なんかバグったのか4投稿くらいされてましたがこれが本物です。
戦いの火蓋は思いもよらない形で切られた。"ユミル"と名乗った黒髪とそばかすが特徴の女性が巨人化する姿に何時でも動けるようにと身構えていたピークは数秒間、ユミルの変身した巨人の姿に気を取られてしまった。
その僅かな隙を調査兵団の兵士2人は見逃さなかった。1人はピークが巨人化する前に仕留めようとうなじを狙い、もう1人はそちらに気を取られている間に人質を奪還せんと立体機動装置のアンカーを射出する。
2者の目的は違えど、ピークに脅威が迫ったことに変わりはなく、ピークは選択を迫られた。人質を使って、戦士たちを取り返すという算段も崩壊し、さらには仲間の1人が敵の手に渡っていたことも判明してしまった。この場にいない女型の巨人の継承者もパラディ島の誰かに継承されていたとすれば、ピーク1人では勝ち目はない。
せめて、ジーク戦士長だけでも取り返せればと目を向けた時には左には三白眼の男が、正面にはかつての仲間の力が、そして右からは金髪の男が迫ってきている。自らの巨人が持久戦に優れているとはいえ、装備のない現状では3人同時を相手にするのは不可能だ。だからといって、人質を殺してもこちらの危険性を高めるだけだと、ピークは人質を手放すとわざとリヴァイの伸ばしたアンカーを左肩で受け止める。
「うッ!!」
巨人化に必要なのは明確な目的と身体への傷。目的は生き延びてパラディ島の脅威を伝えること。そして、最後の条件はリヴァイの攻撃によって果たされた。
「チッ、遅かったか」
巨人化の落雷に巻き込まれないようにと見事に方向転換をしたリヴァイはピークが巨人へと姿を変えていくのを見る。従来の巨人には見られなかった四足歩行型の巨人。立体物も遮蔽物もない壁上では、知性巨人の背中を狙うことは難しい。その上、この巨人は完全に初見である。鎧や女型の巨人のような硬化や、超大型巨人のように高温の蒸気を発する力がある可能性を考えると迂闊には近づけない。
「無事か、クリスタ」
「う、うん……」
一方、ホライゾンは巨人化の落雷に当たりはしなかったものの、その衝撃で吹き飛ばされたクリスタを抱きかかえて救出した。意図はしていなかったものの、ピークが背中を向ける位置に陣取り、巨人化したユミルと挟み撃ちの形となった。けれども、非武装のクリスタを守りながら戦うことはホライゾンでもやや難しい。せめて、自分の近くにも味方がいればクリスタを任せられたのだがと歯噛みしていると、その表情を察してかクリスタが声をかけた。
「行ってホライゾン! 私のことはいいから!」
「……それは死んでもいいからということか?」
ユミルとの問答もあって、生きる意思があることは確認できたが、それが苦し紛れに出た偽物の言葉なのか、真実の言葉なのか測りかねているホライゾンが問いかけるとクリスタは声を荒らげた。
「違うよ! 生きたいからだよ! ここであの巨人を逃したら、また人質にされるかもしれない! それにユミルやみんなも殺られるかもしれない! それが嫌だから、だから!」
「よく言った!」
そこまで言わなくても、もう伝わったとホライゾンはクリスタの肩を叩いた。リヴァイとユミル、ホライゾンの出方を窺うピークにホライゾンは目を細めた。
女型の巨人のように変身者が女性であったにも関わらず、女性特有の膨らみなどは見られない。やはり、アニが特別だったのか。同じく女性の巨人化能力の持ち主であるユミルにも、あの特徴は見られない。だが、人間の姿の時からあまりなかったという可能性も考えられるなとホライゾンは観察を行いながら車力の巨人ピークへと向かっていく。
敵は1人。遮蔽物も立体物もない。数の有利は調査兵団にあるが、地理的な有利は車力の巨人の方が高いかもしれない。立体機動装置の利点は高さを活かした言葉通りの立体機動であるが、それを成立させるための条件というのは限られている。しかも、壁上という一本道かつ何も無いフィールドでは真価を発揮することが出来ない上に、敵にアンカーを掴まれてしまえば壁面や地面へと叩きつけられてしまう危険性もある。
しかし、敵に巨人がいるように味方にも巨人がいる。それを利用しないという手はない。
「ユミル!」
「ガアァァァッッ!」
ホライゾンの叫びに呼応するようにユミルがピークへと襲いかかる。顎の巨人の強みである強靭な顎と鋭利な爪を失ったユミルの巨人であるが、機動力というアドバンテージは失われておらず、車力の巨人へ飛びつくと壁の下へと落とそうと、攻撃を開始する。
これまで敵国と戦い、その思考力を買われて巨人となったピークも巨人同士の戦いは想定しておらず、苦戦を強いられた。だが、巨人同士が入り乱れる戦闘に人間が介入する余地がないため、ピークの敵はユミル1人になった……かと思われた。
(えっ)
顎の巨人を地面へと押さえつけて、あとはうなじから本体を引きずり出せばいいという時にピークの視力が奪われる。まだ片目であるが、左右に敵がいるという状況で隻眼になるのはまずい。再生を急ぐも、0.5秒の隙すら見逃さない人類最強の兵士がユミルの身体へとアンカーを打ち付ける。
(コイツら、味方を立体物代わりに!?)
