ホロ学園の「俺」君物語   作:零円

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登場ライバー
角巻わため
白銀ノエル
不知火フレア
紫咲シオン


見舞い、異世界2

 ガーゼを張り終えて、服を着こむ。

 フレアさんも、持ってきたポーションなんかをカバンへと仕舞っていた。

 

「そうだ、フレアさん、変なこと聞くんですけど」

「うん?」

「最近、身の回りで変な事が起きたりしていませんか?」

「変な事? 例えば?」

「誰かに見張られている気がするとか」

「うーん……」

 

 腕組み、首傾げ。

 考えるフレアさんを待つ事暫し。

 

「いや、特に心当たりは無いかなぁ。きんつばはある?」

 

 フレアさんの言葉に、きんつばは首を横に振る。

 

「そうですか」

「もし隠れてみている、とかなら、気づくとは思うよ。まあ、街中にあるカメラみたいに、間接的にとかだと、ちょっと掴めないけど」

「成程」

「どうして?」

「ああ、いえ」

 

 少し悩んで。

 

「俺を怪我させた奴とか、もし居るならその仲間が、俺とか俺の周りの人を監視している可能性もあると思ったので」

「……成程ねー。聞く限り、君を襲った誰かは君自身が狙いの様だから、確かにそれもありえるのか」

「自宅に何度か出入りしてますし、もしかしたら、わためが監視されて、その延長でって事もあるかと」

「確かにねぇ」

「一応わためには家を出ないように、とは言っているんですけど」

「……あれ? そうなの?」

 

 俺の言葉に、フレアさんが驚く。驚くフレアさんに驚きながら、こくこくと、首を縦に振った。

 

「念の為ですけど」

「えー……」

 

 困った様子を見せたフレアさんだったが、直後いい音を立てながら手を合わせ、頭を下げて来た。

 

「ごめん!」

「はい?」

 

 急に謝られた。フレアさんは続けて、少し気まずそうに。

 

「多分今、ノエルと一緒に買い物に行ってるわ」

「なんで!?」

 

 驚天動地。まさかである。

 

「事前にわためにお願いされていたんだよねー。それに、外出禁止令知らなかったし」

「いやいやいや」

 

 急すぎる。何時の話だ。出かけないようにと言ったのは一昨日位だから、その前に約束していたのならあれだが。

 いや、それにしたって、今日来た時にやっぱり無しとすれば良かっただけで。

 

「……え? なんで?」

「それはまあ……色々? 大丈夫大丈夫。ノエルも一緒だし。ふるゆわだけど、あれで白銀聖騎士団団長様なんだから。そんじょそこらの人には負けないって」

「……それってめっちゃ偉いのでは?」

「そうだよー」

 

 わためは知っているのだろうか。あの子、行先の国が滅びている事を知らずに向かう程度には世間の常識疎そうだったけど。

 ……気にするのはやめよう。気にしたところでどうしようもないし。

 そう言う事なら、とりあえず、わためは大丈夫そうか。それでもお小言の一つでも言った方がいいだろうか。

 

「うーん……」

「気持ちは分かるけど、余りわための事を怒らないであげてね。それに、君は人のこと言える立場では無いし」

「それはまあ、そうですけど」

 

 一報入れようかと思いつつ。出かけた以上、帰ってこいと言っても用事が済むまでは戻らないだろうとも思う。

 そうなると、バレているならいいかとゆっくりになったりする可能性も考えれば、連絡しない方がバレる前に帰ろうの精神になって早く帰ってくる気がする。

 ノエルさんもいるらしいし、まあ、大丈夫かと、一旦落ち着く事にした。

 

「じゃあ、もう一つ聞きたいんですけど」

「何?」

「なんか、やけに疲れちゃうんですけど、どうにかなりませんか?」

「疲れる? ……ああ、副作用の事か」

「多分それです」

 

 俺の言葉に、ふむふむとフレアさんがうなずく。

 

「確かに、本来は疲労回復するような魔法も並行してかけるけど、ここには魔素が無いからなー」

「成程?」

 

 分からん。

 

「まあ、君って起きていたら何処か行くし、丁度いいんじゃない?」

「そうは言っても、流石に寝すぎちゃうんですよ」

 

 今だって、魔法をかけなおした影響か、また眠くなってきている。

 1日の稼働時間が極端に短い感じ。時間に対して勿体無さを感じてしまう。

 

「因みにだけど、どれくらい寝ちゃうの?」

「半日以上は余裕で寝てますね」

「普段は?」

「……三か四時間くらい?」

 

 酷い時は二時間。

 

「それも原因じゃない?」

 

 言語化したらそんな気はしてきた。

 

「夜はしっかり寝なよー。起きててもしょうがないんだし」

「色々やろうと思うと、時間取れるの夜くらいなんですよねー」

 

 やらなきゃいけない事とやりたい事が渋滞している感じ。

 最近は常に眠い状態で、そちらが平時のような状態でもある。

 

