進撃の巨人 RTA Titan Slayer   作:オールF

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結果的にエタりかけた経緯と原作の最終回のネタバレはあとがきにて


幕間:消えた英雄

 新たなる壁内の王にヒストリア・レイスが着き、各兵団のトップと今回の革命の功労者達との謁見が迫っているという中で、1人の兵士が壁外から来た巨人化の力を持つ戦士と共に姿を消した。このニュースは瞬く間に兵団関係者へと伝わった。初めに気づいたのは、姿を消した兵士が指揮していた班の副班長ジャンだった。

 

 

「おい、コニー、ホライゾンのやつ知らないか?」

 

 

「いや、見てないけど」

 

 

 ジャンは同室のホライゾンが夜になっても帰ってこないことを不審に思い、同班に所属するコニーへと赴いて尋ねるが首を振る。同期でここまで彼と共に戦ってきたエレンやアルミンにも訊いてみたが反応は芳しくない。しかし、アルミンが思い出したように呟いた。

 

 

「そういえば、地下室は?」

 

 

 アルミンの言う地下室とは壁外からエレンたちの住む壁内を混乱へと誘った戦士たちが捕らえた地下牢のことで、そこへと行く鍵を持っているのは調査兵団団長のエルヴィンと分隊長のハンジ、そして彼らを捕縛するのに最も貢献したと言えるホライゾンのみである。

 

 

「あ……、確かに最近色々あって行けてなかったからな」

 

 

 彼らを捕らえてから王政打破やら、ヒストリアを王にする話もあって、ろくに行っていなかったこともあり、言われてみればと納得したジャンは翌日の朝にハンジを伴って地下牢へと向かった。

 

 

「まったくホライゾンも勝手だなぁ。こんな朝まで彼らと一緒にいるだなんて」

 

 

 鍵を持つハンジはジャンからホライゾンが戻ってきていないという話を聞いて、戦士たちから壁の外の話や巨人の謎について見聞を広めているのだろうと予測を立てると、ジャンに話しながら階段を降りていく。

 入団してすぐに頭角を現し、瞬く間に調査兵団にその名を轟かせた英雄の勝手な行動は今に始まったことではないにしろ、自分を放ってそんな面白そうな話をしているなんてけしからんとハンジは今日は怒る気で行くよと地下牢へと足を踏み入れた。

 

 

「ホライゾンー! ホライゾンはいるか!」

 

 

 ハンジがそう声を上げても返事はない。ジャンはホライゾンが彼らの気持ちに寄り添いたいという建前で用意した盗聴用の小部屋を覗くが、そこにもホライゾンの姿はない。牢の前にも敷かれた布団がないことから、ホライゾンはこの場にいないと判断した2人だったが、すすり泣くベルトルトの声に首を傾げた。

 

 

「んだよ、ベルトルト。朝から気持ちわりぃな」

 

 

「……ッ! ジ、ジャン! よ、よく来てくれた!!」

 

 

「は?」

 

 

 悪態ついてジャンがそう言いながらベルトルトの檻の前に立つ。すると、突如として起き上がり手足に繋がれた金具をジャラジャラと鳴らしながら、ジャンが来たことを歓迎するようにベルトルトは笑顔を浮かべていた。だが、よく見れば先程まで泣いていたのが明瞭に分かるくらいに目は腫れており、顔色もあまりよくはない。

 

 

「聞いてくれジャン! ホライゾンがアニとここを抜け出した! あいつは! アニを連れて、僕らの故郷に行く気なんだ!」

 

 

「……は?」

 

 

 何言ってんだこいつ。愛しのアニがホライゾンに取られて本格的におかしくなったのかとジャンは嘲笑いたくなった。

 

 

「本当だ……アニが、いない……」

 

 

 直後にハンジが牢屋の一部屋がもぬけの殻になっていることに気づき、彼の言葉に真実味が湧き上がるまでは。

 

 

「え? ……は?」

 

 

