俺が魔法少女なわけないだろ!(仮)   作:火壁

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 今回は設定や新キャラ登場がメインです。


俺の仕事仲間だと!

 前回、魔法少女になった俺『宙坂壮馬』は今、自分の部屋で俺と契約した『ティエリ』という生物(ナマモノ)と対面している。

 

「んで、どれから聞きたい?」

 

「じゃあまず、最初に話してくれた『ウィッカ』から頼む。対策組織って言ってたよな」

 

「オーケー、『ウィッカ』だな。そうなるとファンタミアのことも併せて話すぜ。まずファンタミアってのは人が地球を闊歩してから発生したって記録されてるな。遥か昔から人の影に忍び寄り、人を喰う怪物。まあ、実際は人の魂にある『気』、人が感情を表出するときに出てくるエネルギーなんて妙ちくりんなものを餌にしてるキワモノどもさ」

 

「キワモノ……まあ本来そんな非効率ともいえる代物エネルギー源にはしないわな」

 

「しかしここ最近になって人口が爆発的に増えた。そいつがトリガーなのか他の要因があるのかファンタミアは例に見ない増殖を見せた。ちょうど百年くらい前か?」

 

「百年前? …世界大戦?」

 

「そうそうそれだ。最初は倍もいかなかったんだけど二回目の戦争から倍々ゲームみたいになったんだ。〈悲哀〉、〈憎悪〉、〈怨恨〉、マイナスエネルギーが急増してファンタミアの餌が溢れかえってな。それからウィッカも対応を変えたんだ」

 

「それが、魔法少女ってことか」

 

「ウィッカ自体、紀元前からある組織だ。最初はファンタミアをどう倒すか、後は正体なんかも探ってたんだが最近は効率よく倒す方法を模索してるな。一撃で倒す方法とか魔力消費を抑えてとか」

 

「それは強さに依存する問題じゃないか?」

 

「まあそれはそうなんだが、そこはアイテムでの補助で色々とな。お前の左腕のそれも開発したのもウィッカの研究者なんだぞ」

 

「これか? まあお前が持ってたんだからそりゃそうだろうな」

 

「それの正式名称は『ウィッカーコネクター』、カードの方は『コネクトパス』、どっちも変身するのに必要なアイテムだ」

 

「なんか特撮でありそうなネーミングセンスとシルエット。これの開発者絶対特撮好きだろ。てか日曜朝絶対テレビにかじりついて見てるだろ」

 

「……ほら、アイデアは外から吸収するものだから」

 

 目を逸らすな。てか何に言い訳してんだお前は。

 

「兎に角まとめるとだ、ウィッカは人にあだなすファンタミアを倒す組織で、契約した相手に力を与えて戦ってもらう。当然だが、報酬もあるぜ」

 

「あ、そこはちゃんとしてるんだ。……ん?」

 

「? どうしたよ」

 

()()()()()? 魔法少女にするじゃなくて?」

 

「……アレーソウイワナカッタッケー」

 

「……お前まさか」

 

「イヤーソンナマサカダマスナンテマネスルワケナイヨー」

 

「さては契約内容は魔法少女にするんじゃなくて契約者の望む力を与えるのが本来の内容なんじゃないか?」

 

「……」

 

 この熊公……!

 

「てめえふざけんじゃねえぞ! あの時の覚悟とお前への信頼返せオラァ!」

 

「残念でしたー! もう契約の内容はウィッカの人事に送って完了の通知を受け取ってんだよ! もう力の変更は出来ませーん! 魔法少女として頑張れ!」

 

「ざっけんな! こんな契約無効だ無効! こんなもん……クソ外れねえ!」

 

 これをつけた時から違和感を覚えたけどオーバーテクノロジーなのか繋ぎ目すら見当たらない。無駄な技術つくりやがって……!

 

「あーはっはっは! どっちにしろお前はもう戦わないといけないんだよ。契約したんだからな。だけどまあ、契約ってあるようにこちらからも提供だったり報酬もあるぜ」

 

「ふう…報酬の内容は」

 

「ああ、ファンタミアを倒せばそれに応じた報酬が与えられる。それに契約の際、本当は本人の願いを聞くんだ。それを対価として契約は履行される。ソウマはまだ願いを言ってないから『後日改めて報告』ってやっといたぞ。んで、今すぐにあるか?」

 

「願い…か……そう言われてもなぁ…」

 

「まあすぐに言う必要はねえけどよ、感じた通り死ぬこともある仕事だ。思いついたら俺に言えよ。」

 

「……分かった」

 

 願いか…とは言っても両親だって出張が多いだけで生きてるし、直哉の家が全壊したからそれの修繕の方が良いか…?

