マブラヴ・オルタジェネレーション   作:京橋

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 今回は色々なゲスト出演者が出現しますww





第十三話 世界へ……

 

 

 

 明星作戦から数か月……横浜ハイヴは人類初のBETA拠点の占領地となり、作戦立案者である【香月 夕呼】は地下ハイヴ構造の一部をそのままに、BETA研究及び軍事基地として横浜基地建設を国連軍に要請した。

 

 その最中、ジェネレーションズも帝国軍から提供された補給場所で先のワールドシグナルによって出現したであろうコロンブス級の格納庫で発見されたジェネレーションシステム内でMS製造の一端を担っていた製造装置【ジェネレーションビルダー】とMSのパーツなどの補給パーツ製造の小型装置を発見、調査していた。

 

 そんなある日のこと、鎧依課長からの紹介でネェル・アーガマ改へとやってきた【香月 夕呼】はオルタネイティヴ第三計画から第四計画に移行と共に接収した人工ESPである【社 霞】と共に現れた。

 

 香月はマーク達とブリーフィングルームにてオルタネイティヴ第四計画の総責任者となった自身の権限を利用してジェネレーションズにどの国からの介入などをパスできる独立権を与える代わりに、ジェネレーションズの持っているMSや異世界の技術を提供してほしいと提案された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 香月と霞が帰って行った日の晩。ゼノンはラナロウ達をブリーフィングルームに集め、今後の方針についての会議を開いていた。

 

「さて、皆に集まってもらったのは他でもない。我々の今後の活動についての話だ」

 

「今後?何か進展でもあったのか?」

 

「実は本日、オルタネイティヴ第四計画の総責任者である香月 夕呼博士が本艦に訪問されました。その際にある提案を持ちかけられました」

 

 ゼノンの話にラナロウが質問するとニキが答え、香月から提案された独立権限の話を皆に説明した。

 

「そういえば、オルタネイティヴ計画って具体的にどんな計画なんですか?」

 

「それについてはアプロディアから説明してもらいます。アプロディア、お願いします」

 

『はい、解りました。オルタネイティヴ計画というのは、生態が不明であったBETAを研究するという名目で始まった計画で、事の始まりは…………』

 

 マリアの問いに、アプロディアが立体映像として現れ、香月が帰り際に手渡されたオルタネイティヴ計画に関するデータを基にディスプレイに表示させた。

 

 

 

 

 オルタネイティヴ計画が発足されたのは1958年に火星で初めてBETAが発見された次の年の1959年、火星の衛星軌道に回っていた探査衛星が火星地表数か所に巨大建造物があることが判明した。

 

それに伴い、知的生命体が火星に存在していること可能性が分かり、各国の数学者及び言語学者の世界的権威を持つ12人の学者たちが集められ、火星知的生命体とのコミュニケーション方法の確立を目指し、研究チーム【特務調査機関ディグニファイド12】が発足された。

 

 それから7年後、特務機関ディグニファイド12の研究が進み、世界規模の巨大計画へと発展していったことで、唯の研究機関が【オルタネイティヴ計画】へと名を変えた。

 

 2年後、月面での火星知的生命体との第一次月面戦争が勃発。この時に火星知的生命体はBETAと呼称されることになった。

 

「この辺りの事は前にBETAとの戦争勃発の話で出てきたな」

 

『はい。この事件が切っ掛けで、より直接的にBETAの生態研究を行うために計画は第二段階へと移行します』

 

 エイブラムの問いにアプロディアは答え、さらに説明が進む。

 

 1968年、計画が第二段階へと移行し【オルタネイティヴⅡ】が発足。ちなみにⅡに移行したことで最初の計画は【オルタネイティヴⅠ】と呼称された。

 

 第二計画の目的はBETA個体の捕獲を行うことで直接的な生態解明とコミュニケーション方法を図る為の研究だった。

 

『しかし、当時の研究者の方々はBETAの生態・研究を進めていくにつれ、現存する生物とは掛け離れた生態・形状に世界中を震撼させたらしいのです』

 

