百合ゲー世界なのに男の俺がヒロイン姉妹を幸せにしてしまうまで   作:流石ユユシタ

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114話 秋から冬

 徐々に寒さが増していく季節に突入をしていく。台風によって修学旅行が中止になってしまい、一部の千春の同級生たちは落ち込んだ。

 

 そんな子供達の心に漬け込むように冬の風は冷たさを増していく。

 

 しかし、そんな子達とは反対に千春達はわりかし元気であった。そもそもだが、千秋は家から離れることが好きではない。

 

 千夏も千冬もさほど外に出たいと思っているタイプではないのだ。ゆえに普段と変わらずに学校に通って勉学に励む。

 

 

「最近寒くなってきたわねー」

 

 

 帰りのバスの中で千夏は肌をさすった。彼女の声に反応を返したのは千秋だ。

 

「この冬の到来は我の能力が解放されたことによる影響だ、すまない」

「あっそ」

「我、冷たい反応されるの苦手」

 

 

 がーん!! と千夏に軽い扱いをされて千秋が戦慄をしてしまうがそんな事すらも彼女は気にしない。

 

 

「千冬は我の味方だから、相応の対応をしてくれるよね!?」

「え? あ、はい」

 

 

 千秋の目がずっと勉学の本を読んでいた千冬に向いた。だが、彼女もずっと勉強に集中をしていたので千秋の声は特に頭に入ってこなかった。

 

 

 ゆえにあっさりとした対応になってしまう

 

 

 

「我、悲しい、千冬もそんな反応をするとは……しくしく」

 

 

 嘘泣きをするように手で顔を隠している。泣いてはいないが、わざとらしい演技をしながら千春を見た。

 

 しかし、いつもであれば千秋を庇うように抱きついて頭をよしよしとする千春が何もしない。

 

 そのことに千秋、千冬、千夏は違和感を持った。妹が大好きでいつも接することが大好きな彼女が何もしない。

 

 会話に混じってこないし絡んでもこない。ただ、窓の外を見てぼぉっとしている。千春が妹を見たりしないなんて、ありえない。

 

 鏡に映った自分よりも妹を見ていることが多い。

 

 

「千春?」

 

 

 千秋が彼女の名前を読んだ。するとハッとして、3人の妹の方に顔を向ける。

 

 

「なんか、話してた?」

「うん、我が世界一可愛いって話してた」

「そっか、確かにね」

 

 

 クスッと笑ってから再び彼女は窓の外を眺めた。ずっと何かを考えているようだった。窓に映っている自分を見ているようにも見えた。

 

 

「春、あんたどうしたの、最近ぼぉっとしている時が多くない」

「そうかな」

「そうよ」

「うーん、どうかな」

 

 

 自分ではあまり理解をしていないような彼女。しかし、言われてみればそんな時があったかのように思われた。そして、考え込んでいるとバスから降りる時間になる、

 

「降りよ、家の前だから」

 

 

 千春は一番最初に降りた、その姿にどことなく違和感を持った3人だがそれ以上は何も言わなかった。

 

 彼女もまた、自分達のように変わり始めていることがわかったからだ。それがどことなく嬉しくて、寂しい感情でもあったことがわかるのは3人だけだろう。

 

 

 

■■

 

 

 四人の修学旅行がなくなってしまったらしい、俺としては四人はもう少し落ち込むと思っていた、

 

「おー、カイト、これ我が書いた天使と悪魔の絵画! すごい!?」

「ふむ、よくできているな」

「これ裏のテーマは人間だ」

「深いなぁ」

 

 

 千秋は全然気にしていないらしい。そういえば去年も大泣きしていたので迎えに行ったのを思い出した。

 

 

「千夏は修学旅行行けなくて悲しくないのか?」

「私、家好きなのよね。だから外に出たいってあまり思わないのかも」

「修学旅行って結構一大イベントだと思うんだけどな」

「私からしたらそうでもないわ。昔から育児放棄と差別のイベントがたくさんあったから」

「なんか、すまない」

「抱っこしてくれたら許してあげる」

 

 

 

 抱っこで済むらしい。千夏は急に大人っぽくなりすぎてたまに驚愕が強い感情になる。だけど、急に年相応にもなるから落差がすごい

 

 

「千冬はいいのか?」

「千冬は勉強が遅れるから基本的には家に居たいっス」

「偉い! でもたまには遊ぶのも大事だぞ」

「魁人さんが遊んでくれればそれでいいっス」

「うーん、なにしてあそぼうか」

「バレーとか教えてほしいっス」

「わかった」

 

 

 

 千冬は勉強熱心だから、と言うか何事にも一生懸命。最近では裁縫も始めている。多趣味であり、いろんなことを頑張りたい彼女からしたら、時間が何よりも欲しいのだろう。

 

 

 

「千春はどうだ?」

「うちは別に、ここに居るだけでいい」

「望まないな」

「うん、高望みしない。でも、前に行った北海道の旅行は楽しかった」

「行くか!」

「急にどうしたの?」

「みんな、欲がないからな! 子供の頃からそんな冷めなくていい気がするからな! もっとわがままでいいだろって思った」

「子供扱いされたくないから、我儘言わないのかもね」

 

 

 クスッと笑う千春。彼女の隣に座っている俺は結構真剣に考えていたのだが、かなり軽めの反応で帰ってきた、

 

 千春はソファの上で体育座りをしている。

 

 

「まぁ、でも、北海道とか行きたいな。そうじゃなくてもスキーとかしてみたい」

「へぇ、スキーか」

「スキーが好きー、なんてね」

「ふむ、好きとスキーをかけた安易だがそれなりのギャグだな」

「これ千秋に言ったら無視された」

「だろうな、だいぶ寒いからな。スキーだけにな」

「あ、今千秋が無視した気持ちがわかった。しょうもないとこう言う気分になるんだね」

「おいおい」

「冗談、ふふ。でも、スキーがしてみたいのは本当。お兄さんが教えてね」

「やったことないんだけど」

「いいよ、それなりで」

 

 

 

 彼女は少し変わった。あれをしたい、これをしたい、自分の気持ちに素直になっている。それが良いことなのはわかる。だけど、そのことに彼女自身が恐怖を感じているのもわかった。

 

 

 そうだった、ゲームでも。

 

 

 いや、それは関係ない。俺なりにこの子のそばにいると決めたのだった。ふと彼女と過去の自分が重なって見えた。

 

 

 ずっと昔、俺にも後悔があった、彼女にも後悔に近いものがある。だからだろうか、彼女とはひと目見た時、既視感があったのは。ゲームのキャラということではなく。

 

 過去の自分という既視感が。

 

 

 

「お兄さん、どうしたの?」

「いや、なんでもないさ」

「そっか、なんだか、うちが悩んでいるときの顔に似てた」

「今の俺がか?」

「バスの窓に映っていた、うちと同じ顔」

「ふむ、あとで鏡で見てみよう」

「写真撮ってあげるよ」

 

 

 

 冗談なのだろうけど、千春はうっすら笑い続けている。しかし、少し目を離すといつもの無表情に戻っていた。

 

 

「じゃ、旅行楽しみにしてるから。スキーね。お兄さん、好きー」

「はいはい」

「……まぁ、こんなぐらいが限度かな」

 

 

 千春はそれだけ行って部屋から出て行った。旅行に行くことが緩やかに決まった。本当に何気なく決まった。

 

 

 だが、だからこそこの旅行で俺と千春が本当の意味で分かりあうことが出来るようになるなんて、思っても見なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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