立体物がないのなら無理やり作ればいいとリヴァイは今は味方であろうユミルの身体を利用してピークへと接近すると右足を切り捨てる。四足歩行で自分の身体を支えているため、片足くらいでは体勢を崩すことは無い。だが、顎の巨人への拘束が緩んだ事実は変わらず、本来の顎の巨人よりも丸くなった爪で車力の顔を切り裂く。硬質化を持たない巨人には威力十分で、運悪く残った片目も奪われてしまい、ピークは舌打ちする。
(まずい、このままこの身体で戦うのは不利)
目や手を再生するよりも、1度抜け出して再び巨人化する方が早い。後ろは2人の兵士に取られているが、前方で戦士たちを守護する兵士達はフィールドの不利などもあってこちらに来る気配はない。
(マーレ兵と合流して、一旦撤退するしかない)
残念だが、ジークやライナー達は諦めるしかない。けれども、このままマーレに帰って自分たちに未来はあるのかと不安がよぎる。マーレは大国だ。しかし、それはかつて世界でも悪名を轟かせたエルディア帝国に勝利し、巨人の力を奪って、軍事力として隣国などに猛威を振るってきたからである。その巨人の力が無くなったマーレに、純粋な軍事力で優れる敵国と戦う力が残っているのか。
ピークには既に答えが出ていた。でも、収容所で自分の帰りを待つ者の顔を思い出すと、帰るしかないという選択へと至った。
(なんとしてでも生き残る!)
そのためにはまた人質を取る。あくまで撤退の時間を稼ぐためだが、上手く国へと連れ帰ることが出来ればパラディ島の戦力について知ることが出来る。これで決まりだと2度目の巨人化を果たしたピークは、顎の巨人へと駆け出す。融通の利かなさそうなリヴァイやホライゾンを人質にしても返り討ちに遭う可能性が高い。それならば知性巨人の力を持っているユミルを連れ去って、本国へと持ち帰る方が確実である。マーレなら安全に継承でき、継承にふさわしい人間もいる。所有していた6つのうちの3つが敵に奪われてしまったことを考えると、戦利品は必要である。
この場に居合わせない女型の巨人の継承者も敵に奪われてしまったと仮定するならば、現時点のプランが最適だとピークは長い口から生えた歯をユミルへと突き立てる。
装備のない車力の巨人に巨人を仕留めるような殺傷能力はない。そのため、うなじを丸ごと呑み込もうとしたピークは異変に気付いた。
(うなじに、いない?)
