進撃の巨人 RTA Titan Slayer   作:オールF

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がおほう"っ!


Memory lane

 ヒストリアの手に触れた日から、俺は毎日思う。なんでこんなことになっちまったんだろうって。

 俺の中には2つの巨人の力が宿っている。1つは親父がヒストリアの姉貴から取り上げたレイス家の持つ始祖の巨人。

 もう1つも親父がマーレからパラディ島にやってきた時に、死ぬはずだった親父を救けたクルーガーが自身を喰わせることで継承させた進撃の巨人。

 始祖の巨人には、全てのユミルの民を操る力があるらしい。けど、王家の血を引いていない俺には使えない。だが、王家の血を引くやつに接触したりすれば使えるとホライゾンは言っていた。

 

 

「なんでそんなこと知ってんだよ」

「私の家系が元々レイス家に仕えていたらしくてな。パラディ島に移る前に書き残していたんだ」

 

 

 9つの巨人の力とそれぞれの能力について記した手帳があったおかげで、ホライゾンの先祖はパラディ島に移って来ても巨人の力や王家の秘密を忘れなかった。

 そういうことかと思えば、そもそもホライゾンの家系にユミルの血を引く者はおらず、始祖の改編能力は効かないし、巨人にもなれないという話だった。

 

 

「……でも、俺の見た未来ではお前は」

「ああ。一か八かだが。少なくても始祖ユミルには接触できるだろう」

 

 

 どうやってと聞けば、ホライゾンは話してくれるだろう。けど、その時の俺はそれを聞くことができなかった。

 

 

「……その、ほんとにいいのかよ」

「無論だとも。そのためだけに私は生きてきた」

 

 

 これから起こること、そしてその結末を俺は既に知っている。ヒストリアに触れた時に見た未来は確実に起こる。

 ホライゾンが始祖ユミルと対話し、彼女の力を使ってマーレを除く、パラディ島を危険視する国々の軍事施設を叩く。

 たったそれだけで俺たちへの怨嗟や恐怖が収まるとは思えないが、ホライゾンは時間稼ぎと話し合いの場を持つことくらいは出来ると真剣な目で俺に言った。

 

 

「でも、そうさせたのは」

「人は生きていれば死ぬ。私の家族はたまたまそれが早かっただけさ」

「違っ! 違うっ! だから、それは俺が!」

 

 

 ホライゾンの両親と姉貴が死んだのは、始祖の力を使って俺が無垢の巨人を動かして殺したからだ。寿命とか病気とかそんなんじゃない。俺の、勝手な都合で殺したんだ。

 そう声を荒らげる俺に、ホライゾンは「シーっ」と人差し指を俺の唇に当てた。

 

 

「……前にも言ったが、私は家族が生きていてもこの道を選んだ。壁の外にある景色を、御先祖様が記したものが正しいかを確かめたい。私の夢があった」

 

 

 おとめ座ゆえのセンチメンタリズムの意味は分からなかったが、俺は悪くないと言うホライゾンは肩を竦めた。

 

 

「それに私は見てみたかったんだ。水平線ってやつを」

「水平線を?」

 

 

 親父の記憶でも、パラディ島内の巨人を掃討した後でも、アルミンやミカサたちと一緒に見たことがある。海ってやつはどこまでも広がっている。その海と空との境界線を。

 

 

「それは見れたんだろ、じゃあもう……」

 

 

 いいじゃねぇかと言おうとして俺は口を噤んだ。

 ホライゾンがやろうとしていることは今まで誰もしたことがないような、パラディ島とマーレ以外の人が見れば悪魔と呼ばれても仕方の無い所業だ。

 けど、それをすることでミカサやアルミン、みんなを守ることが出来る。

 

 

「ヒストリアや、アニのことはどうすんだよ……」

 

 

 頑張って絞り出した言葉の弱々しさに俺は唇を噛む。

 

 

