魔界戦記外伝・アクターレon stage!!   作:ゼロん

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前回のあらすじ!

ダークヒーローとしてニジレンジャーの世界をオレ様色一色にするために来たアクターレは通報され警察に捕まってしまう!

番組視聴率1%以下の事実に絶望し、ニジレンジャーの隊員は全員辞めてしまい、ついに一人になってしまった二代目ニジレッド虹野ぴより! 

互いにドン底だが、どうするニジレッド!?
どうするアクターレ!?

……あらかじめ言っておくと、ぴよりちゃんが絶望する回です笑



視聴率0.2%の絶望

 

 

「はぁ……一体何だったんでしょう昨日の不審者」

 

 学校を終えて家に帰るぴより。

 

 長い間、兄であるレッドと共に連れ添っていたニジブルー、ニジイエローもニジレンジャーを去っていった。

 

 この世界の視聴率に絶望し、諦観と謝罪の言葉を残して。

 

「こうなったらもう私一人でやるしかない……!」

 

 負けじと一人で活動するぴより。

 正義は勝つ! そう言って悪人(小物怪人)を倒し、高笑いを上げる。

 

「そこのあなた! 正義の味方に興味はありませんか!?」

 

「……めんどいからいいや」

「だって怖いじゃん。怪物とか怪人とか。それに家族を人質に取られたらどうするんだよ!」

 

 ニジレンジャーの隊員を補充しようとするも、スカウトは何度も失敗。時たま現れる、悪の怪人と戦い、一人でも常勝する日々は続いた。

 

 ────が。

 

【とうとう一人になったかぁ】

 

【ここまで見続けてきたけど、解散エンド確定かな】

 

 彼女の頑張りに反して、視聴率はどんどん下がっていった。

 

【こりゃ打ち切りっすわ。おつかれー】

 

【……はぁ。違うんだよなぁ】

 

「……私は……本当に正しいことをしているのでしょうか?」

 

 ぴよりは、自身の正義に疑いと迷いを持つようになっていった。

 

「正義とは一体……どうして? だって……私は一人でも……正しいことをしてるのに。どうして

 

 悪人を懲らしめるのが正義のはず。

 兄はそういう人たちを懲らしめていた。ニジレンジャーのみんなで徒党を組んで、力を合わせて巨悪に立ち向かって。

 

「……あ……れ……? それって本当に正義でしたっけ……?」

 

 それに比べて自分は何だ? 

 

 大した悪行を重ねているわけでもない小犯罪者をたった一人で懲らしめて。

 

 たった一人で小さな悪と戦って、たった一人で満足して。

 

 満足……いや。全然心も満たされていない。

 むしろ、どことない空虚感と寂寥感……そして絶望感を感じている。感じてしまっている。

 

 自分のやっていることに本当に意味はあるのか。兄のようなヒーローを目指すことに……理想を抱くことは本当に正しいことなのか。

 

 ────虹野ぴよりは自分を見失いつつあった。

 

 兄の写真を見る。

 

 小さな私を、満面の笑顔で肩車する兄────。敬愛する先代ニジレッドであり、私のお兄ちゃん。

 

 弱きを助け、悪をくじき────

 

『……お前の気持ちはわかる。俺にだって家族がいる。そんな家族を失ったらきっと耐えられない。もしかしたらお前と同じように世の中を恨むかもしれない。誰かれ構わず八つ当たりもしたくなるだろう────けど。けど、お前はそんな弱いやつじゃないだろう!!』

 

 時には悪人にも理解を示し、

 

『うるさい、だまれ!! お前に俺の何がわかる!!』

 

『分からん!! わかるように────お前の口からはっきり言わないと誰もわかってくれねぇよ!! 本当のことをぶちまけやがれっ!!』

 

『ぐ、ぅ、ぅぅ……!!』

 

 諦めずに。何度でも何度でも。彼は時に悪を理解し、正義の何たるかをその背中で示し、説得を繰り返した。

 

『俺は何度でも言うぜ。まだお前はやり直せる。────だって。お前は悲しみを知っているんだから。素直に悲しい、悔しいって言える人なんだから』

 

