「みんなぁー! 元気ぃーっ?」
「「「はぁーーい♪」」」
全国のお茶の間のTV画面に、若々しく優しそうな男女の姿が映る。
その周りには、元気いっぱいにバンザイしている幼児達の姿。
この番組は、【おっかさんといっしょ】という、2才から6才くらいの低年齢層を対象とした番組だ。
「うたのお兄さんも!」
「うたのお姉さんも!」
順番に、うたのお兄さん、お姉さんが画面に映る。
「体操のお兄さんも!」
「じゃじゃ丸も!」
「ピッコロも!」
「ポロリも!」
そして体操のお兄さんを含む、マスコットたち4人も、元気に名乗りを上げ……。
『みんな元気いっぱいだよぉーーーっ☆☆☆』
「「「わぁーーーい!!」」」
メンバー達の周りに、嬉しそうに声を上げる子供達が群がった。
時にだっこをし、時にさりげなくゲシッと蹴りを入れながら(きっと子供達に叩かれてイラッとしたのだろう)、彼らの出演する子供番組の幕が開ける。
「それじゃあみんなっ! 最初はお歌の時間だよっ♪
みんなが大好きな、いつもの歌をうたおうっ!
TVの前のみんなも、大きな声でいっしょに歌ってねっ♪」
お兄さんの号令と共に、この場に当番組のテーマ曲の演奏が流れ始めた。
音楽に合わせ、嬉しそうにキャッキャと踊る子供達。そして笑顔いっぱいのお兄さん達が、優しい歌声を響かせる。
しかしながら……その曲調はどことなく、
まごう事なきヘヴィメタル特有の、重くて速くて、喧しいほどの爆音。
加えて「ヴォアアアアア!」というデスボイスのコーラスが、子供達で溢れかえるN〇Kのスタジオに、響き渡った――――
クソッタレな歌をやるぞ! ゴミカス共ッ!!
Come on down and see the idiot right here
さぁ来いよ! こっちを見ろ! 救いようのねぇ馬鹿がいるぞ!
Too fucked to beg and not afraid to care
もう無能過ぎて、乞食もろくに出来ないッ! 恐れすら感じないッ!
Whats the matter with calamity anyway?
悲惨? それがどうした。知った事かッ!
Right? Get the fuck out of my face
いいか馬糞野郎? 今すぐ俺の前から失せろ! 目ざわりだッ!
Understand I cant feel anything
俺は何も感じない異常者。ちゃんと理解してるよ
It isn't like I wanna sift through the decay
別に、この世から汚い物だけを、取り除きたいワケじゃないんだ
I feel like a wound
俺はもう、ズタボロみたいだ
And like I got a fucking
救いようのない、悪い子になった……
gun against my head You live when I'm dead
そいつで俺の頭を撃てよ! 俺が死ねば、お前は助かるぞ!!
――――One more time motherfucker
さぁもっとだ! チンカス野郎共ッ!!
Everybody hates me now so fuck it
みんなが俺を嫌ってるッ! やれるもんならやってみろッ!
blood's on my face and my hands
俺の手は汚れてる! 汚ぇ血がベットリだッ!
And I don't know why,I'm not afraid to cry
分からないよ、なんでこうなった? もう悲しくないし、涙も出やしない
But that's none of your business
でもお前には関係ねぇだろッ! 何様だテメェ■■■※※※ボケこらカス!!
Whose life is it? Get it? See it? Feel it? Eat it?
俺の人生は、いつあんたの物に? 俺をどうするつもりだ
Spin it around so I can spit in its face
こっちを向けよママ。その顔に、唾を吐いてやるから
I wanna leave without a trace
俺は消えたいんだ。もう此処には居たくない……
Cuz I don't want to die in this place
こんなゴミ溜めで、くたばってたまるか!!
People=Shit
人間なんてクソだぜッ!
People=Shit (Whatcha gonna do)
どいつもこいつもクソだッ! (何がしたいんだ?)
People=Shit (Cuz I'm not afraid of you)
ゴミ屑のクソッタレだッ! (あんたなんか怖くねぇよ、ママ)
People=Shit (I'm everything you'll never be)
薄汚いブタなんだッ! (お前とはデキが違う)
People=Shit
人間はクソだッ!!!!
