百合ゲー世界なのに男の俺がヒロイン姉妹を幸せにしてしまうまで 作:流石ユユシタ
朝、うちの顔に朝日が差し込んだ。布団から体を起こして背伸びをする。まだ眠気が取れずウトウトしながらも布団をたたむ。
うち以外はまだ誰も起きておらずうちの地域、いや……県、いやいや関東、いやいやいやいや世界、いやいやいやいやいや宇宙一の可愛い姉妹たちが天使も尻込みするような女神のような顔でスヤスヤと寝ている。
千冬の寝顔をうちは見る。あー、可愛い。茶髪もふわふわしている。だらしなさそうに口の開いた寝顔。カメラが合ったらパシャリとシャッターを切りたい。まぁ、姉妹でも勝手に写真で撮るのは嫌がられるかもしれないからやらないが。
今度は千秋。銀髪が輝いている。ああー、可愛い。ん? 眼が少し腫れているような……どうしたんだろう。もしかして、昨日の夜一人で泣いてた?
悪い夢でも見たのだろうか? 色々あったもんね。今が幸せでも思い出してしまう事もあるだろうし。あとでハグして頭をなでなでしてあげよう。ついでに耳かきも……
さて、最後は千夏。まさに金塊。黄金の髪の毛。涎を垂らして寝ているのも、いと可愛い。可愛い。大事な事だから何でも思ってしまう。可愛いと。
いつもの凛とした目は閉じている。まつ毛も長くてパーフェクト。パーフェクトシスターだ。
うちの妹達は今日も可愛すぎる。
こんな時間を永遠と過ごしていても良いのだがそんな訳にはいかない。何故ならば今日から学校に行かなければならないから。うち達は今日からこの近くの小学校に通う事になっている。
今までは夏休みであったから九時ごろまで寝られたけど、もう、そうしてはいられない。
「皆、起きて。朝だよ、学校に行く準備を……」
「んんッ……」
「「すぴー、すぴー」」
そう言って起きてくれたのは千冬。流石しっかり者の千冬、いつも助かっているありがとう。
「おはようっス……春姉……」
「うん、おはよう」
千冬は起きてくれたが未だにウトウトしており、眼も開いたり閉じたりを繰り返している。多分、まだ寝ぼけているんだろう。
「……キクラゲはどうなったんスか?」
「起きてー、千冬ー、今日から学校だよー」
「はッ! そうだった!」
どうやら、完全に起きてくれたようだ。でも、寝ぼけている姿も可愛いかった。起きた彼女はそのまま千秋の方に寄って体をゆする。
「秋姉ー、朝っスー」
「んーん!」
千冬が体をゆするとまだ起きたくないのだろう。一枚だけある掛布団で頭を隠す。そのままモグラのように隠れてしまった。
「隠れてないで、起きるっス! 千冬だって寝てたいんス!」
「んーー!!」
掛布団の引っ張り合い。思わず見てしまうがうちは千夏を起こさないといけない。
「千夏ー、起きてー」
「……」
「千夏が朝弱いのは知ってるけどお願い起きてー!」
うちは千夏の体をゆする。しかし、彼女は起きない。一切目を開けず、体も動かさない。
「千夏ー!」
「ん……すぴー」
一瞬反応するが再び夢の世界に旅立っていく千夏。本当は寝かしておいてあげたいけど起こさなと。
心を鬼にして彼女の体を強くゆする。姉妹の中で朝が一番弱いのは千夏だからかなり強めにゆすらないといけない。
「千夏ーーーーーーー!!!!」
「んんッ!」
「おはよう!」
ようやく、起きてくれた。
「すぴー」
「千夏ーーー!!」
と思ったら旅立ってしまう。全然起きない。
「秋姉! 起きるっス!」
「んんん!!!」
あっちではまだ布団引きをしている。これじゃあ、キリがない。本当にこれは一番やりたくなかったけど……ごめんね?
