進撃の巨人 RTA Titan Slayer   作:オールF

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じゃけん、解散式の夜行きましょうね〜
今回は実況要素はないです。本編とはあんまり関係ないゾ(多分)


幕間:解散式の夜

 #キース・シャーディス

 

 今回の訓練兵、104期生達は優秀な人材が揃っている。コニー・スプリンガーやサシャ・ブラウスは知能こそ他の訓練兵に劣るものの身体能力は目を見張るものがある。スプリンガーは小さな体躯を活かした機動力、ブラウスは優れた視力・聴力でその場その場で適応能力の高さが窺える。

 ライナー・ブラウンは104期生内で随一の体格とリーダーシップの持ち主で同期の大半は彼に頼る姿勢が見られる。ベルトルト・フーバーは現時点でも優れた成績を残しているが、気質故なのかまだまだ潜在能力を隠しているようにも見える。アニ・レオンハートは格闘術に優れており、また冷静沈着な性格で予想外の事態に動揺することなく訓練をこなしている。

 アルミン・アルレルトは身体能力に乏しいものの、座学において現調査兵団団長に並ぶであろう知略を持っていることを匂わせる成績を収めている。ミカサ・アッカーマンは全ての科目を完璧にこなし、近年稀に見る逸材という評価は妥当。彼女こそ人類を救う選ばれし者と呼ばれる存在なのだろう。

 今年は私の知人の息子、エレン・イェーガーもいる。特筆すべき特技はないが情熱は誰よりも高く、目的意識もハッキリしている。それ故に危なっかしいものの、最近は周りを見て技術を盗み、努力してその技術を自分のものにするという一番の成長性を見せた。

 また、その彼に人知れず技術提供しているのがジャン・キルシュタインとホライゾン・モルガンだ。2人は立体機動訓練ではトップクラス。また、モルガンは座学でもアルレルトに勝るとも劣らない成績を残している。格闘訓練でもレオンハートと競い合っている場面が多く見られ、兵士の素質としては十分である。恐らく、雪山訓練に参加していればフーバーやブラウンと同等かそれ以上の成績で卒業出来たのではないかと教官内では噂になっていた。

 しかし、理由は不明だが彼は参加しなかった。訓練兵団としては自由参加を謳っているため、無理に参加を強制するものでは無い。それにこの訓練の目的は悪天候や足場や視界の悪い中でいつもの能力を発揮できるか、そして最後まで諦めない精神力を確認するためのものだ。参加しなかったからと言って成績が落ちるわけではない。現にレオンハートも参加しなかったが最終成績では2人とも上位10名の中でも上の位置に属している。

 明日にはそれぞれが希望する兵団へと向かうのだが、果たして今年の兵士達はどこへ行くのやら。キルシュタインやスプリンガー、ブラウスは確か憲兵団志望だったか。あとのメンバーは聞いたことは無いが、グリシャの息子は調査兵団に行くのだろう。アッカーマンは彼に心を寄せているようだから、彼について行く可能性の方が高い。彼らの加入が調査兵団に良き風を起こしてくれるといいのだがな。

 

 

 

 #ジャン・キルシュタイン

 

 くっそ、俺がエレンより下だと……! ふざけんなよ! 俺の方が立体機動の実力は上のはずだ。座学も上の3人やアルミンには届かなくてもあいつより上の自信はあった。格闘術は、俺が真面目に取り組み始めた時期が遅かったから、これは仕方ねぇ。けど、俺に何が足りなかった。こればっかりはわかんねぇ。巨人に対する憎しみや怒りか? ンなもん、見た事もねぇし、俺の家族は巨人に誰も殺されてねぇ。それなのに怒りや憎悪を抱けって言われても無理な話だ。

 解散式が終わって、食堂で晩飯を食ってるとエレンがトーマスに調査兵団に入ることを話していた。そこであいつが言ったことは真実だと思うし、正しいと思う。でも、誰もがお前みたいに割り切って心臓を捧げられるわけじゃねぇんだ。