妙に無抵抗だと思えば、巨人となった人間が収納されるうなじにユミルが居ない。どこへ行った、と顔を上げると顎の巨人の本体は外へと引きずり出されており、身体から蒸気を放って顎の巨人の後ろで寝転んでいた。後方で控える兵士たちが引きずり出したのかとピークが首を傾げた時、彼女のうなじも切り裂かれた。
「隙だらけだな!」
いつの間に、と声を出すより先にピークの首を手で押さえつけたホライゾンはうなじへと刃を突き立てる。
「再び巨人化でもしてみろ。君の首を切り飛ばす」
いつの間にと思ったピークは自分の脇腹にアンカーの刺さった痕を見つけると、とある推論を立てた。ピークが2度目の巨人化をしている隙に、壁を走ってユミルのところまで回り、顎の巨人をデコイとするために噛み付く前に顎の巨人の本体を引きずり出し、噛み付いたその時に脇腹にアンカーを刺して背中へと乗ったのではないかと。
「アナタ、本当に人間?」
そう問いかけたピークはもう戦う意思はないと手を挙げる。
「無論だ……と言いたいところだが」
ホライゾンは車力の巨人の背中から見える自分が切り刻んだ仲間だった2人を見つめる。彼らは壁を破り、壁内の平和を脅かした大量殺人の悪魔として壁内人類から悪意を向けられても仕方の無い者たちだ。けれども、彼らが心を持った人間であるということは、ホライゾンが知っている。そんな彼らが人を殺したいと思うのだろうか。
「私は君たちと同じだよ」
ホライゾンはそう言ってからピークを引き上げる。ピークもそれに従って、立ち上がるもしばらく四足歩行が続いていたからか、バランスを崩して地面に倒れそうになるもその前にホライゾンに助けられる。
「アナタ、よく平気で敵と肩組めるね」
だが、助けられたことには感謝しなければと小さく頭を下げるもホライゾンの反応は薄い。いや、薄いというよりは別の方に向かっている気がする。
「なるほど、巨人態で四足歩行だと人間に戻った時にもそれが反映されるのか。すると、鎧や超大型も身体のどこかにその特徴が反映される……?」
先程の哀愁漂う表情から打って変わって、ブツブツと考察を始めるホライゾンは「そうだ」とピークとの戦闘前に立てた仮説を実証するのを忘れていたと思い出す。
「失礼」
「……は?」
「ふむ」
突然の行動に反応の遅れたピークは「やはり本来の大きさの有無は関係なく、女型にしか乳房はないのか」と勝手に結論づけたホライゾンを信じられないという顔で見つめるも、彼は気にする素振りを見せずに「あとでユミルのも確かめてみよう」とハンジ達の待つ場所へと歩き出す。
「いや、アナタ、え? もしかして、変態?」
「私は男色家だが?」
「それはそれで変態だと思うんだけど」
罪悪感なしという顔を浮かべるホライゾンにもういいやとピークは諦めて瞼を閉じた。これから自分達がどうなるのかは分からない。それはいつだって同じことで、生まれてきた時からそうであったピークには諦観が浮かんでいた。
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決着ゥゥゥゥゥ!!! はいこうして、9つのうちの6つを倒しましたよと(さりげなく味方の巨人も倒す人間のクズ)。
これで残すは主人公と壁の向こう側にいる悪魔の血を引いた一族の所有する巨人だけですね! 待ってろよ、直ぐに行ってやるからなぁ……! その前に王政奪還編があるやん! まぁ、ホモくんには関係ないですけどねぇ! にしても、プレイヤーキャラである主人公の活躍がメインのゲームとはいえ、人類最強が目と手を奪っただけって……な、涙が出ますよォ……。
まぁ、兵長ならその気になればピークちゃんもユミルも両方とも文字通りの意味で息の根を止めれたと思うんですけど。
にしても、ユミルも巨人化するなんてたまげたなぁ。クリスタが捕まってめんどくせぇなと思って、適当にポチポチしてたらあら不思議、巨人が増えてるやん! (歓喜)
そんなわけでこれで巨人討伐RTAは終了……なわけないやん! まだあと3体も残ってますねぇ。でも、これ原作通りに行くと全部1体にまとまるんですよね。それまで待つと最速では終わらないので、チャートを組む必要があるんですね!
さて、次回からはクソつまらない王政奪還編ですが、RTA的には時間短縮可能ポイントなので平常心を保っています。はい……。
無ければないでいいんだよなぁ。
では、また次回。またね〜!
ばちこりセクハラしてますよこいつ。いいんですかホモの皆さん。これで王政奪還編手前までの話は終わりましたが、得られた報酬と打って変わって、失ったフラグも多いんですよね。これパラディ島側勝てるんか? となってる方多いと思いますけど、このRTAの目的は9つの巨人の撃破なので悪しからず。ではまた次回。
近況報告
ERN「なぁ、オールF。なんでこの日まで投稿がなかった。どうしてホライゾンの物語は止まっていた?」
F「それは、俺がウマを育成してヒューズでグレネードをばらまいていたからだ」
ERN「なぜウマを育てた? なぜグレネードをばらまいた?」
F「仕事がない時間に……息抜きに……友達に誘われて……ダウンロードしたからだ……」
王政奪還編
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見たい
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別にいいかな
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どっちでもいい