うちは千夏の布団を引っ張て位置をずらし日の光が差し込んでいる場所に彼女を誘導した。
「んんんん!! ま、まぶしい!! やめてー」
「ごめんね? でも起きて! 学校だから!」
「が、学校……ああああ、眩しい……力抜けるー」
うちは再び日の光が差し込んでいない方に布団をずらした。千夏は起きてくれたようだった。眼もぱっちり開いて完全に目覚めている。寝ぼけ率0パーセント。だが、若干のジト目をうちにしている
「酷くない? 今の起こし方……私、日の光凄い苦手なんだけど?」
「ごめん……これしかなかったから」
「体ゆすればいいじゃない」
「それじゃ、起きなかったの」
「……大声出すとか」
「それもやった。ほら、今日から学校だから早く着替えて」
「……はーい」
少し、不機嫌そうにしながら彼女は着替えを始める。さて、隣でやっている布団引きも終わらせないと
「ほら、千秋。もう起きよう?」
「んーん!」
「もう、こんな調子っス……」
「うーん……ごめんね?」
うちはかなり強引に布団を引っぺがした。千秋は投げ出され布団の上を一回転。そして、そのまま彼女を日の当たる方へ。
「眩しい……」
「はい、おはよう」
「眠い……」
「それでも、おはよう」
うちは千秋を無理に起こして万歳をさせる、そのまま上着を脱がして着替えを手伝ってあげた。
「春姉……秋姉を世話しすぎじゃ」
「いいんだよ。これくらい姉妹なら普通」
「そう、っスかね?」
「そうだよ。ほら、千冬も着替えて着替えて」
その後は顔を洗ってあげたり、歯磨きや髪型を整えて上げたりして、リビングに向かう。まだ、お兄さんと接するのに慣れていない千夏と千冬は一旦自室に戻らせた。部屋に入ると既にお兄さんが朝食を作ってくれていた。
「自分で起きてこられるなんて偉いな」
「フフフ。まぁな!」
千秋がドヤ顔をしている。腰に手をやって胸を張る。……まぁ、自分で起きた? ということでいいのかな?
「それより、カイト今日の朝食は!?」
「卵焼きとみそ汁、白米だな。あと、麦茶」
「おおー、やったぁ! カイトの卵焼き、大好きだ!」
……んんん!? 千秋、あんまり大好きって単語使わないんだけど……いや、使うけど、大好きってお姉ちゃんあんまり言われたことないんだけど? 精々328回くらい……それをこうも簡単に大好き一回を稼ぐなんて……
卵焼きめ……いや、違う。これは卵焼きとしてカウントするのかな? お兄さんにカウントが入るんじゃないだろうか?
んんん!? しかも、二人の距離が前より近いような……気のせいかな? いや、明らかに気のせいじゃない。これは、どういう事?
いや、いいんだよ。お兄さんと仲良くなって楽しくお話ができるようになるのは。この家での生活も楽しくなるし、ずっと話せないままなのはダメだし。
でも、急にそんなにさ、距離が近くなるのは寂しいよ。ずるいよお兄さん。
確かにお兄さんには感謝している、お世話になっている。千秋が懐くのは分かるし、楽しくお話もしていいけど。この短時間でこんなに好感度が上がってしまったと言う事はその内、特別な関係とかになるのではと感じてしまう。年齢的には離れてるけどどうなんだろう。
でも、千秋だけは渡せない。
勿論、思い過ごしと言う事もある。だから、当面は現状把握位にとどめておこう。思い過ごしではなかった時は……
もし、お兄さんが良い人でも千秋は渡さないよ!
◆◆
「カイト! 今日の晩御飯は!?」
「あー、そうだな」
「ハンバーグが良い!」
「それ、この間やったばかりなんだが」
お兄さんが仕事に行くついでに車で運んでくれるらしいのでうち達は現在車内。助手席には千秋が乗っている。後ろにうちと千夏と千冬。
「ねぇ? 秋の奴、いつの間にあんなに懐いてるの?」
「さぁ……千冬は知らないっス」
車で学校に向かう途中で凄い二人が話している。千秋がお兄さんにこれでもかと話しかける。
確かに大人と話す機会なんて今まで無かった。でも、お姉ちゃんだってそれくらいできるよ。
「春が凄い眼してるんだけど?」
「秋姉が取られたと勘違いしてるんじゃないっスか?」
「ああー、そういう事……まぁ、確かに私も思う所はあるけどね……」
隣でひそひそ話声をしているが全く聞こえなかった。
「我、ハンバーグが良い! じゃないとやだ!」
「うーん……でも、同じ料理をずっと続けるのはな……健康的な問題とかもあるし……ピーマンの肉詰めは……」
「絶対ヤダ! ピーマン嫌い! カイトのハンバーグ大好きだからハンバーグが良い!」
ああ! 大好きって言った! また言った!
ハンバーグの野郎……
って違う。これもお兄さんのカウントに入るのか。じゃあ、既に二回目!? ええ!? それは無いよお兄さん!
