絶対に異世界から帰還すると決意した男の末路 作:コーカサスカブトムシ
異世界転生、というやつをした。ライトノベルなんかが原作でアニメにもなったり、近年だとそこそこに一般的な知名度も出て来たんじゃないかっていうあれだ。あなたの管の広告にひたすら出てきて低評価されてるアレでもある。知名度云々はどちらかというとオタク気味な自分の主観でしかないかもしれないけれど、友人達とそういった話題で盛り上がった事は数知れない。
【武内 一弘さん、貴方は本来の命を全うする事なく、その生を終えてしまいました】
『嘘だろ、マジかよ!?』
それもこれも、どこかで見たような構図だった。街中でもテレビでも見た事のないような美人の背中から白い鳥の翼が生えてるし、耳もテンプレみたいに尖ってる。顔立ちは日本では見ることもない、そして海外のどんな人種とも似つかない作り物じみた精巧さがある……感覚で言えば等身大の美少女フィギュアみたいだ。
目やら顔立ちやら、現実で考えれば奇形どころじゃないのにそれでも綺麗って感じるのはどういう仕組みなんだろうか俺の脳よ。
【もし、大丈夫でしょうか? いえあのような事があれば放心なさるのも無理はありません……少し、時間を置きましょうか?】
「い、いや問題ないです。動揺はしていますけど兎に角話を聞かせてください」
ファンタジーの世界に転移して自分の力で世界の命運を変える、みたいな事に憧れを抱いた事のある男子は正直に言えば多い筈だ。仮面ライダーやウルトラマンでヒーローへの憧憬は一通り抱く筈だし、そこから漫画やアニメから派生して行く形で自分が登場人物になることとか。
男と生まれたからには、誰でも一生の内一度は夢見る「地上最強の男」って程ではなくても考えた事はある筈だ。だけど! 実際にそうなりたいのかって言えばそれは別問題だろ……
【本来その命が尽きるべき時はあそこではなく、しかし起きてしまった事を改変して蘇生させる訳にもいきません。しかし、生命力の残っている魂はこの世界の輪廻に戻す事も出来ないのです】
『それで、俺はどうなるんですか?』
【記憶は見させていただいています。分かりやすく言えばそう、異世界へと転生してもらうということになるかと。悪い言い方をしますが、そこで今度こそ正しく死んでいただく。魂を管理する者共の都合ではありますが、どうかご理解を】
悲報、懲役80年(変動有)選択の余地は無かった。いや死んでんだからそこをとやかくごねたりはできない、人は本来死んだらそこで終わりなんだろうけども。せめて死んだんなら死んだで終わらせてくれませんかね、意識も記憶もあるまんま前世の誰とも繋がりの無い世界に放逐とか鬼畜の諸行では?
魂ってのは電池のようなものらしく、使用される身体を動かす動力になるがこういった事故では内容量的なものが消耗されないまま魂単体となってしまい、その状態だと正しくリサイクル出来ないから転生してほしいとのこと。病気や怪我はその寿命を著しく削るらしくそれが死因な場合は別らしい、転生の主になる要因は即死か。
【それで転生する先の事なのですが、その世界ではヤーラカムと呼ばれる星が貴方で言う地球です。五つの大陸が海に隔てられそれぞれ独立している中、貴方はその内のローゲル大陸の農村に生まれ変わる事になります】
「ううむ二次創作系では無かったか……」
他にも色々と、この身体のまま転生するのではなく現地の人間の子どもとして生まれ変わる為容姿等は異なる事、それとあと定番と言えば定番な特典の事。
それがあるだけでその世界の全てを越えたようなチートだとかそういうのは貰えないが、代わりにある程度の物事では開花させられる、成功出来るだけの才覚が与えられるらしい。
ただそれは伸ばすも殺すも努力次第ではあるそうだ、神過ぎてなんともいえない。努力すればその分伸びるって保証があるだけありがたい、なんてどころじゃない。そんな保証があって良いのかと聞き返したが良いらしい、まぁ自分達の都合で転生させる訳だからな。
【それでは、これからの貴方に待ち受ける運命は私達にもわからない物です。願わくば悪逆を為すこと無く平穏な生を……】
「色々と……親切にどうもありがとうございます」
「と、いう訳だけど! 俺は何が何でも前世に帰る! 魂の云々かんぬんなんて知ったこっちゃない!」
親切にとかなんとか言っておきながらあの転生受付嬢さんの事は速攻で裏切る事とする。あの人とその関連の神のような存在達は俺にはこの世界の住人として生きて死んでもらいたいんだろうが、残念ながらそうは行きたくない。
