進撃の巨人 RTA Titan Slayer   作:オールF

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お前ら……(いつも面白い感想と励みになる感想と評価を)ありがとうな……

ホモくんが絶妙にキモイので不快に思いそうな方はもう読むのをやめた方がいいかもしれません。


マーレが生き残るために

 

 夢を見た。昔見た夢とはどれも違う夢だ。

 私が戦士になった夢でもない。

 クソ親父から蹴りの練習をさせられてた夢でもない。

 島に着いてからマルセルが食われた夢でもない。

 ベルトルトやライナーたちと壁を破った時の夢でもない。

 トロスト区でマルコが食われた時の夢でもない。

 私が変態に切り刻まれた時の夢でもない。

 

 その夢で、あの変態は……元帥に奇声を発しながらバックブリーカーをくらわせていた。

 

 

「……はぁ」

 

 

 変な夢を見たと私はのろのろとベッドから起き上がる。加齢臭もなくなって比較的に眠りやすくなったけど、やっぱり自分のベッドが恋しい。そう思って自分のベッドを見れば、私の安眠の地を奪ったやつの姿はなかった。

 

 

 

「なんだったんだろうあの夢……」

 

 

 確かタイバー家がホライゾンに現マーレ軍上層部の打倒を示唆して、それに乗り気になったアイツが私に案内させて、軍議に乗り込んだ。そこから瞬く間にマーレ兵とマガト隊長を除いた上官たちを変な名前の割には痛そうな技で倒していったのを覚えている。

 あとはその、私が元帥に刃向かったときに「よく言った」って褒めてくれたこととか。本当になんだったんだろうかと、寝ぼけた意識を覚醒させるために、朝日を浴びようと外に出た。

 

 

「む、レオンハートか。もう7時だぞ。昨日の疲れが残っているとは言え、怠慢は慎め」

 

 

「いいじゃないですかマガト元帥。彼女も昨日疲れていたようですから」

 

 

「相変わらず朝は弱いようだなアニ」

 

 

 家の前にいつもより付けてる勲章の多い隊長と、マーレ政府の裏のトップに、エルディア人の王を名乗る変態が私と父さんの切った切り株の上で私を見るなりそれぞれ口を開いた。

 えっと、なにこれ。どういう状況? まだ夢の中とか? 

 

 

「頭を抑えてどうしたレオンハート」

 

 

「周期的にまだその時期ではないだろう?」

 

 

 現実か夢か分からなくなってる私に声をかけてくれる隊長と、心配そうな目を向けるタイバーさんに対して、どこぞの変態は真面目な顔でそんなことを宣った。

 

 

「ッ!」

 

 

「おいおい朝から訓練とは……やはり女性特有の」

 

 

「いい加減に黙らないとぶっ飛ばすよ!」

 

 

「まあまあ落ち着くんだ2人とも」

 

 

「私は至って平静だが?」

 

 

「君は黙っててくれないかな!?」

 

 

 口を開けば変なことしか言わない上に口の減らない変態に蹴りを放つも、すんでのところで躱されてしまう。尚更、むかっ腹の立つホライゾンに一撃でも痛い目を見せてやろうと拳も放つが簡単に避けられて、私のフラストレーションは溜まる一方だ。

 そんな私たちを見かねてかタイバーさんが間に入って、どうにか私は落ち着くことが出来た。

 

 

「……すみません隊長。取り乱しました」

 

 

「……いや、今回は貴様に非はない。気にするな」

 

 

「ありがとうございます」

 

 

 マガト隊長、いやどうやら元帥になったらしいマガト元帥にそう言ってから、どうしてここに重要人物が集まっているのかを尋ねた。

 

 

「マーレのこれからを左右するのに、本当に不本意だがそこの変態が必要になってな」

 

 