 

「因みに破壊された家を直してくれって願いは駄目だ」

 

「なんで?」

 

「幸福は本来自分が享受するべきものだからだ。願いを他人に使って不幸に見舞われた奴は相当数いる。誰かの為に動くことが出来るのは美徳だが、俺はそれで貧乏くじを引くんだったらそんな美徳捨てさせる」

 

「でも、直哉はこれから…」

 

「心配すんなって。ウィッカもそれに関して何も対応しないわけないだろ? まあ明日になったら分かるさ」

 

「……おう」

 

 他人の為に願いをしてはいけない…ティエリに何があったのか気になったけど、それを聞くのにはまだ信頼されてないだろうな。

 

「まあそれは考えとくよ。今日はもう遅いから寝るわ、おやすみ」

 

「オーケー、おやすみ」

 

 これからどうなるのか、若干不安になるが明日の方が時間があるし、じっくり話すのは明日にして俺は眠りについた。

 

 

 

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「おーい起きろー。朝だぞー」

 

 意識がまだ沈んでいる時に渋めの声が聞こえた。目が覚めると目の前にはデフォルメされたクマがこちらを覗いており、昨日の出来事が夢じゃないことを思い知らせる。

 

「はぁ…夢じゃなかったか」

 

「夢が良かったみたいな物言いだな。まあ分からんでもないけどよ」

 

「そう思うならこれ外してくれよ。これつけっぱで学校行かせるのか」

 

 そういって左腕についたままの『ウィッカーコネクター』を見せる。メカメカしいフォルムはとても腕時計と誤魔化すには無理がある。

 

「ああ忘れてた忘れてた。〈インビシブル〉のパスを渡してなかったな」

 

「インビシブル?」

 

「まあ似たような要請がいくつもあったんだよ。昔からな。それでつくったのが『インビシブルパス』だ。これをスキャンすれば透明化するぜ。因みに解除したかったらもう一回通せばいいぞ」

 

「こういうのあるなら昨日の内に言ってくれよ。てか外せはしないのな」

 

「契約の証明だからな。そこは勘弁だ」

 

 ため息をつきながら『インビシブルパス』をスキャンする。すると本当に『ウィッカーコネクター』は姿を消したが、その部分を触ってみると無機物の異物感が感じられた。

 

「これも含めて本当にオーバーテクノロジーだよな」

 

「今に始まったことじゃないっての。今日は学校だろ? 準備して行こうぜ」

 

「ちょっと待て? お前も行くのか?」

 

「大丈夫だ。俺も〈インビシブル〉を使えるからな。契約者が日常で不都合にならないようにこっちも色々やってんのよ」

 

「どこまでもご都合主義…」

 

「出来ないこともあるからそうとも言えねえよ。まあ生活に支障をきたすようなことはしないから安心しろ」

 

「そうか…ならいいけど」

 

 納得するにはまだ知らないことが多いけど、取り敢えず今のところは大丈夫なには分かった。気を取り直して学校に行くことにした。

 

 

 

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「おっはよー壮馬! なあなあ今日のニュース見た? 見たか!」

 

「お、おう直哉。ってか退院はやくないか?」

 

「退院? まず入院すらしてないよ。検査はあったけどね、健康そのものって言われたから帰ったんだけど壊された家が何事もなかったかのように直ってたんだよ! 不思議だよな! これ絶対魔法だって!」

 

「お、おう…そうだな」

 

「? 何か知ってるのか? 教えて! おせーてくれよぉ!」

 

「だぁあ引っ付くなうっとおしい! お前このスキンシップがあるからゲイのレッテル俺も含めて貼られるんだぞ!」

 

「え、マジ!? 初耳だけど!」

 

 こいつ自覚無かったんか…昨日といい今日といい疲労が溜まるな……

 

「てか直哉、昨日のこと覚えてるのか?」

 

「……うん。途中までだけど、壮馬が助けに来てくれたことは覚えてる。その後から病院で倒れてるまでは記憶が無いけど、きっと壮馬が助けてくれたんだよね」

 

