ほんとはアニメFinalがFinalを迎える(原作最終回)まで書くつもりはなかったんですけど、その時に書けるかわからないので、書きました。
Twitterとか活動報告では書いたんですけど、長々とユミルの血を持たない一般兵士が"座"にたどり着くまでを書いてたら終わらない気がしたので過程や方法なぞ! どうでも良いのだー!ってことでね。
タイトルは仮でつけたやつそのままで本筋とはあんまりそぐわない気がしますな。がはは。
少女は長い時をさまよっていた。
それはいつからだろうか。
生まれ育った村を蹂躙された日から?
謎の生物と接触して力を手に入れた日から?
王を庇って槍を受けた時から?
時間も場所の概念もない場所で少女は王のために巨人を作り続けた。
彼女の力を9等分した特別な巨人から、王の兵士として作られた無垢の巨人も。
うなじがある限り、頭が、手が、肩が、胴が、腰が、足が、四肢がもげようとも彼女は巨人の体を作り続けた。
ひと時の休息が訪れた。しかしそれはすぐに終わり、無垢の巨人は増え、9つの巨人たちが姿形を変える度に彼女は生きていた頃と変わらず奴隷のように働き続けた。
だが、ある時になってから無垢の巨人の再生数が極端に落ちた。理由は不明だがうなじが無くなり死亡してしまう巨人は少なからずいた。しかし、少数と断ずることが出来ないほどに無垢の巨人の死亡数が増えた。
無垢の巨人を生成することができる王家の血を引いた者の脊髄液を含んだ巨人たちも作成してからほんの数分の命だった。また、それらの巨人よりも強力なはずの9つの巨人たちも手足を再生させられることがあった。
けれども、それすらなくなり少女はただ立ち尽くしていた。
「あぁ、会いたかった! 会いたかったぞ!」
久方ぶりに聞いた他人の声に、彼女は思わず振り向いた。
そして、その声の主の姿を見て彼女は驚いた。いや、姿ではなく中身という方が正しい。
彼女のいる地は彼女の血を引く者、"ユミルの血"を持つものでなければ訪れることが出来ない。
なのに、やってきた男はユミルの血を引いていない。巨人の力を人の姿のまま発揮することを目的として作られたアッカーマンの血も引いていない。奇妙な男だった。
「いやはや、あの男の血や髪、あとはその他もろもろを食した甲斐があったというもの!」
少女は若くして奴隷となり、あまり教養を授かっていないため知識に乏しいものの、男がかなり気の狂ったことをしたということは察せられた。ユミルの血が無ければ侵入できない"座"に、男はユミルの血やユミルの血を持つ者の遺伝子を身体に取り込んで無理矢理に侵入してきたと言うのだ。
正直引いた。どれくらい引いたかと訊かれれば、自分の死後に王が自身の身体を刻んで娘たちに食わせた時くらいだ。あれは身内だからまだいいかもしれないが、この男はユミルの血を引いていないため、ユミルの血を取り込むということは完全に他人の血である。いや、もしかしたら愛する者なのかもしれない。
「やはり私と君は、運命の赤い糸で結ばれていたようだな。そうだ、必ずこうなるという運命にあった!!」
ビクッと少女はたじろいだ。距離はまだあるのだが、どうにも男の声の張りというか、圧が凄かった。
「君の圧倒的な能力に私は心奪われた……この気持ち、まさしく愛だ!!」
少女は奴隷にされた時に、"奴隷に話す口は不要だ"と舌を切り落とされ話すことができなくなっている。もし、舌があり話すことが出来たのなら「愛!?」と声を出していただろう。
ただ身を引くだけで黙ったままの少女に、男は怪訝に思ったのか首を傾げた。
「ん?」
そして、考える所作をとると男はブツブツと呟き始める。
「もしや言語が違うのか? 数千年近く経っているのなら有り得るか。いや、あの驚きようは……ふむ……」
