進撃の巨人 RTA Titan Slayer   作:オールF

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投稿年が2028年になってたので初投稿です


地下室を見せてやろう

 

 

 

「お、おい、ガビやめとけって……!」

 

 

「だから付いてこなくていいって言ったじゃん」

 

 

 英雄が帰還し、パラディ島がマーレという国に勝利したことを記念したパーティが行われている裏で、2人の少年と少女は調査兵団の保有している施設の地下を声を潜めながら歩いていた。

 1人はガビ・ブラウン。戦士候補生の中でも、頭脳、身体能力共に優れており、またマーレへの忠誠心も高く、もしマーレがパラディ島側勢力に勝利していれば、9つの巨人のどれかを継承していたに違いない兵士である。

 まだ身体は子供であるため、大人に勝てない部分はあるものの、子供という利点を活かした搦手を用いて、上手くマーレの外交官が待機する場所から抜け出していた。

 そんなガビの背中を追いかけ、ここまでついてきたのがファルコ・グライスである。ガビが自然体ながらも何か無茶をしでかそうとしていると察したファルコは、同期であるゾフィアやウドに協力してもらい、ガビと同じように部屋を出ると、彼女が本当にただトイレに行くだけなのかを確かめるために後を追いかけた。

 しかし、ファルコの思った通り、ガビはトイレには向かわずに外へと出ると、月明かりだけが照らす夜道を迷いのない足取りで走り出した。

 ファルコはそれを追うと、ガビに気付かれてやや揉めるも、行動を止める気のないガビに説得が不可能とわかると、ガビのことが心配なファルコはもしものことがあった時のために同行すると決めた。だが、それでも今ここでパラディ島側の人間と揉め事を起こすのは危険だとしつこく止めるファルコに、ガビは唇をとがらせた。

 

 

「今はマズイって。パーティの裏でこんなことしてるって知られたら、同盟の話がなくなるかもしれないだろ!」

 

 

「は? アンタ、ほんとにあいつらと同盟を組む気だったの?」

 

 

 小さな声でガビへと言い放つも、バカにするような顔で彼女は口を開く。

 

 

「あれは敵を欺くための元帥やラーラさん、アニさんの嘘だよ」

 

 

「……え?」

 

 

「パラディ島の王を殺しちゃったら、ライナーやジークさんの命は絶対になかったでしょ。だから、同盟の話に乗る振りをして、島の悪魔に捕まったみんなを助けるために敵の懐に飛び込んだんでしょ?」

 

 

 そんなことも分からないのと唖然とするファルコへとため息を吐いたガビは続けて言う。

 

 

「今、ラーラさんたちは島の悪魔の中でも偉いヤツらに目をつけられててまともに動けない。他の兵士もそう。けど、私は? そう、あいつらは私が戦士候補生ってことは知ってても、子供だからって油断してるはず」

 

 

 実際にこうしてパーティに参加せずに大人しくしている振りをして、もぬけの殻になった兵舎へとやって来れている。私の見立てに間違いはなかったと自信満々に言うガビに、ファルコは何も言えず、彼女の言葉に耳を傾ける。

 

 

「そこで私が捕まってるライナーたちを助け出して、巨人化してもらって、パーティ会場に集まった悪魔たちを一掃して、マーレへと戻る。どう? 完璧な作戦だと思わない?」

 

 

「えっ、それは……」

 

 

 そんなに簡単に上手くいくかなと不安そうにどもるファルコに、ガビは口角を上げた。

 

 

「聞いた話じゃ、鍵だけかけて衛視もパーティに参加してるから、守りは手薄だし、助けるなら今しかないの」

 

 

「でも、鍵は?」

 

 

 鍵をかけているのなら、鍵がなければ入ることが出来ない。それに加えて衛視がいないのであれば、奪うことも叶わないため詰んでいるように思えた。

 ファルコの問いかけに、ガビは「チッチッチッ」と指を左右に振るとポケットの中からチャリンと音を鳴らしてある物を取り出した。

 

 

「これなーんだ」

 

 

「えっ!?」

 

 

 ガビの取り出したのは多量の鍵がついている輪っかだった。どうやって手に入れたのかという疑問にガビはすかさず答える。

 

 

「あの馬面の兵士がいたでしょ? あいつ、ホライゾンと仲良さげだったし、アニさんを牢屋に連れてって行ったみたいな話聞いたから、くすねといたんだ」

 