「! …いや、俺は何も」

 

「まあ壮馬はそういう秘密隠すの苦手だもんね。でもあの時嬉しかったんだよ?」

 

「……」

 

 俺自身秘密を隠すのは得意じゃない。いずれ直哉なら自力でたどり着くかもしれない。その時は…正直に話そう。

 

「まあ、ネットニュースじゃ『()()()()()!()?()』なんて載ってるし、壮馬なわけないかー」

 

「…ソ、ソウダナー」

 

 こいつの勘が本当に時折本当に怖い…本当は全部知ってるんじゃないかってなる。

 

 

 

 

 

 授業中だが、今俺はティエリから昨日の続きを聞いている。というのも、会話自体はティエリが介してテレパシーで通じるらしい。

 

『さっき直哉が話してくれたけど、なんで直哉の家は直ってたんだ?』

 

『ウィッカはファンタミアの情報を規制する為にファンタミアが起こした被害を修復する事もやってる。町の被害なら一晩しない内に全部直るくらいにはそっちの技術も上がってるんだ』

 

 歴史ある組織故なのか、むしろ頑固な思想があるんじゃないかと思っていたが、そうでもなさそうだ。

 

『んで、昨日の続きだな。聞きたいことを聞くがいい』

 

『なんで偉そうなんだよ…そうだな、今いる組織の構図が知りたいかな。トップが何で戦うのが何かとか』

 

『そうさな…じゃあまずトップから。〈アラディア〉って呼ばれてるんだけど、人前には滅多に出てこない。最後に見たのは…六年前かな』

 

 トップが滅多に人前に出ないか…でも被害の修復とかやってるし、悪い人ではないのかな。

 

『アラディアの下にいるのが〈魔女〉。各国のウィッカ支部をまとめるリーダー的な存在だ。彼女らについては恐らくだけどすぐに会うことになるだろうな』

 

『すぐ? どっか行くことになるのか? まあ挨拶にも行ってないのは失礼か』

 

『それもあるが、すぐに分かるさ』

 

 ティエリは意味深なことを言いながらも授業は続いている。当てられる前に問題解いとかなねえと…

 

 

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 授業が終わっていつも通り直哉と帰路につく。しかし直哉が話しかけても空返事しか出来なかった。直哉には不機嫌な顔をされたけど、気にしないでほしいと言ったらそれ以上は踏み込んでこないでくれた。

 

『ソウマ、ファンタミアが出たぞ! はやく現地に行け!』

 

『はあ!? こ、ここでかよ…』

 

「ええっと…俺ちょっと急ぎの用事があるから! じゃあな、また明日!」

 

「え? 壮馬!」

 

 直哉と無理矢理別れ、人目のつかない路地裏に入る。するとそこには地面に倒れ伏し、息を荒げているおっさんがいた。

 

「お、おっさん? 浮浪者か?」

 

「いや、こいつがファンタミアの宿主だ」

 

「え? てことは」

 

「ぐうぅ、ぐうああああああああああああああああああ!!!」

 

 おっさんの身体が急激に変化を始めた。直哉の時と同じく、身体が膨張し、肌が黒く染まっている。

 

【キャシャシャシャロロロロアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア】

 

「おいおいおい待て待て待て待て!」

 

「お、おいソウマ! どこ行くんだよ!」

 

 こんなところにいられるか! 俺は広い場所に出るぞ!

 

 

 こうしてファンタミアから逃げている場面が前回の冒頭で、そして変身して今に至るってわけだ。自分で思うけどとんでもねえな……

 

『それに今はチャンスだぞ。正面からならお前の魔力半分を込めれば一撃で倒せる』

 

「それなんではやく言わねえの? ったく、じゃあいくぜ!!』

 

 『コスモシアー』に魔力をありったけ込めて、こちらに向き直ったファンタミアに銃口を向ける。コスモシアーが輝き、魔力のチャージが完了した。

 

「こいつで、吹っ飛べえええええ!!」

 

 引き金を引き、魔力弾がファンタミアに命中する。ファンタミアは一撃で吹き飛び、魂が人の形になってさっきのおっさんが出てきた。

 

「これで大丈夫…だよな?」

 

『大丈夫だ…お? ソウマ、良い物が落ちてるぞ』

 

「良い物? これのことか?」

 

 おっさんに近寄って傍に落ちていた物を拾い上げる。『コネクトパス』に似てるけど

 