俺は前世に抱えきれない程の未練があるからだ。まだまだやりたいゲームとかスポーツとか見たいアニメとか映画とかドラマとか読みたい本とか漫画とかあるんだよ! 何時かは松阪牛とか食べてみたかったり給料で家族を食事に連れて行ったり、友人と酒を飲みに行ったり仕事の苦痛に悩んだりしたかったんだ。
なにより、親にいってらっしゃいと言われていってきますと返して出てきたからにはただいまと言わなきゃいけないんだ。と言うことで俺はこの身体に与えられた才覚と身に付けられる知恵を以て何としても地球に帰る。
地球からこっちに来れるのだから、こっちから地球に行くことだって可能な筈だ。時間帯とか時差とかは今はまだあまり考えられないが空間を何とかするなら時間も何とかなるやろ……ってある程度能天気に考えながら、ベットに寝かせられた赤さんボディで今後の方針を考える。
この星、ヤーラカムという世界には魔法があるそうだがドラクエやFFのように特定の決まった魔法なんかがある訳ではなく、魔法を使える人がそれぞれでオリジナルの魔法を作りそれを使っているらしい。
それを専門に習う学校なんかでは基本の形として火玉や雷線、氷塊なんかって呼び方をしているらしいがこの事はそこまで気に置いておく必要は無いだろう、基本技みたいなものか。
どんな魔法を覚えておくべきか、この世界にいる魔法使いの実例なんかをもっと知ってそれを再現するとかで帰還の足掛かりにするか、テレポートとかそういう系統の魔法を極めれば糸口も見えてくるか? なんにせよ今の身体ではまだ何も出来ないからな……
「ううー、だうっ」
……子どもとして生まれ変わるとは言われてたがまさかここからだとは思わなかった。寝返りとかすら大変で、まともに動けもしないしなんか色々と……弛いのが本当に酷くて……漢 一弘、19歳にして糞尿を漏らす。トイレ行けないから仕方ないね♡ こんな有り様で一般人名乗ろうとか各方面に失礼だよね。
「んー、元気だねぇバルト」
「きゃーきゃう」
そうこうしている内に寝台を覗き込んできたこの身体のマザー、俺の名前はバルトだそうで
母親はエリザ、父親はアストラと言うらしい。
思う所が有りすぎる程あるのだが、本当に申し訳なさで辛い。俺なんかが転生してきたせいで、折角の自分達の子どもにこんな風に思われてる事とかさ。事情なんか話せる筈もないし言葉を使えるようになっても話したいと思えない、事故死してお宅の子どもの身体乗っ取っちゃいましたーなんて……胸糞悪くなるしな。
ゆくゆく地球に帰れるってなると、この人達を裏切って捨てて行く事になる……次に死んだ時は地獄行きだろう。そんな薄情な事を考えていることもあるが、俺はこの人達に深く思い入れを抱きたくなかった。だから二人の愛は俺ではなくバルトに向けられたものだと、母とも父とも思おうとしない事にする。
他の人達もそうだ、俺はこの世界に思い入れを作らないし誰とも親しくならない。そうやって暮らすのは辛いだろうが、いざ帰れるって方法を見つけた時に足が動かなくなるだろうからな。
必ず帰るんだ、必ず、絶対に。
転生してから早数年、自意識があるままに過ごす幼少期は其処はかとなく苦しかった。異世界の人達ってなぁ、大抵が恐ろしく綺麗なんだよなぁ。父さんなんかジャニーズ崩れが土下座しても届かないような、加齢臭のかの字も感じさせなさそうなイケメンだし、それと結婚した母さんだって普通じゃないんだよなぁ。妖精か? 女神か? 母親ってこういうもんだったか? ってくらいに清廉さと艶やかさに満ちててなんか特にその……授乳が! おっ○いが!!
「くっそ、なんなんだよこれ……地獄かよ地獄だわ」
両親には本当に申し訳ないけれど、産みの親だって感じがあまりにもしないと思う事に成功した。俺の親はただ二人、あんなに綺麗な美人達じゃない。というか若いんだわ結婚してんのに、現代基準で考えて17と16で結婚して~は農村ならそうかもなぁ! 年下の母親に授乳されるとかどんな薄井本左衛門なんだよ青ざめたわ!
そうして立って歩いて話してってのが出来るようになって、せめてもと家の手伝いをこなしながら魔法というものに関して実験をし始めた。本に書かれてる文字とか日本語じゃないしまともに読めなかったがわりとすぐに認識出来るようになった、転生者スペックってやつだなぁ……それで、直近一番の問題なんだが。
「バールト、バルトー、バルトってばぁ!」
「…………」
美少女の幼馴染みなんてのはファンタジーだと思ってたんだけどなぁ……
感想とか貰えると嬉しいですね……
これからの展開について
-
バルトが傭兵として戦う描写重点
-
バルトが帰還する手掛かりを探す重点
-
ヤンデレ重点