百合ゲー世界なのに男の俺がヒロイン姉妹を幸せにしてしまうまで   作:流石ユユシタ

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85話 朝チュン

 朝が来た。うちは差し込む日の光が顔に当たり目を覚ます。何だか今日は不思議だ。朝起きたばかりなのにも関わらず、嫌な予感がする。不安を抑えきれずに飛び起きる。姉妹の顔を見て不安をかき消そうと千秋の顔を見る。気持ちよさそうに寝ながらにやけ顔をしている。千冬も気持ちよさそうに寝ているのだが……千夏の顔が見えない。と言うかいない……。

 

 これは一体全体どういう事だろうか。千秋がお兄さんの部屋で寝てしまっていないと言う事は以前にもあった。でも、千夏まで居ないなんて……考える事と動くことをマルチでやった方がが良い。もしかしたら、早めに目が覚めてしまって起きているだけかもしれない。千夏に限ってその可能性は低いけど……日朝なら見たいテレビがあるから起きるけど、今日は金曜日だからその可能性は低い。

 

 頭を回しながら部屋を出ようと歩き出す。しかし、足を誰かに掴まれた。

 

「んー、ねーねー、我、自分じゃおきられないー」

 

あ、カワイイ。この可愛さ、違法です。等とふざけた事を考えている場合ではない。今日に限って千秋のダル朝起きるデーだったとは……この状態の千秋は誰かに抱っこして起こしてほしい可愛さ満点の日。

 

 ああ、こんな日に限って、来てしまうなんて。いつもは願っても願っても来ないと言うのに……。しょうがないので取りあえず早めに千秋を起こすことにした。千秋の側によって下から布団と体の間に腕を入れて抱っこするような形にする。すると千秋も抱っこのように首筋に腕を回して甘えるように肩に自身の顔を寄りかからせる。

 

「千秋、ごめんね、今日は早く起きて」

「ん、あい……」

 

ウトウトしながらも一旦離れて部屋を出ようとドアに向って行く。そして、しょうがないとうちはついでに千冬も起こす。この時間になっても千冬が起きているのは珍しい。きっと昨日の夜に沢山勉強したから、睡眠時間を調節したのだろう。うち達は肌荒れ防止の為にちゃんと睡眠をとる習慣もあるし。

 

「千冬、起きてー」

「んー、……はいっすー」

 

 

よし、これで千夏の所に行ける。ようやくうちも部屋を出て千夏を探す。取り合えず、あり得ないけどお兄さんの部屋を探そう。あり得ないけど、部屋に向って行くと、寝ぼけているのか千秋もそっちに向かっていた。

 

う、うん。取りあえず、起こしたから置いておこう。うちはそう思ってお兄さんの部屋を開ける。すると……

 

「あ、おはよう……」

 

 バスタオルで体を巻いていて、ほぼ生まれた状態の千夏が目をパッチリさせて起きていた。千夏には太陽の光が僅かに注いでおり、そのせいで眼がぱっちり開いてしまったのだろう。

 

……そして、その姿を見てうちは膝をついて拳を床に打ち付けることになる。

 

 

 

 

 千冬は久しぶりに春姉に起こして貰い部屋を出た。今日も学校だから下におりて色々と登校の準備をしないといけないのだが、秋姉が寝ぼけて魁人さんの部屋に行ってしまい、更に春姉も行ってしまい、一人で下に降りて準備をするのが何となく寂しいので一緒になって部屋に向かう。

 

 春姉の後は秋姉、千冬の順で追う。そして春姉がドアを開ける。魁人さんの寝顔を見れたらちょっと朝から幸せかも、等と言う淡い期待を千冬は持っていた。だが、飛び込んできたのは目を疑う光景であった。

 

「あ、おはよう」

 

 ほぼ裸体。一体全体何があったのだろうか。魁人さんの隣で姉がほぼ裸体。同じベッドに居る……E!? え?! えぇぇ!?

 

 何事も無いように夏姉は朝の挨拶。そして、春姉は膝をついて床に拳を叩きこんだ。

 

「ちくしょうッ、持っていかれたッー(エドワード風)」

 

 

 悔しそうにしている春姉。秋姉は寝ぼけていた眼をパッチリ開けて

 

「……あわわ、え、エッチだぁッ」

 

 深い意味で何か行為が行われたとは思ってはいないだろうけど、秋姉も流石にほぼ全裸の夏姉が魁人さんと一緒に居るのが恥ずかしい、エッチだと感じて顔を真っ赤にしている。

 

「な、夏姉、な、なんで、そんな、格好……」

「あー、これねー、……うっかりしてたのよ」

「う、うっかりで全裸って」

「後で詳しく話すわ……それより朝ごはん私達で作っちゃいましょう。魁人は珍しくお寝坊見たいだし」

「そうっスね。千冬たちで朝ごはん……って言えないっスよ!? いや、その格好で昨日ナニしてたんスか!?」

「後で詳しく話すって言ってるじゃない……でも、まぁ……そうね。簡潔に言うと……」

「「「……」」」

 

春姉、秋姉、そして千冬が視線を注ぐ。夏姉は斜め上を見て機能を思い出しているようだ。

 

「(何したって言われてもね。そうね、昨日はありのままの自分をさらけ出して、悲しくなって、嬉しくなって泣いて、だから魁人さんに強めに抱きしめて貰って……うん、まぁ、今思うと恥ずかしいわね。全裸だし、今も全裸だし……魁人が寝ているうちに服を着ましょう……)」