It never stops You can't be everything to everyone
もう後には退けない。お前は何者にもなれない。終わってるんだよ
Contagion I'm sittin on the side of satan
淫売のお袋から感染したのさ。俺は悪魔と共にある
What do you want from me?
あんたは俺に、何を望んでるんだ?
They never told me the failure I was meant to be
まさかこんな事になるだなんて、誰も教えてくれなかった……
Overdo it, don't tell me you blew it,
がんばれ? 貴方なら出来る? ……もうウンザリだッ!
stop your bitchin'and fight your way through it
口ごたえするな? 人生を切り開け? 俺のプレステを返せよッ!!
I'm not like you
俺はママとは違うッ!!
I just fuck up
俺はやらかしちまったんだ!!
C'mon mother fucker everybody has to die
なぁ、もう良いだろ兄弟? どうせ最後は死ぬんだ
C'mon mother fucker everybody has to die!!
どいつもこいつも、全て死ぬんだよッッ!!!!
People=Shit
人間なんてクソだッ!
People=Shit (Whatcha gonna do)
みんなクソッタレだッ! (何がしたいんだお前)
People=Shit (Cuz I'm not afraid of you)
救いようの無いゴミカス共だッ! (もうママは怖くない)
People=Shit (I'm everything you'll never be)
俺達みんな、クソで出来てるッ!! (俺は、あんたの全てなんかじゃない)
People=Shit
人間は、クソなんだッ!!!!
………………………………
………………………………………………………………
「はーいみんな! とっても上手に歌えたねっ♪
お兄さん達も、いっぱい元気を貰えたよーっ♪」
歌が終わり、ゼーハーと息を切らす子供達の姿が画面に映った。
お兄さん達&子供達が、力の限りにふり絞ったシャウト――――デスボイス。
今このスタジオは謎の一体感と、謎の“やりきった感”に包まれている。
きっとTVの前で観ているお母さん達は、この歌の意味が、よく分かっていないのだろう。
今も一件のクレームすらなく、彼らは何事もなくこの曲をメインテーマとして、【おっかさんといっしょ】をおこなっているのだ。
「続いては、“にこにこぷん”のコーナー♪
じゃじゃ丸、ピッコロ、ポロリが大活躍するよっ!
今日のお話は、いったいどんなのかな? 楽しみだねっ♪」
「おい、私は部隊全員を整列させろ、と言ったハズだが?」
その日、
「なぜ全員集まらない。私が今日来ることは、事前に伝えておいたハズだ。
まさか祝勝会で飲み明かし、二日酔いで眠っているのかね?」
スプー中将の記憶では、第442連隊の総員は2千人を越えていたハズだ。
だがいま目の前にあるのは、リトルスクールのクラス2つ分にも満たないような数の、疲れ切った顔の兵士達のみ。
このただっ広い格納庫は、そのあまりの人数の少なさに、ガランとしている。
「――――お言葉ですが、将軍」
眉間に皺を寄せ、ジロリと睨みつけるスプー中将に向けて、第442連隊所属じゃじゃ丸・キッドマン軍曹が、一歩前に出た。
「いま目の前にいるのが、
敬礼をし、キッパリと告げたじゃじゃ丸軍曹の言葉に、スプー中将は大きく目を見開いて硬直する。まるで信じられないような物でも見たように。
あの勇壮と名高き、精鋭部隊2千人が、今はこれだけだと?
確かこの部隊は先日、先の作戦を見事に成功させ、華々しくナチ共から勝利を飾ったはず。その比類なき勇猛さを持って、祖国の自由と平和のために貢献したハズだ。
しかし、いま自分の前にいるのは、もう100人にも満たないような人数の、ボロボロにやつれきった兵隊達のみ。
スプー中将は絶句し、暫く次の言葉を発することが出来なかった。
しかし上に立つ者として、この作戦の実行を指示した張本人として、なんとか兵隊達に労いの声を掛けねばならないと奮起。
とても口の回らないままで、しどろもどろになりながら訓示をおこなった。
「この度、フラ〇クリン・ルー〇ベルト大統領より、諸君ら442連隊戦闘団に対し、此度で計7枚目となる大統領部隊感状が贈られる事となった。
これに加え、先の作戦で名誉の戦死をとげたピッコロ・アームストロング伍長に対し、我がアメリカ軍における最高位の勲章である、“議会栄誉章”の贈与が決定した。
同じく各兵員に、陸軍殊勲十字章、パープルハート章など、総数1000を超える勲章が……」
やがてスプー中将が、どことなくバツが悪そうな顔でイソイソと基地を去っていった後、この場に若い兵士の叫び声が響いた。
「もう嫌だッ! もう沢山だッ!