 BETAの形状・生態を研究するにつれ、火星や月などの水や酸素の無い惑星にも適応し、地球に関しては地表・地中・深海・果ては真空状態の場所などの環境に問わず活動のできるBETAは生物学の常識を超越した生命体であることが発覚した。

 

 さらに本計画で莫大な予算と犠牲を費やしたにも拘らず、決定的な成果は得られず、判明したことは「BETAは炭素生命体である」ことのみだった。

 

しかしこの計画によって代謝低下酵素の発見など人類への貢献は決して低いものではなかった。

 

 だが、この第二計画の最中、ある研究者の一部がBETAに対しての未知領域に潜在的恐怖に駆られた事で非人道的な行為を行う者がソ連にて“ある計画”を始める切っ掛けを作ってしまった。

 

『それから5年後、BETAが地球に侵攻して来た頃……後にオリジナルハイヴと呼ばれるようになるBETAの着陸ユニットがユーラシア大陸に落着した年に、ソ連にて第三計画【オルタネイティヴⅢ】が発足したようです』

 

 BETAの地球侵攻を契機に第二計画で密かにソ連が進めていた予備計画が第三計画として【オルタネイティヴⅢ】に昇格した。

 

この計画では第二計画で潜在的恐怖に駆られた研究者らが「ESPによるBETAへの直接思考探査」という主旨の計画案を提示。

 

 国連は第二計画が頓挫した場合に備えて次期計画として採用していたらしく、ソビエト科学アカデミーに予算提供を開始。遺伝子操作によって人為的にESPを生み出す“人工ESP発現体”(Extra-Sensory Perseption=超感覚能力)の研究が加速していた。

 

「それって、もしかしてかっちゃんの言っていた」

 

「かっちゃん?それって誰の事?」

 

「こうづきって人と一緒にいた女の子!霞ちゃんの事だよ」

 

 アプロディアの説明の中で突然カチュアが声をあげ、マリアは香月と共にいた【社 霞】の事を思い出した。

 

カチュアの話によれば彼女も人工ESP発現体の一人で、リーディングという能力で相手の思考を読み取ることができるという。

 

「つまり、その人工ESPっていうのは僕たちの世界でいう強化人間ってことになるんですか?」

 

『それに近いかもしれません。言うなれば人工ESP発現体とは【コズミック・イラの世界】の遺伝子調整されたコーディネーターのように遺伝子を人為的に操作し、さらにその遺伝子同士を掛け合わせ、より強いESP発現体を生み出す……それが第三計画で行われていたようです』

 

 シェルドの質問にアプロディアは人工ESP発現体の開発・量産の経緯を説明する。その説明を聞いたジェネレーションズメンバーは危機的状況に置かれた人間は人の命を弄ぶとも言える行為を簡単にやることができると再認識した。

 

 それこそ【コズミック・イラの世界】でプラントのコーディネーターを相手する為に薬物投与や洗脳などの非人道的な事を行っていたブルーコスモス。その直下の特殊部隊“ファントムペイン”や生体CPUなど機械の部品のような扱いを受けていた者たちの存在を知っているからこそ、ただBETAの思考探査の為だけに生み出された人工ESP発現体の存在に心を痛めた。

 

 しかし、恐らく当時の研究者達にとっては自分達がいつ殺されるのか分からない状況で、さらに自分達の国に住んでいる家族や友人などを守るためになりふり構っていられないという状況下ではそういった道に足を踏み入れてしまうのもまた然り……

 

 だからこそ、彼らの行為が絶対に間違っていると軽々しく言うことはできない。しかしいつの時代も、世界が違っても、人は同じ過ちを繰り返してしまうのだろうか……

 

『その第三計画ですが、人工ESP発現体のリーディング能力を駆使して判明したことは、BETAにはそれぞれ思考を持ち、さらに人類を“生命体とは認識していない”という事実が判明しました』

 

 暗い空気が流れるブリーフィングルームにアプロディアは説明を続け、第三計画の成果である人工ESP発現体によるリーディング能力を用いて判明したことは、BETAは思考を持った存在であり、同じ炭素生命体であるはずの人類を生命体として認識していないという事実が分かったことだった。