 しかし、書類を出しても、昼間に訪れても、変態が来るか居るかは分からないため、確実にいる朝にわざわざやってきたらしい。

 マーレのこれから? どうしてか色々と辻褄の合わない話に首を傾げていると、タイバーさんが私に説明してくれた。

 

 

「まだ現実を受け入れられていないようだけど、昨日起きたことは全て事実だ。強行的で傲慢かつ、無思慮な前マーレ政府は異国の使者と新元帥、そして私の起こしたクーデターによって倒された」

 

 

「……え?」

 

 

 まさかホライゾンブリーカーで元帥を……? でも、話を聞いていたら、私たちをパラディ島へと送り、地下資源と始祖奪還という作戦を打ち立てて、失敗した責任を実行した戦士と育成したマガトさんに押し付けようとした軍部に、タイバーさんとホライゾンが殴り込んだようだ。

 政府からの正式な書類と、彼らの作戦の杜撰さを証明する適任者によって、マーレ軍上層部は失脚。しかし、悪あがきにもその事実を認めずに銃を構えた上官達にラーラさんが巨人化して私たちを守りつつ、逃げようとする上官たちを捕らえたらしい。

 私にその記憶が無いのは当然で、私はその作戦に関わっておらず、昨日はずっとポルコやガビたちと訓練を受けていたからだった。牢屋にずっと閉じ込められて以来、長時間体を動かしたこともあって結構疲れたから記憶の彼方から消したかったのかもしれない。

 でも、表舞台に立たないようにしていたタイバー家がまさか大々的に動くとは、正直信じられない。これも夢なんじゃないかと、3人に見えないように太ももをつねってみる。うん、痛い。

 

 

「上官たちは今どこに?」

 

 

「反乱を起こされたら困るからな。軍の牢屋に入れてある」

 

 

 ついでに自身の保身や利益のために彼らの金魚の糞に成り果てた兵士たちも同様にしていると、新たな元帥は口にした。

 

 

「結果的にこれが正解だったのかは分からない。だが、マーレが大国として生きるためには必要なことだった……そうですな、タイバー公」

 

 

「えぇ」

 

 

 軍部の解体は敵国へと付け入る隙を見せたようだが、巨人対戦以降、存在を隠していた戦鎚の巨人が姿を見せたことで敵国に大きな動きはなく、マーレがこれから戦争に突入するということはないとの事だった。

 また、敵国のスパイが入手したホライゾンが単身で巨人に打ち勝ったという事実も、敵国に攻めるのを躊躇わせることにもなっているのではないかと元帥は推測していた。

 巨人は人の身でも倒せるという事実は、対巨人兵器の開発に力を入れている敵国に新たな選択肢を与える。新しい選択肢を与えられた敵国は、新兵器の開発を熟考することになりその間にマーレは対人間用に特化した兵器を作る時間と、マーレ軍再編の時間を手に入れたことになるらしい。

 

 

「話はわかりました。けど、これからのマーレにどうしてこの変態が?」

 

 

「変態とは誰のことだ? プロフェッサーか?」

 

 

 どう見てもアンタだよ。いくら世話してたからってなんで人の生理周期把握してるんだよ。思い出したらムカついてきた。

 

 

「変態は貴様だ魔王。貴様はしばらく口を開くな。……さて、この魔王が必要になる理由だったか」

 

 

「それは稼げる時間に限りがあるから、その時間をより伸ばすためだ」

 

 

 ホライゾンの巨人打倒と戦鎚の巨人の出現によって得た時間稼ぎも、多くて1年とあまり長くはない。そこで元帥とタイバーさんはある決断をした。

 

 

「マーレ軍最高の戦力を誇っていた巨人たちを打ち倒したパラディ島勢力は、マーレだけでなく他の国からしても脅威に違いない」

 

 

「不戦の契りがあるとはいえ始祖の巨人を保有するパラディ島に手を出そうとする国はいない。報復が怖いからね。実際、マーレは酷い目にあった」

 

 

