ホロ学園の「俺」君物語   作:零円

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登場ライバー
紫咲シオン


見舞い?魔界

目覚めはいい。少し眠気はあるが、意識ははっきりしている。

体を起こし、カーテンと窓を開けた。快晴らしく、澄んだ青空が広がっているのが見える。

それだけで、何か嬉しくなりながら、部屋と体に日の光と新鮮な空気を取り込む。

 

「……寒い」

 

当たり前だが、その分、目も冴えるという物。

首と肩回し、前屈、後屈、側屈。アキレス腱やら太もも、袋はぎを伸ばす。

上から下へ、順繰りにストレッチをして、体調を確認。側屈の時にも痛みは無い。

 

「うん、回復した」

 

スマホを手に取る。5:53。アラームが鳴る、少し前。

鳴らない様に設定を解除して、机に戻す。

さて、この後はどうしようか。

シャワーを浴びてもいいのだが、どうせなら久し振りに走りに行きたい。

とはいえ、出掛けるなと言った手前、不要な外出をするのも、どうかと思えるのも間違いない。

うーんと暫し悩んで。諦める事に決めた。代わりに縄跳びでもしよう。確か、玄関脇の物置にしまってあったはず。

パジャマからジャージに着替え、窓を閉めてからスマホを手に部屋を出た。

わためは分からないが、シオンは間違いなく寝ているだろうから、音をたてないように気を付けつつ、階段を下る。

物置を確認すれば、直ぐに縄跳びは見つかった。そのまま縄跳びと、玄関で運動靴を回収。そのままリビングへ向かう。

廊下を抜け、リビングへ入る。まだ誰も起きていないようで、人影は無い。

一先ず、換気がてらに窓を開け、そこから靴を庭に置き、傍らに縄跳びを置いて、網戸を閉める。

そのまま窓を離れ、テレビをつけた。音量を絞ってからチャンネルを回し、ニュース番組へ変える。

 

『次のニュースです。昨日発生した――』

 

知らぬ街で発生した、傷害事件。その下手人が捕まったというニュースが流れる。

連行されているのは、やはり知らぬ男性。金銭関係のトラブルが動機で、犯行も認めているらしい。

分かりやすい話だ。こちとら、何故襲われたかの理解も出来なければ、下手人を捕まったという事も無い。まあ、通報自体していないのだけど。

やっぱりするべきだったかなぁと今更ながらに思いながら、キッチンへと入った。

洗い物が入っている籠からグラスを回収。それ一杯に水を注ぎ、一息に呷る。

 

「ふぅ」

 

一服入れる。使ったグラスを軽くすすいで籠へ戻し。リビングへ戻る。

ニュースは最近の物価の話に移行していた。

確かに色々高くなっている。野菜類だって、旬の物すら馬鹿にならない価格だ。

三人分の食費を考えると、自炊も割高に感じてしまう。その内もやしも三桁に届くのだろうか。考えたくもない。

 

「家庭菜園とかやった方がいいんかね」

 

折角庭があるのだし、使わないのももったいない。冬に入りたての今からでも、何か育てられたりするのか。

後で調べてみようと思いながら、網戸を開け、靴を履きつつ庭に出る。

手首足首を解し、縄を解いて、そのまま縄跳びを開始。風切り音を聞きながら、リズム良く跳ねる。

暫くしてから、気まぐれに駆け足飛びや交差飛び、あや跳びへ移行し、最終的には二重跳びを行う。

意外と出来るもので、特に足がかかる事無く、そのまま二重跳びを継続する。

……あれ? これ、いつ辞めればいいんだ?

特に何も考えずに始めたから、辞め時が分からない。

失敗したり、一定時間経ったら辞めればいいのかもしれないが、今の所失敗する様子が無ければ、辞める時間も決めていなかった。

 

「あー」

 

ぴょーんぴょーん。

それにしても、久しぶりだが本当に意外と出来る。さっさと引っかかってしまうものだと思っていたが。

とはいえ結構ギリギリ。三重跳びは流石に――いや、意外といける? 試してみようか。

 

「いち……にの……さーっ!?」

 

足が引っ掛かる。縄の勢い引かれ、そのまま顔から地面に落ちる。

 

「――っ!?」

 

顔を抑えてゴロゴロ転がる。

めっちゃ痛い。流石に顔からだと受け身も取れなかった。

それでも声を上げない様にだけ気を付ける。

ただ。

 

「アッハッハッハ!」

 

馬鹿笑いが聞こえて来た。

額を抑えながら、声の方を見る。

 

「……なんでいる」

 

シオンだった。普段なら全然寝ている筈の時間なのに。

 

「アッハッハッハ! ヒ、ヒー、ヒー」

 

俺の言葉を無視して、馬鹿笑いして、呼吸もままならなくなってるシオン。

それを見ていたら途端にあほらしくなって、俺は縄を縛ると、網戸を開け、邪魔なシオンを跨ぎつつリビングへ戻った。

そのままリビングを出て、靴と縄を、それぞれ元の場所へ仕舞い、リビングへ戻る。

笑い声は変わらず。床で丸くなっているシオンをチラ見。そのままキッチンへ入る。

手洗いうがいをして。ポットに水を入れ、湯を沸かし始める。

 

「シオン、珈琲飲む?」

 

げらげらと笑い声が止まらない。

まあ、俺も見る側だったら、多分暫く笑っていたと思うから、気持ちは分かる。

大人しく笑いが止むのを待つ事に決めて、冷蔵庫を向いた。

それぞれ、冷凍している食パンと卵を二つずつとベーコン1パックを取り出す。

食パンはそのままトースターへ入れて、ダイヤルを捻る。

動き出したのを確認して、コンロへ。フライパンを熱して、軽く油を敷きベーコンを焼いて。

少ししてから卵を投入。そのまま水を入れて、蓋を閉める。

 