 どうしてだ? 理由は? ホライゾンはなんのためにアニを連れて抜け出した? しかも、壁の外にあるベルトルト達の故郷に行くだと? ジャンの脳内を支配した疑問は彼の行動を止めてしまう。代わりにハンジが口を開いた。

 

 

「どういうことか、説明してもらってもいいかな?」

 

 

「分からないよ! あ、あいつが急に来て、それで、アニを牢屋から出して、それで!」

 

 

 想い人を奪われたという精神的動揺からか、ベルトルトの説明は要領を得ない。そのため、周囲にも視線でどういうことかと尋ねると初めに答えたのは戦士長であるジークであった。

 

 

「俺たちに訊かれても本当に分からないんだよね。あの変態が何のためにマーレに行くのかも、アニちゃんが奴に付いていくのかも」

 

 

「……まぁ、アニちゃんの言う通り誰も始祖の姿は知らないから、彼を連れて行っても帰れるとは思うけど」

 

 

「問題はマーレに着いてからだよね」

 

 

 血液検査じゃ巨人化出来る人種かはわかっても、巨人化できるかは分からないので船に乗るまでは問題ないだろう。それにマーレに協力的、あるいは社交的な態度を取れば巨人化できないように手足を削がれることもない。無駄に刺激して始祖の能力を使われでもしたら敵わないとマーレ軍は判断するだろう。

 なので、着いてから拘束することになる。だが、1つでも傷と明確な意思さえあれば巨人化できるため、マーレ軍は慎重に話を進めるはずだ。ホライゾンが友好的かつ協力的な姿勢を示し続ければ、マーレ軍の新たな戦士として迎え入れる可能性もある。それも、彼が始祖の継承者と思われているうちだけであるが。

 マガト隊長なら即座に見破って、彼を拘束するだろうが、多数で襲いかかっても簡単に捕まえられるような男では無いため、話していたジークとピークに一抹の不安がよぎる。

 

 

「ちょっと待って、マーレ……って、なに?」

 

 

「……戦士長」

 

 

 マーレという聞き慣れない単語についてハンジが問いかけると、ピークは初めにその言葉を発したジークへと視線を向けた。

 

 

「いいんじゃない? 」

 

 

 ライナーやベルトルトから聞いた限りでは、今のパラディ島の科学力、技術力では到底マーレへと辿り着くことは出来ない。ホライゾンとアニがジークとピークが乗ってきた船を使って、マーレへと向かったと仮定すると、パラディ島勢力がマーレへと行くことは出来ない。ならば、話しても問題ないだろうとジークがマーレが自分たちの故郷であることを口にする。

 

 

「……じゃあ、ついでに聞いていいかな。君たちがこの壁内へとやってきた理由は何?」

 

 

「へぇ、あいつほんとうに誰にも話してないんだ」

 

 

「あいつって……あぁ、ホライゾンか」

 

 

 恐らくは旧王政と同じく、エレンなのだろうと思いながらもハンジはそう尋ねたが、予想外の収穫があった。

 

 

「ホライゾンは君たちの目的を知っていたの?」

 

 

「あぁ、俺1人が拷問されてな……」

 

 

 

 その時のことを思い出して項垂れるジークに、ピークが信じられないと目を見開いた。他の戦士たちも自分達のリーダー格が変態からの仕打ちとはいえ、拷問に屈するとは思えずに驚愕の表情を浮かべる。

 

 

「拷問って言っても、確認みたいなものだったよ」

 

 

「確認?」

 

 

「私の推察は正しいか。正しければ頷いて、違っていれば首を振れってな。何もしなかったら俺の……あああああああああああ!!!!!」

 

 

 ジークが股間を抑えながら伏すのを見て、男性たちはホライゾンに何をされたのか容易に想像がついた。巨人の身体を徹底理解しようという名目もあったのだろうが、同じ男としては同情せざるを得なかった。

 

 

「えっ? 何をされたの?」

 

 

「ハンジさん……その、それは聞かないでやってください」

 

 