ある程度考えたところで男は少女に尋ねた。
「すまない。確認が遅れて申し訳がないのだが、わかったら首を縦に振って、分からなかったら横に振って貰えないだろうか」
そう尋ねてから男は少女にいくつかの質問を投げかけようと考えていたのだが、少女がゆっくりと首を縦に振ったのを見て「おぉ!」と目を輝かせた。
「わかるのか! 私の言葉が!」
コクリと少女は頷く。
「そうかそうか!」
嬉しそうに男は頷きながら、拳を握る。そうして、しばらくしてから男は「忘れていた!」と思い出したように叫んだ。男は少女の前まで近づくと膝を着き、彼女と目線を合わせた。
「私の名前はホライゾン・モルガン。見ての通り軍人だ」
今までの不可解な行動や言動が嘘のようにかしこまった態度となった男に驚きつつ(兵服が彼女の生きていた頃と変化しており、見ただけで軍人と判断できなかったが)少女は首肯する。
「ユミル・フリッツとお見受けしたが間違いないだろうか?」
ここで違うと首を横に振ったらどうなるかと少女───────ユミル・フリッツの脳裏によぎったもののそうするとまた騒がしくなりそうだと小さく頷く。
「そうか」
ホライゾンはそれを聞いて安堵したような表情を浮かべると、少女の手を取った。
「私は君の存在を知った日から、母や父、姉を殺されたというのに、あろう事か私は君に……好意を抱いてしまった」
恋焦がれるような目をしながら、男は懺悔するように言葉を紡いだ。
「興味以上の対象だった。私の一族が、君を利用して、他国に対して敵意を向けられるほどに国土を拡大する道具として見ていなかったという事実を一族が受け継いできた書物を見て知ってしまった時、私は君に会いたくて会いたくて仕方がなかった」
モルガン家は壁内において大きな権力は無いにも関わらず、貴族として認知され、王政からも丁重に扱われていた。その理由はただ1つ、フリッツ王の側近の貴族だったからである。
先祖代々ユミルの血を取り込まずにきた貴族はモルガン家だけではない。しかし、ユミルの血を引いていないということは始祖の巨人の記憶の改竄を受けないということである。
記憶の改竄が不可能である貴族はパラディ島に渡ってから、エルディア人の罪と島の秘密を知るためか、餌を与えることで口を封じてきた。王の力に縋って権力を広げた貴族たちの末路は彼らに対して日頃から鬱憤を貯めていた芸術家によって晴らされた。
だがモルガン家は王家が偽りのモノに入れ替わってから離反し、トロスト区へと移住した。彼らが仕えるべきは真の王、フリッツ(レイス)王であり、王政が祀りあげた偽りの王に興味がなかったのだ。
他の貴族も、秘密を話さないのであれば自分たちの生活の潤沢さが高まるため、問題ないと判断し、王政は彼らの離反を許した。
モルガン家は王政から離れ、穏やかな生活を送ることにした。王への忠義は忘れず、パラディ島へと渡り、数年間もの平和を享受して欲しいと願った王の想いを汲み取った。
汲み取った結果、パラディ島を脅かし、レイス王の命を脅かすのであればエルディア帝国、巨人の秘密、ユミル・フリッツや座の存在など、王政が隠している情報を一族で最も若い男児、あるいは女児に伝え、王を守るよう継承するように書物を残したのだ。
現にモルガン家の末裔であるホライゾンは、彼の同期であり正当な継承権を所持している少女が新たな王になると決まった時には迅速に行動していた。
「私の先祖や王家の人々が君にした仕打ちは許されるものでは無いだろう」
その後のことも含めてと述懐するホライゾンの言葉を聞きながら、暗く地の底に沈んだ瞳で男を見つめる。
「だが、それでも、私は君に会いたかった」
