“大賢者”と“ガチャ”を得た転生者の冒険譚   作:白の牙

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第18話

 

 

 

 

 「おはようハジメ、恵理、ユエ」

 

 「・・・何でバスローブを着てるんだ?」

 

 「そりゃあ、風呂に入ってたからな。色々聞きたいことはあるだろうが、まずは隣の住居の1階ある風呂に入ってこい」

 

 飛羽真は3人分のバスローブを投げ渡し、部屋から出ていった。

 

 

 

 

 

 

 「んで?ここは何処で?あの後何があったんだ?飛羽真がヒュドラに止めを刺したところまでは覚えてるんだが」

 

 「私も」

 

 「ヒュドラを倒した直後の気絶しちまったからな。んじゃ、まずはそこから話すか」

 

 風呂に入ってさっぱりした後、ハジメが飛羽真に尋ねと、飛羽真はヒュドラに止めを刺した後のことを話し出す。飛羽真がヒュドラに止めを刺すと、尋常ではない相手が倒れたことで張りつめていた糸が途切れ、飛羽真とゼストを除く全員が気を失い倒れたこと。ヒュドラが守っていた扉が勝手に開いたこと、安全確認のため余力のある飛羽真が扉を潜ると、広大な空間に住み心地の良さそうな住居があり、危険がないことを確認してから住居へと赴き、ベッドルームを見つけたので戻り、ゼストと協力してハジメ達を運び、寝かせたことを話した。

 

 「そして、ここが何処かだが。十中八九、前にユエが言っていた反逆者、その住処だと俺は思ってる」

 

 「そう・・・か。そのベッドまで運んでくれてありがとな」

 

 「ありがとう飛羽真君」

 

 「・・ありがとう」

 

 「ハジメを運んだのは俺だが、2人を運んだのはゼストだ。礼を言うならゼストに言ってやってくれ」

 

 「そういえば、ゼシカとシュテルはどうしてるんだ?」

 

 ふと気になったのかハジメが飛羽真に尋ねる。

 

 「2人は別の部屋で寝てる。2人が起きるまでもうしばらくかかりそうだし、その間に見回って来な。きっと度肝を抜かされると思うぞ?」

 

 そういうと飛羽真は部屋から出ていった。その後、3人は飛羽真に言われた通り、見回るために部屋を出ると飛羽真の言った通り、目に映った光景に度肝を抜かれた。

 

 

 

 

 

 

 「これが2人が気を失った後に起こったことだ」

 

 「そうですか」

 

 「魔王を倒した後の私もきっと今の私と同じだったのかもしれないわね」

 

 目を覚ましたゼシカとシュテルにハジメ達に話したのと同じ内容を飛羽真は伝えた。

 

 「気になる部屋もあったんだが、全員で行ったほうがいいと思ってな詳しくは調べなかった。この後、ハジメ達と合流していくつもりだが、その前に風呂に入ってこい」

 

 「そうね。そうさせてもらうわ。行きましょう、シュテル」

 

 「はい」

 

 シュテルの手を引き、ゼシカが風呂に入りに行こうと部屋を出ようとするが。ふと立ち止まり、飛羽真のほうを向く。

 

 「飛羽真も一緒に入る?」

 

 「んな!?」

 

 「冗談よ。もしかして本気にしちゃった?」

 

 「っ!?さっさと入ってこい!」

 

 「うふふ、は~い」

 

 赤面する飛羽真が見れて満足したのかゼシカは今度こそシュテルと共に風呂に入りに向かった。

 

 「・・・ここで残念だって思って、一緒に入るところを想像した俺は悪くないよな?」

 

 頭に浮かんだ光景を忘れようと頭を大きく振るった飛羽真は、川に魚がいるかの確認をするため部屋から出ていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「説明するだけでなんでそんなに疲れてるんだ?」

 

 「色々とあったんだよ、いろいろとな」

 

 何故か疲弊していた飛羽真にハジメが尋ねるも曖昧な返答が返ってきた。

 

 「しっかりしてくれよな。これから唯一入ることのできる部屋に行くんだからよ」

 

 「分かってる」

 