「まさかフォームチェンジ的な?」

 

『まさにそうだ。どんな効果かは使って見ないと分からんけど、偶にバッドステータスまみれのフォームとかあるからな』

 

「何それすっげえやだ」

 

 でも使って見ないことにはどんな効果かも把握出来ないし、強力な効果だったら使わなかったら勿体ない。人目につかない所でやってみるか。取り敢えず場所を移動して変身を解除しないと。

 

『! 避けろソウマ!!』

 

「っ! うおっと! な、なんだ! いったい、どこから…」

 

「流石に不意打ちだろうとこれは避けられるわよね」

 

 声のした方へ向くと、そこには

 

 

 

 

 青を基調としたショートドレスにサーベルを装備した恐らく魔法少女だった。

 

「あんたが新しい魔法少女でしょ? このエリアは私の縄張りなのよね。さっきのファンタミアも本来私の獲物なの。それを横取りした挙句、『フォームパス』まで…どこまで私の獲物を奪うつもり!」

 

「はあ? …ウィッカってエリアで担当者括ってるのか?」

 

『そんなことはない。ただまあ、力のある魔法少女がそのエリアを独占する事は過去にも何度か報告されてるな』

 

 つまり、あの子はこのエリアで一番の力を持っていて、新参者の俺が勝手にファンタミアを倒しているのが気に食わないと。

 

「それに新しく来たっていうならまずはこの私に挨拶するのは当然でしょ? ファンタミアを狩るなら私に許可を得て、その報酬の半分を上納。ここを仕切るのは私なんだからそのくらい当然でしょ!」

 

「え、何なのあの子、魔法少女って皆あんな感じなのか?」

 

『というより他に強い魔法少女がいなかったからだな。ソウマより年は低いが魔法少女は年齢による階級は無い。保有する魔力が全てだからな。確かあの子は『森下虎々乃(もりしたここの)』だったっけ。………はぁ』

 

「ど、どうしたんだティエリ」

 

『いや、あの子の契約した奴が『ここにいたのら! 随分とさがしたのら!』俺苦手なんだよね』

 

『本人目の前にしていい度胸なのら! それに奴じゃなくて『プラム』なのら!』

 

 サーベルが喋ってるけど多分ティエリと同じく武器に変身してるからなんだろう。しかし虎々乃という名前にしては…いや虎ってあるし荒い性格は的を射てるか。

 

「何よその目。『フォームパス』なんて滅多にお目にかかれない激レアアイテムなのに…無礼を働いたんだからそれを寄越しなさい! それで勘弁してあげる!」

 

「? これってそんな価値あるの?」

 

『珍しいってことはあるな。ウィッカの中でもどんなフォームが出るかガチャ感覚で売買がある程には人気があったはずだ』

 

「そう! それを新参のあんたなんかが手に入れたなんて気に入らない。ほらさっさと寄越しなさい!」

 

 えぇ……めっちゃわがままじゃん。親はどういう教育してんだよ……

 

『家族構成とかはプライバシーになるから明かせないけど両親が死んだってのは聞いてないな。何でも買い与えてくれたか、ネグレクトを食らってるか』

 

 後者だったらまあ仕方ないって思えるけど前者だったらとんだクソッタレじゃねえか。どうか後者であってくれ精神衛生上よろしくない。いや後者も後者で嫌だけど。

 

「兎に角このフォームパスを渡すつもりは無い! 引いちゃくれないか!」

 

「何言ってるの? そもそも無礼を働いたんだから謝罪するのは当然でしょ! こうなったら、力づくでいただいてくまで!」

 

 そういうと虎々乃はサーベルを構えて突っ込んできた。っておいマジかよ!

 

『さっきの戦闘で魔力が半分以上無くなってる! 回復するまで取り敢えず逃げろ!!』

 

「言われなくても!」

 

 そもそも街中で戦うのはマズい! 流れ弾で家屋倒壊なんて罪悪感やばいって! 兎に角この先、河川敷まで…!

 

「逃がさない! でりゃああああ!!」

 

「ちょっとま…てうおおおあああああああ!!」

 

 サーベルに魔力を流して放った衝撃波は道路を巻き込んで俺を吹き飛ばした。魔法少女同士のバトルって修復適応されんのか?

