ホロ学園の「俺」君物語   作:零円

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登場ライバー
ラプラス・ダークネス
鷹嶺ルイ
沙花叉クロヱ


転校初日、???

 

 振り下ろされる刃を、下がり躱しつつ、観察。

 一番やばそうなのは、やはりナイフ。刃渡りは15cm程。長く感じるのは、やはり刃物だからだろうか。

 加えて、目元が隠れているのが厄介で、視線から狙いを読みづらい。

 あれだけしっかりと覆っていれば、向こうからもこちらが見えづらいのではと思えるが、それはそれ。

 実際どうか分からない以上は、考えるだけ無駄。早々に思考の外へ追いやる。

 振り下ろし、刺突、刺突、振り上げ、横薙ぎ。

 ナイフにあった、素早い連携。刃物に振り回されているという印象は受けない。手持ちの物が武器という認識がしっかり在り、きちんと操っている。

 

 ──わざと怪我してビビらせる作戦は使えないか。

 

 逃げの一手を取って、撒けるのならばそれが楽だが、踏み込みを見る限り、怪しい所。

 それに、人の多い所まで逃げ果せたとしても、日中の歩道橋とかいう、いつ通行人が分からぬ所で仕掛けてくる辺り、そこでも容赦無く暴れないとも限らない。

 そう考えると、反撃して制圧しきる。もしくは完全に引き離し戦意喪失させるかの2択と言った所。

 

 ──どっちも厳しそうだが、やれそうなのは……。

 

 回避しつつ後ろへ跳び、手すりの上に着地。

 右手に見える階段を下るか逡巡した後、更にジャンプ。さかまたの上を跳び越えつつ周囲を見渡し、歩道橋上に降りる。

 

「先に駅の方に行ってもいいぞ。危ないし」

 

 俺の言葉に、きんつばは首を横に振る。そして両手を握り、意気込んで見せた。

 離れるつもりは無いらしい。その心意気に感謝しながら、きんつばを左肩へ乗せる。

 

「タロ」

 

 次いで、タロへ声を掛ける。

 歩道橋上で、ぐるると変わらず威嚇していたタロが反転。俺の右肩へ飛び乗った。

 定位置についても、威嚇は辞めない。相変わらず、頼もしい。

 見えていなかった頃も、きっとこうしてくれていたのだろうと、そんな事を想う。

 

「きんつば、内緒話出来るようにしといてくれ」

 

 言いながら、ナイフを躱す。

 生徒指導室とは違う。タロが居て、きんつばも居る。相手の狙いは正確で読み易く、戦いやすい。

 躱しながら、踏み込む。

 右足を前。右手を握り、顎を狙ってのアッパーカット。

 ナイフの振り切り際、視界の外から行ったつもりだったが、しっかりと反応され、後退にて躱される。

 

 ──バレた。あのアイマスク、意外と視野広いのか? 

 

 そんな事を考えながら、俺は攻勢に打って出た。

 

 ***

 

 ビルの屋上。その一角。

 転落防止用に建てられた柵の上に、2人の陰。

 片や、紫色のロングコートに身を包んだ、巨大な角を持つ少女。

 片や、ワインレッドのロングコートを肩に羽織った女性。長い足をストッキングで覆い、エナメル質のタイトなミニスカートにワイシャツと言う出で立ち。桃色の髪の中に、羽の様な意匠も見えた。

 それぞれ、秘密結社holoX総帥『ラプラス・ダークネス』と幹部『鷹嶺ルイ』である。

 

「えっとー『きんつば、内緒話出来るようにしといてくれ』かな?」

「……なー、幹部」

「ん? なーに?」

 

 双方共に、呆れ顔を浮かべながら、holoX所属の研究者、『博衣こより』手製の、色々見える双眼鏡を手に、事の成り行きを見ていた。

 

「吾輩、アイツの事、連れて来いって言ったよなぁ?」

「正確には、良い感じに連れて来い、だけどね」

「……なら、あれがしんじんのいい感じなのか?」

「まあ、秘密結社っぽくはあるねぇ」

 

 嫌がる相手を無理やり組み伏せ、もしくは無力化し、力尽くで連れ去る。

 成程、文字に起こすと、確かに秘密結社っぽいかもしれない。そう望んだかは、兎も角として。

 

「止めようか?」

「んー……いや、いいや」

 

 言いながら、ラプラスは双眼鏡のチャンネルを弄る。

 双眼鏡越しの景色の色合いが色々と変わっていく中、あるシーンで手を止める。

 

「お、見えた」

「なにが?」

「ん」

 

 ルイの言葉に、ラプラスは自分のつけていた双眼鏡を渡すことで答える。

 それを受け取り、代わりに自分の持っていた双眼鏡をラプラスへ渡したルイは、受け取った物を目元へ当てた。

 色合いの歪な世界の中、ナイフを交わす少年の胸元に、先程までは見えなかった小さな影がある。

 色味は分かりづらいが、体色の大体を白が占めている事は分かる。

 