 俺は当初の予定通り憲兵団だ。マルコが上位から落ちたのは可哀想という他ねぇ。けど、なにか妙だ。あいつはほとんど俺と一緒にいたし、座学は俺より悪くなかったはずだ。格闘訓練も俺よりも真面目に取り組んでいた。なのに、どうして身体能力だけのバカや芋女より下なんだ? 何より、あのクリスタが10位ってのが納得いかねぇ。

 あいつが何かで目立つような成績を取っていただろうか。ミーナやトーマスの方が成績では上だったはずだ。雪山訓練でダズを救けたという話は聞いたが、それだけでそんなに加点されるもんか?

 心から湧き上がる疑問を大して美味くもないスープと共に飲み下す。まぁ、いい。俺は明日から憲兵団だ。こんな質素な飯とはもうおサラバだ。マルコには悪いが、俺は安全な内地で優雅に暮らさせてもらうぜ。

 ……そういや、あいつの希望兵団聞いてなかったなと俺は芋女と何か話している爽やかイケメン野郎を見た。立体機動訓練で俺がガスを上手く吹かすコツや姿勢制御の話をしてたら必ず食いついてきた。あいつなら俺に訊かなくても、それなりの腕は持ってたはずなんだがな。

 でも、あんなに褒められて教えを請われちまったら、俺も教えざるを得ない。つい、舞い上がって色々語ったせいかあいつは俺の技術をモノにしやがった。でも、そんなアイツを憎めないのは爽やかなヤローだからか、それともこの2年間で友情ってやつを感じちまってるからなのか。

 

 

「……明日の昼にでもきいてみるか」

 

 

 あいつが憲兵志望っていう風には見えねぇが、バカ2人の相手を俺1人でするのは荷が重すぎる。断言出来る。いつ胃に穴が空いてもおかしくはねぇ。だから、頭も良くて性格もいい上に信頼出来る実力を持ってるホライゾンが居てくれりゃ心強いってもんだ。

 

 

 

 #アニ・レオンハート

 

 

 解散式が終わって、食堂で夕食を食べて私たちは食堂の裏に集まっていた。ここなら人が来ないし、教官室や宿舎の窓からは死角になっている。秘密の話や行為はここでしてくださいっていう意図があって作ってそうだなと目の前で私を見下ろして喋るゴリラが言っていたのを思い出す。

 

 

「じゃあ、手筈通りベルトルトは壁の扉を頼む。その後、俺が隙を見て内門を壊す」

 

 

「わかったよライナー」

 

 

 今回、私が巨人を引き連れる必要がないと聞いてほとんどの話は聞き流していた。また、たくさんの血が流れる。この5年間で分かったのは島の悪魔は悪魔ではなく、私たちと同じ人間ということ。壁の王に近づくために訓練兵団になんて入ったけど、おかげでより心の奥底にしまい込んでいた罪の意識というものが暴れ出す。

 こんなことをこの中の誰よりも友情ごっこに勤しんでいたゴリラに言えば、また絞め落とされるのだろうかと思いながら「じゃあ、私は何もしなくていいんだね」と声を出す。

 

 

「あぁ。ベルトルトが壁を壊した後に王政の動きも見ないといけねぇからな」

 

 

「そうだね」

 

 

 そもそも私たちがこんなことをしているのはなんでだったか。始祖の奪還。それが私たちの任務だが、壁が壊されても壁の王は動くことなく、私たちが大人しくしてるからなのか、この5年間で何の音沙汰もなかった。ましてや、王は抱えきれなくなったウォールマリアの人々を土地奪還のためという名目で巨人に満ちたマリアの中へと放り出して殺した。おかげでほかの人類はこうして生き延びることが出来たってのは皮肉な話だ。

 

 

「確認するぞ。ベルトルトの明日の任務は午後からだ。つまり、午前中なら人目もなく、壁の外へ向かえる」

 

 

