進撃の巨人 RTA Titan Slayer   作:オールF

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第7期 The Rumbling
その日、少年は思い出した


 

 

 はじめは普通に良い奴だって印象だった。聞いたことには答えてくれるし、アドバイスもくれる。成績は悪くなく、座学はアルミンと同格で、体術と立体機動の腕はミカサ程とまではいかなくても、俺の目から見ればライナーやベルトルトよりも上なんじゃないかと思えるくらいにホライゾン・モルガンの姿は輝いているように感じた。

 それが確信に変わったのは俺たちにとって初めての壁外調査の時だ。

 エルヴィン団長の考えた長距離索敵陣形を乱し、調査兵団兵士の命を奪った女型の巨人。奴は俺を狙って、リヴァイ兵長が離れている時にリヴァイ班を強襲した。エルドさんやペトラさんが見事な連携で女型の巨人を追い詰め、視力を奪い、うなじを守っていた腕の筋肉を削いで、あと少しでうなじが狙えるという時に、ホライゾンは女型の異変に気付いた。

 オルオさん達が潰した両目のうち、左目だけを優先的に再生して視力を取り戻していた女型へと切り込んでいくと、ホライゾンはそのまま知性を持たない巨人を呼び寄せる咆哮をさせないために喉を切りつけ、気持ち悪いことを言いながら女型を行動不能にすると、フェイントをかけて女型の皮膚が硬化する前にうなじから女型の中身を取り出した。

 その後も、鎧の巨人の中身であるライナーや、超大型巨人の中身のベルトルト、更にはそいつらの仲間のジークっていう獣の巨人の中身もほとんど1人で倒しちまった。1人っていっても、ライナーとベルトルトのときはリヴァイ兵長や俺がいたし、獣の巨人のときもミケさんがいたが、誰もが口を揃えて「ホライゾンがいなければ仕留められなかった」と言っていた。

 俺もそれは事実だと思う。こいつと俺、さらにリヴァイ兵長やミカサたちがいれば、どんな敵がいても怖くはない。俺はそう思っていた。

 

 

「は……? なんだよそれ」

 

 

 壁の外から来た敵たちを倒して、壁の中にいる壁の秘密を隠そうとする奴らを排除した後、俺たち調査兵団の前からホライゾンが姿を消している間に俺は壁の外の世界を知った。

 壁の外には、取り切れないほどの塩水で満たされた海があって、その先には大陸があってその上には俺たちとは異なる文化や価値観を持った人達がいて、そいつらに憎まれているのが巨人になれるユミルの血を引く俺たちエルディア人だということを知った。

 

 

「事実だ。我々は世界にとって敵で、殺すべき対象と見られているわけだ」

 

 

 そして、アニを連れて俺たちが生まれるよりもはるか昔にエルディアと争い、勝利した国であるマーレに行って、戻ってきたホライゾンから聞かされたのは、この世界は残酷だということだった。

 生まれた時から自由だと思っていた俺の周りには壁があって、その壁を乗り越えた先には俺たちを殺したくてたまらない人達がいるとホライゾンは語った。

 戦争に勝利したマーレは生き残ったエルディア人を兵士として徴用していること。かつてエルディアがおこなったように他国へと戦争を仕掛けて領土を拡大していること。しかし、巨人という兵器に頼っていたマーレは巨人に対抗して様々な兵器を作っている他国との競争に負けそうなこと。そのため、あらゆる巨人を意のままに操り、地ならしによって文明や国を踏み潰すことが可能な始祖の巨人を手に入れようと、パラディ島に巨人の力を持った子供たちを遣わせたことを。

 その結果があの惨劇だったこと。だが、マーレの始祖奪還計画は俺というイレギュラーと調査兵団の存在、なによりもホライゾンの規格外の行動によって頓挫した。

 さらには9つの巨人のうちの8つがパラディ島の中に収まったことで、マーレの軍事力は大幅に衰退し、結局パラディ島の力を借りなければ、様々な国から恨みを買っているマーレは生き残ることができないからと、軍事同盟を結ぶことになり、やって来たのがホライゾンとアニが連れてきたラーラさんや戦士候補生のファルコやウドたちらしい。

 

 

「ちょっと待ってくれ……情報が多すぎる」

 

 

 なんでこんな話を俺に? しかも、なんで俺だけなんだ? アルミンやジャンたちには聞かせなくていいのか? 頭を抱えながら、そんな問いばかりが浮かんできて、ホライゾンに視線を向ける。

 

 

「……それで、その話を俺にして、どうすんだよ」

 

 

 俺に出来ることなんてもうないだろと、そういう意味を込めて尋ねる。

 

 

「いや、君にはやってもらうことがある。とても大事な事だ」

 

 

「大事なこと?」

 

 

「あぁ」

 

 

 聞き返した俺に、頷いたホライゾンはこれからしようとしていること。そして、俺にして欲しいということを話す前に、ホライゾンの考えというものを話し始めた。

 

 

「おそらくだが、2000年続いた歴史の問題はエルディア人か、そうではない人種のどちらかが滅びるまで終わらないだろう」

 

 

「いや、けどよ、お前はマーレの奴らと話せたんだろ?」

 

 

「……まぁ、そうだが」

 

 

 歯切れの悪い返しに俺は首を傾げる。すると、ホライゾンは「いずれ話す気でいたが」と前置きをしてからこう言った。

 

 

「私にはユミルの血、というものは流れていない」

 

 

「え?」

 

 

「私の血族はフリッツ王の側近……ユミルの血を取り込まなかった貴族の家系だ。分家の中には、ユミルの血を引くものと婚姻し、子を作った一族もあるかもしれないが」

 