どうしてと言葉が出れば尋ねていただろう。ユミルはどうやってその意を伝えようかと思案している間にもホライゾンは話を続けていた。
「人の身を持ちながらも人を超えた存在。しかし言葉は話せず、ただ人を喰らうだけの化け物。それを作る者が普通であるわけが無いと私は思っていた。だが、君は紛うことなき乙女だった」
そして、男は何を思ったのか、彼女の頭を優しく包み込んだ。
「ずっと待っていたのだろう。その顔を見ればわかる、2000年前から誰かを」
少女の瞳に、再び光が灯った。
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ホライゾンが眠りについてから1時間が経った。ベッドの周りには団長や兵長、ミカサやアルミン、ジャンとコニーにサシャ、ユミル、そしてヒストリアがいた。
俺は始祖の巨人の持ち主で、ヒストリアは王家の血を継ぐ者として、ホライゾンを"座"に導く架け橋として手を握っていた。
「エレン」
ミカサに声をかけられて、俺は顔を上げた。
「大丈夫? 喉乾いてない?」
「あぁ、俺は大丈夫だ。ヒストリアは大丈夫か?」
「うん、私も大丈夫」
左手を両手で包み込むように握るヒストリアの顔は、とても大丈夫そうじゃなかったが、俺は「そうか」としか言えなかった。
ホライゾンの帰りを待って行われた栄誉授与式でヒストリアに触れた時に、俺は今までの"進撃の巨人"の継承者が辿ってきた足跡と、"始祖の巨人"の力でこれから起こる未来を見た。
それを見たからには、ホライゾンに協力せざるを得なかった。多分、俺はこいつが居なかったら地ならしの力を使って、マーレとパラディ島以外を踏み鳴らして、ユミルの呪いによる13年の寿命をまっとうする前にこの世からいなくなっていた。しかも、ミカサやアルミンたちを残して。
そんな残酷な未来ではなく、俺たちがおじいちゃんになっても笑いあっていられる未来にするためには、この方法しか無かった。
「……ッ」
そのために、俺は、ホライゾンを犠牲にしたんだ。
記憶を見て、始祖の巨人の力を知って、俺は、俺は……。
『気にするな。人は遅かれ早かれ死ぬのだ。それがたまたまあの時だっただけだ』
『ちが、違うッ、違うんだよホライゾン! オ、オ、俺は、お前の家族を、お前が兵士になるための、理由に……』
『それは今の君がしたことじゃないんだろう? それに君は自分も地獄に突き落とすために母親と父親を殺しているじゃないか』
諭すように、俺を宥めるように、過ぎ去ったことは仕方ないと言うふうにホライゾンは俺の言葉を聞き流した。
怒れよ、殴れよ。俺はお前の家族を殺したんだぞと大声を張り上げそうになったときに、ホライゾンは俺の頭の横の壁に手をついた。
『もう、いいんだ。他者を利用したのは君だけじゃない』
そう言って、ホライゾンはなんでか知らないけど俺の頬を撫でて立ち去ってしまった。どうして割り切れるのか俺には理解できなかった。
普通なら罵って、めちゃくちゃに殴っても収まりきらない怒りなんじゃないかと思った。あいつが普通じゃないタイプにしろ、そうなるもんだと思ってた。
けれど、あいつも俺と同じで目的のために誰かを利用していたのだとしたら。
『俺を責める資格はない……ってか』
なんでお前はそんなに真っ直ぐでいられるんだよと、俺は壁を背もたれに呟いて、アルミンが呼びに来るまで戻ってきたシガンシナの空を見つめていた。
それを思い出しているとまたミカサが心配するように問いかけてきた。
「エレン、顔色が悪いけど」
「……あぁ、さすがに、ちょっと、何か飲みてぇな」
歯切れは悪かったが我ながら落ち着いて言えたと思う。ミカサも特に不審に思う事なく「わかった」と飲み物を注いでくれている。
「リヴァイ、ホライゾンは彼女に会えているのだろうか」
