進撃の巨人 RTA Titan Slayer   作:オールF

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続きが欲しいと思っている時ほど、続きは来ないものだ。

あの後の話を直接書くより、こう書いた方が喜ぶ人が一定数いそうだなってことで、今回は三人称視点になってます。


数ヶ月の安寧

 

 マーレからパラディ島へ足を踏み入れた戦士たちは、島に住む悪魔たちを滅ぼし、三重に築かれた壁を破壊し、その壁の中に潜む超大型巨人を意のままに操ることが出来る能力の持つ"始祖の巨人"の力を奪い取るためにやってきた。

 しかし、その結果は凄惨なものであった。はじめにやってきた4人のうちの1人は、無垢の巨人に捕食され死亡。残った3人は、1人欠けた状態で何の戦果もないまま戻るわけにはいかないという説得により、任務を続行。予定通り、1番外の壁であるウォールマリアを破壊し、パラディ島人類の生活圏を奪い取りつつ、壁の中へと侵入した。

 それから、彼らは島の兵団組織に入団した。元々、マーレの戦士候補生として訓練を受けていた彼らにとって、兵団組織の訓練は容易かった。だが、共に青春のひと時を過ごした仲間を殺すことになるという罪の意識から戦士としての自分と兵士としての人格に分裂した者、その友の姿を見ながらもただ後ろにつくだけの腰巾着の道を選んだ者、そんな2人を侮蔑しながらも、そうならないように他者との関わりを避ける者。全員が全員、罪の意識から逃れようと精神を蝕まれていた。

 壁を破壊してから5年、壁の王に動きはなく、痺れを切らした戦士たちは2つ目の壁を破壊することを決断し、実行に移した。そこで目にしたのは、彼らの戦果に成りうる存在。彼らの知る巨人のどの姿や能力とも一致しない巨人、エレン・イェーガーが変身した巨人の登場に彼らは目を輝かせた。始祖を発見できなくても、彼を故郷へと連れ帰れば、失った仲間の穴埋めになるはずだと。

 彼らは破壊した壁の穴を塞ぐことを見逃し、エレンを捕らえる作戦を企てた。エレンは調査兵団へと入団し、戦士のうち2人もまたエレンの監視と、調査兵団の動きを知るために入団した。1人は憲兵団へと入団したが、調査兵団へ入った2人の情報をもとに、第57回壁外調査にてエレンを連れ去るべく、暗躍した。

 女型の巨人へと変身し、仲間から伝えられたエレンの居場所へ向かうも、それがブラフであったがために調査兵団の被害は拡大する。途中、他の仲間からエレンの正確な位置を聞き出した仲間の1人から、その場所へと向かい、今度こそエレンを発見する。が、逆に待ち構えていたエルヴィン団長と団員たちが仕掛けた罠によって一時的に捕縛されてしまうも、女型の巨人の能力を活かして、無垢の巨人に身体を食わせ発生した蒸気に紛れて逃亡する。そして、エレンが属しているリヴァイ班の位置を炙り出すと、再び会敵し、エレンを守るリヴァイ班を殺してエレンを連れ去る、そういう算段であったが。

 それはたった1人の兵士によって覆された。

 

 

「初めましてだな! 一緒にワルツでもいかがかな!?」

 

 

 

 再生しかけていた目を潰され、無垢の巨人を呼び寄せるための喉も潰され、子宮の有無の確認のためお腹は切り裂かれ、再生が追いつかない程に身体をズタボロにされ、最後にうなじを裂かれてアニ・レオンハートは捕まることとなった。

 そこから戦士たちは次々と捕らえられた。5年間、音沙汰のない戦士たちにマーレ軍は獣の巨人と車力の巨人と数人のマーレ兵士を派兵するも、威力偵察中であった獣の巨人は瞬く間にダルマにされてしまう。続いて、鎧の巨人、超大型巨人の中身が捕らえられ、そして、彼らを奪還すべく姿を現した車力の巨人もまたある1人の兵士により身柄をおさえられてしまう。

