百合ゲー世界なのに男の俺がヒロイン姉妹を幸せにしてしまうまで   作:流石ユユシタ

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111話 メイド千春

 日辻千春と言う小学生女子がいる。彼女は6年生ながら頭が良い。既に中学生レベルの問題ならある程度は分かってしまう。

 

 しかし、彼女には欠点がある。一つは不器用な事。

 

 卵を割るのが未だに慣れずに割ってしまう事がある。運動神経は悪くはないが意外と融通が利かない。例えばボールを投げる時、彼女は速くは投げられる。

 

 だが、かなりヘンテコな方向に投げてしまう事がある。所謂ノーコンと言う奴だ。

 

「春、ちゃんとアタシが居ると事に投げてよ」

「そーりー」

 

 体育授業の体育館、千夏と千春がキャッチボールをしていた。野球の授業だが外では雨が降っているので室内でやることになっていたのだ。

 

「春って意外と不器用よね。何でも出来るお姉ちゃんって感じだったけど」

「うちは何でもできるお姉ちゃんだよ」

「いやいや、無理があるでしょ」

 

 二人はボールを投げ合い、会話を続ける。

 

「メイド服……」

「なに?」

「なんでもない」

 

 

 千春はメイド服を着てみたらどうかという桜の話を思い出していた。今の自分には目的や目標が徐々に消えて行ってしまっている。

 

 彼女は何かを掴みたいのだ。なんでもいい。この先、妹達が自分を超えて、または必要としなくなった時に

 

 自分がどうすればいいのか。何を支えに生きていくのか。彼女はそれを探している。

 

 これから先の長い未来、彼女は未だ小学生なのだ。十年後、二十年後、どうなるのか。

 

 

(お兄さんと生きていこうとは思っているけど……うちはお兄さんに尽くしたりしてみようかな)

 

 

 千冬、千秋、千夏。三人とも自分のやるべきことが見えているのだ。彼女も何かを見たいと思っている。

 

 

(お兄さんにつくす。つまりは就職したら実家暮らしみたいな感じになるのかな。共働きしながら一緒に働いて……)

 

 

 ポワポワと頭の中で想像をしながら、キャッチボールで暴投する。千夏がうわぁと言いながらあらぬ方向へ飛んでいったボールを取りに行く。

 

 

「あ、ごめん」

 

 

 千春は千夏に謝りながら、困ったような表情を浮かべる。かなりの時間考えたが結局何も浮かばなかったからだ。

 

 

 

 親友の桜が言っていたメイド服を着るというセリフが一瞬だけ彼女の頭の中をよぎった。いや、流石にそれは痛々しくて見ていられないだろう。

 

 

 可愛い可愛い、天使みたいな妹たちならばそれをしても問題ないし。カメラで収めるだろうが無表情で感情の起伏が少ない自分がやってもいいのだろうか。

 

 いや、ダメだろうと彼女は感じていた。という感じで時間は過ぎていった。

 

 

 家までの帰りの時間、彼女は迷い続ける。バスに乗りながら、妹達は話に聞き耳を立てる暇もない

 

 

「我、夏休みの宿題の絵画。先生に褒められた」

「あら、凄いじゃない」

「凄いっス、秋姉」

 

 

 いつもならば千秋にすごいと言いながらハグをして、頭を撫でるところなのだが今回の彼女はそんなことをせずに眉を顰めてずっと迷っていた。

 

 

 家に着いて、宿題をして、おやつのチョコレートを食し、妹達はそれぞれの時間を過ごす。千冬は自主学習を始めて、千夏はゲームの厳選作業を行い、千秋はお昼寝をしている。

 

 千春はそれを確認するとこっそり自室からメイド服を持ち出した。

 

 

(これを着て、何が変わるのか、きっと何も変わらない。でも、うちだって、()()()()()()()()。メイド服をきっかけにするのって意味わからないけど)

 

 

