進撃の巨人 RTA Titan Slayer   作:オールF

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あんなの好きになってるアニとヒストリアが可哀想に見えてきた(白目)
ホモで巨人好きで戦闘狂なとこ抜いたら紳士的で良い奴なのにね(眼球喪失)


勲章授与式

 夢を見た。

 見たことも無い身体をした巨人が、たくさんの超大型巨人を引き連れて、どこかへと歩いていくのを、お腹を大きくした私が見つめているだけの夢。

 とても奇妙な夢だった。夢の中の私はどうしてそうなったかを知っていて、どうにもならなかったかと悔やんでいた。

 どうしてそうなったのかは既に忘れてしまったが、起きた今でも後悔の念だけは残っていて、気持ちの悪い目覚めだった。

 けれど、こんな気分のままでは午後から行われる勲章授与式に集中できない。もう一眠りしても良い夢を見れる確証はないし、かと言って何か楽しいことを考えられる余裕もない。

 

 

「アレって、きっと……」

 

 

 起ききっていない頭で、さっき夢の中で私が見上げていた巨人のことを思い出す。長く黒い髪に、この世に怨嗟や憎悪を向けるかのような形相をした50メートルなんてスケールじゃ収まらない姿だった。

 頭部以外が骨と幾らかの腱だけで、胸から上と下半身の間が異様に肥大化した姿だったのを覚えている。どうやって動いていたのかは分からなかったけど、あの巨人が何なのかはわかる。

 きっとあれが始祖の巨人。おそらくだけど、髪や顔つきからエレンが変身した姿なんじゃないかと思う。

 けど、どうしてあんな夢を? 

 

 

「なんだろう……嫌な予感がする」

 

 

 思い出したのはほんの一部分だけなのに、心臓がバクバクと音を立て始める。

 どうして? 何に対して? 何も分からないはずなのに、どうしてこんなに怖いんだろう。

 私はベッドの上で膝を抱えて丸くなる。

 その時、部屋の扉をノックされた。

 

 

「はい?」

 

 

「あたしだ、入るぞ」

 

 

 そう言って入ってきたユミルは私の様子を見るなり、神妙な面持ちで尋ねてきた。

 

 

「……どうした? 何かあったのか?」

 

 

「ううん。なんでもないよ。ちょっと、嫌な夢を見ただけ」

 

 

 心配しないでと取り繕った笑みを浮かべる。けど、やっぱりそれじゃユミルは納得しなかったようで、ため息をついてこちらを睨みつけてくる。

 

 

「嘘つけ。……なんだ? あの身分詐称男が原因か?」

 

 

「だから、嫌な夢見たからって言ってるじゃん。ホライゾンは関係ないよ」

 

 

 私の顔色が優れないのをホライゾンのせいだと思ったユミルの言葉を即座に否定する。

 否定する。

 この前のことは建前を使って近づこうとした私が悪い。まぁ、落ち込んだのはホントだし、それからあんまりホライゾンと話せてない。

 昨日も折角のパーティなのに、ほとんど会場にはいなくて、どこに行ってたのかと訊けばマーレの子達をライナーに会わせてたとか言ってたし。

 ホライゾンには感謝してるけど、不満があるのは事実。でも、それと今の気持ちとは関係のないことだ。

 ただ、夢の内容が内容なだけに不安になってしまっているだけだ。

 

 

「……ならいいけどよ。まぁ、なんだ。お前はいつも通りでいろ。それが一番だってみんな知ってっからさ」

 

 

 それだけ言うと、ユミルはすぐに部屋から出て行った。

 相変わらず不器用な励まし方をする人だと思う。でも、その優しさが嬉しくて、心強かった。

 

 

「ありがとう、ユミル」

 

 

 多分聞こえてないだろうけど、そう言わざるを得なかった。

 

 

 ###

 

 

 朝食と昼食を手早く済ませて、ウォールシーナ内にある宮殿に向かう。今回の式典では、ウォールマリア領を奪還した調査兵団の功績と、調査兵団の中でも最も貢献した兵士たちに勲章を授けることになっている。

 マーレからやってきた人間ながらも巨人になれる怪物という存在に、調査兵団は被害を出しながらも、見事に5年前の雪辱を果たして勝利することが出来た。

 その功績は、議員たちの中ではエルヴィン団長やリヴァイ兵士長、ハンジさんとミケさん、そしてエレンの存在が大きいと評価されているけど、私はそうは思わない。

 

 

「おっ、相変わらず可愛いな。さすが私のヒストリアだ」

 

 

 髪を結んでもらいながら、今回の受賞者のリストに目を通していると、今日は来賓という形で式に参加するユミルがやって来る。

 

 

「戴冠式以来か? どうだ、もう慣れたか?」

 

 