 

 にししと恐れ知らずの無邪気な微笑みを浮かべたガビに、ファルコは呆然と口を開けてしまう。

 

 

「牢屋の場所は、巨人化させないために地下にするだろうし、あいつらは調査兵団。ってことは、調査兵団の兵舎のどこかに地下に通じる扉が……」

 

 

「そんな簡単なところにあるわけないだろう」

 

 

 得意気に話すガビと、その話を聞くファルコとは異なる声が彼らの背後から聞こえ、2人はバッと振り向いた。金色の髪に、翡翠に輝く瞳と色白の肌をした2人にとってはもはや見慣れた男が立っていた。

 

 

「ホ、ホライゾンさん……!?」

 

 

 驚愕の表情を浮かべながら男の名を呼んだファルコに、男は腕を組んで右手に鍵を握るガビを見下ろした。

 

 

「くっ……! どうしてここに……!?」

 

 

「少年は誤算だったが、君がライナーやジークたちを助けるために何かしら動くだろうということは予想していた」

 

 

 だから、ガビが動きたいように動けるようにと、馬面の男(ジャン)が鍵を盗られたことに気づく前にホライゾンの持っていた鍵を渡しておいた。もし、ジャンか他の人間が盗られたことに気付いてしまうと面倒なことになるからと、泳がせていたのだと語ったホライゾンに、ガビは怒りの形相を向けた。

 

 

「私が、アンタ如きに躍らされてたって言いたいの……!?」

 

 

「そうだと言っている」

 

 

 ガビの言葉に頷いたホライゾンに、ガビは怒りを抑えきれず「ああああああ!!!」と叫びながら突進していく。それを止めようと手を上げたファルコだったが、ホライゾンが口を開く。

 

 

「少年! 助太刀! 手出し! 一切無用!」

 

 

 これは私と少女の問題だと、一喝したホライゾンに、ファルコは上げようとしていた手を途中で止めてしまう。そして、ガビは止まることなく勢いのまま飛び上がり、自分よりも背丈のある青年の顔面目掛けて拳を握りしめる。

 

 

「私は、戦士候補生なんだ! アンタみたいな悪魔の王を誇らしげに言う変なやつに私が……ッ!!?」

 

 

 やられるわけと続けるはずが、ガビの拳は簡単に受け止められてしまう。拳を受け止められ、さらには飛び上がったことで無防備になったガビをそのまま掴みあげると、まるで米俵を抱き抱えるようにしてガビを持ち上げる。

 

 

「ちょっ! おい、放せ! この!」

 

 

「あまり暴れるな。耳に悪い」

 

 

「が、ガビ!」

 

 

 じたばたと暴れるガビにホライゾンは特に気にすることなくそう言い放つが、ガビがホライゾンの手から逃れようとするために藻掻く度に彼女の下着がチラチラと見え隠れしてドギマギしているファルコは顔を赤らめながらガビを窘める。

 そんなガビを黙らせるためか、あるいは最初からそのつもりだったのか、ホライゾンはこう言った。

 

 

「では君たちご待望の地下室を見せてやろう」

 

 

 

 ###

 

 

 

 コツコツとホライゾンさんが石造りの床を踏み鳴らしていく。ジーク戦士長たちが捕らわれている牢屋が調査兵団の兵舎内にはないという言葉は嘘ではないと証明するためか、ホライゾンさんは俺とガビを連れて兵舎を出ると、兵舎の隣にある小屋に入った。

 その小屋にあったベッドをずらし、さらに床を少し持ち上げてスライドさせると、ハシゴの下に通路のようなものが見えた。

 

 

「ここが地下室に通じる道ですか?」

 

 

「あぁ。まあ、私専用のだが」

 

 

 ホライゾンさん専用? よく分からず首を傾げていると、ホライゾンは俺とガビを先に下ろしてくれる。ガビは先に奥へといこうとしたが、ハシゴを使わずにそのまま降り立ったホライゾンさんを見て、身を竦めると彼の後ろへとついた。

 

 

「ガビ」

 

 

「分かってる……全くもって不愉快だけどコイツには勝てそうにないし」

 

 

 さっきいとも簡単に負けたことでガビは怖気付いたのか。それか、ホライゾンさんが戦士のみんなのところへ連れていってくれるという言葉を信じてか、後ろから襲いかかるなんて馬鹿なことはしないようだ。