アイツら僕達を捨て石にするつもりなんだッ!!」
なにやら乱闘騒ぎが起きているらしい、それを聞きつけたじゃじゃまる軍曹が、その場に駆けつける。
見れば、いま部下であり戦友でもあるポロリ・アンダーソン一等兵が、何かを叫びながら暴れまわっているのが見て取れる。
仲間達に押さえつけられても、それを振りほどこうと必死に藻掻き、烈火の如く怒り狂っているのだ。
「どうしたポロリ一等兵! 何を暴れているんだ!」
駆けつけてきたじゃじゃまる軍曹を見た途端、ポロリの動きが止まる。
今までの怒りがすっと消えてしまったかのように、憤怒に染まっていた顔が穏やかさを取り戻す。そして、一筋の涙が零れた。
「軍曹……ぼくはもう嫌ですッ! 戦いたくなんてありませんッ!」
信頼している上官の顔を見た瞬間、ポロリの感情は決壊した。
そして今まで耐えてきた物、胸に秘めていた想いが、すべて心の器から零れだす。
「何を言っている……? お前ほど勇敢な男が、なぜそのような弱音を……!
国のために戦うと誓ったろう!! 俺と共に死ぬと、約束したじゃないかッ!!」
「でもじゃじゃまる軍曹ッ! これは犬死ですッ!!
ぼくらはアイツらに、良い様に使われるだけだッ!!
上も、大統領も、アメリカ国民たちもッ! 俺達なんて
ポロリ一等兵は、つい一か月ほど前に、補充要員としてここ第442連隊に配属され、じゃじゃ丸の率いる第
まだ付き合いは短いが、彼が尊い信念を持って戦場に出ることを決め、この部隊に志願してきた事を、じゃじゃ丸は知っている。
しかし今、ポロリは先の戦闘で受けた心の傷により、その心が折れてしまったのだろう。
臆病だが勇敢で、あれだけ果敢に戦い抜いていた彼が、いまその瞳から涙を流している。
「死ぬだけですッ! ぼくらは捨て石にされるだけですッ!
――――何も残せないッ! 意味なんて無いッ! 無駄死にするだけなんだッ!」
地面に蹲り、おいおいと嗚咽を漏らすポロリ。
その姿をこの場の仲間達、そしてじゃじゃ丸が見つめる。
誰も、何も言えなかった。暫しの間、この格納庫を静寂だけが包んだ。
何故なら、彼らにはポロリの気持ちが、痛いほど分かるから――――
この場にいる全員が、ポロリと同じ気持ちを持ち、そして同じ境遇だったから。
「ポロリ一等兵……」
だが、じゃじゃ丸軍曹は……。
「
それでも戦うんだ、俺達は――――」
静かに、そう告げた。
「犬死に? 死ぬだけ?
