拝啓、いつの間にかVTuberなってました 作:白雪蓮華
はいこんにちわ、知らぬ間に嵌められVTuberになる事になった楠木奏多です。
あれから色々ゴタゴタとしてそこそこの日数が経過しております。
「本当に俺VTuberになるんだなあ……」
さてそんな俺は現在ノンフェイトのホームページを見つめていた。
ホームページのライバー一覧、その一番下あたり、金髪の女性や見るからに活気あふれる表情のはずなのに服装がいかにもニートな男や大層な大剣やらを武装してる割には妙に肌露出気味な女性のアバターの中に俺のもう一つの姿となる春房カナタの姿がある。タップすればカナタの説明文が映し出され更にその下には初配信への案内も貼られている。
「やばい、配信までまだあるのに緊張してきた」
俺の初配信は七時半から、そして現在時刻は既にその時間まで一時間を切っており、まだ始まってもないのに思った以上の人数が待っていてくれている。控えめに言ってやばい。
ちなみに言えば電話でではあるがマネージャーである遠野さんとミーティング的な何かをした。
いやまじで何かなんだって、電話でさあ話そうって時に
「あ、うち基本ライバーの自由なんで怒られそうなやつ以外ならなんでもやっちゃっていいですよ」
と電話越しのはずなのに苦労のにじみ出る声音が全てを物語ってきたせいで
「あ、はい。迷惑かけないよう頑張ります」
で終わったんだって。やばくない? なんか聞くところによるとノンフェイトってそこそこVTuber事務所の中でも大きいところなんでしょ? 俺の先輩たちもしかしなくてもそうそうやばい?
「兄さん大丈夫?」
いつの間に部屋に入ってきた先輩VTuberを見てとりあえず安心する。
そうじゃん、和人も先輩なんじゃん、なら大丈夫でしょきっと間違いないああそうだよ。
「一応、緊張四割わくわく五割ってとこかな」
「後一割どこさ」
「それは……やっぱ五分五分って感じで」
「僕もそんな感じだったよ」
「ほんと?」
「うん。やっぱり何かしら新しいことへの挑戦ってなると半々になると思うよ?」
あの和人ですらそうだったのなら俺も安心して挑めるってもんだ。
「でも兄さん売り出し文句が売り文句だしなあ」
「へ、何」
「自分のページ見た?」
「見た」
「あ、じゃあちゃんと読んでないね?」
「へ?」
「説明文、最後まで読んでみて」
そういう嫌な雰囲気出すのやめてもらってもよろしいか? 見るの怖くなるでしょ。ま、まあとりあえず説明文読んでみるか、何々……
「ハードル、上がってるんじゃない?」
「ここに和人の兄なんて書いたらそりゃハードル上がるでしょ! なんで書いたの!」
前設定見せてもらったときはこんなの書いてなかったぞ! 俺のいないところで話拡大してるんじゃないのそれ!
「こうした方がトラブルとか防げるしいいブーストにもなると思って。姫乃さん風に言うと、良かれと思って!」
「それは悪い方向に行くときのやつ!」
「まあまあ、でも僕の名前とその兄ってだけでそこそこ興味引いてるのは本当だよ? ほら」
コメント カズトの兄ってマジ?
コメント カズトの兄かあ、大丈夫? プロフ間違えてない?
コメント すっごい楽しみ!
