時間も心も蝕まれ、徹底的に自由(ウマの育成、ブルーベリー学園への留学、聖遺物厳選、人理修復)を奪われ、こんなもんが書き上がるって知ってりゃ誰もハーメルンなんか行かないだろう
でも、皆何かに背中を押されて地獄に足を突っ込むんだ
ライナー、あけましておめでとう。
旧王政府が打破され、真の女王であるヒストリア・レイスからの勲章授与式は壁の中の秘密を解き明かし、壁の外からやってきた知性ある巨人の中身のほぼ全てを討伐、捕縛するのに貢献したホライゾン・モルガンの帰還後滞りなく行われた。
彼が知性ある敵国の巨人化能力者アニ・レオンハートを案内役として壁の外へと赴いた際に戴冠式は行われたが、女王と英雄の存在を壁内にアピールしておきたいという新王政府の狙いがあった。
また、女王個人としても壁の中の平和を勝ち取った勇者たちを直接労いたい、その中に1人だけいないというのは寂しいという思いが彼女の中にはあった。
「遅くなりましたザックレー総統閣下」
そして、その勲章授与式の前日、英雄の帰還と共にやってきた敵国からの来客を迎えつつ、祝勝会を開いたパラディ島とマーレから来賓の面々たちが集う中、ホライゾンはとある男が待つ部屋へと訪れていた。
「構わんよ。だが、閣下はよしたまえ、ホライゾン君」
部屋で待っていたのは旧王政時代に三兵団のトップに立っていたザックレー総統で、彼は紅茶を嗜みながら来訪者を迎え入れる。
「では、総統と」
「ああ。それでいい。座りたまえ」
ホライゾンは失礼しますと告げてから彼の向かい側に腰を下ろす。
「随分と酒気を帯びてるようだが、英雄は酒が好みか?」
「マーレからの捧げ物が美味でして。総統にも1杯と言いたいところですが、私はいわゆるエゴイスト。アレは私が好きに飲ませていただきます」
「そうか」
返ってきた答えにザックレーは調査兵団のやつは相変わらず変わり者が多いなと静かに頷く。酒好きのピクシスあたりなら黙っていないところだが、ザックレーには関係の無い事だった。
「それで、予定よりも数十分遅れたが、式はそれだけ盛り上がっているのか?」
聞けばホライゾンを慕う者は多いという。今のパラディ島があるのはホライゾンのおかげという声もあり、今回の勲章授与式もそういう面は強い。
「いえ、来賓の子供たちがかつての仲間たちと会いたいと言うので少し捕虜たちと戯れを」
戯れというには、自分たちにとっての英雄たちが檻に囚われた姿を見せ、さらには強く勇ましいと思っていた男から性的な興味を抱かれていると伝えるなど生易しいものではなかったが。
「そうかね」
ザックレーもまた深くは聞き返さず、紅茶を啜る。
ヒストリアやエルヴィン、ニックといった面々に評価されているため、ザックレーはホライゾンとはどんな男かと興味を持った。
実際に会ってみると佇まいからは自身の毛嫌いしている貴族のようなものを感じつつも、知性巨人を敵に回しても勝つほどの者にしてはどこか砕けた風がある。
「それで、私にどのようなご用件でしょう?」
「ふむ、そうだな」
紅茶を飲み干し、手近なテーブルにカップを置いたザックレーは立ち上がると暗くなった外の見える窓際へと向かい、振り返った。
「君は確かほぼ全ての巨人兵を捕らえたのだったな」
「ええ」
女型の巨人、アニ・レオンハート。
獣の巨人、ジーク・イェーガー。
鎧の巨人、ライナー・ブラウン。
超大型巨人、ベルトルト・フーバー。
車力の巨人、ピーク・フィンガー。
そして、現在は女王を守る近衛兵となっている顎の巨人、ユミル。
聞けば、マーレでは戦鎚の巨人も倒したという。
しかし、ザックレーが聞きたいのは討伐した過程や理由ではない。
「その際、アニ・レオンハート、ライナー・ブラウン、ベルトルト・フーバー、ジーク・イェーガーらを拘束する前に四肢を切断したと聞いたが、事実か?」
「はい。事実です」
まるで詰問するように問い詰めてくるザックレーにホライゾンは気圧されることもなく、事実を認める。
「ふむ。理由はエルヴィンから聞いている」
パラディ島側で有している巨人化能力者であるエレン・イェーガーの実験の際に、巨人化する際に激しく体力を消費している、あるいは肉体の部位が大きく欠損している場合は巨人化が出来ないと報告されている。できてもせいぜい2~4メートルの不出来な巨人にしかならない。