結構なことじゃないか。ならその死に様を、アイツらに見せつけてやろう。
俺達を迫害し、親を強制収容所に送りやがった、
1941年12月。
日本はアメリカ真珠湾にある軍港に、先制攻撃を仕掛けた。
これにより、今まで戦争反対だったアメリカ世論は掌を返し、リメンバー・パールハーバー(真珠湾を忘れるな)を合言葉に大東亜戦争の開始、および第二次世界大戦への参戦を決めた。
だがこの真珠湾攻撃によって、アメリカ国内では“ある問題”が起こってしまった。
アメリカに移住していた日本人、そして日系アメリカ人である二世たちが、差別の対象となってしまったのだ。
彼らは敵国のスパイを疑われ、アメリカ国民達に迫害された。
そして最終的に日系移民たち、そして本来まごう事無き“アメリカ国民”であるハズの日系二世たちまでが、強制収容所に送られる事態となった。
家、財産、土地、……そしてアメリカ国民としての全ての権利を奪われ、万を超える日系移民たちが、強制的に収容所へと送られた。
自由と博愛を旨とするハズのアメリカという国は、彼ら日系人に対して“敵性外国人”のレッテルを張り、ナチスドイツにおけるユダヤ人と同様、凄惨なまでの迫害をしたのだ。
ちなみに同じ移民であっても、ドイツ人、イタリア人への迫害は、一切おこなわれていない。
強制収容所に送られたのは、黄色人種である
「俺達は、
アメリカ兵として戦い、祖国に忠誠を示す為に、この戦場に来たんだろ?」
当初、じゃじゃ丸たち日系二世には、兵士として徴兵を受ける権利すら認められなかった。
そして、スパイを疑われる日系人などを組み込もう、共に戦おうとする部隊など、皆無に等しかった。
だが日系人たちは結束し、運動をおこない、国に訴え、こうしてアメリカ兵として戦場に出る権利を勝ち取った。
じゃじゃ丸ポロリを始めとする、今ここにいる仲間達は、元々は敵性外国人として強制収容所に入れられていた者達だ。
彼らは志願し、アメリカ軍に入隊することによって収容所を出され、長い訓練を受けた後にここ第442連隊戦闘団へと配属された経緯を持つ。
この第442連隊は――――そんな迫害された“日系アメリカ人のみ”で構成された部隊である。
「おぼえてるか、ポロリ? あのピッコロ伍長の姿を」
ピッコロ伍長は、先のスプー中将の訓示にもあったように、先の作戦中に戦死している。
その勇敢な戦いぶりに勲章を授与された、素晴らしい兵士だった。
「ヤツは、ふいにこちらに投げ込まれてきた手榴弾から、仲間を守ろうとした。
とっさに手榴弾の上に覆いかぶさり、バラバラになって死んだんだ。
……俺はとびちったヤツの肉片を集めた。だがとても元通りになんてならなかった」
じゃじゃ丸は目頭を押さえ、だが毅然と言い放つ。
「けれど――――あれこそが俺達
祖国に忠誠を示し、俺たち日系人が
果敢に戦い、潔く散る。……これは日本人の“大和魂”を示す言葉だ。
そして俺達の標語である【
以前の命令では、200人ほどの友軍部隊を救出する作戦で、自分たち第442連隊は800人を超える死傷者を出すという損害を受けた。
たった200人の白人を救う為、800人の日系移民たちが犠牲になったのだ。
アメリカという国の闇であり、軍部にも当たり前のように浸透している差別意識によって、そういった“捨て石”のような命令が平然と下されるのが、この第442連隊。
じゃじゃ丸たち、日系アメリカ人部隊――――
「確かに、俺達は死ぬかもしれない……。
現に、最初にこの部隊にいた1000人の仲間達は、既にそのほとんどが死んだ。
あれから補充要員として送られて来たポロリ達ですら、もう数えるほどしか残ってない」
じゃじゃ丸は、ポロリの前に膝をつき、優しく肩を抱く。
未だポロポロと涙を流す彼を、真っすぐに、強い瞳で見つめて。
「だがな? 俺達の命は、民族の未来に繋がってる――――
俺達が祖国のために戦い、その命を捧げること。
それによってのみ、俺達日系アメリカ人は、誇りと忠誠を示すことが出来るんだ」
「収容所に送られた親のため、そして民族の未来の為に、俺達はここで死なねばならん。
敵性外国人の汚名、迫害。これを打ち破るべく、力と功績を示さねばならん」
「この命をもって、俺達が
俺達
はみがき じょうずかな? のコーナー
は、み、が、き♪ じょうずかなぁ~~↑(裏声)
「――――押忍ッ! おいどんは、島津豪次郎(4才)でごわすッ!」
くっちゅくっちゅ♪ シュワシュワ♪ くっちゅくっちゅ♪(BGM)
「うおぉぉぉぉ! 死ぬ気で磨くでごわすッ! うおぉぉぉッッ!!」ゴシゴシゴシ
くっちゅくっちゅ♪ シュワシュワ♪ くっちゅくっちゅ♪
「うおおおおッ! 命を燃やせッ!!
この命……ここで終わってもかまわんでごわすっ!!!!」ゴシゴシゴシ!!
上の歯ぁ~♪ 下の歯ぁ~♪
「えいしゃあああああッッ!! もう歯がすり減らんばかりに、歯を磨き申すッ!!