コメント キャラデザはそこそこいいんだよなあ
コメント 今期はみんな期待値が高いから期待できる
「ほらね?」
「お、おお」
思った以上に反響はあるのはわかった。やはりカズトの兄というのはそこそこにインパクトがあるようである。
「あ、もうちょっとで始まる。じゃあ僕自分の部屋で見るから頑張って」
「わかった、ありがと」
「うん、頑張って兄さん」
こちらに手を振ってから部屋から出ていった和人。
ふう、とりあえず後はなるようになれって奴だな。深呼吸でも
「あ、兄さん。言うの忘れてたや」
「ふぇ!? び、びっくりさせないでくれ!」
「ごめんごめん。でもこれ言っとかないとさ、ダメだと思うから」
和人はいい笑顔と共に親指をぐっと立てて言い放った。
「リスナーとの時間を、VTuberとしての自分を楽しんで」
そう言って今度こそ、部屋を後にした。
「楽しんで、か」
最近は大学だの課題だのなんだのでそう言えば楽しいと思ったこと無いな。
家でゲームをやっていても途中からは謎に作業感に駆られるし、友人がいないわけでは無いが遊ぶこともあまり無いし。
「うん、そうだな」
楽しもう、もう一つの生活を。
大丈夫、俺は今この状況にわくわくしている。それはリスナー達もだ。ならばきっと仲良くなれる。見えない誰かと仲良くなって繋がれる、それはきっと今の俺に足りないものだから。
これはきっと、俺が取り戻すための始まりの一歩だ。
「始まったかな? じゃあ始めましょう」
コメント お、来た
コメント きたああああ!!!
コメント 声はいい感じ!
うん、反応は上々、悪くない。
「初めまして。春房カナタです。今日は集まってくれてありがとう」
コメント おお、心配だったけどプロフ通りって感じ
コメント 待ってました!
コメント カズトの兄ってマジ!?
「マジです。弟の配信を見てくれてありがとう」
コメント さすが兄。弟のフォローもする徹底ぶり
コメント むしろこちらがお世話になっておりまして
「ふふ、じゃあとりあえず自己紹介から。改めて、春房カナタです。皆とはゲームとか雑談していけたらなと思ってます。カズトほど上手くはないけどそこそこできる自信はありますよ」
コメント あれはカズトが異常なだけ
コメント 未来でも見えてる? ってくらいにはやばい
コメント VTuber界のワンマンアーミー
コメント この前なんてプロにも二機差つけて勝ったもんね
コメント あれはやばかった
春房カズト 兄さんもスイッチ入るとやばいよ
コメント 兄の配信にモノホン来たw
コメント これまじ? 期待大
コメント キレたら怖いタイプか……
「いやいや本人に自覚ないからそれ! 本当に!」
鈴原マサヤ カズトも負けると聞いて!
え、鈴原マサヤって和人の同期!? なしてこの配信に!?
コメント まさやん!?
コメント いつも負けてるもんな
コメント 惜しいところまでは行くんだけどねぇ
コメント カズト君強すぎてなあ
「鈴原さん初めまして。カズト本当に上手いから喰らいつけるの尊敬します」
鈴原マサヤ あのカズトと違って、礼儀正しい……?
鈴原マサヤ こちらこそいつも弟さんと楽しくゲームさせてもらってます!
コメント こんなまさやん初めて見た
コメント 兄さんやべえ
「え、というかカズトのイメージが噛み合ってなかったりする?」
コメント 暴虐王
コメント とことんいじめるS王子
コメント 慈悲なき悪逆
コメント 意志を持った殺戮マシーン
コメント 時々暴走するよね
「本当? 俺の弟のイメージハイパースペックマンなんだけど違うの?」
なにそれ俺の知らぬところでそんな悪逆行為に走ってたの弟、あれ、じゃあ本格的に俺の先輩やばい?
春房カズト 僕の話はいいから!
コメント 本性隠蔽に走り出す弟
鈴原マサヤ 時既に遅しってなあ!?
コメント まさやんめっちゃ楽しそうで草
「ゴホン! ま、まあ、今この話はやめておきましょう。さて……と、まずはハッシュタグか、リスナーに名前なんてつけるの!? 総称的な?」
コメント まさやんだとまさやキッズ
コメント 弟さんは今は変わって僕になってるよね
「カズトさぁぁぁぁぁぁぁんッ!?」
コメント あ、これ苦労人だわ
コメント ノンフェイトでは珍しいまじの常識人じゃん
コメント 来るとこ間違えた? 今のうちにリヴァイヴァーに鞍替えとく?
「いやしませんよ? しませんからね?」
コメント 確固たる決意
コメント 兄さんやるねえ
コメント 今期生真面目なライバー多くていい味してる
「ありがと。それじゃあ改めてリスナーのみんなの呼称決めよっか」
コメント 来ました!