 俺が名前を呼んだだけで、俺の意図を汲み取ったあたり考えはしたみたいだけど。

 

 

「キミも訓練し、大きくなれば私程度簡単に倒せるさ」

 

 

「当たり前じゃん。いい気になんないでよ。5年もあれば、アンタなんてイチコロなんだから」

 

 

「はは、それは楽しみだ」

 

 

 殺伐としていた空気はなく、マーレで数日を共にした時と同じガビが突っかかって、ホライゾンさんがそれをあしらうという雰囲気へと戻っていて俺は安心する。

 

 

「というかさ、アンタ戻らなくていいの? アンタの帰りを待って、パーティの予定遅らせたんでしょ?」

 

 

「確かに、ホライゾンさんが主役なんじゃないですか?」

 

 

 今更だけどこの人、ここにいていいんだろうかと首を傾げているとホライゾンは問題ないと笑った。

 

 

「この時間は元々、アニたちの世話をする予定だったからな」

 

 

「世話?」

 

 

 何するんだろと視線で問いかけてくるガビに「食事じゃないかな」と答えようとするが、その割にはホライゾンさんは手ぶらだ。普通、食事を届けるなら何か手荷物くらいありそうだけれどと考えていると、鉄扉が見えてくる。

 あの先にジーク戦士長たちがいるのだろう。俺とガビはホライゾンさんが鍵を開けるのを待とうと立ち止まるも、ホライゾンさんは鍵を取り出すことなくドアノブを捻った。

 

 

「え?」

 

 

「何をしている、早く行くぞ」

 

 

 私は我慢弱いからなと、扉を開けたホライゾンさんにガビが「私の苦労は……?」と、ちょっと可哀想な顔をしていた。

 

 

「ん……飯ィ?」

 

 

 ホライゾンさんが入ってきたことに気付いてか、聞き覚えのある声が聞こえた。たしか、この声は。

 

 

「ジーク戦士長!」

 

 

「……え? ガビちゃん?」

 

 

「は? なんでアンタらここに……?」

 

 

 声の主に気付いてかガビがホライゾンさんより前に出る。ガビの声を聞いて、呑気そうな声から驚きを見せたジークさんに加えて、ベッドに寝転んでいたアニさんが身を起こす。

 

 

「どうしてガビとファルコが……? ホライゾン、どういうことだ?」

 

 

 俺たちの姿を見てか、ブラウンさんがそうホライゾンさんに問いかける。けれど、ホライゾンさんは肩をすくめるだけで、答えをガビと俺に委ねて目線を下ろしてくる。

 

 

「ご、ごめん、ライナー! 私、私……ライナーを助けようとして……それでコイツに見つかって……!」

 

 

「そ、そうか……。その、何か、されなかったか? 見たところ、怪我とかは無さそうだが……」

 

 

 ガビがブラウンさんの鉄格子を握りながらそう言うと、彼は心配そうにガビへと慰めの言葉をかけた。久方ぶりの家族の再会に、ホライゾンさんは口出しする気は無いのか、静かに見守っていると、不意に俺の方を見てくる。

 

 

「少年は誰かに言うことはないのか?」

 

 

「え?」

 

 

「例えば、ベルトルトとか……」

 

 

「いや、俺は特に……ガビが心配で付いてきただけ……なので」

 

 

 フーバーさんには申し訳ないけど、俺は事実をそのまま伝えると「そうか」とホライゾンさんは頷くと、涙ながらに再会を喜んでいるガビの方を見ながら呟いた。

 

 

「彼女は幸せ者のようだ」

 

 

 その顔はとても悪魔を束ねる魔王には見えず、俺には優しい良い人にしか思えない。

 

 

「ンだよ、クソホモ。夜のお供がガキばかりだからって俺らを食い荒らしに来たのか?」

 

 

「その言い方だと、車力の彼女から聞いたようだな」

 

 

 しかし、痛い目に合わされたジークさんからは罵声が飛ぶ。ジークさんの言葉にホライゾンさんはピークさんの牢を見た。

 

 

「言っちゃった」

 

 

「……ふっ、構わないさ」

 

 

「ねぇ、ホントなの? アンタ、ホントに男色家なの?」

 

 