 そうして捕らえられた彼らは調査兵団が管理している地下牢にずっと拘束され続けたままだ。狭く、地下故に巨人化が自殺行為となるため、人間状態での脱走以外に生存方法がない状態で過ごす日々は彼らに鬱憤を与えていた。おまけに、戦士の1人であるアニが、因縁浅からぬ兵士に連れ去られてしまう。

 

 

「……ッ!? ア、アニッ!?」

 

 

 そのアニが数ヶ月ぶりに姿を現し、彼女に恋慕を募らせている超大型巨人の能力を持つ戦士、ベルトルト・フーバーが上げた声に他の戦士たちが顔を上げた。

 ここを去っていた時と変わらぬ金色の髪に、白雪のような肌に、冷めた表情に安堵しつつも、彼女の手を拘束して縄を持つ、ベルトルトやアニにとっては同期である兵士、ジャン・キルシュタインに怒りの形相を向けた。

 

 

「ジャン……!」

 

 

「……そんなに睨むなよ。俺だってしたくてしてるわけじゃないし、来たくてここに来たわけじゃねぇ」

 

 

 牢屋の鍵を開け、アニが牢屋に入った後に、格子越しに手の拘束を解くとその場をあとにしようとした。

 

 

「おい待てよ、ジャン」

 

 

 そんな彼の背中に声をかけたのは鎧の巨人の持ち主であるライナー・ブラウンで、数ヶ月前までは共に調査兵団として戦っていた同期の声にジャンは足を止めた。

 

 

「ンだよ、裏切り者」

 

 

「……裏切り者って、それはそうかもしれんが……同期のよしみだろ? 地上が今どうなっているかくらい教えてくれたっていいだろ?」

 

 

「本気で言ってんのかコノヤロウ……!」

 

 

 ライナーの飄々とした物言いに、ジャンは拳を握った。

 

 

「……聞きてぇことがあるならアニに聞け」

 

 

 ジャンも単身マーレへと渡っていた同期の兵士の話は端的にしか聞けていない。壁の外から戻ってくる道中で聞こうとしたところ、細かな話を知っているであろうその男は眠いからという理由で荷車の上でぐっすりだったからである。

 アニから聞くという手段もあったが、そのアニもまたその男の隣でぐっすりであり、島から離れた間に何があったのか、想像することはジャンにとって容易い事だった。実際にそんなことは何も無かったのだが。

 しかし、これから似たような誤解をすることになるであろうベルトルトにジャンは憐れみの目を向けた。その視線を向けられたベルトルトはアニに「大丈夫だった? 怪我はない?」と語りかけており、ジャンはため息を吐いて、降りてきた階段を登って地下牢から去っていく。

 

 

「……アニ」

 

 

「あぁ分かってる。話すよ」

 

 

 ジャンが扉を閉めて、30秒ほど経ってからライナーが口を開いた。言われなくてもとアニは無機質な声で、牢屋から出て壁外へと行き、マーレへと戻ったことをつらつらと話していく。ジークとピークも、アニの話へと耳を傾け、全てを聴き終わると口を開いた。

 

 

「そっかぁ……マガト隊長が元帥に、ね」

 

 

「信じられないけど……戻ってきたってことを考えると本当なんだろうね」

 

 

 マーレ軍の上層部はヴィリー・タイバーとマガトによって消し飛び、マーレ軍は再編された。その間、他国からの脅威を退けるためにパラディ島との同盟を結ぶために、タイバー家から戦鎚の巨人の持ち主であるラーラ・タイバーがやってきているとなれば、にわかに信じ難い話も認めざるを得ない。

 

 

「出来ればそのラーラって子に会いたいけど、マーレからの使いってことは外交官扱いだろうし、こっちには来ないよなぁ……」

 

 

 ジークがぽつりと呟く。戦鎚の能力は不明だが、こちらの意思に同意してくれるのならば脱走することも可能だと思っていたジークは、もうしばらく牢獄生活は続きそうだと見慣れてしまった天井を見上げた。

 

 