「何あれ? パンダ?」

「さーなー。まあ、あんな風に抱えているんだし、大事なものなんじゃねーの?」

 

 興味があるのか無いのか。どこか投げやりな印象を受けるラプラスの言葉を聞きながら、ルイは自分でも双眼鏡のツマミをいじる。

 その中で、ある物が見える。黒と白、モノトーンの世界の中、少年の体を流れる何か。holoX新人、現在少年と戦う沙花叉クロヱの中には見えないそれは、少年の全身を巡っており、特に目元と脚に集中している。

 試しにそのまま隣のラプラスを見るが、ラプラスの中にも見えなかった。その他、ぐるりと辺りを見れば、少年同様の者も居れば、違う者もいる。

 

「どしたー?」

 

 尋ねてくるラプラスへ、双眼鏡を返すルイ。

 それを覗いたラプラスが、不思議そうに首を傾げ、それから周囲を見て、ルイを見る。

 先程のルイと同じような反応を見せた後、双眼鏡を目元から離す。

 

「なんだあれ?」

「さあ?」

 

 こより作の何でも見える双眼鏡。

 その名にほぼ嘘は無く、物理的な距離以外は割と貫通し、観測を可能とする。

 それは、こよりの技術の粋を集めた物であり、双眼鏡内部につけられた大量のフィルタの組み合わせと光量や波長などを調整する事により、通常視点から、布地を貫通した中身、果ては今のように元来特定の手段以外では見えない精霊の存在や魔力の存在を可視化させ、観測できる。見るという一点においては、少年の持つ目の上位互換。

 しかし過ぎたる力の弱点、というか欠点があり、それが今のラプラスとルイの状態である。

 肉眼では観測出来ない様々な事象、それを見えるようにする事は出来る。出来るのだが、実際何が見えているのかが分からない。事前の知識が無ければ、初めて見た物の名前や意味など、分かろう筈も無いのだ。

 

「……これは」

「情報過多だねぇ」

 

 更につまみを弄れば、肉眼では何故か見えない子犬の姿も見えたりしだし、理解疲れした2人は、大人しく摘まみを最初の状態へ戻し。

 気まぐれにつまみを弄り、一先ず見えている物を理解出来る所に変えて、そこで操作を辞めた。

 

「さて、お手並み拝見」

 

 ***

 

 正面から突っ込んだ俺に、ナイフが突き出される。

 躱しながら直進。拳を放つも、こちらも回避される。

 ステップ二回。間合いを詰めてのコンビネーションも躱され、返しの刺突。

 顔を傾け、耳に微かな痛みを憶えながらも、これを躱しつつ、次手はボディ。

 開いている左手に、止められる。

 

 ──やんな。

 

 互いに一歩、態勢を立て直すために引こうとするも、背後は手すり。

 下がり切れず、それならと前進を選ぶのも、同時。

 振るわれたナイフは、その手元を狙っていなし、返しに振るった右拳は躱される。

 互いに引かず、相手の攻撃を躱したり防いだり。

 ナイフによる一撃を狙うさかまたと、拳をふるう俺の状況は、良く見積もって五分と言ったところだった。

 その状況を楽しんでいるのか、さかまたの口元に薄ら笑いが浮かぶ。マジで連れて帰るとは何なのかと思いながら、振られるナイフを前に怯まず突進。

 ナイフを持つ手の方を止めつつ、ボディを狙って拳を振るうも、これは読まれたようで、止められる。

 今までなら仕切りなおす所を、そのままさらにさかまたの左側へ、右足をねじ込み、大外刈りの要領で押し倒してしまおうと試みる。だが、それより早くさかまたの頭が動いたのが見えた。

 慌てて動かし、発射は同時。頭突きがかち合う。

 衝撃でお互いに数歩、蹈鞴を踏む。

 

 ──硬い! なんだよあのアイマスク!? 

 

 それともただ石頭なだけか。いや、あれが素なら、石頭では無く鉄頭だ。それくらい硬かった。

 倒れそうになるのを気合で堪えつつ、一度下がる。

 鉄頭でも多少の衝撃はあったようで、さかまたからの追撃は無かった。

 額にぬるりとした感触を味わいながらも、頭を振って平衡感覚を取り戻す。

 

 ──ん。

 

 そんな中、きんつばの声が脳内に響いた。内緒話の準備が整ったらしい。

 考えるだけで伝わるようなので、口を動かさずに聞きたかった事を尋ねると、出来るとの返事。

 ついでに詳しい仕様を聞いておく。

 

『了解。合図したら頼む』

「タロ」

 

 意図の伝わったらしいタロが、肩から降りた。

 視線の先で、さかまたが動く。振り下ろされる刃を前に、後退する。

 上着を脱ぎ、右手に携える。その動きの意図がつかめなかったのか、さかまたはナイフを構えるも、詰めてこない。

 

 ──OK。睨み合いは望むところ。

 

 呼吸を整えつつ、いざという時、即動けるように、足へ力を籠める。

 じりじりとした睨み合い。それが聞こえてきたのは、ほぼ同時。

 

『わん!』

 

 タロの合図。それと同時に、後方から物音。

 誰か上がってきたのか。

 思わず確認のために振り返れば、誰も居ない。ただ、小石が転がるのだけ捉えた。

 慌てて振り返る。さかまたはもう間近。

 タロの合図に一瞬気を取られた一瞬に、足元の小石を蹴り飛ばしたのか。直接俺を狙わなかったのは、躱されると踏んだからか。

 ……今となってはどうでもいい。次を待ってもいいが、流石に覚えていない。時間は無い。

 

 ──押し通る! 