 

 

ちょっと頬を赤くしながら、夏姉は答えを絞り出す。

 

「うん、まぁ、ありのままの自分を見せて強めに抱いてもらったって感じ?」

「……うち、今日悲しくて学校いけない」

「は、裸ん坊で抱き合うなんて……え、エッチだぞ!」

「……だ、抱いてもらったって……やっぱり魁人さんってロリコンだったんスか……」

 

 

三者三葉で千冬たちは反応する、そんな千冬たちを置き去りにして夏姉は立ち上がり部屋を出て行く。

 

「何考えているのか良く分からないけど、あとで全部話すから。それよりも朝の支度色々しましょう」

 

夏姉はそのまま部屋を出て行った。春姉は魂が口から抜けており、秋姉は未だに顔を真っ赤にしていた。

 

千冬も半ば放心状態で何が何だか良く分からない。でも、ちょっと泣きたくなってしまった……。

 

 

◆◆

 

「魁人さん、魁人さん」

 

 

 誰かが俺を呼んでいる。暗闇の中で体がゆすられているような感覚に陥って意識が徐々に覚醒をしていく。

 

 

「千冬……」

 

 目を開けると、私服姿の千冬が居た。きっと俺を起こしに来てくれたのだろう。

 

「おはよう、千冬」

「はい、魁人さん、おはようっス。あの、その、魁人さん金髪でひと回り下の女の子が好きなんスか……?」

「朝一でどうかしたのか?」

「い、いえ。別に」

 

 

 目を逸らして、時折何か言いたそうにチラチラこちらを見てくる千冬なのだが諦めた様に目線を落とした。

 

 

「じゃあ、千冬は学校に行ってくるっス……」

「あ、もうそんな時間だったのか?」

 

流石に寝坊しすぎたか。千夏の一件があってどうやら相当気が抜けてしまったらしい。

 

「まだ、そんな時間じゃないっスよ。ただ、今日は早めに学校に行きたいだけっス、秋姉と春姉も今日はもう登校したっス」

「そ、そうか」

 

何だか、急に千冬と距離が感じる。千冬は乾いた笑みのまま部屋から出て行った。千夏は昨日の事はまだ言っていないのかもしれない。何となくだがそう感じた。千冬が出て行った後に俺もベッドから降りて朝の支度を始める。

 

身だしなみなどを整えて、リビングに行くと千夏が椅子に座りながら朝の占いを見ていた。

 

「魁人。起きたのね」

「ああ、今起きたんだ。おはよう。千夏」

「うん、おはよう。ご飯作っておいたから食べて」

「ありがとう。早速もらう事にするよ」

 

 

千冬の言った通り、千春や千夏は既に学校に行ってしまっているのだろう。ランドセルも置いていないし、静かだ。食べていると千夏が俺の食べている姿をジッと見ていることに気づいた。こういう時はご飯の感想、ちゃんと言った方が良いんだろうな。

 

「美味しいぞ。朝からありがとうな」

「どういたしまして……あの、昨日の事だけどさ……」

 

 

眼をそらしながらもどかしそうにつぶやく。ご飯の感想よりそっちの方が気になっていたのだろう。

 

「何も気にしてないさ。今までと変わらない」

「えへへ、なら良かった」

「千春達には言ったのか?」

「まだ言ってない。でも、今日時間があるときに言うつもり」

「そうか。俺からも何か言った方が良いか?」

「うんうん、しなくていい。私が始めた事だから最後まで私がやる」

「責任感が強いな。日辻千夏じゃなくて、日辻責任とこれから言った方が良いか?」

「あ、うん。好きにして」

 

 

あ、これはスベッたな。どうにもどれだけ仲良くなってもギャグだけは受けない。変わらないんだな。話を変えよう。

 

「このコーヒーを淹れたのは千夏か?」

「そうよ、千夏の特性ブレンド、その都度風味が変わるから味の保障ないけど」

「どれどれ……美味しいな」

 

千夏の恩返し的なコーヒーを飲み干しながら優雅に朝食の次男を過ごす。

 

「千春達はどうして今日は早く学校に行ったんだ?」

「え? あー、良く分からないけど、多分私がタオル一枚で魁人のベッドで寝てたから?」

「……そのことを三人に言ったのか?」

「言ったと言うより、見られたって感じ? まぁ、でもそんなに大事じゃ……いや、普通に恥ずかしいわね……」

「まだ、昨日の事は言ってないんだよな?」

「うん。それはゆっくり時間のあるときに詳しく言わないと下手に話が伝わらないって事になりそうだし。あ、でも簡潔に一応状況は言ったわ」

「何て言ったんだ?」

「魁人に強めに抱いてもらって、一緒に寝たって」

 

 

そっか、千夏は変な所で天然だからなぁ……。と言う言葉で澄ませていい訳がない。千冬が朝から変な質問をしてきた意味がようやく分かった。

 

「取りあえず、三人にはちゃんと説明してくれ」

「分かったわ!」

 

 

朝の優雅な時間が、急に憂鬱の時間になった。でも、千夏の嬉しそうな可愛い笑顔が見られたから……トータルで優雅に傾くかもしれない。

 

 

 

―――――――――――――――

 





書籍化決定しました。ここまでこれたのも読者の皆様のおかげです。いつもありがとうございます。現在色々準備しているので中々更新が……すいません。沢山夏休みはすると報告をしたのに……なるべく出来るように頑張ります。情報もどんどん公開していくのでツイッターフォローお願いします。

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