「別にやりたくないやらなきゃいけない事の為に、やりたい事我慢したくないって気持ちも分かるよ。今だって、回復の為に寝ないといけないと思っていても、本読みたいんでしょ」

 

 フレアさんが指差した先にはフブキ部長から借りた漫画やラノベ。まったくその通りなので、ぐうの音も出ない。

 

「でも、やらなきゃいけない事って、巡り巡って自分の為なんだから。気が進まなくても、我慢しようね」

「……うす」

 

 諭されて、素直に諦める。フブキ先輩も、返すのはいつでもいいと言っていたから、ゆっくり読むとしよう。

 

「なら、俺はひと眠りさせて貰います」

「ごゆっくりー」

「はい、今日はありがとうございました。きんつばも、ありがとうな」

 

 脇にいたきんつばを撫でる。

 暫くされるがままになっていたきんつばは、やがて手元を離れ、フレアさんの方へと飛んで行った。

 立ち上がったフレアさんが、室内を横切り、戸の前へ。

 

「傷はもう数日中には良くなると思うから、明々後日くらいにでも、様子見に来るよ」

「分かりました。お願いします」

「うん」

 

 ひらひらと手を振って、フレアさんときんつばが部屋を出ていく。

 それを見送ると、ベッドへ座った。

 途端に、どっっと疲れが押し寄せてくる。慌てて立ち上がろうとするも動けず、欠伸が漏れ、瞼が重くなり、目が開けていられなくなってくる。

 気づけば意識は闇の中だった。

 

 ***

 

 目を開ければ見知った天井。寝てしまったらしい。わためが戻ってくるまで、起きているつもりだったのだが。

 寝足りないのか、頭がぼんやりするし、体が重い。

 今更ながら、寝る前にしっかり栄養補給した方がいいなと、そんなことを考えながら、体を起こす。

 はてと思う。ベッドに座った姿勢から落ちた筈なのに、ベッドに横たえられ、布団もしっかりかけられている状態だった。

 なんでだろうと思いつつ、ベッドの上で軽くストレッチ。

 体をほぐしてから、ゆっくりベッドを降りて、机に置かれたスマホの電源を入れる。

 時刻は17:43。普段なら、夕食の準備をしている頃合い。

 

「丁度いいし、夕飯作るか」

 

 トイレに行って、水飲んで、そのまま夕飯を作ろう。

 わためも、流石に帰ってきているだろうから、冷蔵庫の中身は潤沢なはず。

 作り置き分も含めて、いくつかまとめて作ろうかなと、そんな事を考えながら、戸を開けた。

 

「あれ?」

 

 すると、階下がやけに賑やかな事に気が付いた。テレビの音──という感じではない。普通に話し声だ。

 

「んー?」

 

 まだ寝ぼけているらしい。話し声が誰の物か判断つかない。

 まあ、見ればわかるかと思い、俺は階段を下った。

 トイレで用を済ませ、手を洗い、そのままリビングへ入る。

 リビングと、それに併設されているダイニングキッチンにはそれぞれペアが出来ていた。

 片やキッチン側。俺に元気に声をかけてきたわためとノエルさんのペア。

 片やリビング側。入ってきた俺を無視して話し込むシオンとフレアさんのペア。

 漏れ聞こえてきたシオンとフレアさんの会話に、魔法だ魔素だという単語が聞こえてきて、俺は大人しくダイニングへと避難する。

 俺に気が付いたわためとノエルさんが、気まずそうに声を上げた。フレアさんから事情は聴いているらしい。

 

「あ、おはよー……」

「おはよ」

「おはよう。ごめんね、わためちゃんの事、連れ出しちゃって」

「いえ。わためがお願いしたって聞いているので。寧ろ、ありがとうございます」

 

 考えすぎかもしれないが、それでも無事で良かった。

 わために視線を向ける。暗い顔。黙っていた事を反省してるのが分かる。

 怒れる立場に無いのは自覚しているが、それでもと思い、口を開こうとした時。

 

「あの」

 

 とわためが先んじて口を開いた。

 

「出かけてごめんなさい。でも、冷蔵庫の中とか、何も無かったし……」

「……」

 

 そういえば、最後に買い物に行ったの、先週だったな。

 

「それに、凄く疲れているみたいだから、ちゃんと栄養のあるもの、食べた方がいいとも思ってね」

「……」

「ノエちゃんにね、騎士団が遠征の時とかに食べてる、滋養にいいご飯とか、色々教えて貰ってるんだ、だからちょっと待ってね」

「……」

 

 申し訳なさそうにはにかむわために、俺は。

 

「本当にごめんなさい」

「うぇ!? なんで謝るの!?」

 

 土下座した。本当に恥ずかしい、穴があったら入りたい。

 

「顔上げて! 黙って出かけた私が悪いし!」

「いや、俺なんかがわために顔向け出来る訳も無く」

「いいから! もー!」

 