 え? と思わず、俺は顔を上げてホライゾンさんの方を見る。男色家って確か、男の人のことが好きって言葉だよな。つまり、ホライゾンが好きなのは男ってことか? いやいや、まさか。こんな子供には手出ししないし、元々敵だった俺たちにも友好に接してる人が……。

 

 

「肯定だ。最近だと、少年の兄が好ましい」

 

 

「「え…………」」

 

 

 少年って……俺のこと、だよな……? 思わずアニさんと言葉が被っちゃったけど……ホライゾンさんが兄さんのことを……? そんな風には見えなかったけど……。

 

 

「よ、良かったね、アニ。こいつが同性愛者なら君は何も被害を受けなくて」

 

 

「うっさい。黙ってて」

 

 

「え…………」

 

 

 なんかフーバーさんが撃沈されてるけど、兄さんが狙われてる話の方が恐ろしくてフォローできなかった。

 

 

「へぇ、本当だったんだ。道理で私の胸触っといて、なんもないわけだ」

 

 

「は?」

 

 

「何を言っている車力の……たしか、ピークだったかな? 私はワンマンアーミー、たった1人の軍隊」

 

 

「アナタの方が何言ってるの」

 

 

「かつての私は甘かった。世界がこんなにも広いのだと知っていれば、兵団を出た後は美少年を侍らせて内地で暮らそうという夢も持たなかっただろう」

 

 

「本当に何言ってるの?」

 

 

「しかし私は出会ってしまった! そう! 巨人は男の姿のみ! そう思っていた! だがあの日あの時! 初めての壁外調査に出た時に見たのだ! 巨人ながら乳房があり、見目麗しい巨人の姿を!」

 

 

 何の話だ……? 

 

 

「そう……アニ・レオンハート、女型の巨人……私はその圧倒的な存在に心奪われた!」

 

 

「……やめて」

 

 

「うるさ……静かにしてよ……」

 

 

 褒められてか、それとも気持ち悪いのかは分からないけどアニさんが小声で言う。さらには、感動的な再会を邪魔されてかガビも恨めしそうな顔で言ったけど、ホライゾンさんは構わずに続けた。

 

 

「敢えて言わせてもらおう! この気持ち……まさしく愛だ!!」

 

 

「愛!?」

 

 

 なんでそこでフーバーさんが驚くんですか? 

 

 

「しかし、私は知ってしまった! 巨人の中身は人間であると! しかも、女性のフォルムをしているのは女型の巨人のみ! ピーク・フィンガーやユミルのように、変身者が女性でも巨人の姿は凹凸のない男性に近いもの! 変身前に胸はあっても、巨人になってから失われてしまう! 何故だ!?」

 

 

「それ確かめるために触られたんだ、私」

 

 

 初めてだったんだけどなぁと虚ろな目で言うピークさんに、アニさんが「え? まさか、私のも触った……?」と身を守るようにして下がる。

 

 

「だが、そんなことはどうでもいい! 私は気づいてしまった! そう! 変身前が女性の巨人能力者の巨人の方が私の美的感覚を刺激すると! 女型の巨人の乳房に、アニの鍛えられた筋肉が反映されたかのような肉体美! ユミルの身軽さと、鋭敏さを顕したかのような顎の巨人! ピークのおっとりとした性格と瞬発力の高さを見せてくれた車力の巨人!」

 

 

 そして何よりとホライゾンさんは手を広げた。

 

 

「戦鎚の巨人……ラーラ・タイバー。美しかった……アレ以上の巨人は存在し得ないだろう……」

 

 

 もはや言葉は不要とばかりにそれだけ言ったホライゾンさんだったけど、直ぐに「だが!」と目を見開くと同時に、また声を張り上げる。

 

 

「真に美しいのは君たちを作り、その基となっている始祖ユミル……すなわち始祖の巨人なのではないかと……!!」

 

 

 だから私は求める! 激しいまでに! 始祖の巨人を!! 

 

 

 そう高らかに言い放ったホライゾンさんに、俺たちはどう言葉を紡げばいいのかわからなくなってしまった。




連続投稿おわり

ホモくんなんで地下室いったの?→マジでなんでなんだろうね……
後半勝手に動いて気持ち悪いこと言ってたから作者もわかんない……

何故かガビをファルコの前でピーしてピーするR18展開を閃いたが、そっと閉じた。
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