 

「つまりBETAは人類を生命体として認識していないから襲ってくると?」

 

『この情報から見ればそうなりますね』

 

「何だかBETAが【00の世界】で現れたELSみたいだな……」

 

「クアンタがあれば意志疎通とかできそうなんだがな……」

 

『それは難しいでしょう。GN粒子の高濃度圧縮による意識共有領域を展開できたとしても、私達のメンバーの中にイノベイターが存在しません』

 

 BETAが思考を持っているのなら【00の世界】で外宇宙からやって来たELSとの対話の時のように意志疎通を行なえばいいと話すゼノン、マーク、ラナロウの三人だったが、そもそも今のネェル・アーガマ改にはGN粒子を生み出す太陽炉搭載の機体が存在しておらず、仮にジェネレーションビルダーで対話のためのガンダムである【ダブルオークアンタ】を製造したとしても、元々ダブルオークアンタは純粋種のイノベイターとして覚醒した【刹那・F・セイエイ】の専用機であり、演算処理システムである【ヴェーダ】とリンクしていたイノベイドの【ティエリア・アーデ】の協力があったからこそ数十万単位以上のELSとの対話を可能にしたものだったのだ。

 

 故に機体だけがあっても、能力を活かせるパイロットがいなければどうにもならない。

 

「ともかくBETAとの対話に関しては保留にするしかないとして。アプロディア、オルタネイティヴ計画のその後は?」

 

『はい。その後、第三計画から現在第四計画に入ったとのことで、香月博士から受け取ったデータディスクにはここまでしか情報が入っていませんでした』

 

 現時点で対話に関しては保留と決めたニキはアプロディアに続きを促すが、香月から受け取ったデータディスクには第四計画【オルタネイティヴⅣ】に入った所までしか入っていなかった。

 

「それで、香月博士の提示してきた条件に関してだが、どうする?」

 

 ゼノンの言葉にブリーフィングルームにいるメンバーの表情が変化した。香月の出した条件……こちらの技術とMS、そしてMSを扱える人員の提供。対して見返りは各国からの完全な独立部隊としての権限。

 

「香月博士からの提案を受け入れれば、ターンエーガンダムの捜索や、あのワールドシグナルの発生原因やこの世界にどのような影響を与えてしまったのかの調査ができます」

 

「だけど、その条件を受けるにはこちらからもMSの技術やパイロットを何人か提供しないといけないんですよね?」

 

 ニキの説明にレイチェルが指摘する。

 

この条件はマーク達からしてみれば、何処かにいるかもしれないターンエーガンダムを探すには世界中を回ることになる為、各国からの何かしらの介入などが発生した場合、身動きが取れなくなってしまう。

 

 そこで独立権限を有しておけば各国からの妨害など発生しにくくなるし、ワールドシグナルの発生時の影響の調査もしやすくなる。

 

 故にジェネレーションズのメンバーは香月からの交換条件を受け入れようと考えていた。

 

 ただ、問題は香月側にMSを提供するにしてもパイロットに誰を送るかという事だ。

 

「MSを研究用に扱うのなら機体を運用できるパイロットが確かにいるだろうな。この世界の戦術機とMSじゃ操作方法が全く違うからな」

 

『そうですね。MSは動力として宇宙世紀では小型核動力、コズミック・イラでは電力バッテリーですから、戦術機と比べればコズミック・イラのMSが近いかもしれません』

 

 MSを運用するにあたってパイロットが必要なのは、戦術機とMSとでは操縦方法も全く違う。故に香月がMSを運用できるパイロットを求めるのも当然の理由だ。

 

 戦術機は動力として本体と跳躍ユニットの二系統に分かれており、機体本体は電圧を与える事で伸縮する【電磁伸縮炭素帯(カーボニック・アクチュエーター)】を中心に構成されており、その電力にバッテリーとマグネシウム燃料電池を使用している。

 