「全然。私まだ15歳なんだよ?」

 

 

 妾の子から始まって、開拓地で数年暮らして、その後は兵士になって、卒業したと思ったら今度は王様だなんて、今でも信じられない。これこそ夢なんじゃないかと思う。

 

 

「ヒストリア女王、できました」

 

 

「ありがとうございます」

 

 

 仕人の女の人が結んでくれた髪を姿見で確認していると、横からユミルがぱちぱちと小さく拍手してくる。

 

 

「おー、さすが。似合ってんじゃん」

 

 

「……そうかな?」

 

 

 束ねるのはあんまりやらないからちょっと気恥しいけど、褒められるのは悪い気分じゃない。

 

 

「そういやあの独断専行野郎は、ヒストリアの正装見るの初めてだったよな」

 

 

「え? あ、うん……そう、だね」

 

 

 

 ホライゾンは私が王冠を授かる時には、アニと2人でこの島から出ようとしてたんだよね。パニックになるからって兵長達は、戴冠式が終わるまで私には教えてくれなかったけど。

 

 

「……わりぃ、やな事思い出させたか?」

 

 

「ううん。大丈夫だよ」

 

 

 ユミルは本当に優しいなと思う。それはきっと、ユミルにとって私という人間が大切だからなんだと思うけど、王様になってみんなが1歩引く中で変な気遣いなんてせずに接してくれるのが素直に嬉しかった。

 気が楽になったからか、王宮にいる時の着にくそうな軍服に身を包んでいるユミルを見兼ねて、私は口を開いた。

 

 

「ユミルはいいの? まだ調査兵団なのに」

 

 

「今はヒストリアに仕える近衛兵だからな。でも、まぁ、ヒストリアが言うなら久しぶりに着てみるか」

 

 

 そう言って制服を取りに行くためか、部屋から出ていく。その後ろ姿を見遣りながら、私は深呼吸をして気持ちを整える。

 今日の受賞の中には、私にとって一番のヒーローである彼の名前がある。可愛く映らなくてもいい。けど、せめて王として彼にみっともない姿を見せないようにしようと私は気を引き締めた。

 

 

 ###

 

 

 勲章授与式が始まるまで30分を切った。私はヒストリアの提案に乗って、もう着ることはないと思っていた調査兵団の制服に袖を通した。立体機動装置をつけなければこっちの方が楽でいいなと思いながら、会場へと戻ると、ヒストリアを困らせているクソ野郎が何やら面白いことになっていた。

 

 

「なぁ、ジャン、どうして私は囲まれているんだ?」

 

 

「兵長命令だ」

 

 

「ホライゾンは誰かが見てないと、勝手に姿を消しますからね」

 

 

「だから、ホライゾン班の俺たちが囲んでおけば、目を離さなくて済むだろ?」

 

 

 ジャンとサシャ、そしてコニーに囲まれたホライゾンはやや不服そうながらも、自分のこれまでの行いを振り返って仕方ないと納得したのか、3人に囲まれるのを良しとした。

 

 

「しかし、しばらく見ないうちに3人とも少し変わったか?」

 

 

「しばらくって……1ヶ月ちょっとだろうがよ。何が変わるって言うんだよ」

 

 

 ホライゾンの言葉にジャンが噛み付く。すると、奴は答えた。

 

 

「ジャンは髪が伸びたくらいだが……コニーは少し背が伸びたか?」

 

 

「え? そうか?」

 

 

 言われてみれば、確かに卒団した時よりサシャに身長が追いついたように見える。それでも、言われてみれば気づくというレベルだ。久しぶりに見たから気づける変化だろうと聞き耳を立てながら、話の行く末を見守る。

 

 

「私は何か変わりましたか?」

 

 

「そうだな君は……ふむ」

 

 

 サシャからの問いかけに、ホライゾンは顎に手を添えたかと思うと、その後すぐに「失礼」とサシャの身体に触れた。

 

 

「ちょわっ!?」

 

 

「は? おい、何してんだよこの変態!」

 

 

「失礼と言った!」

 

 

「お前失礼って言ったら何してもいいと思ってんだろ!! これがダメなことくらい俺でもわかるぞ!」

 

 

 4人がそれぞれ声を荒らげたのを聞いて、どうしたどうしたと周囲の目線が集まる。身体を触られているサシャは逃げようにも変態のくそうざい動きのせいで、身体に力が入らないのか、時々艶っぽい声になってやがる。

 

 

「ふむ、やはりそういう事か」

 

 

「な、な、なにがですぅ……?」

 

 

「肉がついたように思えたが変わったのは胸くらいで、他は筋肉に回っているようだ。私がいない間も訓練は怠っていなかったようだな」

 

 