『ニジレッド……う、うぅぅ……!』

 

『もう一回、やり直そう。話なら俺がいつでも聞く。みんなはお前のことを憎むかもしれない。けど────俺みたいに理解してくれる奴がいるってことも。たまには思い出してくれ』

 

 正しき道に導いた最高のヒーロー。

 

 ────そして。

 

『ぴより……よかっ……た────』

 

「お兄ちゃん……!? お兄ちゃん!! 返事してよ!! お兄ちゃん、たらぁ……っ!」

 

 その命を賭して、私を守り抜いた『最期の』ヒーローだった。

 

 両親もなく、兄も亡くし、もう一人でいることに慣れたはずなのに。

 

 その日は、家の中が妙に広く……自分には広すぎるように感じた。

 

 私はお兄ちゃんのヘルメットを抱き抱え……ソファーで眠った。

 

 泣いてなんかいられない。

 私は────早くお兄ちゃんみたいなヒーローにならなきゃいけないんだ。

 

 そのためには────もっと悪を倒さなきゃ。

 

 もっともっと悪人を倒して、そしていつかは現れるであろう巨悪に立ち向かうためにレベルアップを。

 

 正義を執行。正義を執行。

 

 私はヒーロー。私はニジレッド。私はニジレンジャー。

 

 それからぴよりは、ガムシャラに小怪人を倒しまくった。時にはまだ悪事を犯していない怪人すら倒して、その寂寥感を埋めていった。

 

 心を埋め立てる。また空いたら埋める。

 

 側から見れば────まるでヒーローが機械のよう。正義執行、抑止力、暴力装置。

 

「ニジレッド! ニジブルー! ニジイエロー! ニジグリーン! ニジピンク!! 七人揃って────ニジレンジャー!!」

 

 誰もメンバーが居なくても、一人でニジレンジャーを、一人七役演じている彼女……いや、ていうか五人しかいないぞ。

 

「はっはっはー!! 正義はかぁーっつのです! はーっはっはっは!!」

 

 それがさらに悲壮感を加速させていた。

 

 ……ていうか、虹色戦隊のくせに二人足りないし。

 

「よぉし! 今日の怪人はなかなか手強かったですね! あんなやばいのを倒したんです! これでこの番組の視聴率も鰻登りに────」

 

 必死で頑張るニジレッド。

 胸を弾ませて期待を膨らませる彼女はスマホをスワイプし、

 

 

 虹色戦隊ニジレンジャー 金曜日 午前9時

 

 視聴率────0.03%

 

 

 ……現実は非情だった。

 

「れ、0. 0……? 3%……っ? え、ぇ……?」

 

 まるで試験合格が入学前日に取り消しになったかのような圧倒的絶望感。

 

 そんなことは筆者も起こったことはないが、今の彼女の心の中を表すとしたら、それくらいの絶望感。

 

 バンジージャンプの紐を何度も確認して落ちないのを確認したのに、飛び降りた瞬間に紐が千切れた────そんなあり得ない、という。

 

 想定していた失敗のほうが百倍マシ。想定外の想定外。

 

「え? ……え、え……? えぇぇ……?」

 

 スマホの画面をゴシゴシ、ゴシゴシと何度もこする。見間違いだと思って、スマホの画面を壊れた機械のように何度もスワイプする。

 

 ────どうして。どうしてどうしてどうして? あんなに頑張ったのに。あんなに必死で怪人を倒して、悪を挫いて。

 

 ただお兄ちゃんのようになりたくて……あんなに、なのにどうして。

 

 

 彼女の心の質問に対する答えは、彼女のもつスマホの画面にハッキリと書かれてあった。

 

【ただ意味もなく正義正義とか言って、高笑いながら小物なんか倒してる奴を誰が応援すんだよ】

 

【てか弱いものいじめじゃん。何がヒーローやねん】

 

【アクターレだっけ? あいつが出てる辺りがまだマシだった。この番組の制作会社も無能な】

 

 ────う、うそだ。そんな、そんな、こと。

 

 心の奥底で彼女は薄々気がついていても、彼女は心内で自分は正しいと言い聞かせてきた。

 