「2人はまともな男性経験がないから私のような異常者でも輝いて見えるのだろう。恋は盲目というやつさ」

 

 

 可哀想なことをしたとホライゾンは言うが、その目に後悔の色はない。

 

 

「ああ、でも……巨人になったアニには私の子を産んで欲しかったが……巨人に生殖能力はないからな……」

 

 

 心底残念そうに肩を竦めたホライゾンに俺はゾッとする。

 

 

「車力の彼女や、ユミルでも構わないが……あぁ、それこそ始祖ユミルに巨人にも生殖能力を与えてもらえば……!」

 

 

 こいつはやっぱりおかしい。普通じゃない。

 

 

「お前やっぱり気持ち悪ぃよ……」

「そうか? そうかな? ……ははっ、そうかもな」

 

 

 そうカラカラと笑った後、ホライゾンは座っていたベンチから立ち上がり、俺の横に立つ。

 

 

「次会うときは私は正真正銘悪魔の島の魔王となる。これほど男児が憧れる称号もあるまい」

 

 

 英雄になりたかったとか、調査兵団に入りたかったとか、そんなガキの戯言じゃなく、ホライゾンは魔王となって壁の外を破壊して、世界からの嫌われ者になる。

 それをこいつは誇らしげに未来に語る。

 その未来が訪れれば、きっとホライゾンはここに帰ってくることは無い。

 今は英雄として扱われているホライゾンも、ユミルの民に世界を相手に巨人の力を行使するホライゾンの姿を見せれば、その評価は一転するだろう。

 強大な力を持ちすぎた魔王として恐れられ、殺される。

 

 

「じゃあな、エレン。ミカサやアルミンと仲良く暮らすといい」

 

 

 ホライゾンはそう言って立ち去る。後のことは俺とヒストリアに任せたと、全てが終わったあとに始祖の力で俺たちからホライゾンの記憶を消す。

 アイツは最後にそう言った。

 俺はそれでいいのかと考えながら、あいつの眠る部屋にいた。ホライゾンが事を起こして、体の自由が戻った時にはマーレの隣国の軍事施設が戦鎚の力で生み出した雷槍もどきを撃ち込まれて黒煙をあげていた。

 

 

「……っ! エレン! 今の……!」

「あぁ……見えたよ。アルミンやミカサも、見たんだろ?」

 

 

 我に返ったのは俺だけじゃなく、ヒストリアやアルミンたちも一緒だった。その顔は青ざめていて、ミカサですら、動揺が顔に出ていた。

 

 

「なんで、こんなこと、ホライゾンは始祖ユミルに触れて、もし接触できたら、始祖の力を使って壁の巨人を動かして、ほかの国々がしばらく攻撃できないように威嚇するだけって……そういう話だった、よね?」

 

 

 確認するようにアルミンがヒストリアを見る。

 

 

「そう、聞いてた……けど……」

 

 

 実際は違った。ホライゾンは自由の翼を得て、パラディ島を、ユミルの民を敵として見てるやつらに復讐をしにいった。

 あいつ自身はユミルの民じゃないのに。

 

 

「エレン……」

 

 

 ずっと黙っている俺に、ミカサが口を開いた。

 

 

「もしかして、知っていたの? ホライゾンがしようとしていたこと……」

「………………あぁ」

 

 

 ミカサの問いかけに、俺は短く答えた。

 

 

「っ!」

 

 

 そんな俺の答えに、ヒストリアはホライゾンから手を離して俺の胸ぐらを掴み、怒りの表情を向ける。

 

 

「なんで!? なんで止めなかったの!? なんで!!」

「ちょ、ちょっとヒストリア落ち着いて!」

 

 

 つかみかかってくるヒストリアの腕を俺は払うことなく受け入れた。ヒストリアには俺を怒る資格がある。

 俺がホライゾンと話した時、俺に選択肢はいくつもあった。もうやめろ、こんなことはやめるんだと言えばよかった。

 そうすればあいつは考え直したかもしれない。けど俺はそうしなかった。

 

