百合ゲー世界なのに男の俺がヒロイン姉妹を幸せにしてしまうまで   作:流石ユユシタ

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3話 家

 俺が彼女達を引き取ると決めて数日後、俺は家でコーヒーを飲みながら彼女達が来るのを待って居た。

 

 正直言って冷静になると、俺は何をやっているんだと思う事もある。この家には俺以外住んでいる者はいない。両親は他界して、この家と貯金を残したからだ。

 

 亡くなったのは前世の記憶がない時で、大泣きしたのを覚えている。まぁ、それは過ぎた事だから一旦おいておこう。

 

 問題なのは社会人なり立て21歳の俺が現在小学四年生の世話を出来るのかと言う問題だ。正直なところ、前世でも子育てなんてやったことがない。

 

 だが、引き取ったからにはしっかりとやらないといけないと言う責任が発生するのは勿論心得ている。だとするなら、しっかりと四人と向き合わないとな!!

 

 21歳社会人が10歳の幼女四姉妹と向き合うか……あれ? ちょっと危なくない?

 

 自身が大分ヤバい奴なのではと感じていると家のインターホンが鳴る。どうするのか明確な事柄が決まらないうちに四姉妹が我が家に到着してしまったようだ。

 

 

 落ち着かない足取りで玄関に向かい、ドアを開ける。

 

「いらっしゃい、えっと四人共……」

「こんにちは。お兄さん……ほら、三人も挨拶」

「……どうも」

「わ、我は、三女の千秋……よ、よろしく……」

「あー、えっと千冬っす。四女っす……」

 

 凄い緊張しているな。俺も緊張はしているんだが、ここは大人の姿勢を見せて余裕のある行動をとろう。

 

「遠慮しないで入っていいよ。どうぞ、どうぞ」

「ありがとうございます。皆も挨拶したら靴ちゃんとそろえて入って」

 

 

 長女の千春。ゲームでもそうだったが超過保護。姉妹全員を大事にして甘やかす、甘やかしすぎてしまうところもある。彼女は本当はもっと砕けた話し方のはずなんだが、そこはお世話になると言う事で切り替えて話しているのだろう。

 

いや、流石ですね。小さいのに偉い。

 

 

 長女の陰に隠れて千夏と千秋は俺と目を合わせずに靴を脱ぎそろえてフローリングに乗る。そこからどうしていいのか分からないようで、目を合わせずにキョロキョロとあたりを見回す。

 

「そこがリビング。入っていいよ」

「「「……」」」

「ありがとうございます。お兄さん」

 

 

 三人はこくこくと頷き長女は一礼をして三人を率いてリビングに入って行く。俺も彼女達を追ってリビングに向かう。次女と三女は後ろの俺を恐れているようで何度もチラチラ見る。そして早歩きでリビングに入って行った。

 

 怖がられてるな。ニコニコしているつもりなんだが……

 

 

 俺が入るころには全員が正座をしていた。堅苦しいが子供ながらにこういった事が出来ていることに感心と歪さを感じた。

 

 以前と同じように長女と四女が前に、その後ろに隠れるように三女と四女。

 

「これから、お世話になります。お兄さん」

「もっと、砕けた感じでいいよ? 自分の家だと思って好きにやって」

「それはできません……」

「あ、そう……荷物は?」

「最低限だけ持っています。残りは後日改めて届くらしいです」

「そっか……ここまでどうやってきた?」

「タクシーとか電車乗り継いできました」

「子供だけで?」

「はい」

 

 おいおい、いくら何でもそれはあんまりなんじゃないか? まぁ、こういう扱いされると分かっていたから引き取ったんだけどさ。

 

「そっか、しっかりしてるね」

「ありがとうございます」

 

 全部長女である千春が受け答えしてくれるのだが凄い堅苦しい。ゲームであったギャルっぽい砕けた感じが俺は好きなんだが……無理強いはダメだよな。それ以前にもっと楽にしてほしい。

 

 クソな境遇でクソな生活をするから、それを変える為に引き取ったのにこれではあまり変わらない。ゲーム開始までどうか快適で楽しい生活をしてほしい。

 