 跳躍ユニットは本来【噴射跳躍システム】と呼ばれ、推進剤はジェット燃料を使用しているため、戦闘機などのジェットエンジンとほぼ同じシステムになっている。

 

 電力などを使用している戦術機と運用システムが似ているため、香月に提供するとしたらコズミック・イラの世界で運用されていたMSが適していると判断された。

 

「それでパイロットはどうする?」

 

「それなんだが……」

 

 エイブラムの質問にゼノンは悩みながらもある決断をした。

 

 

 

 

 

 

 

________

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 香月からの交換条件が提示されて数週間後。ゼノン、マーク、ニキの三人は帝国軍と斯衛軍、国連軍の高官達が集まっている帝都城の謁見の間にやってきていた。

 

 帝国軍と斯衛軍からはマーク達と顔見知りのメンバーが集まり、謁見の中央には煌武院 悠陽の姿もあり、帝国軍と斯衛軍側には月詠 真耶。国連軍側には鎧衣課長が傍らにいた。

 

 国連軍からは香月 夕呼やオルタネイティヴ計画に関わっている一部の高官達(オルタネイティヴⅣ支持派)が集まっていた。

 

 そして他のジェネレーションズのメンバーは帝都城の外で待機させている。

 

 謁見の間にて今後のジェネレーションズの方針を悠陽に話し、香月もどんな裏技を使ったのか、国連会議にてジェネレーションズの独立部隊としての独立権限を承認させたことを説明した。

 

「マーク殿、そのターンエーと呼ばれる機体は再び姿を現すのでしょうか?」

 

「それは解りません。そもそもターンエーが今、何処にいるのかも不明です。ですが、あの機体を野放しにして再び明星作戦の時のように猛威を振るえば、世界規模で地球文明が滅びることになります」

 

 悠陽の問いにマークはターンエーガンダムの本当の恐ろしさを説明すると、謁見の間にいた高官達は騒めき始める。明星作戦でターンエーガンダムが発動させた月光蝶の真の恐ろしさは、月光蝶を形成するナノマシンによる物質崩壊……接触した物質を土塊へと変える事。

 

 かつてガンダムの存在する世界で地球文明を一度リセットさせた【ナノマシン・ハザード】を引き起こした。

 

 この話を聞いたらターンエーガンダムが例えBETAを絶滅させるために月光蝶を発動させれば、それは同時に人類も一緒に被害を受け、BETAもろとも人類文明も滅びることになる。

 

「それに明星作戦の時にもありましたが、あの大空に浮かび上がったモノ…あれはワールドシグナルと呼ばれる現象で、あれが発生すると我々の世界のMSがこちら側に現れてしまうんです」

 

「それは以前、鎧衣が見せてくれた資料の機体ですか?」

 

「はい。ですがあの時は一時的なものだったか、すぐに消滅したのかもしれませんが、今回のワールドシグナルがあの時のようにハッキリと発生したとなれば、この世界にどのような影響を及ぼしてしまっているのか調査も行いたいのです」

 

 マークに続いてニキも明星作戦で出現した世界を歪めてしまう【ワールドシグナル】の説明を皆に話し、悠陽は明星作戦発動前にマークとニキを帝都城に招いた時に鎧衣課長が世界を回っていた時に入手(偶然?)した世界各地で出現したMSの事を思い出した。

 

 MSの性能は確かにこの世界の戦術機を遥かに凌駕する性能を有している。だが、ワールドシグナルで出現したMSは必ずしも人類の味方になるとは限らない。

 

 仮にワールドシグナルで出現した機体がビグザムやパトゥーリアなどの巨大MAだったとしたら、戦術機では到底かなう筈がない。

 

 故にワールドシグナルの発生原因を解明できれば、無作為に発生するかもしれない第二の脅威を防ぐことができるかもしれない……

 

 ワールドシグナルの話を終えた謁見の間には静寂が訪れる。さすがの帝国軍や斯衛軍、交連軍の高官達はマーク達の使用しているMSの性能を見て来ただけあってか、もしもマーク達の使用している機体と同等の性能を持ったMSがBETAとの戦闘中に突然出現すれば人類側の被害は想像できない。