 忍者のように足音立てずに洗面所に入る。最速で服を脱いで、メイド服に早着替えを行う。

 

 ふりふりな布が付いている。白と黒がベースで作られた王道的な衣服であった、首元付近に可愛い黒色のリボンも添えられている。

 

「……意外と似合ってる?」

 

 

 千春は鏡で自身の姿を確認した。無気力無関心無表情の自分。妹以外には興味がない自分だが、大したことのないと思っている自分だが、意外と可愛いと思った。

 

 

「確かに千夏、千秋、千冬とは四つ子だから、顔が似ていても当たり前かな」

 

 

(可愛いポーズとかやってみよっかな……?)

 

 

 舌を出して、ピース。前髪をかき分けながら色っぽい表情をしてみたり、色々と一人でやっていた。

 

 

「意外と可愛い。お兄さんも可愛いって言ってくれるかな……?」

 

 

 魁人が頭の中に浮かんだ。魁人はよく褒めてくれるが、あまりピンと来たことがなかった。しかし、今見たら彼は本心で本当の意味で褒めてくれているのではないかと思えてきた。

 

 

「もしかしたら……」

「……ぉ–」

「ッ!?」

 

 

 

 後ろから声がするので振り返ると千秋がドアを開けてじっと千春を見ていた。恥ずかしい場面を見られたと思って、ちあきを洗面所に入れて扉を閉めた。

 

 

「千春がメイド服を着るとは我驚き」

「お昼寝してたんじゃなかったの?」

「起きた。起きたら千春がいなかったから探してた。そうしたら、まさか、メイド服を着ていたとは」

「……このことは誰にも言わないでね」

「わかった!」

「わかってくれた?」

「うん! わかった! 押すなは押すってことだろ!」

「違うよ。これは恥ずかしい、トップシークレットな秘密なの」

「おー、スパイみたいでかっこいい」

「うん、だから言っちゃダメ」

「えー、でも千夏と千冬にも言いたい!」

「ダメ」

 

 千秋は千春のことを言いふらしたいと思ったが、それを千春は拒んだ。

 

 

「今度、お小遣いで千秋にお菓子買ってあげる」

「ほんと!?」

「うん」

「わかった! シークレット!!」

「二人だけの秘密だよ」

 

 

 千春の説得により、彼女は平穏を取り戻す。誰にも見せる勇気は今のところはないが、魁人にいつかは見せてもいいかもとは思えた。

 

 

「千春は可愛いのになんで秘密にしたいの?」

「だって、うちより千秋の方が可愛いいから。恥ずかしいじゃん」

「我は確かに可愛い。でも、千春も負けてない」

「そう?」

「ずっと言っている。でも、信じてくれない」

「そっか」

 

 千秋が千春のメイド姿を見ながらおおーと感嘆の声を漏らし、ペタペタ服を触る。

 

「似合ってる! 可愛い! 我には及ばないけど」

「知ってる」

「千春は誰よりも可愛いとか、妹に負けたくないって思う時はないの?」

「……考えたことない」

「うーん、我は悪魔と天使のハーフだから勝てないけど。良いところまでは来れる気がするぞ!」

「……そっかな。うちが一番になったら面白いね」

 

 

(自分が妹達よりも、姉妹よりも一番になる、なりたい、なれるなんて考えたことがなかった)

 

 

(でも、ちょっとだけ思う時もあるかな……お兄さんについて。ほんの少しだけだけどね)

 

 

 千春は鏡に写っている自分を見た。いつもの無表情な自分が写っている。ふと笑って見た。

 

 千秋が笑っているので、それを真似るように。

 

 

「この笑顔なら、一番って言われるかな……」

 

 

 誰に対して言ったわけでもないが彼女は言った。しかし、すぐにそんなわけないと首を振って、笑った。

 

 

「ふふ、無理か。まぁ、可愛いとは言ってくれるだろうし」

 

 

 

 

 

 




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少しずつですが、更新をして完結させられるように頑張ります!

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