 どうすれば四人が心置きなく生活ができるか考えないとな。俺がこの家の主だから頭が上がらない的な感じだから俺と気軽に話せるようになればいいはず。

 

 だとするなら先ずは、自己紹介をしよう

 

 

「これから一緒に暮らすんだし、改めて自己紹介しようか?」

「はい、うちは日辻千春。この子達とは四姉妹の関係で長女です。次は千夏、お兄さんにご挨拶して」

「……日辻千夏です……よろしく……お願いします……」

「わ、我は日辻千秋……よ、よろしくしてやっても良いぞ……」

「千冬は、千冬っす……」

 

 

 千夏はもっとツンデレって感じなんだがそれを出せるほど今は元気もない。三女は厨二的な発言が魅力だがそれを出すほど元気なし。四女の千冬は普通に元気なし。殆ど元気なし。

 

 ここは俺が歌のお兄さんのように心を掴む挨拶をしたいが下手に滑ったら余計に溝が出来そうだから普通に挨拶をしよう。

 

「俺は、ブラックかいと(黒魁人)。よろしく」

「「「「……ブラック?」」」」

「ああ、珍しい苗字だと思うけど、黒と書いてブラックと読むんだ」

「……我、そういうの好きかも」

「素敵な苗字ですね。お兄さん」

「「……」」

 

 

 何か良く分からないけどちょっとだけ、三女が心を開いてくれた。だが、次女の千夏と四女の千冬は数の子くらいの興味しかないようだ。

 

 

「えっと、何度も言うし、これからも言うけどこの家は自分の家だと思って好きに使っていいからね」

「「「「……」」」」

 

 結構良いこと言ったと思ったのだが全員が黙りこくってしまった。

 

「どうして、お兄さんはうち達を引き取ったんですか? あの人に……父にお世話になったからですか? それが理由なんですか?」

 

 千春がそう言った。その時の彼女の眼は疑惑、恐怖、負の感情で溢れていた。あの時は親族の前だからそれっぽい理由を言ったけど彼女達にとって父は、いや母も憎悪の対象でしかない。

 

 自分達を最初に化け物だと言って、それを親族たちに知らせたのは自分たちを守るはずの両親だから。

 

 そんな人と仕事関係とは言え関係を持っている俺は何処か不安を拭えないのだろう。何と説明すべきか、大人の事情とか言うより正直に言うべきだと思うが……前世の推しだからって言うのもな。

 

 四人と向き合いながら生活をすると決めたから嘘はダメだ。言える範囲で言う事にしよう。

 

 

「正直に言うと、君たちのお父さんには全くお世話になってない。いや、多少は世話になったけど正直言うと嫌いだった」

「「「「ッ!?」」」」

 

 

 凄い驚いてるな。じゃあ、何で引きとったんだよと言う疑問が四人の顔に書いてある。

 

「じゃあ、どうして……?」

「親族の人たちより俺の方が四人を幸せに出来ると思ったから」

「っ……そう、ですか……」

「そうなんだ。まぁ、そう簡単に俺を信用は出来ないと思うが……それなりには心を休めてこの家を使ってくれ」

「はい、ありがとうございます」

 

 

 あ、全然心休んでいないみたいですね。顔が強張ってますね。顔見ればわかる。これは無理に今接するよりも彼女達だけにして心を落ち着かせる方が良いだろうな。落ち着いたら話をする方向に作戦をチェンジしよう。

 

 

「上の階に部屋用意してるから案内するよ」

「わざわざ……」

「気にしないで。じゃ、行こうか?」

 

 

 俺はリビングを出て二階に上がって行く。我が家は二階建ての37坪の4LDKである。二階部屋が三つある。まぁ、今は四人一緒が良いだろうから一部屋で、中学生くらいになったら二部屋に分けると言うプランを個人的に考えている。もし、今の段階で部屋を分けたいと言ったらそうすればいい。臨機応変に四人の願望に答えよう。

 

「この部屋、好きに使ってくれ」

「ありがとうございます」

「気にしないでいいよ」

 

良い大人感を出して俺は特に何も言わず下の階に降りて行った。後ろから四人の視線が背中越しに注がれる。色々深く考えてしまっているようだけど……

 

 早く、四人がこの家に慣れてくれればいいな……

 

 

 


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