 

「あー……たしか、ヒストリアの前の偽の王様を囲ってた貴族もそうなんだよな……?」

 

 

 前にアルミンが話していた気がすると俺が言葉を絞り出すと「そうだ」と肯定の言葉が返ってくる。要するに、パラディ島に来る前にマーレとか他の国の安寧を打ち破った側の人間ってことだろうか。

 

 

「だから、私は巨人にはなれないらしい」

 

 

 心の底から残念そうに言うホライゾンに俺はどうフォローすればいいのか分からず言葉に詰まる。そんなにいいもんじゃねぇぞと言いたいが、何を言われるか分からないので、先程の話に戻した。

 

 

「じゃあ尚更、マーレや他の国の人達とも分かり合えるんじゃあ……」

 

 

「全員は無理だな」

 

 

 キッパリと言うホライゾンに、俺も「だろうな」と考える間もなく、誰も彼もが分かり合えるわけじゃないと結論づけた。

 

 

「この島の人が死ぬか、あっち側の奴らが死ぬまで終わらない……か」

 

 

 そんなことが果たして可能なのかと訊かれたら、あっち側はどうか分からないが俺達にはその手立てはある。

 50mの壁の中にいる知性を持たない超大型巨人。そいつらを始祖の力で動かせば、外の世界の文明は踏みならされてまっさらな大地に変わるだろう。地ならしの力が本当なら、そこに歴史は疎か、人が助かる道なんてあるようには思えない。

 

 

「そしてその鍵を握っているのは始祖の力を持つ君と、王家の血を引いた巨人だけだ」

 

 

 始祖の巨人は王家の血を引いた者が使用して初めてその真価を発揮する。けれども、王家の血なんて引いてない俺には宝の持ち腐れ……そう思っていたが、初代レイス王が結んだ不戦の契りによって王家の血を引く者が所有していても、始祖の力は純然に発揮できないらしい。

 だから、始祖を持つ俺が、王家の巨人と接触すれば不戦の契りを無視して、始祖の力が使用できるかもしれない。

 

 

「けど、ヒストリアを巨人にするのは……」

 

 

「幸いにも王家の血を引いている巨人はこちらで捕らえている」

 

 

「そうだよな。無理……って、は?」

 

 

 こいつ今なんて言った?

 

 

「王家の血を引く巨人を捕まえた? いや全然わかんねぇぞ」

 

 

 誰なんだよそいつはと俺が問いかけると、ホライゾンは呆気らかんと言った。

 

 

「ジーク・イェーガー……獣の巨人の能力者だ」

 

 

 あとは俺の親父の子供で、産んだ女の人が王家の血を引くフリッツ王の末裔だったという情報を付け足して、最後に「つまりは異母兄弟というやつだな」と締めくくられて俺はまた頭を抱えた。

 

 

「何やってんだよ親父……」

 

 

 エルディア復権とかいうよく分からないことのために、あっちで家族をめちゃくちゃにして、それでこっちでも壁の秘密とか王家のこととか知ってたくせに全部黙ってて、勝手に巨人の力を押し付けてきて……何が何だか俺にはもう……。

 

 

「さっきの話は他言無用で頼む」

 

 

「え? あ、あぁ……それはいいが……どうすんだよ結局」

 

 

 今のところ和解が無理なら、示されたのはどちらかが死に絶えるまで終わらないってことだけで、具体的な解決は地ならしするかしないかって話になる。

 

 

「そんなこと私が知るか」

 

 

「は、はぁ!?」

 

 

「私は私のやるべき事……いや、したいことをするまでだ」

 

 

 相変わらず自分勝手なホライゾンに俺は声を荒らげそうになるが、その気持ちをグッと押し殺して踏みとどまる。

 

 

「なんだよ、そのしたいことって……」

 

 

「それはいずれ分かるさ」

 

 

「おい、ちゃんと言えって!」

 

 

 答えをはぐらかすホライゾンに俺は掴みかかろうとするも、サラリと簡単に躱されてしまい、普通の実力どころか巨人になっても勝てる気のしない相手に、どうしたものかと逡巡する。

 

 

「そろそろ行こう。良くも悪くも私たちは目立つからな」

 

 

 考えている間に、ホライゾンは歩き出して、ホライゾンがいなかった為に先送りになっていたウォールマリア奪還記念のパーティ会場へと戻ろうとする。

 

 

「は? だから、待てって……」

 

 

「そう焦らなくても君にはすぐ分かるさ」

 

 

 急いで追いかけて、背中に追いつく前にホライゾンは小さく、聞こえるか聞こえないかの境目の大きさでそう言った。

 俺はそれが、近いうちにみんなに打ち明ける話だからという意味で受け取ることでその場は納得した。けれど、事実は全然そうじゃなくて───────。

 

 

 

「……エレン?」

 

 

 ───────パーティ翌日の勲章授与式で、俺だけがホライゾンの目的と行動を目にするからだった。

 




パーティから居なくなった2人を探していた人
エレンを探していたの→ミカサ
ホモくんを探していたの→ジャン、サシャ、ヒストリア、ユミル
両方探してたの→リヴァイ、アルミン
マーレ側の人間は参加せず。自分たちの国の戦士たちが大敗したパーティで飯が食えるやついる? いねぇよなぁ!!

ちなみにパーティでは、マーレからやって来た兵士たちがワインを振舞おうとしたが「これは私のものだ」とホモくんが独り占めしちゃったのだとかなんとか。酒ッ! 飲まずにはいられないッ!
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