「ホライゾンが五体満足な上に、戦鎚も倒しちゃって、おまけに今のマーレの実権を握る2人に信頼されてる……か。やだなぁ」

 

 

 下手すると、死ぬまであの顔を見なければならないのかとピークは心底嫌そうな顔でそう口にした。自分たちがここで数ヶ月過ごすことになった原因の姿を思い出し、ピークはため息を吐いた。

 

 

「そっちはあの変態のおかげで、悪くなかったんじゃない?」

 

 

「……そんなことは」

 

 

 

「……まぁ、こっちも悪いってことはなかったけどね」

 

 

 マーレなら、女は恐らく拷問と称して好き勝手されているところだ。しかし、パラディ島の兵士たちはそうはしなかった。食事は決まった時間に決まった量が出てくるし、トイレの方も最近になって自分でする用に設けられた。手足の拘束も牢屋内であれば自由に動ける程度に緩和され、不満があるとすれば太陽を浴びれないことと一緒にいるのが男ばかりということだろうか。

 

 

「そう。私は……色々訊かれたけど」

 

 

 しかもメガネをかけた変態女兵士も追加で。小さく呟いたがために、運良くベルトルトには聞き取られずに済む。悪くないと思っていたピークに対して、ジークはそうでもなかったようで不満タラタラな様子で今日までのことを口にしていく。

 

 

 

「最悪だったよこっちは……ライナーは寝言が自虐的だし、ベルトルトはアニちゃんがいなくなって感情的になるし、ピークちゃんはあの変態が誰とくっ付くかで遊び始めるし……なんで俺も巻き込むかなぁ……」

 

 

「それは謝りましたよね?」

 

 

「謝って済む話じゃないって言ったよね?」

 

 

 しかもなんでちょっと開き直ってるのとジークは訝し気な目を向ける。しかし、ピークには見えていないようで「それで」とアニに口を開く。

 

 

「彼は相変らずなの?」

 

 

「えぇ……まぁ……」

 

 

 アニの歯切れの悪い受け答えに、ピークは首を傾げた。

 

 

「……何かあった?」

 

 

 単なる世間話のつもりだったが、何かありそうだと目を細めたピークの質問に、アニは膝を抱えながら先程あったばかりのことを話した。

 ホライゾンがマーレに行くにあたって、名を偽り"フリッツ"の名を騙ったこと。独断専行の多さと相まって、議会では大騒ぎになったこと。

 

 

「へぇ、なるほど」

 

 

「それで?」

 

 どうやってマガトやタイバー家に取り入ったのかという点が気がかりだったジークはその話で、合点がいき声を漏らした。確かに色白で金髪だしなぁと自分の母の容姿を思い出していると、大騒ぎになったあとの話をピークが促した。

 

 

 

「パラディ島のためにしてきたことと、私たちを捕らえた戦果を照らし合わせても勝手に王の名を騙ったことは不敬だって……」

 

 

「うん」

 

 

 

「それで、ヒストリア……あぁ、本当の王家の血筋の子ね」

 

 

 ちなみにクリスタのことねとライナーとベルトルトに伝えると、彼らは目を大きく見開いた。

 

 

「クリスタが壁の王の一族……?」

 

 

「マジかよ……」

 

 

 だったら、クリスタと結婚してたら俺は今頃壁の王の旦那だったってわけか……逆玉じゃねぇか……と1人脳内で存在しない記憶に浸っていたライナーだったが。

 

 

 

「ヒストリアが、本当に王の名を継げばいいじゃんって……求婚したの」

 

 

 

「…………は?」

 

 

 アニの発言を聞いて、ライナーは驚愕の表情を浮かべた。さらには、なんでヒストリアがあの変態に求婚を……? そ、そうか、ヒストリアは優しいからな。独断専行とはいえ、島のために尽力したホライゾンを救ってやろうって考えだな。けど、それはダメだろ。あんなヤバいやつと結婚なんてしてみろ、円満な夫婦生活なんて送れるわけがねぇ。金髪で色白が好きだってなら俺の方が……と、手で顔を覆いながら現実逃避を開始した。

 

 

 