「さぁな」
「……オレもユミルの民ならば、ユミル・フリッツに会えるのだろうか」
「その夢は死ぬ時までとっとけよ」
その横でエルヴィン団長とリヴァイ兵長が話し、それを聞いてなにか思ったのかコニーが口を開く。
「ホライゾンが会いに行っているユミルって、こっちのユミルの元になった人なんだよな?」
「元っつうか……まぁ、そうだな」
訊かれて少し違うんだがと思いはしたが、コニーに説明するのは面倒だと判断したのかユミルが頷く。
「ユミルじゃないユミルはヒストリアの先祖なんですよね。やっぱり可愛いんでしょうか」
「さぁ、どうだろう」
「けど、奴隷だったんだろ? ヒストリアみたいに綺麗ってことはねぇんじゃねえか」
今度はサシャの問いにアルミンが苦笑し、ジャンが口を開く。
「私は別に、可愛くも綺麗でもないよ」
そして、ヒストリアが静かに否定すると部屋の中は静かになった。ハンジさんがいればこの空気も少しはマシになるのかもしれないが、あの人は兵長に「いたら騒がしいからこれでも読んでろクソメガネ」とホライゾンが書き記した巨人についての見解レポートってのに釘付けになっていた。
実証とか更なる考証のためとか言ってモブリットさんたちを振り回していたが、ヒストリアの顔を見ていると辛くなるからいて欲しかったなと思う。
「なぁ、エレン、これっていつまで繋いでりゃいいんだ?」
重苦しい空気の中、ユミルが尋ねてくる。そうして、みんなの視線が俺に集まってきて、話さざるを得なくなる。
「……俺が聞きてぇよ」
帰ってこないと知っている人間の手をいつまで握っていればいいのか。それを1番聞きたいのは間違いなく俺だった。
補足とか
・ユミルが2人もいてややこしいですが、最初の方が奴隷の方で、あとの方がそばかすの方です。
・モルガン家は王家に忠誠を誓ったいい貴族でした。が、どっかで好奇心の怪物の因子を持った貴族と結ばれて、壁の外に想いを馳せたり、全ての9つの巨人を狩って侍らせて一生を終えたいとかいうヤベー奴を産む結果になりました。
・ほかの貴族はしっかり芸術品にされてます。芸術家はモルガン家が元貴族と知り、さらにホライゾンの巨人解体術を聞いて少しばかり興味を持ったそうです。
・ホライゾンが9つの巨人を1回ずつ倒した理由ですが、メタ的に言えばRTAだからです。けれど、ホライゾン的にはユミル(奴隷)に会うための試練と考えていました(始祖と進撃が味方だった側にいるという誤算)
・エルヴィン団長の"オレ"に関しては素が出たからいうことで、誤字では無いです。兵団組織の長ということで同席してますが、その実暇さえあればエレンとホライゾンに聞きたいことてんこ盛りです。
・ハンジを省いた理由は何するか分からないからです(こいつとホライゾンは作者の意図を超える動きをしてくるので)
・アニたちはこの間も地下にいます。ガビたちは軟禁状態です。ただ、ラーラは自由に動き回れて、本国に計画は順調と伝えてます(ラーラはホライゾンの計画を知ってます)
・ダイナの巨人態ですが、生き残らせていたけど過程を端折った結果使いませんでした。(使ったけど描かれなかった方が正しいのかもしれない)
ちなみに使い道は、うなじを傷つけないように背中を割いてホライゾンが中に入ってぬくぬくして座に接続するとかいうトンチキな方法の実験のために出てくる予定でした。ちなみにコニー母ちゃんはラガコ村にいますので、いつか書いた壁内巨人は一体だけは誤りです(活動しているのは一体なのである意味正解ではあった)
・じゃ、ダイナ巨人態はどうなったのか。どうなるんですかね。
あと2話で終わらせられるかなぁ
その他「これどうなったの」「こいつなにしてんの」みたいなのあれば次回補足しようかなと。