薩摩隼人ここにありでごわすッ!! チエストォォォーーイッ!!!!」ゴゴゴゴゴ
仕上げは♪ おかーあさぁ~ん♪
「――――豪次郎ッ!! なんですかその軟弱な歯磨きはッ!!」
「はっ……母上っ?!?!」
「――――お家に恥をかかすつもりですか、豪次郎ッ!
ええい! そこになおりなさいッッ!!」
くっちゅくっちゅ♪ シュワシュワ♪ くっちゅくっちゅ♪(BGM)
「いえぁああああッッ!! えいやぁぁぁあああッ!!」ガガガガ!
「ぐぅおああッ!!!! はっ、母上ぇぇーーーッッ!!」
くっちゅくっちゅ♪ シャカシャカ♪ くっちゅくっちゅ♪
「我が子といえども、この母! 容赦は致しませぬッ!!
キィエェェェエエエエーーーーイッッ!!!!」ガガガガガガガ!!
「ぬぅあああーーッッ!! 痛ぅございまする! 痛ぅございまする!
母上ぇぇぇぇーーーッッ!!」
くっちゅくっちゅ♪ くっちゅくっちゅ♪ シュッワーー☆☆☆
「――――よっし! 今日も歯磨き完了でごわす!!
良い子のみんなも、食べたあとは、ちゃんと歯を磨くんじゃぞ♪」
そして、画面に向けてニコッと笑みを浮かべる、血まみれの歯茎をした豪次郎くん(4才)の姿が映った。
………………………………
………………………………………………………………
「ごぉ~ろにゃーごーう♪ おっす! じゃじゃ丸さんだぞっ♪」
TV画面に、にゃっはっはと笑うじゃじゃ丸の姿が映る。
「突然だけど、みんなはどんな時に笑う?
アッハッハって、面白いって、声を上げて笑うのはどんな時だ?」
じゃじゃ丸は、TVの前の子供達に向けて語り掛ける。
そして、ちょうどTVの前の子供達が考え終わったであろうタイミングを見計らい、少しだけ間をおいてウンウンと頷いた。
「そっか! そんなにおもしろい事がありゃー、笑っちまうのも仕方ないよなっ♪
俺もそんな事があったら、きっとアハハって声を出して笑っちまうぜっ♪」
腰に手を当てて、マスコットらしい愛らしい動作で、じゃじゃ丸はみんなに語り掛ける。
流石はにこにこぷんの筆頭、メインキャラといった佇まい。子供達に一番人気なのも頷ける。ニッコリと笑う優しい顔が、子供達のハートをつかんでいるんだろう。
「ちなみにオイラは、侵略者どもの頭を銃でブチ抜いた時に、アッハッハと笑うぜ?」
そして優しい笑顔のまま、とんでもない事を言う。
「こう……捕まえた捕虜たちを、一列に並ばせてな?
それをAKでガガガッて薙ぎ払うと、一斉にバタバタ倒れてくんだ!
もうそれ見た途端に、胸がスカッとしてよ? 思わず大笑いしちまったぜ♪」
にゃっはっは、と笑い声を上げるじゃじゃ丸。
「助けてくれ、殺さないでくれって言う連中の頭に、銃弾を叩き込むんだ。
家族がいるだの、子供が待ってるだの、そんなのオイラは知ったこっちゃないからな!
戦場に来といて何いってんだ? って話だよっ!」
突然じゃじゃ丸はカッと目を見開き、その顔を憤怒に染める。
愛らしかった面影は無くなり、まるで般若のような恐ろしい表情を浮かべる。
『――――先祖の土地を取り戻せッ! 侵略者どもは皆殺しだッッ!!
我ら経典とAKを携え、必ずや約束の地に至らんッ!! 聖地エルサレムへとッ!!!!』
N〇Kのスタジオと、番組を観ているお茶の間に、「ウケケケケ!」というじゃじゃ丸の笑い声が響く。
「続いては、お姉さんのお歌のコーナーだぞ?
みんなも一緒に歌ってくれよな! ごぉ~ろにゃーごぉーう♪」
ぼく、ルカっていうんだ
I live on the second floor
ここの2階に住んでるの
I live upstairs from you
ちょうど、君の部屋の上だね
Yes I think you’ve seen me before
そう。ボクのこと、見たことあるでしょ?