コメント 何気に楽しみな奴
コメント なかなかに大事な奴
「俺皆とは近い関係、友達とかそういう関係でいたいから馴染みのいいやつにしたいなあ」
となるとどうなるかな。
コメント 友
コメント my best friend
コメント 弟の僕共
コメント それは草
コメント フレンドどう?
「弟の僕共なんて言われて反応したくないでしょ!? 少なくとも俺は言いたくないよ!? ……ん、いいね、ならフレンドにしよう。フレンドの皆さーん?」
コメント はーい
コメント はーい
コメント はい?
コメント ばっちぐー
コメント なんだ、この声の中毒性は……!?
「俺の声中毒性あるの?」
コメント 安らぐ
コメント 癒される
コメント 朝の番組とかに出てそう
コメント わかるー
「ありがと、嬉しいな。さて次はイラスト、というかファンアートのタグか。あ、他の人の奴書かないでね、なんか闇覗きそう」
コメント いい判断
コメント これは賢い
コメント 知的ムーヴ
「と言ってもこれもシンプルなやつでいいと思うんだけど……カナタの〇〇とか多いって聞くけどどう?」
コメント アトリ絵とかは多々ある
コメント 無難に行くならカナタアートとか?
コメント 名前的にそんないじれなさそう
「ならカナタアートでいいか、シンプルイズベストって言うし。はい決まり。後は雑談と、せっかくだしゲームとかもしよっか。ス〇ブラとか」
コメント きちゃああああ!!!
コメント ス○ブラか? よし、ちょっくら準備するか
コメント ス○ブラは持ってないんだよなあ
コメント 負けたら罰ゲームあり?
「今回はコメント読みつつなのでなしかなあ。また余裕ありそうならやってみたいかも」
さて、早速Switchつけてス○ブラをつけてっと。
コメント そういえば同期三人とはもうあったの?
「ふぇ?」
同期……あ、大体同じ時期に入る他のVTuberのことか。
そういえばなんかみんな予定が合わなかったとかなんとか、後俺が急だったから故に会えてないな。
「まだ会ってないよ、いつか会うとは思うけど」
コメント いがーい
コメント 拙者アリスちゃん推しでござりまする侍
コメント アキナちゃんもいいんだぜ
コメント 今期の女性Vはどっちもグー
コメント ハルキの事も忘れてやんなよ……
コメント 俺は止まんねえからよ……
コメント 使いどころ間違えてて草
「そう聞くと楽しみになってきた。うん、じゃあやろっか」
☆──☆──☆──☆
そうして俺の初配信は良き流れをもって終了した。
うんうん、いい感じだったと思う、みんなともそこそこ仲良くなれたしツイーターで人生初めてのエゴサをして見ても楽しかったとか言われてて嬉しく思える。
「んー、今日は気持ちよく眠れそう!」
そんな時、スマホがピロン! と音を鳴らした。
見てみるとマネージャーの遠野さん、なんかあったのだろうか。
遠野
ごめんなさい! 止められませんでした!
え、何を?
と思うのも束の間、今度は姫乃さんから
ひっめーの
教えちゃったてへぺろっ
待ってすごい不穏なセリフ! 何したんですちょっと!?
そしてとどめと言わんばかりにスマホから電話のコール音が鳴り響く。
画面を見ると知らない番号、もしかして誰かに俺の番号を誰かに教えたってことか? だとしたら誰に?
「はい、もしもし」
恐る恐る応答ボタンをタップし耳に当てる。
この二人の内容見るにVTuber関連の人ではあると思うんだけど……
『始めまして。私の名前は来栖アリスといいます』
「来栖アリス……あ、俺の同期の」
その凛々しい声から出された名前、来栖アリスは確かに記憶がある。ホームページの俺の隣にあった金髪の少女だったはずだ。配信中も何度かコメント欄にて目にしたし、おそらくはその彼女で間違いない。
『そうです。こんな強引なやり方で連絡をとってごめんなさい』
「あ、いや、俺の方も挨拶も何もしてないし」
『ありがとう、では早速用件を』
『私とコラボしませんか?』