 チラリとホライゾンを見ながら口にしたタイバーさんは、さらに言葉を続けた。

 

 

「そんな島と大国として知られるマーレが手を組んだとなれば、他の国は余計に手を出しづらくなる」

 

 

「えっ、それは……」

 

 

「レオンハートの言いたいことは分かる。悪魔の島と虐げてきたあのマーレが、その悪魔たちと手を組むのは逆に他の国からの敵意を集めることになるのでは。といったところか」

 

 

 私の危惧したことを全て口にした元帥に私は小さく頷く。

 

 

「私とて本来ならこんな手は使いたくなかった。しかし、マーレが生き残るために手段は選んではいられない。何かを得るためには何かを捨てなければいけない。マーレは他の国からの敵意を集める代わりに、敵国と戦うための準備期間を得るのだ」

 

 

 もはや巨人の力で戦争を勝利に向かわせる時代は終わった。これからは空を舞い、弾丸の雨を降らせて、爆弾を落とす戦闘機が主流になると予想した元帥は、マーレが未来永劫戦争の主導権を握れるようにこの決断をタイバーさんと下した。

 

 

「……その、ホライゾンはいいの?」

 

 

「なんだレオンハート。軍の決定に言いたいことでもあるのか?」

 

 

「正直言って、宣戦布告もなしに島を蹂躙し、人を殺した我々とパラディ島が友好的になれる確証がないように思います」

 

 

 実際、どんな顔してあの島に帰ればいいのか私にはわからない。もうマーレが滅んでも、私が死ぬことになってもいいから、このまま穏やかに死にたいというのが私の本音だ。

 叶うことならこのまま父さんと暮らして、ポルコやコルトと一緒にガビやファルコの成長を見守って、それで、それから……と考えている時に2人に口を閉ざすように言われていたパラディ島の魔王を名乗る男が口を開いた。

 

 

「それならば問題は無い。私が何とかすると約束したからな」

 

 

「…………え、は?」

 

 

 開いた口が塞がらず、そんな声を出してしまう私にマガト元帥は腰を下ろしていた切り株から立ち上がると私の前に立った。

 

 

「ということで……我らがマーレの戦士、アニ・レオンハートに命ずる。マーレの交渉役としてホライゾン・フリッツと共に再びパラディ島へと向かえ」

 

 

 これは決定事項と告げられ固まる私は不安な目でホライゾンを見た。すると、やつは私の肩に手を添えながらこう言った。

 

 

「政府の代表としてラーラも来るそうだ。この決定に私は今日ほど国王で良かったと思わなかった日はない。私と君、そして彼女は運命の赤い糸で結ばれているようだ。兵士になってよかった!」

 

 

 ……もう、諦めよう。とりあえず、こいつの奇行に巻き込まれるのが確定したラーラさんには同情しておこう。

 私はまた───────あの島に行くのか。地平線の彼方にあって、影も形も見えない島のある方向を見ながら私は、胸がぎゅっと締め付けられた。

 




夢オチなんてサイテーという感想を他の話題ですり替える高等テクニック(ただしその話題の品性は問わないものとする)

聞かれそうなことに先に答えておくコーナー
島に残ったマガトとヴィリーは何するの?→マーレ軍再編成と、敵国が攻めてこないように広報活動
島に行くのは3人だけ?→船の乗組員とその他何名か(ガビとか戦士候補生は未定)
ラーラさん大丈夫?→大丈夫だと思う人だけライナーに罵倒を浴びせなさい(理不尽)
なんでホモは生理周期知ってるの?→姉貴とユミル(そばかす)の入れ知恵
他の女性キャラのも把握してるの?→してる
この頃のパラディ島→エレンの硬質化で巨人掃討機完成。モルガン家の飛行機の設計図が発見される。団長がグリシャの手記を何度も読み返しては絶頂

過程書かずにED書いていいすか

  • いいよ
  • ダメに決まっているだろう!!
  • 任せる。心に従え

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