 ────だがそれは弱さだ。自分を誤魔化しているだけだ。虹野ぴより、お前は悩むことすら放棄しようとしてるんだ。

 

 そう思う自分もいたのも確かなのだ。

 

「し、しらないっ、そんなの知らない……!!」

 

 そして、もっと決定的な。彼女が内心思っていることがついにコメントとして彼女の目に止まってしまった。

 

【つーか何の意図もなく怪人倒すだけの話の何がおもしれーんだよ。さっさと終わってろ、時間枠の無駄なんだよ】

 

「ぅ、あ…………ぅあああああああああ!!!!!」

 

 もう何をやっても、絶望的。

 

 ……視聴率はこのテレビ世界の命そのもの。

 視聴率が無くなれば、当然ながらこの世界は終わる。

 

 この『虹色戦隊ニジレンジャー』という番組は終わりを告げ、この世界そのものも同時に終焉を迎える。

 

 誰にも気づかれないまま、ひっそりと。

 その最終回を誰も見ないまま、世界は消えるのだ。

 

 先代ニジレッドの行った善行も、努力も、名誉も、生きた証(ニジレンジャー)も。

 

 すべて、彼女が不甲斐ないせいで消えるのだ。

 

 

 *****

 

 翌日、彼女が目覚めると。

 

 視聴率────0.02%

 

 

 まるでスマホの画面に映された数字が、世界終焉のカウントダウンのように思えた。

 

「おはようございます! 今日もいい天気ですね! ささっ! 今日も毎日頑張りましょー!!」

 

 ────から元気。

 

 そういえば、電子音のあるおもちゃって壊れたら愉快な……変で不愉快な音を立てておかしくなってくよなーと、ぴよりは思った。

 

 ────ああ、実に滑稽で。

 

 

 ****

 

 

「あはは! こっちおいでー!」

 

「待ってよおにいちゃーん!」

 

 

 ……今日も街は平和だなー。

 

 公園で楽しそうに走り去る子供を見て、ぴよりはふとそう思った。

 

「世界がもうすぐ終わって言うのに。呑気なものですね」

 

 ────世界を滅ぼす悪役みたいなことを言ってるな、私。

 

 視聴率……0.0159%

 

「あー……とうとう0.02切っちゃったかぁ……」

 

 もう一年経つのかぁ、と同じ感覚で彼女は言った。

 

「……どうしよっか」

 

 人間、どうしようもなくなると逆に心に余裕ができるという話を聞いたことがある。

 

 それもあながち嘘ではないかもしれない、今の自分がそんな状態に近いから。

 

 そうぴよりはぼんやりと思っていた。

 

 最後に……あのスーツを着て終わるとしよう。

 

 ぴよりは家に戻り、いつもの自分に合わせた二代目ニジレッドの格好になって公園に戻る。

 

 そしてベンチで兄の────初代ニジレッドのヘルメットを側において夕日を眺めていた。

 

「あー!! ニジレッドだ!!」

「ねーねー、お姉ちゃん! ニジレッドだよね!?」

 

 

「……そうですよ。お姉さん、ニジレッドなんです」

 

 

 いつもの陽気さはどこへやら。

 もう、から元気すら出なかったけど。

 

 せめて子供達へ向けるこの笑顔は失わないようにしようって思って。

 

 穏やかな微笑を二代目ニジレッドは子供達へ向けた。子供達は嬉しそうに駆け寄って。

 

「お、お姉ちゃん! あ、あくしゅ……握手してもいい!?」

 

「わ、わたしも! あ、で、できれば頭を……!」

 

「……うん。わかりました!」

 

 レッドらしく、最後くらい、あの太陽のような笑顔で。

 

 誰にも見られないだろう、最終回とすらオープニング前で言われない最終回であっても……これが本当に最後なら。

 

 二代目ニジレッドは、握手を求めてきた子供に握手を。頭ポンポンを求めてきた子供には髪が乱れないように優しく頭を撫でた。

 

『ありがとーニジレッド!!』

 

 二人の子供は満足そうな笑顔でその場を去っていった。まるでそれは────

 

 

