛手段が無い。追いかけられれば追いつかれるし、応戦しようとしても効かない。無力だ」

「うっせぇ! そいつに何かあったら俺が守るっての!」

「……」

 

 横槍を入れてきたのは、ケン君とやら。フブキ先輩の説教を遮り、俺に向けて牙を剥いている。

 そんな彼を見て、思わず溜息が漏れた。

 

「守れていないから、こいつは今、保健室のベッドの上にいるんだろ。お前は大人しく説教されていろ」

「この!」

 

 取っ組みかかろうとしたのか、立ち上がろうとし、その直前にフブキ先輩に取り押さえられる。

 

「白上の言葉を無視するとは、随分と躾がなっていませんね。一度、分からせておきましょうか?」

 

 白上さんモードだった。情けない悲鳴がケン君のもとから聞こえる。物理はミオ先輩任せだと勝手に思っていたが、決してそんな事は無いらしい。

 

「まあ、ああいうことだな」

「……はい」

 

 驚いたその表情は、恐らくケン君が成す術無く、取り押さえられた事に関する物だろう。

 

「付き合うな、なんて言わない。俺がやりたくない事を、君に強要出来る筈もない。ただしっかり考えるなり、話し合うなりはした方がいい。少なくともただの人間同士で、仲良しこよしっていう訳じゃないんだから」

「……因みに先輩は僕と同じで、この世界生まれのこの世界育ちなんですか?」

「ん? ああ、まあそうだが」

 

 何を急にと思う俺。そんな俺へ、後輩が言葉を続ける。

 

「なら、先輩はどう決めたんですか? その……周りとの付き合い方」

「俺のは参考にならんから聞かない方がいい」

 

 それに、この世界の尺度で言えば、今の俺は人間かどうか怪しいラインである。

 参考にするには向かないだろう。

 

「お願いします。教えてください」

「……」

 

 断ったつもりが、詰め寄られる。答えないと、引き下がらなそうな様子。

 ちらりと、ちょこ先やフブキ先輩の様子を確認すると、あちらもこちらの気配を探っているようだった。

 言いづらいなぁとぼんやり思う。

 

「説教みたいな事をしておいてあれだが、俺は正直そう難しく考えなかったよ。最低限の自衛が出来るから、っていうのもあるけど。離れる選択肢は無かったし、見えている物を見ないふりするのは苦手だ」

「それで、危ない目にあってもですか?」

「あったけど、だな」

「……そうですか」

 

 ニュアンスの違いを捉えたのか、後輩が黙り込む。

 俺と違って真面目らしく、しっかりと考える事に決めたらしい。

 なら、この話は終わりでいいかと考えて。次の話に移る。

 

「もう1つある」

「なんでしょう?」

「すまなかった」

「……はい?」

 

 頭を下げる。

 謝られるとは思っていなかったらしい。

 困惑した様子の後輩に、言葉を続ける。

 

「殴った件じゃない。生徒会室での対応の方だ。誤解させてしまって、すまなかった」

「ああ……いえ。だからって、明らかにやりすぎていましたから。寧ろ、全員一発しか殴らなくて良かったんですか?」

「ああ。誤解させたのはこっちだからな。とはいえ、やりすぎとも思うし、私怨も混ざってたから、その分はやり返させてもらったけど」

「……あの」

「ん?」

「あ、いや、こういう聞き方は悪いと思うんですけど、謝るならどうしてあの対応をしたのですか?」

「どうして? いや、すいちゃんに楽しい学生生活を送って貰おうと。その為に……あれ?」

 

 何であんな対応取ったのだろう。

 行動意図は、すいちゃんに楽しい学生生活を送って貰う為……? 

 

「──違うな」

「え?」

 

 いや、正確には全部嘘ではない。嘘では無いが、全部すいちゃんの為、という訳でも無い。

 自分でも気づかなかった根底。自分の心中の、奥の奥。

 

「うわー!」

 

 わしゃわしゃと、八つ当たり気味に頭を掻く。

 くそ恥ずかしい! 死にたい! 

 

「せ、先輩?」

「……よし」

「情緒やば」

 

 感情を切り離して落ち着き、俺は立ち上がった。

 そしてすぐに座りなおした。

 

「後輩」

「な、なんでしょうか?」

「俺を殴れ」

「急すぎませんか?」

「俺も私怨でお前らに酷い態度を取った」

「私怨? で、でも、みたらしにお願いした身なので、それでトントンなんじゃ?」

「いや、あそこの2人はともかく、お前さんにはまだ殴られてもいない。だから頼む」

「この先輩、面倒くさいな」

 

 失礼な事を言われた。分かりましたと、うなづいて。後輩は手を上げる。

 

「グーは苦手なので、パーでいきますね」

「どんとこい」

 

 歯を食いしばる。そんな俺に、平手が振り下ろされた。

 パーン! といい音が鳴る。そのせいで、ダメージはあまりなかった。

 

「ありがとう。すっきりした」

「僕は少しモヤモヤしてます」

「それでいい。人を殴ってスッキリなんて、しない方がいい」

 

 立ち上がる。時計を確認した。

 現在4限途中。学校自体が終わるまでには、あと3時間強、4時間弱位か。

 

「ちょこ先。俺、病院に行くので早退します!」

「……まあ、一応診て貰った方がいいから、本当に病院へ行くなら、早退も許してあげるけど」

 

 訝しむ表情を浮かべるちょこ先に、俺は胸を叩いて見せる。

 

「任せてください!」

「……信用出来ないから送るわね」

「お疲れ様でした!」

「こら! 逃げるな!」

 

 傍らの鞄をひっつかみ、走って保健室を後にする。

 仲直り大作戦には、兎に角時間が無い。

 スマホを取り出し、電源を入れ、連絡を入れたい相手を選び、発信ボタンをおした。

 

 ***

 

 体内魔力を練る。

 別にそのままでも大丈夫だが、体外でより使いやすくする為の事前準備的な物だ。

 練った物を放出し、体外にて陣を描く。

 普段なら何気なく、一瞬で組むものを、丁寧に一画ずつ。

 存外、そう言う事の中にも新しい知見があったりすることを、シオンは知っていた。

 

 ──もう少し。

 

 ゆっくり、慎重に描き進めていく。

 そうして出来上がった図の中へ、今度は1文字ずつ言葉を書き込む。

 これは、魔法の効果を示すものだ。発生現象や範囲、時間など、それをここで示していく。

 とりあえず、研究だから少し長めに効果を取ろうかと、そう考えたところで。

 

 prrr,prrr

 

「……」

 

 スマホが鳴った。

 無視してやろうかと思いながらも、シオンのスマホに連絡する者は限られる。

 仕方なく、組んでいた陣を廃棄して、シオンはスマホにでた。

 

「もしもし」

『急にすまん。今いいか?』

「良くない」

『そうか。頼みがあるんだが』

「……」

 

 良くないと言ったのだが。家主の少年は、シオンの言葉を無視して話を進める。

 

『必要な物があるんだ。荷物が大きくなる。付き合ってくれ』

「あんた、学校じゃないの?」

『ふけた』

 

 さぼったらしい。

 らしくないなと思いながらも、つまりそれだけ、重要な事なのだろうとシオンは考える。

 

「分かったわよ。それで? どこに向かえばいい?」

『ホームセンター』

「……はい?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

文章の構成はどちらがいいですか

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