あの不毛な会議が終わったあと、私はヴィリー氏を見送り、その足で収容区を訪れた。無論、島の王に今回の話を伝えるためである。元帥からも文が届けられるだろうが、早めに耳に入れておいて損は無い。レオンハート曰く、パラディ島勢力がマーレまでやってくるには少なくとも半年はかかるのではないかとのことだった。なんでも、パラディ島は不戦の契りによって作られた楽園を放棄し、壁内において人々が自由を勝ち取ったと言うのだ。抑圧されたことで止まっていた技術力は爆発し、この海を越えてくる技術があればすぐにでも島の王を取り返しに来るかもしれないと彼女は言っていた。もしそうなれば、巨人を扱うことには長けていても、巨人との戦いを想定していなかったマーレではたった半年で敵の手に落ちた9つの巨人には勝てない。また、生身で戦鎚の巨人を倒したホライゾンを超える兵士が少なくとも2人はいるのだという。そんな兵士たちが対人戦に特化した訓練を重ねればこの大国マーレも傾きかねない。銃火器の技術や規模では遅れを取らないだろうが、空を自由に駆けて接近してくる敵への対応策など軍部は用意していないだろう。
歩きながらため息が出そうになるのを抑え込みながら、島の王が住んでいるレオンハートの家にやってきた。ノックをすると、すぐに玄関の扉が開いた。
「こ、これはこれはマガトさん」
出てきたのはレオンハートの父親で、私は娘か島の王はいるかと尋ねた。すると、彼はやや嫌そうな顔で答えた。
「アニと彼なら戦士候補生の子供と広場に行くと」
「広場?」
何故彼らがそんなところにと首を傾げたが、行けばわかるかと、今度は広場へと足を向けた。すると、そこに広がっていた光景に声をかけようとした私は絶句した。
「この、卑怯だぞ! 大人のくせに!」
「そうですよ! 手加減してくださいよ!」
「そうだそうだ!」
文句を言うガビに同調して声を上げるファルコとウドに、無言で頷くゾフィアの視線の先にいるのは、
「兵士の数が勝敗を分かつ絶対条件ではないさ」
爽やかな笑みを浮かべながら戦士候補生の子供たちを一方的に返り討ちにしたのであろう島の王と、それを侮蔑の目で見るレオンハートの姿があった。
「いいじゃん、アレの使い方くらい教えてくれたって!」
「立体機動は生半可な修練では身につかないのだ。人呼んでホライゾンスペシャル!」
「そうなの?」
「……まぁ」
どうやら先日の戦鎚の巨人との戦いでホライゾンが使っていた立体機動装置と呼ばれる兵器の使い方を教わるために彼らを連れ出したらしい。しかし、その結果は見ての通り教えて貰えず、掴みかかったかなにかして尻もちをつかされたというところだろうか。
ゾフィアに問いかけられたレオンハートはやや遅れて頷いたところで、自分が来た目的を思い出して、私は口を開いた。
「お前たち、何をやっている」
私の一声に1人を除いて気をつけの姿勢をとる。
「ちょっと、アンタも隊長に挨拶しなよ!」
「断固辞退する。私は彼の部下ではない」
その例外にガビがキツく当たるも彼は変わらずだ。私が良いと言えばガビは何も言うことなく、不服そうな顔ではあるが口を噤んだ。
「あなたは滅多にここに来ないと聞いたが? プロフェッサー」
「なんだその呼び方は」
まぁいいと1度咳払いをした私は「用があるから来たのだ」と、レオンハートに目配せして候補生達にここから暫し離れるように伝える。
「みんな、隊長はこの大人気ない王様と話があるらしいから行くよ」
「えー! ……話終わったらまた聞くから!」
「ガビ、もういいだろ! あの、すみません」
レオンハートに引っ張られて去っていくガビの代わりに、ファルコがホライゾンへと頭を下げる。ゾフィアとウドも彼らに続いて去っていくのを見届けてから、広場にあるベンチに座らないかと彼に提案した。それに応じた彼と共に腰掛けると、先に島の王から口を開いた。
「プロフェッサーはエルディア人を嫌ってはいないのだな」
「……なぜそう思う?」
「いや、貴方とタイバー公くらいのものだ。マーレ人で私とこうして対等に話そうとするのは」
「種族は違えど我々は同じ人間だ。お前たちは脊髄液を打ち込まなければ我々と変わらないだろう。それを恐れ、嫌っていては真っ当な戦士には育てられん」
私の言葉に島の王はなるほどと頷くと今度はプロフェッサーの話を聞こうと横目で私を見た。だからなんなんだ。私は教官や隊長と呼ばれてもプロフェッサーと呼ばれる覚えはないぞ。
「……軍での決定を言いに来た。後ほど、軍から書状が届くだろうが、早めに耳に入れても損は無いだろう」
そう前置きしてから、私はマーレ軍の決定を伝えた。すると、彼は暫し肩を震わせた。それはそうだ。唐突に宣戦布告もなく、襲って来たと思えば、戦力と地下資源を寄越せと言ってきたのだ。怒らない道理がない。しかし、私が思っていた反応と、実際の彼の反応はかなり異なっていた。彼はそのまま怒号をあげるかと思いきや、大きく口を開いて笑ったのだ。