 ハジメに言われ、飛羽真は頬を叩いて気を引き締めなおす。住居の1階を除けば、唯一開けることが出来た3階の一室。中に入れば直径7~8mの魔方陣が中央の床に刻まれていた。

 

 「飛羽真、あれって」

 

 「骸だな」

 

 魔方陣にも注目がいったが、もっと注目したのは魔方陣の向こう側、豪奢な椅子に座っていた骸だった。白骨化しており黒に金の刺繍が施されたローブを羽織っていた。

 

 「お化け屋敷にあるオブジェって言われると信じちゃいそうだね」

 

 「だな」

 

 恵理の言葉にハジメが肯定して頷く。

 

 「あの骸は何故この場所で朽ちて白骨化したのでしょう?寝室やリビングではなく、この場所を選び、果てた意図は?」

 

 「・・・もしかしたらこの場所に誰かが来るのを信じ、待っていたのではないでしょうか?」

 

 シュテルの問いにゼストが自身が思ったことを言う。

 

 「・・怪しい・・・どうする?」

 

 「どうするって」

 

 「地上への道を調べるには、この部屋が鍵なんだろうしな。俺や飛羽真の錬成も受け付けない書庫と工房の封印・・・調べるしかないだろう」

 

 「俺とハジメが先に行く。何かあったら頼む」

 

 2人はそう言うと魔方陣へと向かって歩き出す。そして、2人が魔方陣の中央に足を踏み込んだ瞬間、純白の光が爆ぜ部屋を真っ白に染め上げる。

 

 「っく!?」

 

 「何だ、これは!?」

 

 眩しさのあまり目をつむる2人。直後、何かが頭の中に侵入し、走馬灯のように奈落に来てからの事が駆け巡った。やがて光が収まり、目を開けた7人の前には黒衣の青年が立っていた。

 

 「っ!?」

 

 「待て、ハジメ」

 

 「何で・・・」

 

 「よく見てみろ。あの骸が着ているのと同じローブ。それに人にしては薄い、恐らく立体映像だろう」

 

 

 銃を抜こうとしたハジメを飛羽真が止め、現れた人影をよく見て自身の考えを言った。

 

 『試練を乗り越えよく辿り着いた。私の名はオスカー・オルクス。この迷宮を創った者だ。反逆者と言えばわかるかな?』

 

 「この人が反逆者」

 

 何故だか分からないがこの人に話を聞けば自分の思っていた疑問が解ける気がすると飛羽真は直感した。

 

 『あぁ。質問は許してほしい。これはただの記録映像のようなものでね、生憎君の質問には答えられない。だが、この場所に辿り着いた者に世界の真実を知る者として、我々が何のために戦ったのか・・メッセージを残したくてね。このような形を取らせてもらった。どうか聞いてほしい。・・・・我々は反逆者であって反逆者ではないことを」

 

 そして、反逆者“オスカー・オルクス”の話が始まった。それは、教会で教えられた歴史やユエに聞かされた反逆者の話とは大きく異なった驚愕すべきものだった。

 

 それは狂った神とその子孫達の戦いの物語。

 

 神代の少し後の時代、世界は争いで満たされており、人間、魔族、様々な亜人達が絶えず争っていた。争う理由は領土拡大、種族的価値観、支配欲、など様々な理由だが、その1番は“神敵”だからだ。今よりずっと種族も国も細かく分かれていた時代、それぞれの種族、国がそれぞれ神を祭っていた。その神からの神託で人々は争い続けていた。

 

 だが、そんな何百年と続く争いに終止符を討たんとする者達が現われた。当時“解放者”と呼ばれた集団である。

 

 彼等には共通する繋がりがあった。それは全員が神代から続く神々の直系の子孫であったということだ。その為か“解放者”のリーダーは、ある時偶然にも神々の真意を知ってしまった。何と神々は、人々を駒に遊戯のつもりで戦争を促していたのだ。“解放者”のリーダーは、神々が裏で人々を巧みに操り戦争へと駆り立てていること耐えられなくなり志を同じくするものを集めた。

 

 彼等は“神域”と呼ばれる神々がいると言われている場所を突き止めた。“解放者”のメンバーでも先祖返りと言われる強力な力を持った7人を中心に、彼等は神々に戦いを挑んだ。

