“大賢者”と“ガチャ”を得た転生者の冒険譚   作:白の牙

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第26話

 

 ライセンス大渓谷から脱出し、待ち構えていた30人の帝国兵を殺害した後、飛羽真達はハルツィナ樹海へと進路を取った。ハジメが運転するバイクを先頭に飛羽真達が乗る車。その車に牽引される大型馬車2台と数十頭の馬がそれなりに早いペースで平原を進んでいた。

 

 「・・・・・・」

 

 「キュル~~」

 

 飛羽真が車内に設置されたソファーベッドに寝っ転がりながら外の景色を見ているとシュテルに預けていたピナが飛羽真のもとへと飛んでき、腹部に降りると体を丸めて眠り始めた。

 

 「ピナ、返り血を浴びていないとはいえ今の俺は斬った帝国兵の血の匂いが染みついてるから臭いぞ?寝るならシュテルかゼシカの所・・・って、もう寝てるし」

 

 数秒も断たずに眠り始めたピナを起こさないよう優しくその体を撫でる飛羽真。そんな飛羽真に、

 

 「とーくん、何でハーくんと2人だけで戦ったの?」

 

 先の帝国兵との戦いについて束が尋ねた。

 

 「ハジメのほうは多分実験と自分を好いてくれる中村とユエの2人を犯すって言葉にキレて絶対に自分の手で始末するとでも考えたんじゃないか?」

 

 「じゃあ、飛羽真は?」

 

 「言動と強者なのをいい事に傲慢な振る舞いにむかついたから。後は、・」

 

 「「「「後は?」」」」

 

 「・・・ハジメと同じ理由で俺の大事な皆を目の前で犯すっていったから、身の程を分からせてやったまでだ」

 

 「とーーくん!」

 

 

 3つ目の理由が嬉しかったのか束が飛羽真に抱き着いた。他の3人も嬉しかったのか頬を赤くする。

 

 「(南雲君もそうだが、後ろから刺されない事を祈ろう)」

 

 「キュルーー!!」

 

 「ごめんピナちゃん!謝るから許し・・・にゃ~~~~~!?」

 

 

 

 

 

 

 それから数時間、平原を走り続けた一行は遂に目的地であるハルツィナ樹海と平原の境界に到着した。

 

 「ただの鬱蒼とした森にしか見えないな」

 

 「だろうね。だが、一度中に入ると霧に覆われ感覚を狂わされ、気づけば森の外に出ていた、なんてこともあるぐらい厄介な森さ」

 

 遠目ではなく、近くで樹海を見たハジメが感想を漏らすとオスカーが森の実態を告げた。

 

 「・・・・何で束はボロボロなの?」

 

 「色々あってね~~。それより戻ってきたみたいだよ?」

 

 ユエの問いを曖昧な返答で答えた束は物は試しと数分前に森に足を踏み入れ、戻ってきた飛羽真を指さす。

 

 「どうだった?」

 

 「駄目だ。森に入って最初の数分は普通に進めてたんだが、霧が濃くなっていくにつれ感覚が起こしくなっていって気が付けば目印を付けた木の場所に戻ってた」

 

 飛羽真はお手上げだという風に両手を上げる。

 

 「それと、予想してた通り、樹海は大迷宮とは関係ない。歩いてる途中、何度か魔物に襲われたが、はっきり言って弱かった」

 

 「んじゃあ、予想通り大迷宮の入り口は・・・」

 

 「カムが言っていた“大樹”にあると思う」

 

 飛羽真とハジメは当初、【ハルツィナ樹海】そのものが大迷宮のかと思っていたが、それだと新のオルクス大迷宮の魔物と同レベルの魔物が彷徨っている魔境ということになり、とても亜人族が住めるような場所でないだろうと思った。なのでオルクス大迷宮と同じでどこかに本当の大迷宮へと続く入口があると推測した。

 

 「飛羽真殿、ハジメ殿、そろそろ宜しいでしょうか?」

 

 「あぁ、すまない。出発しよう」

 

 「では、中に入ったら決して我々から離れないで下さい。万一はぐれると厄介ですからな。それと、行き先は森の深部、大樹の下で宜しいですかな?」

 

 「あぁ」

 

 言葉を聞くとカムは周囲の兎人族に合図をして飛羽真達の周りを固めた。

 

 「皆様、出来る限り気配を消してもらえますかな。大樹は神聖な場所とされておりますから、あまり近づくものはおりませんが、特別禁止されているわけでもないので、フェアベルゲンや、他の集落の者達と遭遇してしまうかもしれません。我々は、お尋ね者なので見つかると厄介です」

 

 「解った」

 

 カムの言葉を聞き、ハジメと恵理は“気配遮断”を使い、他の者はそれぞれの方法で気配を薄くした。

 

 「っ!?これは・・また・・・・ハジメ殿、恵理殿、出来れば他の皆様と同じくらいにしてもらえますかな?」

 