 しかし、股間を蹴られたり、踏まれたり、揉みくちゃにされたり、ちぎられたり、噛み砕かれそうになったりという経験のないハンジにはジークの痛みや辛さなど理解出来るはずもなくきょとんとした表情を浮かべている。ジャンはそれを諌めると、ため息をつきながらライナーの檻の格子を掴んだ。

 

 

「おい、まだ俺たちに隠してることがあるなら話せよ」

 

 

「……無理だ。俺には、話せない」

 

 

「なんでだよ。お前のとこのリーダーが話したんだぜ? お前もここに来た理由くらいはいえるだろ」

 

 

「言えない」

 

 

「どういう目的でウォールマリアを破壊した」

 

 

「言えない」

 

 

「どうして俺たちと共に訓練兵団に入った」

 

 

「言えない」

 

 

「なんで調査兵団に入った」

 

 

「言えない」

 

 

「女型に殺されそうになった時、俺やアルミンを助けたのは何故だ」

 

 

「……」

 

 

「それも……言えないのかよ」

 

 

 なんのための口だよとジャンは背後を振り向いた。先程まで狂乱していたベルトルトもやや落ち着いた様子だが、ライナーよりも精神的に不安定な彼に何を聞いても無駄だろうとジャンは再びため息をついた。

 

 

「クソ、また分からないことだらけかよ……」

 

 

「あぁ、全くだねジャン」

 

 

 辛気臭い顔をするジャンに対して、ハンジの顔は暗くなくむしろワクワクしているように感じられ、ジャンはその事に懐疑的な目を向けた。

 

 

「あの、ハンジさん……?」

 

 

「いや〜壁内のゴタゴタが片付いたら、外のことを知りたいと思っていたところなんだ」

 

 

 ここで話すのもなんだしと、ハンジはジャンに目配せすると牢屋から出ようとする。だがその背中に悲痛な叫びが届いた。

 

 

「待ってくれジャン! 俺が、俺たちが、壁を破って、お前らと訓練兵になって、調査兵団になったのは……! 俺たちのためなんだ! 俺が、故郷に帰るために! 俺たちがやったことなんだ!!」

 

 

「ライナー……」

 

 

 拘束具の痛みをはるかに超える苦痛が、ライナーを蹂躙し、彼の手足から血が滴る。友の叫びを黙って聞くしかできないベルトルトは手を伸ばそうとするが、その手は金具によって抑えられてしまう。

 

 

「それで、俺が、お前とアルミンを救けたのは……俺のためだ……俺が、マルセルで、みんなを、みんなを……ッ!!!」

 

 

「……何言ってるかわからねぇよ。どいつも、こいつも」

 

 

 ジャンはそう言うと、ハンジと共に戸を閉めて彼らの前から消えてしまう。残ったのは悲痛な表情を浮かべる3人の戦士と、何の痛みも加えられていないためにその3人のさけびを聞くしかできないピークだけであった。




ジーク「あぁああああああああああああぁぁぁ!!!!!」
ベルトル「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
ライナー「アアアアアアアアアアアアアアッッッ!!!!!」

ピーク(うるさ……)


エタりかけた経緯。
自分は書く時に1000文字くらいばーって書いて、そこに肉付けしてく感じなんですけど、一気にやると疲れるので適度に休憩しながらやるために予約投稿の月や年をいじるんですけど(そうしたら予約投稿として保存されるからね) そのせいで来年の5月20日に投稿することになってました。で、忙しくて全然開いてなかったんですけど、5月の末の時点で感想が来てないことに気付くべきでしたね(あほくさ)

ということで、前話と終わらせるためだけに書いた最終話は予約投稿ミスったせいで、結構書き足したり、修正したりしました。
戦鎚倒してからはどうまとめようか悩んでいるので一旦保留です。最終回に至るための幕間書くためにまたエタります(グッバイ宣言) 年内には完結させるから……!!


原作のネタバレはエレンがユミル(奴隷)を生姜焼き定食にして終了。

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