 

「でっ、ですが!マーク殿達は我が日本における守護の要。それを失えば……」

 

「いえ、我々としても今まで日本の方々には多大なる恩があります。特に悠陽殿下には身も知らぬ我々に補給などを行なえる場所を提供させて頂いた事に感謝しております。ですから……」

 

 対BETAの防衛の要であるマーク達が日本から離れることに不安がる高官達だったが、ニキの言葉の後に鳥の羽ばたく音が外から聞こえた。その音にニキは立ち上がり、謁見の間の襖を開けると、そこには一羽の鳥が……否、鳥型のアンドロイドがいた。

 

「アービィ、準備の方は?」

 

「準備はできています。今こっちに向かって来ているわ」

 

 【アービィ】と呼ばれた鳥型アンドロイドはニキの言葉に羽を広げて外へと体を向けた。すると戦術機が歩くような音が徐々に近づいてくる。

 

 謁見の間にいた悠陽、月詠、鎧衣課長、香月、帝国軍と斯衛軍、国連軍の高官達はニキが見つめる方角を見た。

 

「あっ、あれは!?」

 

 高官の一人が指差した方角から四機のMSが姿を現した。

 

「我々が世界へ向かうに当たって、MSの研究用に帝国軍にはガンダムアストレイRFとイフリートナハト。国連軍・横浜基地にはストライクEを二機と整備用パーツ製造装置一基を提供します」

 

 ニキの説明と共に姿を現すコズミック・イラの世界で中立国オーブが開発した赤いフレームが目立つ【ガンダムアストレイRF】と一年戦争中にオデッサにてジオン軍が開発し、終戦後に連邦軍が鹵獲したイフリートの派生機種【イフリートナハト】。そして明星作戦でエミリスが搭乗していた【ストライクE】二機……合計四機のMSが帝都城の前に現れた。

 

 

 

 

 

 

 

______________

 

 

 

 

 

 

 

 

 マーク達ジェネレーションズのメンバーが帝都城で会合を行なっていた頃、ロシアのある地点で数体のソビエト連邦陸軍所属の【Su-27 ジュラーブルク】と数十体の【MiG-29 ラーストチカ】の二編隊が激しい戦闘を繰り広げていた。

 

各機が手にしている【A-97 突撃砲】を凄まじいスピードで動き回る一機の攻撃目標に定めて一斉攻撃を仕掛けていた。

 

「くそッ、一体何なんだアレは!!」

 

「右か!?いや、左か!?くッ、追尾できない!!」

 

 ソ連軍の衛士達は必死に攻撃を当てようとするが、迫りくる一つ目の蒼い物体は背部と脚部のスラスターを吹かしながら徐々にジュラーブルクとラーストチカに迫ってくる。

 

そして接近を許した一機のラーストチカは蒼い機体が両手に装備しているオレンジ色に光る実刀ですれ違いざまに両脚部を切断された。

 

さらに隣にいた僚機には両腕部に装備されているグレネードランチャーを一発射出して撃破され、そして遠くから援護に向かって来ている戦術機部隊には両脚部の【連式ロケットポッド】を左右四発ずつ発射して増援部隊に被害を与えた。

 

 凄まじい爆発音と共にジュラーブルク二機とラーストチカ六機を一瞬にして戦闘不能に追い込んだ一つ目の蒼い機体……その鬼神のような姿に他のソ連軍衛士らは戦慄する。

 

「なっ、何だよ……あの戦術機は?」

 

「あの両肩の色……まるで返り血のように真っ赤だ……」

 

 爆炎を背景にソ連軍を見据える一つ目の機体……それはかつてニュータイプと呼ばれる存在を危険視し、狂気に走った男【クルスト・モーゼス】が作り出した【EXAMシステム】を搭載した【イフリート改】だった。

 

 イフリート改は新たに現れたラーストチカ部隊に目標を定めると両手に持っているヒートサーベルを構えた。ソ連衛士はイフリート改の動きに息を飲んだその時だった。

 