 「ん」

 

 「えっと、このぐらいかな?」

 

 「はい、結構です。さっきのレベルで気配を殺されては、我々でも見失いかねませんからな。いや、全く、流石ですな!」

 

 「・・・当然」

 

 カムは、人間族でありながら自分達、兎人族の唯一の強みを凌駕され、もはや苦笑いし、ユエは自慢げに胸を張っている。

 

 「それでは、行きましょうか」

 

 カムの号令と共に準備を整えた一行は、カムとシアを先頭に樹海へと踏み込んだ。

 

 道ならぬ道を突き進むと、直に濃い霧が発生し視界を塞いでくる。しかし、カムの足取りに迷いは全くなかった。現在位置も方角も完全に把握しているようだ。

 

 「(亜人族のみが進むことのできる森・・か。オルクさん、何でそういう仕組みになってるんですか?)」

 

 「(僕たちがまだ生きていた時代。この森は教会に攻められていたんだ。1人でも多くの同胞を守るために、1人でも多くの兵士を倒せるようにとこの森の女王が張った魔法だよ)」

 

 「(その想いは、何百年経とうとも途切れることなく子孫を守っている・・・っか)」

 

 オスカーから何故霧が出るのか、その理由を聞いた飛羽真はオスカーの仲間の想いの強さに心の中で拍手した。

 

 順調に進んでいたのもつかの間、突然カム達が立ち止まり、周囲を警戒し始めた。魔物の気配だ。当然、飛羽真達も感知している。樹海に入るにあたって、貸し与えたナイフを構える兎人族達。本来なら、その優秀な隠密能力で逃走を図るのだそうだが、今回はそういうわけにはいかない。皆、一様に緊張の表情を浮かべている。

 

 「・・・・・」

 

 その様子を見たハジメは肩をすくめると、パワードスーツの左腕のみを展開する。そして、左手を素早く水平に振るった。すると、微かに何かを射出する音が連続で響く。直後、

 

 「「「キィィィ!?」」」

 

 何かが倒れる音と、悲鳴が聞こえてきた。そして、慌てたように霧をかき分けて、腕を4本生やした体長60㎝程の猿が3匹踊りかかってきた。

 

 「“風刃”」

 

 その内の1匹に向けてユエが手をかざし、囁くように魔法名を呟くと、風の刃が高速で飛び出し、空中にいる猿を上下に分断した。

 

 残りの2匹は地面に足をつけると2手に分かれ、1匹は近くの子供に、もう1匹はシアに向かって鋭い爪の生えた4本の腕を振るおうとする。シアも子供も、突然のことに思わず硬直し身動きが取れない。咄嗟に、近くの大人が庇おうとするが、猿たちの動きはピタリと止まると、仰向けになって地面に倒れた。

 

 「?」

 

 訳が分からずに警戒を維持したまま1人の兎人族が猿に近寄ると、猿の頭部に兎人族達が持っているナイフに似た刃物が深く突き刺さっていた。

 

 「視界が悪いのによくあてれたな?」

 

 「勘(と、大賢者の言葉)に従っただけだ」

 

 ハジメはそれを行った人物、飛羽真に声をかけた。

 

 「あ、ありがとうございます飛羽真さん」

 

 「お兄ちゃん、ありがと!」

 

 シアと子供(男の子)が窮地を救われ礼を言う。飛羽真は笑みを浮かべながら子供の頭を軽く叩いた。男の子の飛羽真を見る目はキラキラだ。反対にシアは、突然の危機に硬直するしかなかった自分にガックリと肩を落とした。

 

 その様子に、カムは苦笑いするも、ハジメから促されて、先導を再開した。

 

 その後も、ちょくちょく魔物に襲われたが、飛羽真達が静かに片付けていく。樹海の魔物は、一般的には相当厄介なものと認識されているのだが、真のオルクス大迷宮を攻略した飛羽真達にとっては雑魚に等しく、何の問題もなく討伐していった。

 

 しかし、樹海に入って数時間が過ぎた頃、今までにない無数の気配に囲まれ、飛羽真達は歩みを止めた。数も殺気も、連携の練度も、今までの魔物とは比べ物にならない。カム達は忙しなくウサミミを動かして索敵をしている。

 

 そして、何かを掴んだのか苦虫を噛み潰したような表情を見せた。シアに至っては、その顔を青褪めさせている。

 

 「厄介なのが来たみたいだな」

 

 その表情で何に囲まれているのかを察した飛羽真は溜息を吐いた。

 

 その相手の正体は・・

 

 「お前達・・・何故人間といる!種族と族名を名乗れ!」

 

 虎模様の耳と尻尾を付けた、筋骨隆々の亜人だった。

続編を書くとしたらどの世界がいいですか? 期限は5月16日まで

  • 異世界はスマートフォンとともに
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