「んー……」

 

冷蔵庫を開けて、レタスとミニトマトを取り出す。

レタスはパックのカットされたものだから、必要分をそれぞれ盛り付け、ミニトマトは洗ってこちらもレタスの上に盛り付け。

ドレッシング代わりのオリーブオイルと塩は、後でかければいい。

 

「……良し」

 

後は待つのみ。

 

「……」

「アッハッハッハ!」

 

アイツが笑い終わるのと、どっちが早いだろうか……あ、お湯沸いた。

 

***

 

結論から言うと、笑い終わる方が若干早かった。

 

「あー、お腹痛い」

「あれだけ笑っていればなぁ」

 

腹筋が鍛えられそうだ。

 

「はい、珈琲」

「ありがと」

 

ダイニングテーブルに座るシオンの前へ、珈琲の入ったカップを置く。

そして、リビングへ戻り、出来立ての朝食をお盆に載せて、こちらもダイニングテーブルへ運んだ。

 

「朝飯食べるだろ?」

「うん。笑ったらお腹空いたから」

「……」

 

やっぱ片付けようかなと、そんな考えが脳裏を過ぎるも、大人しくシオンの前に並べる。

トーストとベーコンエッグ、それとサラダ。これに珈琲もあるのだから、充分過ぎる。

 

「トーストに何つける?」

「バターとジャム」

「目玉焼きは?」

「マヨネーズー」

 

一度キッチンへ戻り、シオン指定の調味料を手に戻る。

 

「バターは高いからつけすぎるなよ」

「けちー」

 

それで結構なので、無言でシオンの前に置いた。

俺の分には、事前にバターを薄く塗ってある。ベーコンエッグは、ベーコンの塩気があるので、黒胡椒だけ。

シオンがえいやえいやとバターとジャムを塗りたくったりマヨネーズをかけるのを見守り、終えるのを待ってから。

 

「「いただきます」」

 

手を合わせ、挨拶。お箸を手に取り、各々食べ始める。

 

 

「――そういえば、シオンと朝食食べるのも久し振り……いや、懐かしいまであるな」

 

あまりに珍しい状況に、ふとそんな言葉が漏れ出た。

俺の言葉に、シオンが首を傾げる。

 

「食べた事あったっけ?」

「来たばっかの頃に数回」

「……ああ。あの頃は頑張って早起きして、朝食一緒に取ってたわね。二度手間になると悪いと思っていたし」

「ただ、余りに眠そうだったから、申し訳無くなって、俺から無理しなくていいって言ったんだったか」

「つまりアンタのせいって事」

「生活リズムのせいだろ。ちゃんと寝ろ」

 

全くシオンは。半年前から何も変わっていない。

まあ、人の影響で変わるような玉でも無いとは思うが。

 

「それで私がちゃんとした生活するようになったら、アンタは逆に心配しそうだけどね」

 

そう言って、トマトを頬張るシオン。

実際想像してみたら否定しきれず、俺は負け惜しみの言葉をトーストと共に飲み込む。

 

「それで、今日は何か用事があるのか?」

「なんで?」

「早起きだから」

 

そうでも無ければ起きそうもない。少なくとも前例は思い出せなかった。

 

「特に無いわよ。目が覚めただけ」

「そう?」

 

ならいいが。

 

「アンタはどうなのよ。今日から学校行くわけ?」

「いや、明後日だな」

 

それなら、こんなにのんびり朝食を取っていない。

 

「明日フレアさんが来る筈だから、一応診てもらってからにするつもり」

「倒れた翌日に、普通に登校していたアンタが、変わったわねー」

「皆勤賞取れなくなったからなぁ」

「どれだけ取りたかったのよ」

「いや。転校してばかりだったからさ。皆勤賞って無縁だったんだよ。それが取れるようになったから、折角だし狙ってたんだよな」

「なんかごめん」

 

気まずそうにシオンが視線を逸らす。別に取れなくなったのはシオンのせいではないのだから気にしなくていいのに。

そう思いながら、トーストへ少し黄身をつけて食べる。この食べ方が一番美味しい気がする。

 

「それにしても、その様子なら、体の調子は――」

 

フフッっとシオンから笑いが漏れる。そのまま口元を隠して肩を揺らすシオンに溜息。

 

「笑い過ぎだろ」

「だ、だって……顔から、べしゃーって」

 

ブフッっと先程よりも強めに噴き出すシオン。

言うだけ無駄らしいので、朝食を進めながら、思い出し笑いが治まるのを待つ。

 

「――あー、本当にお腹痛い」

 

笑い終えたのは、サラダを食べ切り、トーストやベーコンエッグも残り数口と言った所だった。

 

「体の調子は良さそうね」

「ああ。傷は塞がっているし、痛みも無いよ」

 

縄跳びで確信した。脇腹のガーゼも剥がして問題無いだろう。

 

「ふーん、異世界の魔法もやるわね」

「そういえば、この前フレアさん来た時に、やけに意気投合していたな」

「異世界の魔法技術を教えてもらっていたのよ」

 

漏れ聞こえて来た内容だけで、それは充分察していた。

 

「そこでなんだけど。アンタは今日一日暇?」

「暇だけど」

「なら、たまには私に付き合ってよ」

「……? 別にいいけど」

 

なんかその言い方だと、普段シオンを差し置いているように聞こえる――いや、基本出かけないから、確かに誘ったりは無いな。

意外と気にしていたんだろうかと思いながら、皿に着いた黄身をトーストで拭って、口の中に放り入れる。

 

「ご馳走様っと」

「おそまつさまー」

「お前が言うな」

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