 視聴率……0.01%

 

 

 世界を留める命綱が音を立てて千切れる暗示のようで。

 

「────ごめんなさい」

 

 虹野ぴよりはそう、兄のヘルメットに涙を落として────。

 

 

「ふっふっふ……ずいぶんと子供たちに慕われているじゃないか。その人気っ! このオレ様が貰い受けてやるぜっっっ!!」

 

「……?」

 

「ようやく見つけたぞ、ニジレッド!! なけなしの金で買ったGPSを、あの時きさまに取り付けていた甲斐はあったようだなぁ!!」

 

 上の方を見ると、何ともいえぬ石像の上で白いマントが夕日をバックにたなびいていた。

 

「とーぅ!!」

 

 高いところから影が降り立つ。

 そして今回は無事に────着地。

 

「よし、準備体操をゆっくり三分かけてした甲斐があったぜ! ……こういうのはスタントマンにやらせろよなぁ、全く」

 

 現れたのは────警察からようやく解放されたアクターレだった。

 

 彼は再びラジオとエレキギターを取り出す。

 

「えーと……次は『Pandora ignition』にするかな……CDは……と、あったあった」

 

 ラジオから再び音楽。今度のは、少し派手目な曲。

 

 ……余談だが、この曲が流れたアクターレだらけのカオスステージには筆者は爆笑したものだ。

 

「主人公の活躍が迫るとき────呼ばれてないのに現れる!」

 

 ぴしっ。

 

「努力友情勝利、美味しいとこだけ掻っ攫う! そんな使命感に燃える漆黒の意思────白きマントたなびかせ、世界をオレ様色に染め上げるため、即・参上!!」

 

 象が踏んでも壊れないエレキギターをそそくさと、どこからか取り出す。

 

「別魔界のダークヒーロー、アクターレ! オン、ステェ────」

 

「……あ、そういうのはいいんで」

 

「え、あ……そ、そう……? お呼びでない……?」

 

「────はい」

 

「なんか食い気味に言われたぁ……がくっ」

 

 なんか空気読めてないっぽいな、とさすがのアホターレも気がついた様子でラジオを止めた。

 

 らしくもなく、アクターレは悩める少女と同じベンチへと腰を下ろした。

 

「どうした? なんか以前会った時とは比べものにならないくらいブルーじゃないか」

 

「……」

 

「お気に入りの芸能人が失踪でもしたか? それともアイドルのスキャンダルが報道されてショックなのか?」

 

「放っておいてください。今はあなたみたいなお気楽な頭はしてる人に付き合ってる場合じゃないんです」

 

「────辛辣っ!? それが悩みを聞こうとしてる人に対する態度!?」

 

「別に赤の他人に聞いてもらおうなんて思ってません」

 

 アクターレの馴れ馴れしい上に検討外れな言動が余計にぴよりの癇に障った。

 

 番組のレビューコメントに彼の名前が出ていたこともあり、まともじゃない精神状態のせいか。

 

 別に悪くもない彼に対し、今のぴよりはアクターレに対しとんでもない悪感情を抱いていた。

 

「────なにか大切なものでも無くしたのか?」

 

 

 アクターレが琴線に触れた時、ソレはぴよりの中で爆発した。

 

「そもそもあなたが私の前に現れたから────!!」

 

 まるで射殺さんばかりに睨むぴよりに一瞬肩を震わすアクターレ。だが彼の視線は彼女の肩の向こうを捉えていた。

 

「見つけたぞ! 死ねぇい、ニジレッド!!」

 

「────!!!」

 

 反応が遅れた。

 

 それはおそらく、敵の悪の組織の奇襲だったのだろう。弱った瞬間に隙を突こうとでもしたのだろうか。

 

 だがそれを今のぴよりは考える暇はなかった。

 

「────オレ様としたことが」

 

「……え」

 

 銃弾を受け、倒れ伏したのはぴよりではない。

 

 ────彼女の前に背を向けて立った白いマント……アクターレだった。

 

「『……だいじょうぶ、か……?』」

 

 彼が意識を失う前に言った言葉を、ぴよりはかつての兄の言葉と重ねていた。

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