 襟を引っ張られて、恐る恐る顔を上げる。

 ぷりぷりと、ちょっとだけ怒った顔のわためと、目が合う。

 

「なんでそんな事するの」

「怒ろうとした自分が恥ずかしくて」

「約束破ったのわためなんだから、気にしないでよ」

「無理です」

 

 こんな、こんな……。

 

「もー……お水飲む?」

「……欲しい」

「ちょっと待ってね」

 

 水道の音がして。間も無くわためが、ダイニングとキッチンを仕切るカウンターの上へと、水の入ったグラスを置いた。

 

「恐れ多くも……大変ありがとうございます」

「そういうの良いからー。お腹空いているよね、もうちょっと待っててね」

 

 わためがノエルさんの元へ戻った。二人は現在コンロの前。土鍋を火にかけているようだった。

 ちびちびとグラスを呷りながら、その背を見守る。

 先程言っていた、おかゆを作っているのだろう。

 土鍋からは、嗅いだことのないちょっと独特な匂いが漂ってきていた。エスニック系とでも称せばいいのか。

 家にある調味料では、凡そ出そうになり香りである。

 

「なあ、わため。それ何を作っているんだ?」

「もう少しで出来るから待ってて!」

「はーい」

 

 食べられるかちょっと不安になってきた。返しながら、カウンターへ視線を戻す。

 カウンターの上には、見たことの無い料理が盛り付けられた大皿が何枚か置かれていて、それぞれにラップがかけられていた。

 ぐ~っと、腹の虫が空腹を告げた。

 怒られた直後であれだが、つまみ食いしてもいいだろうか。ちらりとわためとノエルさんの様子を窺えば、こちらに背を向けている。

 念の為、シオンとフレアさんの事も、一応確認しておこうと振り返ろうとした直後、横合いからぬっっと手が伸びてきた。

 びっくりして声が出そうになるのを慌てて抑える。

 手の主はフレアさんだった。その向こう側にはシオンもいる。

 目が合いうと、フレアさんから、静かにするようジェスチャーで伝えられる。

 そのまま、フレアさんはラップをめくって、料理を一つ、摘まみ上げ、ぱくりと一口で頬張る。

 

「あっ」

 

 驚く俺を他所に、シオンも同じ要領で、つまみ食いを実行する。

 鮮やかな手際だ。普段からつまみ食いしているだけの事はある。

 

「……」

 

 二人を見ていたら、俺も我慢出来なくなってきた。

 パッと見は酢豚に近いが、如何せん嗅いだことの無い香りだ。ハーブか何かだろうか。

 一つ摘まもうと手を伸ばし──ラップを戻す。

 わために待っているように言われたのだ。大人しく待とう。

 空腹を誤魔化す為にグラスを呷って水を飲み干し、ダイニングテーブルの椅子へと腰を下ろし、テーブルへ突っ伏した。

 ──お腹空いた。

 

 ***

 

「──出来たよー!」

 

 わための声が響いた。その声に上体を起こす。

 また少し寝ていたらしい。頭が少し重い。

 

「大丈夫? 食べられそう?」

「へーき」

 

 土鍋を手にダイニングへ入ってきたわためが、俺の姿を見て尋ねてくる。

 正直ソファで横になりたいというのも本音ではあるが、お腹が空いているのも事実だ。

 

「無理しないで、食べれるだけ食べてね」

「ぜんぶたべる」

「無理しなくていいってば」

 

 いや、実際空腹感的には、土鍋一杯位は食べきれそうではある。それまで寝落ちしなければ、であるが。

 鍋敷きの上に、土鍋が置かれる。蓋が開けられ、中にはおかゆ……というよりは雑炊に近いか。

 卵に鶏肉にキノコに野菜。見覚えのない食材は特にない。知った食材ばかりだ。漂ってくる香りが魚っぽさがあって独特なくらい。

 

「騎士団の人が、良く遠征訓練とかで作るのを真似したんだよ。滋養強壮があって、疲れが取れるんだって。あ、ちゃんと食材はこっちの食材しか使ってないからね」

「マジか。それはありがたい」

「こっちのおかず類は食べれそうなら食べてね。たくさんあるから、作り置きも出来るよ」

「至れり尽くせりじゃん」

 

 神様かもしれない。二度と足を向けて眠れない。

 拝んでいると、小皿に雑炊が盛られた。レンゲとともに、差し出される。

 

「えっと……さっきはごめんね。怒っちゃって。なんか嫌だったっていうか」

「いや。俺の方こそ、改めてごめん。もうちょっと気を付ける」

「うん、ありがとう。お願いね」

「ああ。──食べていい?」

「いいよ! 召し上がれ!」

「いただきます」

 

 

 

 

 

「ねー、私たち、いつまで正座してればいいのー?」

「お腹空いたんだけどー」

「わためぇが許すまでかな」

「「えー!?」」

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