 

 しかし、その目論見は戦う前に破城してしまう。何と、神々は人々を巧みに操り、“解放者”達を世界に破滅をもたらそうとする神敵であると認識させて人々自身に相手をさせたのである。その過程にも紆余曲折はあったのだが、結局、守るべき人々に力を振るうわけにもいかず、神の恩恵も忘れて世界を滅ぼさんと神に仇した“反逆者”のレッテルを貼られ“解放者”達は討たれていった。

 

 最後まで残ったのは中心の7人だけだった。世界を敵に回し、彼等は、もはや自分達では神を討つことはできないと判断した。そして、バラバラに大陸の果てに迷宮を創り潜伏することにしたのだ。試練を用意し、それを突破した強者に自分達の力を譲り、いつの日か神の遊戯を終らせる者が現れることを願って。

 

 長い話が終わり、オスカーは穏やかに微笑む。

 

 『君が何者で何の目的でここに辿り着いたのかは分からない。君に神殺しを強要するつもりもない。ただ、知っておいてほしかった。我々が何のために立ち上がったのか。・・・君に私の力を授ける。どのように使うも君の自由だ。だが、願わくば悪しき心を満たすためには振るわないで欲しい。話は以上だ。聞いてくれてありがとう。君のこれからが自由な意思の下にあらんことを』

 

 そう話を締めくくり、オスカーの記録映像はスッと消えた。同時に2人の脳裏に何かが侵入してくる。痛むが、それが言っていた魔法を掘り込んでいたためと理解できたので大人しく耐えた。

 

 「大丈夫、ハジメ君?」

 

 「大丈夫、飛羽真?」

 

 「ああ、大丈夫だ。それよりも」

 

 「何かどえらいこと聞いちまったな」

 

 「俺としては今の話で感じていた疑問が解けてすっきりしてる」

 

 「・・・どうするの?」

 

 ユエがハジメに尋ねる。

 

 「うん?別にどうもしないぞ?元々、勝手に召喚して戦争しろとか言う神なんて迷惑としか思ってないからな。この世界がどうなろうと知った事じゃないし。地上に出て、帰る方法探して、故郷に帰る。それだけだ」

 

 「・・・俺はするつもりだけどな神殺し」

 

 「はぁ!?」

 

 飛羽真の言葉にハジメが驚く。

 

 「おいおい。天之河みたく正義に目覚めちまったのか?」

 

 「それこそまさかだ。オスカー・オルクスの話が真実なら神々は人を駒にして遊んでいる。その神の目を盗んで地球に帰ったとしても、今回の召喚で神々はこの世界のほかに世界があることを知った。遊戯感覚で争いを起こさせている神々が新しい遊戯盤となるかもしれない世界を知って黙ってると思うか?」

 

 「・・・それは」

 

 「俺達の世界は少し突っつけば争いになる火種がわんさかある。俺達が戻って生まれた道を使って神々が来る可能性は捨てきれない。だから、俺は狂った神々を斬る。まぁ、これはあくまで俺の考えだからお前達は無理して付き合う必要はねぇよ。帰れる手段が見つかったら地球に帰ればいい」

 

 「私は飛羽真に呼ばれた身だから最後まで付き合うわ」

 

 「私もです」

 

 「私も、何処までお役に立てるか分かりませんが付き合います」

 

 ゼシカ、シュテル、ゼストの3名は飛羽真の神殺しの旅に着いて行くことを告げる。

 

 「それよりもハジメ。分かってるよな?」

 

 「あぁ。新しい魔法・・・神代魔法ってのを覚えたな」

 

 「・・・・ほんと?」

 

 飛羽真とハジメの言葉にユエが信じられないといった表情になった。何せ神代魔法とは文字通り神代に使われていた現代では失伝した魔法なのだ。

 

 「あの魔方陣だな。あの魔方陣が神代魔法を使えるように頭に直接、魔法の式を掘り込んだんだろう」

 

 「・・・大丈夫?」

 

 「おう、問題ない。しかもこの魔法・・・俺や飛羽真の為にあるような魔法だな」

 

 「俺よりはハジメの為にある魔法じゃないか?」

 

