進撃の巨人 RTA Titan Slayer   作:オールF

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進撃最終回記念とウマ娘の二次創作が書きたくなったので……その前に投稿してやろうってことよ!


4期 Red Swan
幕間:タイトルはないようだ


 

 調査兵団の中でもエルヴィン団長や近しい者しか知らない地下牢に9つの巨人と呼ばれる力を持ち、壁の外からやってきた戦士たちが囚われていた。全員、調査兵団に敗れ手足を拘束され自由を奪われ、これからどうなるか分からないという状況であった。

 牢の中にいる戦士の半分以上は、エレン・イェーガーなどの104期生と同期の兵士であり、記録を担当するジャン・キルシュタインとアルミン・アルレルトも104期生だった。今まで共に励まし合い、汗を流し、飯を食い、同じ屋根の下で寝た仲間と思っていた者達が100年の平和を破壊した敵と知った2人の心情は穏やかではない。

 

 

「ふむ、それで巨人化している時の男性器はどうなるのかな? やはり巨人化に合わせて大きくなるのだろうか? どうなんだライナー」

 

 

 だが、この状況を招いた遠因、ホライゾン・モルガンは嬉々として巨人の力を持つ戦士たちに次々と質問を繰り出していた。

 

 

「ジーク。君の巨人は毛深いが、それは君の髭が濃いからか? 衣服の下を確認したが、君の体毛は薄い部類だった。何故だ」

 

 

 これらの質問は敵の戦力を知る上では全く必要ないことであった。しかし、ライナーやジークが「誰かこいつを止めろよ!」と視線で訴えても誰も助けようとしなかった。アルミンとジャンは長年の付き合いと、最近のホライゾンの変態性を察知してからは変に口を挟むのはやめていた。これを諦観という。

 一方で彼らの仲間であるはずのピークやアニ、ベルトルトたちは自分への被害を最小限にしようとひたすらに目を逸らし続けていた。だが、その程度でホライゾンの興味の対象から逃れることは出来ず、口を開こうとしない2人に痺れを切らして今度はベルトルトへと問いかけた。

 

 

「ベルトルト、君は超大型巨人だから人間の時も長身なのか? だが、君のアレは……いや、これはプライバシーの侵害だな。やめておこう」

 

 

「もうほとんど言っているようなものじゃないか!!!」

 

 

「ハハハ、すまない」

 

 

 一切気持ちのこもっていない謝罪をこぼしたホライゾンだが、ベルトルトは割といい反応をくれるなと頷き、茶番はこの辺にしておくかと咳払いをした。

 

 

「では、君たち壁の外から来た者達に問おう。君たちの目的はなんだ?」

 

 

 先程の取っ付きやすい口調から一転して、真剣味を帯びた声でそう言ったホライゾンに戦士たちは身構える。ライナーは上官であるジークを見た。世界の真実に関しての質問に答えるべきは、この場において戦士たちを束ねる戦士長の任を与えられている彼だ。ジークが答えるのならば、足りない部分を自分が補う。逆に黙秘を続けるのならば、ほかの戦士達も口を開くことはない。

 

 

「ふむ、やはり直接的すぎたか……ユミル、君はどうだ?」

 

 

 けれども、ユミルだけはジーク達とは違い戦士に属さない巨人の力を持つ者である。ユミルが世界の真実をどこまで知っているかは分からないが、壁の外から来た以上、ユミルの民──エルディア人の歴史について知っていることはあるかもしれない。それを言われたところで、戦士たちの目的を知られるわけではないにしろ、ホライゾンは勘がいい。

 9つの巨人、ユミルの呪い、始祖の力。これらの言葉だけで戦士の目的が断定される可能性がある。

 

 

「そうだな、私の目的か。言わなかったか? 私は生きたいように生きる。ただそれだけさ」

 

 

「それが彼女を救うことか?」

 

 

「……まぁね。あんなに可愛いのにずっと仮面をつけて生きるってのを放っておくのは気分が悪いからな」

 

 

 ホライゾン達の言う彼女のことがクリスタ・レンズだと分かったのは、ユミルを知る104期生のライナーとベルトルト、アニのみであり、ジークとピークはただ聞いているだけである。

 

 

「君が壁内に来た目的はなんだ?」

 

 

「……それは、言ってもいいが、アンタより先に話したいヤツがいる。その時でも構わないなら、ちゃんと話す」

 

 

「歯切れが悪いな」

 

 

「その時にアンタと私が五体満足な保証はないからな」

 

 

 この世界はクソだからなと鼻で笑うユミルにホライゾンは渋々という様子であったが了承した。彼女の話を聞かれて、敵に有利な情報を与える可能性も考慮すれば、今は聞かなくてもいいだろうと判断したのだ。

 

 

「これでは有益な情報が何も無いまま終わってしまうな……」

 

 

「ねぇ」

 

 