If you hear something late at night
もし……真夜中にね?
Some kind of trouble. some kind of fight
たとえば怒鳴り声とかさ? 喧嘩みたいな声が聞こえても
Just don’t ask me what it was
どうしたのって、きかないでね
Just don’t ask me what it was
何があったのって、きかないで
Just don’t ask me what it was
どうかボクに……何もきかないで欲しいの
I think it’s because I’m clumsy
ボクって不器用なんだよ。そのせいだと思う
I try not to talk too loud
おっきな声を出したり、生意気にしないようにはしてるよ?
Maybe it’s because I’m crazy
でもきっと、ぼくがバカなせいだね
I try not to act too proud
えらそうになんて、してないつもりなんだけど……
They only hit until you cry
あの人たち、ぼくが泣くまで叩くんだ
After that you don’t ask why
ぶたれても、ぜったい逆らっちゃ、いけないの
You just don’t argue anymore
口ごたえしちゃ、いけないの
You just don’t argue anymore
黙って、おとなしくしてる
You just don’t argue anymore
いつも……ただじっと、耐えてるんだ
Yes I think I’m okay
うん、ボク平気さ――――
I walked into the door again
心配ないよ、ちゃんと家に帰るから。ありがとねお姉さん――――
Well, if you ask that’s what I’ll say
もし事情を訊かれても……ボクはそう応えると思うよ?
And it’s not your business anyway
だって、君には関係ないことだもん。
I guess I’d like to be alone
ボク、ひとりになりたいな。だれもいない所に行きたい……
With nothing broken, nothing thrown
そしたら、物を壊されたり、何かを投げられたりしないでしょ?
Just don’t ask me how I am
ぼくに何もきかないで
Just don’t ask me how I am
大丈夫だから、ほっといて
Just don’t ask me how I am
お願いだから、何もきかないで……
My name is Luka
ぼく、ルカっていうの
I live on the second floor
ここの2階に住んでるよ
I live upstairs from you
ちょうど、君の部屋の上だね
Yes I think you’ve seen me before
ほら。ボクのこと、見たことあるでしょ?
If you hear something late at night
もし、夜遅くにね?
Some kind of trouble, some kind of fight
たとえば……大きな音や、喧嘩みたいな声がしても
Just don’t ask me what it was
どうしたのって、きかないで
Just don’t ask me what it was
おねがい、知らないフリをしてて
Just don’t ask me what it was
ぼくに何もきかないで、お姉さん――――
お兄さんと、体操のコーナー
「やぁ! テレビの前のみんなっ、こーんにーちはーっ♪」
TVの画面に、上半身が白のタンクトップという、暑苦しいムキムキの男が映る。
「うーん、まだまだ元気が足りないぞぉーう?
むしろ筋肉が足りないんじゃないかな? ちゃんとプロテインは飲んでるかい?」
そして、この上なくうっとうしいテンションで語り掛ける。
「――――もういいッ! しょせん君たちは幼児だッ!! 貴様らなどこんなモンだッ!!
それじゃあ、今からお兄さんといっしょに、身体を動かしていこうね~♪」
ウザいテンションの上に、どことなく情緒不安定な男のまわりに、沢山の子供達が集まっている。
そしてなにやらこの場の全員が、プラスチックのバットや棒といった、何かしらの“武器”を手にしている事が分かる。
「実はね? お兄さんは“システマ”という格闘技をやっているんだっ!
これはロシアの軍隊格闘術で、数々のすごい技術があるんだよっ♪」
お兄さんは、その場の子供のひとりに向けて、プリッとお尻を突き出すような体勢をとった。
「実はこのシステマには、
たとえどんな打撃を受けても、お兄さんは全然痛くない! へっちゃらなんだよ♪」
体操のお兄さんは、まるで挑発するように〈クイッ! クイッ!〉と指を動かす。それを受けて、子供がおもいっきりバットを後ろに振りかぶる。
「――――さぁ来いッ! お兄さんのシステマを見せてやるッ! さぁ来いッ!!!!」
そして子供は、お兄さんのケツに、全力でバットを叩き込んだ。
『 ん゛んーーーーーーーッッ!?!?!? 』
とてつもない音が鳴る――――
まるで子供とは思えないようなスイングで、体操のお兄さんの肛門を粉砕するかのような勢いで、バットを振り抜いたのだ! イチロー!! マツイ!! ナガシマ!!