「ははははははは! こいつは傑作だ! 勝手に戦争を仕掛けた挙句、数百人にも満たない兵士たちに敗北した戦士を返せと言うばかりか、島の地下資源も寄越せと! ふははははは! よほど、マーレは余裕が無いと見える」
それからもひとしきり笑ったホライゾンはその顔に笑みを残しつつも、私へと問いかけた。
「それで? 我々がそれを受諾するメリットはどこにある?」
「以後マーレがパラディ島の盾となり矛となる……ではやはり不服か」
「当然だろう。既にかかった火の粉は払った。その火種を消さずに残しているだけでも感謝して欲しいものだがな」
ホライゾンの言う通り、我々マーレがパラディ島に行った行為は、やられた方からしたら許せるものでは無い。特に最初の壁を破壊した超大型巨人と鎧の巨人は。
「私は感謝している。悪魔の民族の血が入ってるとはいえ、私の大切な教え子たちだ」
マルセルのことに関しては残念に思うが、不慮の事故というのは起こりうるものだ。今更悔やんでも仕方がない。そのうちの3人が生きているということに心を撫で下ろすべきなのだ。
「その反応からして軍の出した条約では納得がいかないようだな」
「無論だ」
「では、島の王よ。どんな条件なら納得する」
「そうだな……」
ホライゾンは顎に手を添え、少し経って腕を組み、足を組み、唸りながら答えを捻り出す。
「9つの巨人と私が共に暮らす家を作るというのはどうだろうか?」
「……は?」
「作る場所は……故郷のパラディ島の方が喜ばしいが、他の国への牽制になるのなら、この前戦鎚と戦ったあそこでも構わない」
「ちょっと待ってくれ。何を言っているんだ貴様は」
「私は私の納得する条件を言っているだけだが??」
なんだその顔は。何故、私が何を言っているのか分からないという顔をされなければならんのだ。
「貴様ではなくパラディ島の話だ。お前たちは7つの巨人を送り込みながらも返り討ちにあったマーレに何を望む」
死ねと言われたら、はてさてどうするべきか。始祖の巨人が王家の手になくとも、何かしらの方法で地ならしが行使されてしまったら我々どころか他の国もおしまいだ。パラディ島以外の国が滅びるという最悪の結末は避けなければならない。
「単純に敵対関係の解消。地下資源が欲しいのなら、マーレも何か差し出せばいい。等価交換というやつだ」
「……なるほど、貿易か」
「ぼうえき?」
「貴様が言った国同士で行う等価交換をそう呼ぶのだ」
頭のおかしい言動が目立つ男ではあるが、この男は理解が早い。だから、私の端的な説明でも意味は伝わっただろう。敵対関係の解消に関しては、どこまでやるかによるが、貿易に関しては提案の仕方次第でなんとかなるだろう。戦力を1箇所に固めるのは良くないが、ヴィリー氏とこの男が言うようにマーレへと7人の戦士たちを返してもらえるのならば軍も首を縦に振る可能性はある。
「分かった」
私はそう言うと立ち上がって、収容区の出口へとむかって歩き出す。ちらりと後ろを見ればホライゾンは動く気は無いのか、そのままベンチの上に寝そべると空を見ていた。それにつられて私も空を見た。
「……いい天気だな。今日は」
雲ひとつない青空を見ながら、私はそう呟くと止めていた足を再び動かし、収容区の外へと出た。
ガビ「あれってホライゾンスペシャルって言うの?」
アニ「違う」
ガビ「えぇー? カッコイイと思ったのに……」
アニ「は?」
立体機動装置は適性試験から始まって、3年かけて鍛錬を積むからね。仕方ないね。
アニとの恋愛→アニの寿命を考えろ
ピークとの恋愛→ピークはカップリング作りに夢中のようだ
アニどこで寝てるの?→父親をベッドから蹴り落として父親ので寝てる。なお、ホモより早く寝てベッドを取り戻そうとしたが、ベッドの匂いが侵食されてて寝れなかった模様
アニパパは娘がセクハラされたこと知ってるの?→既に娘のベッド盗られて、それに娘が文句をあまり言わない時点でお察し
ラーラさんからのホモくんの印象→これが魔王ですか……(ドン引き)
妹がセクハラを受けたのを知った兄→わ、和平のためなら……(目線逸らし)
過程書かずにED書いていいすか
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いいよ
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ダメに決まっているだろう!!
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任せる。心に従え