 

「なんでよ……どうして……」

 

 

 なんでとヒストリアが呟く間も、クルーガーの言葉や親父の言葉が流れてくる。

 ミカサやアルミンを守りたければ……。俺にとっての全てはこいつらだ。家族以上に好きなやつと、親友って言葉で片付けられないくらいに大切に思ってるやつ。

 そいつらが死なないように俺は何が出来る。

 未来の俺はそう考えて、ホライゾンを生かし、そして俺が巨人を憎み何がなんでも調査兵団に入るように俺は母親を殺した。

 ホライゾンは家族が死ななくても、調査兵団に入ったと言うがどうだろう。あいつの両親か姉貴が止めるかもしれねぇ。それでもあいつは調査兵団に入ったという。

 けど、本当かどうかはわからない。進み続けたものしか。結果として、ホライゾンは多分、俺がやるべきだったことをやっている。

 全世界から敵意を向けられ、死を振りまく魔王として、嬉々として雷槍を投げ込んでいる。

 

 

「あぁ、羨ましいよな……」

「は…………?」

 

 

 ふと、出たその言葉にヒストリアが眉を顰めた。

 

 

「今、なんて……」

「エレン……?」

「エレン……どうして、笑っているの?」

 

 怒りの形相を向けてくるヒストリアと、俺の言葉の意味が理解できないと当惑するミカサに、俺のことが信じられないというふうに呟くアルミン。

 まぁ、そりゃ意味わかんねぇよな。

 でも、俺たちは自由なんだ。なんで、生まれや、顔とか性格も選べないのに、先祖がやらかしたってだけで恨まれなきゃいけねぇんだよ。

 だってそうだろ? 俺がマーレや他の国のヤツらに何したって言うんだよ。何もしてない。何もしてないじゃないか。

 それなのに、あいつらは俺たちを悪魔と罵って、好き勝手言って暴力を振るって、フェイや、カルラを。

 そして、そいつらが手出しできないようにするためにホライゾンの家族と母さんを……。

 

 

 

 

 

 ああ、そうか。

 俺は、アイツらを自分の手で滅ぼしてやりたかったんだ。壁の中に閉じ込めて、自由を奪ったあいつらに俺と同じ苦しみを、味わわせてやりたかったんだ。

 それをやっているホライゾンが羨ましいんだ。

 

 

「バカみてぇだよな。そうさせたのは俺なのに……」

「エレン、ホントに何言って……」

 

 

 そうだよ。何言ってるんだろうな。そもそも、俺はまだ始祖ユミルに触れてねぇからホライゾンの家族も母さんも殺して……………………───────? 

 

 

「え」

「え?」

「どうしたのエレン?」

 

 

 なんで、俺が始祖の力を使ったわけでも、始祖ユミルに触れてもねぇのに、母さんは巨人に食われたんだ……? 

 この先の未来で、俺は始祖の力を使うのか……? いや、そもそも……俺が見た未来は本当の未来なのか……? 

 

 

「あ……あ?」

「エレン! しっかりして!」

「エレン!」

 

 

 わかんねぇ……どういう事だ……? 俺が、俺が殺したんじゃないのか? 俺の未来は、未来で見てたものは本当に俺が経験することなのか? 

 

 

「エレンっ!」

「うわぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!」

 

 

 混濁する。頭が真っ白になって行く。俺がやったわけじゃねぇのか? いや、そんなわけが……でも……なら、あの光景はなんなんだよ……母さんはなんで死んだんだ……? たまたま、偶然なのか? なんで、どうして……? 

 みんなの声が聞こえる中で、俺は混乱する。

 

 

 アレは本当に俺がしたことなのか?





エレンは書こうと思ってた通りにかけた気がするけど、ホモくんが新しい夢を語り始めたところはちょっと想定外です。やっぱりこのオリ主気持ち悪ぃよ。
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