そのため、再び巨人化するのを防ぐには四肢を切断する必要があったという理由は理解出来る。
「躊躇わなかったのか?」
しかし、自分たちの生存を脅かす巨人とはいえ、数年間同期として同じ宿舎で衣食住を共にしたものたちに容易く刃を向けられるものだろうか。
「兵士として当然の決断です。躊躇えば私はおろか仲間も、そして守るべき市民も死ぬのですから」
「ふむ……」
兵士としての純粋さから出た行動と考えればそこまでおかしなことではない。
むしろ、賞賛されるべき行動といえる。
「何か問題がありましたか?」
「いや、実に合理的な決断だ。おかげで我々壁内人類はこうして生きながらえている」
首を振って、そう告げるザックレーに今度はホライゾンが問いかけた。
「もしやと思いますが、総統はそういった行動に憧れでも?」
「……!」
ホライゾンの問いかけにザックレーの表情が固まる。
「おや、当たりですか?」
「……あぁ、そうだ」
再び椅子に座ったザックレーは、どこか興奮した面持ちで話し始める。
「私はかねてから偉そうにふんぞり返っている者が大の嫌いでね。そんな奴らに一泡吹かせたり、苦しむ顔を見るのが何よりの楽しみだった」
「過去形、ということは」
「ああ、君のいない間にこの職位に就く前から考えていたありとあらゆる仕打ちを奴らにしてやったよ」
クックックと笑みを浮かべるザックレーの脳裏には下着と靴下以外の衣類を身につけずに肛門から食事を流し込まれる旧貴族たちの姿が目に焼き付いていた。
「傑作だったよ。あれ以上の芸術品はないくらいにな」
醜いはずなのに美しいとすら感じたザックレーは生涯誰にも見せたことの無い表情で嬉しそうに語る。そんなザックレーにホライゾンは引くわけでも同調するわけでもなく口を開いた。
「なるほど。総統は嗜虐的な一面があると。これは恐ろしい」
「君が言うかね? まぁ……職務と趣味では違うことは確かか」
真顔で棒読みで発せられたホライゾンの言葉にザックレーは本気では受け取らずとも、自身の内にある嗜虐性は認めざるを得ないかと頷く。
「ではマーレの兵士たちは相手が私でまだ良かったと言えるでしょう」
「彼らの身柄は調査兵団預かりだったからな」
それに名ばかりの総統では、いくら捕らえたとはいえ戦士として、兵士として訓練を受けてきたマーレの戦士たちの口を割らせることは難しいだろうと腕を組む。
「ええ。しかし、彼らには巨人化能力者故の再生能力がある。いくら戦士として訓練を受けているとはいえ、恥辱や拷問の痛みには慣れていませんから。総統の嗜好が発揮されると傷物では済まないでしょう」
「ふむ? 彼らは巨人化する際に自身に傷をつけるのだろう?」
「ええ。しかし、五感は人そのもの。痛みはあるそうです」
実際、ホライゾンが念入りに拷問、尋問、詰問の限りを尽くしたジーク・イェーガーは1時間も経たずに「なんだよおおおもおおお!!! やめろよおおお!!」と大の大人らしからぬ叫び声をあげながら泣き喚いていた。
「そうか……」
「なんですか、その表情は」
少しだけ残念そうに、それでいてホライゾンを羨ましがるように呟いたザックレーにホライゾンは嬉々として問いかけた。
「いや……彼らは我々に勝てると思ってこの島に来たのだろう? それが君という存在に討ち取られ、しかもそのような辱めを受けているところを想像してしまうと……な?」
あとは分かるだろう? と、どこか誇らしげな表情を浮かべるザックレーはあの貴族たちにも再生能力があればもっと色々なことを愉しめただろうにと心の底から残念がった。
「なるほど、理解はします。共感はしかねますが」
「理解できるだけでも、大概君もどうかしてると思うがね」
まるで親友か息子と話しているかのような心地良さを覚えたザックレーは空いた自身とホライゾンのカップにおかわりの紅茶を注ぐ。
その後も2人の談義は続き、それはザックレーが満足する夜更けまで続くのだった。
ほんとは前回の続き書こうと次話投稿のボタンを押したんだ。でも、その前にどこで終わってたかとか、何書いたっけとか振り返ったり感想欄を眺めてたらザックレーとまだ会話させてないことに気づいて……あー……って言いながら書き進めてたら1話分出来てたんだ。
わけわかんないよね。
一時期アニメ追い越してたのに、進撃のアニメは終わってもこの作品、まだ終わってないんだってよ。
バカみてぇだよな。