「何か、春が悔しそうな顔してるわね」
「嫉妬っスね。普段のクール顔が凄い崩れてるっス」
嫉妬に心を支配されながらうち達は新たに通う小学校に到着した。市立所沢中央小学校。校庭に複数の遊具やサッカーゴール、そして年季の入った校舎。ここで今日から勉学に励むのかと眺めながら同時に、前のお兄さんと千秋を見る。
途中でお兄さんは色々先生と話したりもしてうち達を預けた。
「じゃあなーカイトー! ハンバーグ約束だぞー!」
手を振ってお兄さんを見送る千秋。嫉妬もあるがこの子が少し成長したような感じがして嬉しくもなった。
だが、やはり嫉妬の方が強い。
お兄さんに嫉妬しながらも校舎の中に入って行く、外からでも分かるがやはり年季が入っている感じがする。この学校はどうやら各学年、2つのクラスがあるらしく、一組にうちと千秋。二組に千夏と千冬、と言うことになるようだ。
できれば、一緒が良かったなと思いつつも途中で二人と別れる。二人は二人の担任の先生の方についていき、うちと千秋は手を繋ぎながら担任の女の先生について行く。
「フッ、転校生の謎感を出して大いに箱庭に囚われた人間たちを驚かせてやろう」
「そう……自己紹介できなくなったらうちが代わりにしてあげるからね?」
「心配には及ばないぞ。姉上。余裕のよっちゃんだ」
そう言って不敵に笑う千秋。
「ここが四年一組だから、ちょっと待ってて」
そう言うと先生は教室内に入って行く。そして生徒達の前である程度話し終えるとうち達を見た。
「それじゃあ、入ってきて」
「はい」
「ひゃ、い」
千秋が凄い緊張している。うちの服の裾を掴み背中に隠れてチラチラ教室内の生徒達を見る。
教室はさほど大きくもなく広くもなく丁度いい広さ。後ろに本やら掃除用具入れ。壁には画鋲で絵などが貼り付けにされている。
生徒人数は大体、四十人かな? 転校生と言うのは興味を引くようで凄い好奇な視線が注がれる。あんまり好きじゃないな、この視線。千秋もきっとそうなのだろう。
「自己紹介お願いしてもいいかな?」
「日辻千春です。後ろの子は日辻千秋です。よろしくお願いします」
このクラスの生徒達はうちがそう話すと拍手したり、ひそひそ話したりしている。そして、一人の生徒が手を上げた。先生がその子に聞いた。
「どうしたの?」
「双子なんですか?」
「いえ、千春ちゃんたちは四つ子だそうです」
「「「すげぇぇぇ!!」」」
生徒達の大声にびくりと後ろの千秋が震えた。珍しいのは分かるが出来ればやめて欲しいな。一部、そう言った人はいないけど、大多数で声を出せば自然と大きな声になってしまう。
大声はあんまり好きじゃない。
うちと千秋の席は後ろの様でそこに二人が列からはみ出して並んでいる。何かあればすぐに手助けができる位置。
これは最高だ。ビクビクしている千秋を窓側にしてうちはその隣に座る。席についても視線が凄い。
この視線が収まるのはだいぶ先だろう。千秋をあんまり見て欲しくない、ビックリしてしまうから。とは言ってもそんなことを言うわけにもいかない。はぁ、とため息を溢した。
千夏と千冬は大丈夫だろうか? こちらはあまり良い感じはしない。二人も同じ心境なのではないだろうか?
隣のクラスの二人が心配になった。
◆◆
四姉妹は大丈夫だろうか。本来なら親族の元に居て違う小学校に通っている。違うのは僅かな事だけどそれがどのような変化を及ぼすのか……
考えながら書類を整理していると……隣の佐々木小次郎が話しかけてくる。
「なぁ、引き取った四姉妹どうなった?」
「一人の子とは少し話せるようになったくらい……か?」
「へぇー……」
何やら変な目で俺を見てくるがそんなことを気にしている暇はない。夕ご飯とか四姉妹事、考えることが沢山ある。
「お前、給湯室に居る女の人達に何て言われてるか知ってるか?」
「知らないけど」
「光源氏」
「……そいつらひっぱたく」
「やめとけ」
「俺はロリコンじゃないし、健全なんだよ。普通にスタイルが良い人が好きだし。言っても通じないだろうけど」
「ロリコン予備軍が言いそうなことだな」
まぁ、傍から見たらそう見えるだろうな。納得も理解もしたくないが、そうなってしまう事もあるのだろう。
仕方ないなと思いながら書類を整理する。頭を切り替えて、夕ご飯の事も考えながら。
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