「うん。壁上固定砲整備班に見つからないように壁の外へ出たら巨人化して壁を壊す。壊した後は、宿舎に戻って現場班と合流……でいいんだよね」

 

 

 ベルトルトの問いかけにライナーが頷く。

 

 

「王……始祖に動きがなければ内門も壊してウォールローゼをぶっ壊す」

 

 

「ローゼの次はシーナか。でも、どうするんだい。シーナを壊しても始祖が出てこなければ」

 

 

 ふと、問いかけた質問にライナーは顔を強ばらせる。その時はその時考えると背を向けたライナーはこれ以上は怪しまれると先に宿舎へと戻っていった。

 残ったのはベルトルトと私だけ、どっちから先に帰るかとベルトルトと目を合わせると何故か逸らされた。やはり、私の目が怖いのだろうか。1年前、私にやけに絡んでくる男との会話を思い出す。

 

 

『君の目が怖い? そんなことは無い。芯の通ったいい目をしているさ』

 

 

 宿舎で同室の訓練兵に目の話をされて、ふと切り出したのがきっかけだったか。アイツに「私の目は怖いらしいんだけど、アンタはどう思うの?」と聞いたらさっきの答えが返ってきた。誰に対しても分け隔てなく接してるし、佇まいや口調に気品が現れてるからおそらくはそういう感情を持ち合わせてないのだろうと思う。

 

 

「あの、アニ。1つ訊いていいかな」

 

 

「……何?」

 

 

 そう考えていると目を逸らされたままベルトルトが尋ねてくる。

 

 

「ホライゾンと、その、どうなの?」

 

 

「どう、って?」

 

 

「そ、そのいつも格闘訓練で一緒だったからさ。な、仲良いのかなって」

 

 

「……前にライナーに訊かれた時も言ったけど、いつも絡んでくるのはアイツで、私は特にどうも思ってないよ」

 

 

 俺たちの正体に気付いたんじゃないかと、体格の割に臆病なゴリラがそう聞いてきたが、アイツにそんな気配はなかった。多分、真面目な性格だから教官の目を盗んでサボっている私を見兼ねて絡んできたのだろう。その時に格闘術に私が優れてると知って、毎回組むことになったんだけど。調子に乗って、本気出さなきゃ良かったと今でも後悔してる。……同時に、アイツのおかげで腕が鈍らずに済んだってのがあって憎みきれないけど。

 

 

「そ、そうだよね! アイツも悪魔の末裔だもんね!」

 

 

 ベルトルトがそう嬉しそうに言うのを見て、私は訓練兵に入ってからのコイツとゴリラの行動を思い返す。すると、言葉は自然に出ていた。

 

 

「よく言うよ。その悪魔と仲良くしてたくせにさ」

 

 

「えっ……」

 

 

「先に戻る」

 

 

 踵を返して、私は人の流れが少なくなった往路を歩く。確かにアイツも私が何度か投げ飛ばした死に急ぎ野郎も、戦士の私たちよりも成績が上だった化け物も悪魔の血が流れた悪魔なのだろう。けど、それは私たちも一緒だ。そして、これから何も知らない彼らを守るための壁を壊して、殺す私たちは悪魔でないのなら一体なんなのか。

 5年前に割り切ったはずの感情と再び対峙しながら、私は自室へと足を踏み入れた。




何も知らない子供だったもんな。仕方なかったよな。島の人間はみんな殺してもいい悪魔って教えられてたもんな。

ヒロイン(迫真)

  • ライナー
  • ジャン
  • ミカサ
  • サシャ
  • ピーク
  • アニ
  • ベルトルト
  • ザックレー(やけくそ)
  • アルミン
  • エレン
  • エルヴィン
  • ハンジ
  • ユミル(そばかす)
  • ユミル(奴隷)
  • クリスタ
  • マルロ
  • ヒッチ
  • ガリアードさん(くるみ割り人形)
  • キース(やけくそ)
  • ペトラ

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