 「どんな魔法なのですか?」

 

 「生成魔法って言って、魔法を鉱物に付与して、特殊な性質を持った鉱物を生成できる魔法だ」

 

 『解。鉱物だけではなく、水などにも魔法を付与することも可能です』

 

 「・・・・アーティファクト作れる?」

 

 「ああ、そういうことだな」

 

 “生成魔法”は神代においてアーティファクトを作るための魔法だった。まさに“錬成師”のためにある魔法である。

 

 「恵理達も覚えたらどうだ?何か魔方陣に入ると記憶を探られるみたいなんだ。オスカーも試練がどうのって言ってたし、試練を突破したと判断されれば覚えられるんじゃないか?」

 

 「でも、私達はハジメ君や八神君みたいに錬成使わないし」

 

 「確かにそうだが、せっかくの神代魔法だ、覚えておいて損はないだろう」

 

 「・・・そうですね。後々、何かの役に立つかもしれませんし覚えておきましょうか」

 

 錬成魔法を覚えていない恵理達に“生成魔法”は必要ない物だが、例え使えなくても何かの役に立つかもしれないと飛羽真に言われ、魔方陣の上に立つと飛羽真とハジメの時同様、記憶を探られ、試練をクリアしたと判断されると、

 

 『試練を乗り越えよく辿り着いた。私の名はオスカー・オルクス・・・』

 

 再びオスカーが現われ、さっき聞いたのと同じ内容が語られ始める。

 

 「どうだ?修得したか?」

 

 「ん・・・・した。でも、・・・アーティファクトは難しそう」

 

 「私達もそうね」

 

 「私は適性がありました。飛羽真様やハジメ様に比べると見劣りしますが」

 

 「魔法である以上、相性と適性ががあるのかもしれないな。それにしても・・・・」

 

 恵理、ユエ、ゼシカ、シュテルの4人に適性がなかったのに対してゼストは飛羽真やハジメまでとがいかないが生成魔法への適性があった。

 

 「(それにしてもシュールだな)」

 

 何もない空間にほほ笑みながら話しているオスカーを見て、飛羽真は苦笑いする。

 

 「あ~~~取り合えず、あの死体を片付けるか。ここはもう俺らの物だし」

 

 「ん・・・・畑の肥料・・・」

 

 ハジメとユエの慈悲の無さにオスカーの骸が風もないのにカタリと項垂れた。

 

 「あほ」

 

 「っ!?」

 

 ユエの言葉に飛羽真が拳骨を落とす。ユエはあまりの痛さに悶絶する。痛みが引くと飛羽真を睨むが、

 

 「死人にたいして失礼なことを言ったユエが悪い」

 

 「確かに今のはユエが悪いな」

 

 「そうだね」

 

 「っ!?」

 

 味方をしてくれると思っていたハジメと恵理に言葉にユエはショックを受けた。

 

 「オスカーが創ったこの住処を一望できる場所を探して、そこに墓を立てるか」

 

 「そうだね。肥料扱いはさすがに可愛そうだもん」

 

 3階の部屋から出た飛羽真達は別れてオスカーが創ったこの住処を一望できる場所を探した。そして、そこに墓石を立て、埋葬した。

 

 オスカーの埋葬を終えると住居に戻る。

 

 「入れるといいんだが」

 

 飛羽真はオスカーの骸を埋葬する際、彼が嵌めていた指輪に刻まれていた文様が書斎や工房にあった封印の文様を同じだったのに気づき、持ってきていたのだ。

 

 「必要なものかもしれないからな。断じて墓荒らしではない」

 

 「誰に言ってるの?」

 

 「いや・・・何か言わなきゃいけないような気がして」

 

 「?」

 

 飛羽真は咳をして気持ちを切り替えると、指輪を書斎の扉に近づける。すると、扉に施された文様と指輪の文様が共鳴し、施された封印が解除され、中に入れるようになった。

 

 中に入った飛羽真達は一番の目的である地上への道を探るべく、書棚の中を調べていくとこの住居の施設設計図らしきものを見つけた。通常の青写真ほどしっかりとしたものではないが、何処に何を作るのか、どの様な構造にするのかということがメモのようにつづられていた。