『すぅぅぅーーーーーっ……! はぁぁぁ~~~~ッッ……!
すぅぅぅーーーーーっ……! はぁぁぁ~~~~ッッ……!』
鼻の穴を大きく膨らませ、額に玉のような汗を浮かべながら、お兄さんが必死に深呼吸をする。
顔を真っ赤にし、目をひん剥きながらも、必死でシステマの呼吸で痛みを散らす。
やがて、子供達がボケッと見守る中……、約30秒くらいは無言だった体操のお兄さんが、ニコッと笑顔で子供達の方に振り向いた。
まるで「どうだ!」とばかりの、暑苦しい笑顔で。
「おにいさん、いたくないの?」
「うんっ! 大丈夫だよっ♪ お兄さんは、システマをやっているからねっ♪」
あまりの必死さを見かね、いまバットを振り抜いた子供さんが、そう問いかける。
だがお兄さんは笑みを称えたまま、そしてそこはかとなくお尻を抑えながら、そう言ってのけた。
「さぁどんどん行こうか! お兄さんはシステマをやっているからねっ♪」
そして己のシステマを見せつけるべく、再び子供達にプリッとお尻を向けた。
「あ……でも今のご時世、男女平等が叫ばれている世の中だから……。
今度は男の子じゃなく、女の子にやってもらおうか? 誰かやりたい子はいる?」
だが、妙に脂汗をかきながら、体操のお兄さんはヒヨッたことを言い、再びバットを振りかぶっていた野球クラブ所属の男の子を「しっしっ!」と下がらせた。
「……それじゃあ、わたしいくね?」
「おう! さぁ来い女の子さんッ!
それにしても、幼女にお尻を叩かれてお金を貰えるとは、なんて素晴らしい仕事なんだ!」
お兄さんは背中を向けていたので、その愛らしい声しか聴いていなかった。
しかし――――その幼女の体重は80㎏オーバー。
彼女はちびっこ相撲のチャンピオンで、若くして横綱の名を欲しいままにしている、巨漢の女の子であった。
『 ん゛ん゛ん゛ーーーーーーーーーッッッッ?!?!?!?! 』
バッコーン、みたいな音が鳴った。
まるで何かが爆発したみたいな、スタジオの壁が震えるほどの轟音が鳴り響いた。
思わず子供達が耳を塞いでしまうほどの、大きな音。
『すぅぅぅーーーーーっ……!! はぁぁぁ~~~~ッッ……!!
……うぃぃぃん痛い痛い痛い!
すぅぅぅーーーーーっ……! はぁぁぁ~~~~ッッ……!
すぅぅぅーーーーーっ……! はぁぁぁ~~~~ッッ……!』
なんか途中、変な小声が聞こえてきたが、頑張ってシステマの呼吸をおこなうお兄さんを、子供達は輪になって見守る。
「…………う、うんっ! ほらこの通りッ! お兄さんはぜんぜん平気さ☆」
目を充血させ、涙を浮かべ、額に血管が浮き出ているお兄さんが、こちらを振り向いてニッコリ笑みを浮かべる。
「おにいさん……ホントにいたくないの?」
「うん! 全然だよっ♪ お兄さんシステマやってるから♪
というか君、幼女なのにえらく大きいんだね……。たぬきの置物か何かかと思ったよ」
そう言い放ち、イソイソとその女の子を後ろに下がらせてから、お兄さんは腰に手をあてて自信満々に胸を張った。
「どうだい? お兄さんのシステマは凄いだろうっ♪
こんなに叩かれてもヘッチャラな人なんて、そうそういるもんじゃないぞ?
システマの有効性は、見ての通りさ♪
たとえこの場の全員に叩かれたって、お兄さんは耐えて見せるよ?」
きっと、今日はこれで終わりと高をくくって、つい大きなことを言ってしまったのだろう。
彼のお尻はもう限界だし、そんなつもりは無かったことだろう。
だが――――それを聞いた子供達は一斉に武器を振り上げ、即座にお兄さんを取り囲んだ。
「ちょ……!? なにをするんだチビッコたちッ?!?!