 なぜか嬉しそうに微笑む変態に、周囲はドン引きを隠せないようで、かくいう私もヒストリアが見てなくてよかったと胸をなで下ろしていた。

 

 

「それくらい聞いてくれたらいいじゃないですか!?」

 

 

「私は自分の目で見て、触れたものしか信じない」

 

 

「あぁご立派な主義ですねぇ!!」

 

 

 全く詫びれる様子のない変態に、あの芋女のサシャが珍しく恥ずかしそうに「もうお嫁にいけねぇ……!」と素を出して顔を押さえていた。それをコニーが慰めていると、一悶着終わったからかエレンたちが変態へと歩み寄る。

 

 

「相変わらずだなお前……」

 

 

「サシャ、可哀想」

 

 

「はは……」

 

 

 コニーに慰められている被害者を尻目にエレンが呆れたように言うと、ミカサがエレンの前で私にやったら殺すという目をしながら、変態へと言い放つ。それに気づいてかアルミンが乾いた笑いをして、ホライゾンへと問いかける。

 

 

「そうだホライゾン。アニたちの様子はどうだった?」

 

 

「ん? あぁ、食事の味が合わなかったのか、昨日はあまり浮かない顔だったな」

 

 

「そっか……調理の人にはパーティで出すやつと同じにしてくださいって頼んだんだけど……マーレの人の舌には合わなかったのかな……」

 

 

 難しいねと真面目な顔で言い合ってるが、多分アニたちの表情が優れなかったのは飯のせいじゃなくて、やっぱりアイツがなにかしたからじゃねぇのか……? 戻ってきたガキの男の方はホライゾンから終始、目を逸らしてたし。

 

 

「君が人類の仇をうってくれた英雄か」

 

 

 思い当たる節がありすぎて何をしでかしたのか分からない変態に、誰だそいつはって言いたくなるような発言した奴がいた。

 

 

「皆がそう言う。無礼千万だ」

 

 

「言われてたのか?」

 

 

「言われてねぇだろ」

 

 

 否定せず、しかも迷惑がっているという様子を見せる変態に、天然のエレンがジャンへと問いかけるも即座に否定する。

 

 

「俺はマルロ・フロイデンベルク。君と同じ104期訓令兵で、今は憲兵団に所属している」

 

 

「そうか。私の名前は……」

 

 

「ホライゾン・モルガンだろ? それくらいは知っているさ」

 

 

 すげぇなアイツ、ホライゾンの言葉遮りやがった。出鼻をくじかれたみたいな顔をしている変態に、マルロってやつはあろうことか変態に対して尊敬に似た眼差しを向けながら口を開く。

 

 

「あの超大型巨人と鎧の巨人、更には獣の巨人や四足歩行の巨人も倒して、俺たちパラディ島の人々を救ってくれた英雄だろう? 旧支配体制から情報統制がなくなったからな。君のことは新聞やエルヴィン団長の話で何度も目にしているよ」

 

 

「ほう……それは興味ぶか」

 

 

「俺と同じ新兵にも関わらず何体もの巨人を倒して、初の壁外調査では突然現れた奇行種も倒したと聞いた。本当にすごいよ、君は」

 

 

 マルロの熱量に押されてか、言葉を遮られてばかりの変態は自分のペースを失ったのか、そのまま褒め殺しにされては頷くだけの機械になっていた。そんなホライゾンを誰も助ける気は無いのか、どこかに行かないように視界には入れつつも、少し引いた距離で近くのヤツらと談笑していた。

 

 

「こんな所にいた」

 

 

「……なんだ、ヒッチ。今いいところなんだ。邪魔しないでくれ」

 

 

 やっと見つけたという様子でやってきたのは、私よりも軽薄そうな感じの女兵士で、マルロと同じ憲兵団の制服を着ている。

 

 

「邪魔するわよ。そろそろ授与式が始まるのにアンタの姿が見えないから、探しに来たらなんで調査兵団のところにいるのさ」

 

 

「それはだな……」

 

 

「話なら後で聞いてあげるから、ほら早く行くよ」

 

 

「な、ちょ、おい、ヒッチ!」

 

 

 腕を組まれて、ウブなのか顔を赤らめて引きずられていくマルロと、ヒッチと呼ばれた女兵士が去ってから、嵐が去ってホッと安心した様子のホライゾンは「あれが天使か……」と意味のわからないことを呟いていた。




本当はフロックにも声かけさせる予定だったけど、特に繋がりも無さそうだし断念。ちなみにホモくん的にマルロはなしで、フロックはギリギリ。


幕間的な感じで書きたかったけど、本筋には関係ないのでザックレーとの美的感覚の共有話は捨てようかなと思います。まぁ、そんなこと言ったら始祖ユミル回以外幕間的な要素が強いので書かなくてよかったかもだけどね。
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