 困ったと顔を顰めるホライゾンに格子越しからピークが声をかけた。

 

 

「アナタ何者なの。いくら腕の立つ兵士で、兵団と協力したからって私たちを全員捕えるなんて出来ないと思うんだけど?」

 

 

「現実に君たちがこうなっているのが答えだと思うが」

 

 

「……お前、先祖にアッカーマンの姓を持つやつがいなかったか?」

 

 

 巨人科学の末に生まれたアッカーマン一族の末裔ということなら、ホライゾンの実力もまだ納得が出来るかもしれないとジークが口を開くと、その名を聞いて104期生の者達にはある1人の少女の顔が思い浮かぶ。

 

 

「いや、知り合いにはいるが、御先祖様にはいないな」

 

 

 ジャンが綺麗な黒髪と評し、新兵ながらも駐屯兵団の先輩兵士からも一目置かれるほどの技量を持つ同期だ。今頃は地上のどこかで想い人を守るために目を光らせているだろうとホライゾンは腕を組んだ。

 

 

「それがどうした? アッカーマン家に何かあるのか?」

 

 

「…………」

 

 

「おやおや、聞きたいことが済んだら2人ともだんまりか」

 

 

 これでは無駄に時間が過ぎていくだけではないかとため息をついたホライゾンは仕方ないと組んでいた腕を解いた。

 

 

「君たちの誰かの身体に聞くとしよう」

 

 

 そう言われた瞬間、ユミル以外の収容者達に鳥肌が立つ。身体に聞くとはつまりは拷問のことである。自分達を瞬く間に無力化した兵士の拷問だ。きっと想像を絶するものに違いないと全員が息を呑む。

 男性陣は爪を剥がし、歯を抜き、果てには笑いながら身体を切り刻み、先程のような趣味の悪い質問を投げかけてくるホライゾンの姿を想像した。

 アニとピークはマーレ人がエルディア人の女性に対して行っている性的暴行か、あるいは自分を巨人化させての実験を想像した。

 仲間がそんな目に遭うのは耐えられないと、ライナーが口を開いた。

 

 

「お、オイオイ、ホライゾンもっと平和的に行こうぜ。答えやすい質問なら俺たちにも答えられるからよ」

 

 

「例えば?」

 

 

「そうだな、好きな異性のタイプとか、好きな筋肉とかな……」

 

 

「それはだいたい知っている。君はクリスタでベルトルトはアニ。アニは私だろう。ユミルもクリスタだな。あとの二人は知らん」

 

 

 つらつらと暴露された事実にライナーは冷や汗を垂らしながら、名前の出た2人の戦士の牢を見た。1人は想い人の方を見ながら「ちが、ちがっ、あ、でも、違わない。け、けど、ここじゃ、今ここじゃないだろう!?」と身体に繋がった鎖がジャラジャラと音を立てるほどに暴れ回っている。

 

 

「私がアンタを? 冗談、言わないで」

 

 

 1人は顔を逸らしながら否定をしていた。こちらも手に鎖があり顔が覆えないのがもどかしいのかジャラジャラと音を立てている。そして、ホライゾンから発言を引き出したライナーの方をキッと睨みつけると「いつか絶対殺す」と殺意を解き放っていた。

 

 

「おいおいライナー、仲間の和を乱すようなことはやめてくれよ」

 

 

 とは言いつつも、ジークはこのまま話が別方向に持っていかれる事を望んでいた。話が平行線のままと分かれば、あの変態もここから立ち去るのは時間の問題。しかし、壁の中に自分達がいると王政が知れば、壁内も多少は騒がしくなるだろう。壁の中の王が動いて、記憶の改竄が成されれば自分がここに来た意味がなくなってしまう。

 話すべきか、このまま黙るべきか。自分の計画のためには、ここで変態の玩具に成り果てる訳にはいかないと思考を巡らせるジークにホライゾンは目をつけた。

 

 

「……今日はここまでにしよう」

 

 

 男の一言でアルミンとジャンは地下牢から地上へと出る階段を登っていき、ホライゾンのみがこの場に残った。全員からまだいるのかという目を向けられたホライゾンはジークと目を合わせた。

 

 

「ジーク、君は言っていたな。私に協力してくれるのかと」

 

 

「……言ったかなぁそんなこと」

 

 

 とぼけるジークにホライゾンは笑みを崩さずに牢屋の鍵を取り出した。

 

 

「内容次第だがいいだろう」

 

 

「え?」

 

 

 まさかの返答にジークが素っ頓狂な声を上げ、ここでは言い難いこともあるだろうとその扉を開け放った。

 




自分は単行本派なので、5月発売の最終巻を買ってからラストまでぱぱっと書こうかなと思います。嘘です! これ完結するのはエレンと戦鎚倒すだけだから、割とすぐに終わるだろって思ってます。全員倒した後は書かないのかって? 書かないよ(断言)

追記 感想返ししないです(おそらく)

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