『全部隊に告ぐ……即時後退せよ、これより実験体による実戦データの収集を行う。各機はデータ収集後、アンノウンの残骸の回収にまわれ』

 

 ジュラーブルクとラーストチカ部隊の衛士達の耳にソ連司令部からの命令が下り、後方から一機の戦術機が彼らの前に現れた。

 

「隊長……こいつは……!?」

 

「ああ、こりゃマジでやばいな。全機即時後退!巻き込まれたくなかったらとっとと下がれ!!」

 

 現れた戦術機【Su-37UB チェルミナートル】の姿に部隊の隊長は他の僚機と中破した機体を連れて後方へと下がって行った。

 

そして荒野には新たに現れたチェルミナートルとイフリート改が対峙し、チェルミナートルは両腕の近接戦兵装システムを起動させ、モーターブレードが高速回転させるとイフリート改に向かって突撃していった。

 

 イフリート改も右手のヒートサーベルを振り上げてチェルミナートルの左腕のモーターブレードを受け止め、左手のヒートサーベルで攻撃を仕掛けるも、チェルミナートルも右腕のモーターブレードで受け止める。

 

 お互いの武器が火花を散らす中、チェルミナートルは可動兵装担架システムで突撃砲を前に出した。イフリート改は射撃を受けると判断したのか両脚部と背部のスラスターで後方へと地面を滑るように下がりながら回避し、連式ロケットポッドで反撃する。

 

 飛来するミサイルを突撃砲で撃ち落としたチェルミナートルは再びイフリート改に向かっていく。だが、イフリート改の一つ目がピンクから血のような真っ赤に変化すると先程までのスピードからさらにスピードが上がり、一瞬にしてチェルミナートルの背後に回るとヒートサーベルを振り上げた。

 

 イフリート改の攻撃に辛うじて回避できたチェルミナートルだったが、背部の突撃砲がヒートサーベルによって切断されてしまった。

 

 一度距離を取って再び構える両機体だったが、チェルミナートルの目が怪しく光り出すと、跳躍ユニットを噴射させてイフリート改へと突っ込んでいく。

 

その後ももの凄いスピードで激しい攻防を続けるチェルミナートルとイフリート改だったが、その動きを見ていたソ連衛士は後にこう言い残したという……

 

「あれは本当に人間が操縦しているのか……?」と……

 

 そして二機の勝負は決着がついた。イフリート改が振り上げたヒートサーベルをチェルミナートルが寸のところで左に動いて回避したが右腕部を切り落とされてしまった。

 

 しかしチェルミナートルの左腕のモーターブレードがイフリート改のコクピットに突き刺さり、高速回転するモーターブレードはイフリート改の腹部を貫いた。

 

 チェルミナートルはモーターブレードを引き抜くと、コクピットが貫かれたことでイフリート改のモノアイの光が消え、両腕をだらりとさせて機能停止して倒れた。

 

『これより各機は停止したアンノウンの残骸を回収せよ』

 

 チェルミナートルとイフリート改の壮絶な戦いを見ていたソ連衛士の耳にソ連軍司令部からの声が響き、後方で待機していたジュラーブルクとラーストチカの部隊は機能停止したイフリート改の回収に動き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

_________

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 同時刻……統一中華戦線管轄の台湾付近にて、BETA防衛ラインを越えて来たBETAに対し、統一中華戦線は戦術機部隊を出動させる。

 

 その中で統一中華戦線に所属している【崔 亦菲(ツィ・イーフェイ)】少尉は乗機である近接戦特化型【J-10 殲撃10型】で任官したばかりの三人の衛士と共に迫りくる要撃級を殲滅していく。

 

 しかし激しい戦闘を繰り返す中で、【77式近接戦闘長刀】を激しく使用した為か、機体の両腕部のアクチュエーターに過大な負荷が掛かってしまい、左腕は殆ど動かない状態になってしまっていた。

 

「くっ、左腕のアクチュエーターが……やっぱり出力と耐久性にまだ無理があったのよ!!」

 