 

 特攻を選択。可能な限り体を逸らし、さかまたの右側を抜けようとする。

 既に振り始め、振られたそれを躱しきれるはずも無く。ナイフは俺の体を裂いた。

 

 ***

 

 理由は分からなかったが、相手が振り返った所を狙い、クロヱは攻撃した。

 それに対し、回避をしてくると呼んでいただけに、突っ込んでこられることを想定しておらず。

 結果、振った刃は狙いを逸れ、脇腹の辺りを斬るのみに落ち着いた。

 そのまま走り抜けられる。裏を取られるも、相手は手傷を負っている。

 即座の反撃は無いだろうと高を括り、振り返るクロヱの顔に、何かが覆いかぶさった。

 

「わっぷ!?」

 

 視界が奪われる。つけているマスクは、目元などを完璧に隠しながらも視界を一切奪わないこより製のスーパーアイマスクながら、それ以上の効果が無く、物理的に隠されれば見えなくなるもの当然だった。

 わたわたと、大慌てで被さった物を外す。一緒にアイマスクも取れたが気づかぬまま、クロヱは周囲を見渡した。

 

「あれ?」

 

 少年の影も形も無い。歩道橋から身を乗り出し、地面の方も探すが、走って逃げているといった様子も無く、歩道は普通に一般人がちらほら歩いているだけ。車道も乗用車やバスが走っているのみだ。

 

「んー?」

 

 小首を傾げながら、やはり見当たらない少年を前に、諦めナイフをしまう。

 どうしようかと悩む、クロヱの耳に、声が届く。

 

『あー、しんじん。帰って来ていいぞー』

「ラプラス? 帰っていいの? 連れ帰れて無いけど」

『連れ帰る気あったのかお前』

「ありましたー!」

『……まあいいや。マスク忘れるなよ』

「ほえ?」

 

 何をと思いながら、クロヱが顔を振れれば、あったはずのマスクの感触が無い。

 下を見れば、自分に覆いかぶせられた上着と共に、落ちていた。

 慌てて上着共々拾い上げ、マスクの埃を落とし、装着する。視界は変わらないが、装着の感触はあり、一安心。

 上着はどうしようかなと思いながら広げてみる。黒一色の、これと言って装飾の無い物だが、サイズも丁度良く、肌触りは良かった。

 

「部屋着にでもしようかな」

『マジかよ』

 

 突っ込むラプラスを尻目に、上着を抱えたまま帰路につくクロヱ。

 そんなクロヱの様子を見ながら、通信機をきりつつ「しかし」とラプラスが言う。

 

「あいつやるなー。昔はこんなちっこかったのに」

 

 こーんなと言いながら、親指と人差し指で作った幅を、ルイへと見せるラプラス。

 それを見て、「何ならラプと同じくらいじゃなかった?」とルイが返せば、「そんな訳ねーだろ!」とラプラスは怒って返す。

 

「それで? なんであんなことさせたの?」

 

 ルイのその言葉に、ラプラスが首を傾げる。

 わざとらしいその仕草に、ルイは溜息を漏らした。

 

「石。何で落とさせたの」

 

 クロヱは気づいていなかったが、少年が振り返るきっかけとなった小石は、ラプラスがルイに言って、ルイの相棒であるがんもに落とさせた物だった。

 あれが無ければ、恐らく少年が怪我することは無く、逃げおおせただろう。

 何故態々、無駄に怪我をさせるような事をしたのか。そう尋ねるルイへ、「だって」とラプラス。

 

「あいつ、何か企んでるみたいだったからさ。邪魔してやろうかなって」

「邪魔ってね」

「やっぱ連れ帰って来て欲しいだろ?」

「……」

 

 それなら、さっさと停止させれば良かった。それをしなかったのは何故なのか。

 真意を掴めず、押し黙るルイを置いて、ラプラスは柵から降りる。

 

「帰ろー幹部」

「……今行くから待って」

 

 同じく柵から飛び降りる。内では無く、その外側。結果、地上数十メートルからの自由落下が始まる。

 その最中。

 

「なあ、幹部」

「なに?」

「はかせと一緒に、アイツの周り、ちょっと調べてみてくんね?」

 

 ラプラスの言葉に、ルイが言葉を返そうとするも、それを遮るように、2人を黒い靄の様な物が包む。

 それが晴れると、その姿は突如と消えていた。

 

 




きりどころわからんかったもんだい

文章の構成はどちらがいいですか

  • 全部詰める(全話までのやり方)
  • 地文と会話文の間に改行を入れる(今回)
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