「えぇ……」

 

 

 ジークは困惑した。そんな簡単に王家の名前を渡すなよと。しかも一番実権とか持たせたらヤベー奴に。あんなのが王になってみろ……とジークは彼に受けた仕打ちを思い出してちょっと泣いた。

 

 

「そ、そうなの?」

 

 

 ネガティブな感情を抱いた2人に対して、ベルトルトは少し上機嫌だった。ヒストリアには悪いが、ホライゾンとくっついてくれるなら、アニは必然的に1人になる。今の今までホライゾンという意味のわからない存在に狂わされていたが、それが他の誰かとくっつくとなれば常識的な思考を持っているアニなら身を引くはずだと。マーレもパラディ島も一夫一婦制が基本で、一夫多妻制は有り得ない。自分にも希望が見えてきたとベルトルトは吊り上がる口角を抑えられなかった。

 

 

「……あぁ、あの子か」

 

 

 興味津々に聞いていたピークはヒストリアという名前に聞き覚えはなかったが、クリスタという名前には覚えがあった。確か自分が人質にした女の子だと。あの子が、あの変態とかぁ……と世の中よく分からないものだなと感じた。

 

 

「その子って巨人になれないし、女の子だったよね」

 

 

「えっ? あ、うん……そう、だけど……?」

 

 

 なんでそんなことを聞くんだろうと首を傾げるアニに、ピークは自分が捕まった時に聞いた話なんだけどと一言置いてから、こう言った。

 

 

「彼、男色家なんだって」

 

 

 ピークから放たれた言葉を聞いて、男3人は顔面を真っ青にしておしりを押さえた。ホライゾンの興味対象は誰もが知るとおり、巨人である。では、そこに男色家というパワーワードが加わった時、ホライゾンの好意以上の対象は男で巨人化能力を有する者ということになる。

 

 

「だ、だからアイツ、お、おれの……おれの……」

 

 

 ガタガタとジークは先日受けた拷問の意図を察して声と身体を震え上がらせた。直接被害を受けていないライナーやベルトルトも、彼がどうして女性であるアニやピークに、拷問と称して女性としての尊厳を貶めるようなことをしないのか納得がいった。アニは同期だからと言われれば、そうだろうとなる。けれど、ピークは? 好みじゃないと言われればそれまでだが、男ならばそういう色欲も抱いてしまう可能性はあったはずだ。それにあの男なら「もし巨人化可能な女性が孕めば、その身体は巨人時にも反映されるのかな?」とやらかしかねないという懸念が2人にはあった。だが、そうはしなかった。その理由が今日わかってしまい、2人もいつか来るかもしれない恐怖に身体を強ばらせた。

 

 

「え…………っ?」

 

 

 マジで? という顔を浮かべるアニにピークは残念ながらと頷いた。変態はやはり変態だったとピークが以前触れられた右胸へと目を落とす。

 

 

「そう、そうなんだ……」

 

 

 じゃあ、ヒストリアの申し出を断ったのも納得だとアニはベッドに倒れ込んだ。




議会の話よりこっちの方が楽そうだったってこともある。何処の馬の骨かもワカランヤツに女王の夫にできるかぁ!! って話からモルガン家の真実! ってプロットはさよならバイバイや。元貴族で飛行機作ろうとした以外に大した真実もないし。


ちなみにヒストリアの求婚は断ったが、ヒストリアにまくし立てられて保留という形に変わっているのをアニは知らない。断った理由は自由に動かなくなるかもしれないからと、仕方ないみたいな感じで結婚されても困る的な返し。なので、ヒストリアが本気で好きだからとか言ってたらワンチャンあった。


なお、待たされているマーレの皆様「まだかな……」


壁内巨人は全部死んだとなってますが、1体だけ生きてます。誰かは……秘密だよ!



そういえばエレン、1回も記憶開いてないな……。そのおかげでエレンは海を純粋な気持ちで見れました。良かったね。

過程書かずにED書いていいすか

  • いいよ
  • ダメに決まっているだろう!!
  • 任せる。心に従え

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