 コクピット内で愚痴をこぼす亦菲だったが、他の部隊の働きもあり、何とかBETA群を押し返えし、侵攻を阻止できたと安堵した時だった。

 

網膜センサーのレーダーが別方向から進撃してくるBETA群の存在を感知。亦菲は進撃速度から突撃級の大群だとすぐに判断した。

 

「突撃級!?こんな時に!!」

 

 突撃級相手に長刀では全く相手にできず、突撃砲を使おうにも片腕は機能停止、マガジンの弾数も残り少ない。部隊の機体状況も厳しいこの状況では確実にやられる……そう思ったその時だった。

 

 突然もの凄い爆音が響き渡り、亦菲は音のした方を見るとその光景に唖然としてしまった。そこには紫色の竜巻が増援として現れた突撃級の群れを吹き飛ばしている光景だった。

 

「なっ、何!?」

 

 大空に舞う突撃級が落下していく姿を眺めていると、崖の上に身の丈以上の長槍を持ったボロ布をマントのように全身に巻き付けた人間?がいた。

 

「ちょっ、ちょっと!こんなところで何やってんのよ!!早く逃げなさい!!」

 

 BETAのいる戦場に槍一本持った人間がいることに、亦菲は頭がイカレた人間が迷い込んだのかと思い叫ぶ。だが、槍を持った者は崖から飛び降りると先程の竜巻で地上に落ちて来た突撃級に向かって槍を構えた。

 

「くらえ!!旋風ッ!爆裂衝!!!」

 

 槍の者が叫びながら持った槍を地面に突き立てると衝撃波が発生し、倒れて身動きが取れない突撃級をことごとく粉砕して絶命させていった。

 

「嘘っ!?」

 

 その光景に亦菲や他の衛士達はただ目を見開いて驚くしかなかった。その時、槍の者の纏っていたボロ布が外れ、その下からは何処か中国武将のような鎧を纏った人ではない“何か”が立っていた。

 

「ふんっ、どうした物の怪ども!!この俺を……戦慄の暴将、呂布の血を滾らせてみろ!!」

 

 そこにいたのは、こことは違う世界【三璃紗(ミリシャ)】と呼ばれる世界で猛威を振るい、戦いを求め、修羅となって生きた戦慄の暴将【呂布トールギス】が立っていた。

 

 呂布トールギスの攻撃で突撃級は全滅し、その後方からやって来た戦車級と要撃級が呂布トールギスに向かって姿を現した。その姿に呂布トールギスはニヤリと笑みを浮かべると左手を前に出した。

 

「うおおぉぉぉぉぉっ!!魂イイイイッ!!!暴風ッ!!激烈斬ッ!!」

 

 呂布トールギスは左手を震わせ、紫色のオーラを纏いながら魂の雄叫びをあげ、手にした“破塵戟(はじんげき)”を頭上で振り回すと空から紫色の竜巻が発生し、槍に纏わせると向かってくる戦車級と要撃級の群れに投げつけた。

 

 すると先程、突撃級を吹き飛ばした竜巻が暴風の塊となってBETAを切り刻みながら一瞬にして肉の塊へと姿を変えた。

 

 その光景に亦菲は自分でも知らない内に気持ちが高騰し、一種の興奮状態になっていた。呂布トールギスの圧倒的な力と激しさ……その荒々しさに体がゾクゾクし、心臓の鼓動が激しく脈動していた。

 

 それから暫くした後、増援として現れたBETA群は呂布トールギス一人の手で殲滅させられた。後にこの戦闘での出来事は“暴風のような荒ぶる猛将”として統一中華戦線の中で語り継がれていくことになった。

 

 

 

 

 

 ワールドシグナルによる世界の影響はマーク達の知らぬ場所で少しずつではあるが発生しつつあった。

 

 

 

 






 はい、今回はイフリート改と魂イイイイの武将に来てもらいました。

 呂布トールギスとかSD三国伝のキャラは普通の人間と比べたらどのくらい身長差がどんなものだろう?
スパロボで参戦した際は人が孫権ガンダムを見て「キグルミみたい」と言っていたから
ほぼ同じくらいかな?

 
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