痛い痛い痛いッ!!」
さっきの横綱の子が、後ろから羽交い絞め。
そしてこの場の全員が、お兄さんに向けてボコボコボコーっと武器を振り下ろしていく。
『すぅぅぅーーーーーっ……! はぁぁぁ~~~~ッッ……!
すぅぅぅーーーーーっ……! はぁぁぁ~~~~ッッ……!
んん~~んッ!! ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛~~~~ッッ!!!!
すぅぅぅぅぅーーーーーっ……!! はぁぁぁぁ~~~~~ッッ…………!!』
やがて、子供達に一斉にタコ殴りにされつつも、必死でシステマの呼吸で耐え続けるお兄さんの映像で、画面は暗転していった。
さよならのうた ~エンディング~
「みんなぁー! 今日は集まってくれて、ありがとぉー♪」
そしてこの場に、お兄さんとマスコット達が勢ぞろいし、画面に向かって大きく手を振っている。
「今日はみんなと遊べて、オイラとっても楽しかったぞっ!」
「また遊びましょうね♪ やくそくよっ♪」
「明日もにこにこ島で会おうね♪ ぼくまってるよ~!」
じゃじゃ丸、ピッコロ、ポロリの三人も、愛らしくTVの前のみんなにご挨拶。
先の442連隊の雰囲気を感じさせない、とっても可愛いブリブリの仕草だ。
「それじゃあ、最後にこの歌でお別れするよ♪ みんないっしょに歌おう!」
「みんなぁ~! あつまれぇ~♪」
「「「わぁーーーーい!!!!」」」
子供達が駆け出し、お兄さんやマスコット達に群がっていく。
いま出演者全員が大きく口を空けて、【おっかさんといっしょ】のエンディングテーマを一緒に合唱する。
作詞作曲:美輪明宏
化粧を落として 煙草をふかせば
思い出すわ あの頃を 過ぎた昔を
女優を夢に描いて 街へ来た頃を
私は十六 田舎訛りで
震えながら訪ねた ここの楽屋口
長い下積みの後で やっとありついた
端役でも 私は嬉しかったわ
それからは だんだんと 主役になれて
輝くスポットライト 浴びた歓び
楽屋には花々 拍手の嵐
取巻きの人々 甘い生活――――
私もまたつい、いい気になっていた……
その後、数多くの失敗が続いた
評論家には叩かれ、主役はライバルに持って行かれた……
おまけに愛する夫は! 若い女優と駆落ちッ!
たった一つ心の支えだった子供はッ、病気で死んでッ!!
それを優しく慰めてくれていたあの人もッ! 事故で死んだッッ!!!!
ふと気が付くと……まるで潮が引くように、私の身の回りから人々が遠ざかっていた
孤独の中で、毎晩毎晩……浴びるようにお酒を飲んで
やがてアルコールと麻薬の中毒、そして入院……
あの泥沼の中から、私が這い上がるまでに、どんな思いをしたかッ!
決して誰にもわからないわッッ!!!!
世間では私のことを、“再起不能”と嘲笑っていた……
――――落ちぶれた過去のスター!!
――――――落ち目の流れ星ッッ!!!!
ああ……もう一度、舞台に立ちたいッ
あのスポットライトの下で、拍手を浴びたいッ……!!
私は恥を忍んで、カムバックを目指して、通行人の端役から出直した
人々の同情の眼、蔑みの眼にも耐えた
なぜならば、私には女優としての、誇りと自信があったから!
でも……その後の、想像を絶する人々の悪意ッッッッ!!!!
――――意地悪ッ!! 屈辱の数々ッッ!!!!
でも私は、負けなかったわ
耐えて……! 耐えて……! 耐えてっ……! 耐えぬいたッ……!!
そして、とうとうあの念願かなった、カムバックの日……
――――太陽のように輝く、スポットライトッ!!!!
あの嵐のような拍手を、私は一生忘れないわッ……!!
……いろんな役を、やった……
女王も、娼婦も、人妻も、娘も
でもそれらは、今はみな、幻のように消えて……
私はすっかり、老いさらばえて
今日、この劇場で、引退して行くのだ――――
舞台に人生を 賭けた私を
私の何もかも 生きて来た道を
さようなら 愛する我が劇場
老兵は 静かに 消え去るのみ
出て行く迄 明かりは 消さないでね
出て行く迄 明かりは 消さないでね
ありがとう ありがとう ありがとう
――――