 

『どうやら奴さんやる気満々だな。逃げ切るのは厳しいぞ』

 

「他人事だと思ってこの野郎……ああもう分かったよ! どうせやらなきゃいけねえんだ。今ここでやる!」

 

 『フォームパス』を取り出して、『ウィッカーコネクター』にスキャンする。ショートドレスが輝き、別の姿に変わる。ショートパンツにショートのタンクトップと活発な印象を受けるコーディネートだ。コスモシアーは二つに分かれ、まさに二丁拳銃といった出で立ちとなっている。

 

「これが……『フォームパス』の力……」

 

『『当たりを引いたな! 正に『トゥーハンド』! でも燃費悪そうだなこりゃ』』

 

「な、なんかさっきよりも露出高くないかってティエリの声がどっちからも聞こえる……」

 

 最初に変身したフォームを基本フォームとして、露出の割合を一とするならこれはその半分だ。腹も太ももだって露出してるし、ノースリーブときてる。最近の魔法少女特有というか、恥ずかしいな。

 

『『一歩間違えりゃチアガールだなはっはっは!』』

 

「うっせえ! それよりもこれの性能だ。上手くいってくれよ……」

 

 二丁の小型コスモシアーを構え、虎々乃に向ける。魔力を込めようとしたけどチャージしてる感覚がない…?

 

『『恐らく撃つ時に魔力が射出されるタイプだ。さっきと違って魔力管理が難しいけど撃つ時のラグが少ない利点があるぜ』』

 

「そういうのもあるのか。じゃあやることは……攪乱!!」

 

 元々魔力の残量が心許ない上に、戦う気がないんだから目くらましをして隙をついて逃げるのが定石。虎々乃の周りから彼女の射程外から撃ち続ける。サーベルで応戦してるけど、所々に命中してる。

 

「くぅ! 鬱陶しい! チマチマ撃ってんじゃないわよ!」

 

「くそ! どこかで重い一撃を入れないと逃げる前に魔力が尽きる! ティエリ何かないのか!」

 

『『パスをもう一回スキャンしてみ』』

 

「はあ? ああもうなんでそんないきなり投げやりなのさ!」

 

『『疲れた……』』

 

「俺だって疲れたわ! もう一回スキャンだな?」

 

 『フォームパス』をもう一回スキャンすると効果音が流れ、『コスモシアー』が輝く。引き金を引くと普通より遥かに大きい魔力弾が放たれる。しかし、虎々乃からは大きく外れ、明後日の方向に飛んでいった。

 

「何それ? チマチマ撃ってその後はノーコン? ふざけるのもいい加減に『ココノちゃん! 今すぐ退避するのら!』え?」

 

 明後日の方向に飛んだ魔力は空中に留まり、次の瞬間いくつものレーザーが放たれた。……え?

 

「うっそだあああああああああああああ!!」

 

「きゃあああああああああああああああ!!」

 

『『まあ俗に言う必殺技だが、使い方を間違えたら無差別攻撃になるから気を付けてな』』

 

「今言うなや! 逃げろおおおおおおおおおおおお!!!」

 

 ああもう! ああもう!! 同業者には敵対されるし必殺技は無差別攻撃だし、『フォームパス』散々だな!!

 

 ひとまず無差別攻撃に乗じて自宅までひたすら逃げまくることになった。明日からあいつに追われるって考えるとため息つくしかない……




~おまけ~

 無差別攻撃(ひっさつわざ)を防ぎ切った虎々乃は、自宅の浴室で今日出会った魔法少女を思い出していた。

「……あいつの情報、何か分かった?」

「あの子は『ソウマ』、昨日魔法少女になった子という事以外まだ何も分かっていないのら」

 『プラム』がウィッカの書庫から今回の魔法少女の正体を探したが、新しい魔法少女の情報は個人が許可しない限り公開されない。ソウマの情報は何一つ明かされていないのは当然だった。

「そう…あいつ…くそ!」

 浴室の壁を殴りつける。彼女が頭に浮かぶのはいいように逃げられた彼女の顔





 ではなくその下に実ったメロンだった。

「あの乳袋…次あったら絶対もぎ取ってやるううううううううう!!!」

 森下虎々乃、十四歳の中学二年生であり、巨乳を憎む貧乳の者である。

(ソウマが男って事は黙っておいた方がいいかものら……)

 残酷な事実をプラムは告げず、黙って虎々乃が静まるまでティエリを打倒する方法を考えていた。

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