 

 「うし、見つけた!」

 

 設計図を見ていたハジメが歓喜の声を上げる。

 

 「見つけたのかハジメ?」

 

 「あぁ。3階のあの魔方陣がそのまま地上に施した魔方陣と繋がっているらしい。オスカーが嵌めていた指輪を持っていないと発動しないようになってるみたいだ」

 

 「・・・貰っておいてよかったぜ」

 

 「それと面白いもんも見つけた。一定期間ごとに清掃をする自律型のゴーレムが工房の小部屋にあったり、天上の球体が太陽光と同じ性質を持っていて作物の育成が可能らしい」

 

 「やけに綺麗だったのはその清掃用のゴーレムのおかげってことか。この世界に人工知能なんてものはないはずなのに・・・どうやって作ったんだ?」

 

 科学が発達していないこの世界でそのようなものを作れたことに飛羽真が不思議がる。

 

 「おまけに工房にはオスカーが生前に作っていたアーティファクトや素材が保管されてる。此奴は武器を創ったり強化したりするのに使えそうだ」

 

 「道具は使ってなんぼだが、感謝して使うぞ?」

 

 「分かってる」

 

 「飛羽真、これを」

 

 他の資料を探しながらハジメの話を聞いていた飛羽真にシュテルが1冊の本を飛羽真に渡す。

 

 「これは・・・手記か?解放者の仲間、中心となっていた7人との何気ない日常について書かれてるみたいだが・・・ん?」

 

 手記を見ていた飛羽真はその内の一節を見てページをめくっていた手を止め、内容をよ~~く読む。

 

 「ハジメ、このページの一節を読んでみろ」

 

 「ん?何か重要なことでも書かれてたのか?・・・・・これは」

 

 「オスカーと同じように試練の意味を創った迷宮。その迷宮をクリアすれば創設者達の神代魔法が手に入れることが出来る。生憎とどの迷宮でどんな魔法が手に入れることが出来るかまでは書かれていないが、回っていけば・・・」

 

 「・・・地球に帰える方法が見つかる」

 

 「・・・今後の方針ができたな」

 

 「ああ。でも、飛羽真のほうはいいのか?神殺しをするって言ってたが」

 

 「何処にいるかもわからん神を探すために放浪するより帰る手段を見つけるのが先だ」

 

 その後、飛羽真達は迷宮の正確な場所が示された資料を探すが見つけられず、現在確認されている【グリューエン大砂漠の大火山】、【ハルツィナ樹海】、目星をつけられている【ライセン大峡谷】、【シュネー雪原の氷雪洞窟】から調べていくしかないだろうが、

 

 「魔人領内にある【シュネー雪原の氷雪洞窟】は最後だな」

 

 「んじゃ、次は工房に行くか」

 

 これ以上、めぼしい物は出てこないだろうと判断した飛羽真達は工房へと移動した。指輪で扉の封印を解除して中に入る。工房内にはいくつもの小部屋があり、その全てを指輪で開くことが出来た。中には、様々な鉱石や見たこともない作業道具、理論書などが所狭しと保管されており、錬成師にとって楽園か見紛う程である。

 

 「・・・・・・」

 

 「どうかしたのハジメ君?」

 

 腕を組んで思案するハジメに恵理が尋ねる。

 

 「・・・・飛羽真」

 

 「しばらく此処に留まって学び、他の迷宮攻略のための準備をしたいんだろう?」

 

 「よくわかったな」

 

 「俺も同じこと考えてたからな。神と戦うことを想定して最後に戦ったヒュドラを軽く倒せるほどまでには強くなっておかないと神殺しなんて夢のまた夢だからな。ゼシカ達はどうだ?」

 

 「あなたが残るっていうなら私も残るわ」

 

 「私も残ります。ここなら薬草の育成や薬の調合もしやすいですし」

 

 「主が残る以上、従者の私も残ります」

 

 「恵理、ユエはどうする?」

 

 「ハジメ君が残るなら私も残るよ」

 

 「・・・・ハジメと一緒ならどこでもいい」

 

 7人はオスカーが作ったこの住処に残り、可能な限りの鍛練と装備を充実を図ることになった。


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