「本当に残るんですか尚文さん?」
「一応な。便利なアイテムも貰ったから偶には戻るつもりだ」
「そうですか」
「お前はどうするんだ飛羽真?」
「俺は戻ります。あっちには放っておくと何でもしょい込んじまうオカン的な幼馴染もいますしね」
とある部屋で飛羽真と1人の青年が話をしていた
「そうか。戻ったら何かと大変だろうが頑張れよ」
「はい。尚文さんも頑張ってください。それとお世話になりました」
「世話になったのは俺のほうだ。じゃあ、元気でな」
飛羽真と青年“岩谷尚文”は握手を交わし、別れた
それから2年後
「チェスト!!」
剣道着を着、防具を身に着けた飛羽真が掛け声と共に振り下ろした竹刀は的確に相手の頭を叩いた
「1本!面有り!」
飛羽真ともう1人は所定の位置に戻ると竹刀を納め一礼する
「ぷはぁ~~」
「お疲れ様」
面を外して、掻いた汗を拭いていると剣道着を着た少女が声をかけてきた
「はい」
「サンキュー雫」
少女の名は八重樫雫。飛羽真が幼いころから通っていた剣道場の一人娘であり飛羽真の幼馴染の少女でもある
「だけど、師範代にああも簡単に勝つだなんて本当に強くなったわよね飛羽真」
「まぁ、色々あったからな。色々と」
雫から受け取ったスポーツドリンクを飲みながら飛羽真は2年前の出来事を思い出す
「さて、そろそろ上がるとするか」
「え?もう帰るの?」
「何だ忘れたのか?今日はシルヴィのライブの日だぞ?」
「あ!?そういえばそうだったわね」
「ライブ前に差し入れを楽屋に届けたりするのも考えると丁度いい時間だろ」
「じゃあ、準備ができ次第、飛羽真に家に行くわ」
「おう。じゃあ、また後でな」
雫に挨拶を済ませると飛羽真は防具をしまい、家へと帰る
「ただいま」
「あ、おかえり~~飛羽真君」
飛羽真が家に入るとはんなりとした少女が出迎える
「ただいま木乃香。フェイトは?」
「フェイトさんなら法律関係の本を買いに本屋さんに行ってるで。行く前には帰ってくると思うんやけど」
「そうか。少ししたら雫が来ると思うから上げてやってくれ。俺は汗を流してくる。あ、あと小腹がすいてるから軽くつまめる物を作ってくれるとありがたいな」
「はいな~~」
少女“近衛木乃香”に頼みごとをすると飛羽真は風呂場へと向かい、シャワーで汗を流し始める。さきの話で出てきた少女達、フェイト・T・ハラオウン、近衛木乃香、シルヴィア・リューネハイムは飛羽真がガチャで召喚した少女達だ。フェイトは小学生のころ偶々とった行動で手に入ったガチャで召喚して出会い、木乃香、シルヴィアの2人は異世界で召喚して出会った
「(つーか、召喚した日に自動的で戸籍が作られていたことには驚いた。しかも親も近所の家も知り合いの子を預かっているっていう風に認知してる。まぁ、俺としては助かったんだけどな。問題だったのは雫への説明だったな~~。フェイトのことを説明するときなんか子供だっていうのにすげえ威圧感だったし、心なしか目からハイライトが消えていた気がしたんだよな~)」
飛羽真は当時のことを思い出し、身震いする。そして、あの時から雫を怒らせるのは止めようとそれはそれは強く心に決めたのだ。
「ふぅ~~~~いい湯だった」
「もう上がったん?いくら何でもはやない?」
「そう時間をかけるわけにもいかにからな。雫が来て、フェイトが帰ってきたら直に行くと思うから今のうちに準備をすませておいたらどうだ?」
「そうやね。あ!おにぎりを作っておいたで~」
作って貰ったおにぎりをほお張ろうとしたとき家のチャイムが鳴る。
「はいは~~い・・・ぴゅう」
ドアを開けると、制服で着る以外滅多にスカートをはかない雫がスカートをはいて立っていた。
「今の口笛はなに?」
「いや、滅多にお目に掛かれない可愛い服を着た雫を見れたもんだからな。まぁ、とりあえず上がれよ」
「うん、お邪魔します」
「雫ちゃん、いらっしゃい~」
「お邪魔するわね木乃香」
「は~~雫ちゃんのその服すごく似あってるえ~~」
「自分ではちょっとかわい過ぎると思ってるんだけどね」
「そんなことないで~~。そうやよね飛羽真君」
「あぁ、木乃香の言う通りだ似合ってるぜ雫」
「あ、ありがとう」
雫はそっぽを向くが飛羽真に似合っていると言われ嬉しかったのか、顔は赤く染まっていた。
「ちょっと待ててな~~すぐに着替えてくるわ」
「ねぇ、どうして木乃香やシルヴィ、フェイトは別の高校に通っているの?」
2階に上がっていく木乃香を見送った後、雫が飛羽真に尋ねる。
「ん?最初は俺と同じ高校にしようと考えていたみたいだが、雫があのアホんだらも同じ高校を志望校にしてるって聞いたときに嫌な顔してるのを見たからな。嫌な思いをするよりは気分よく通える学校にしろって言って今の学校にしたんだ」
「あ~~そういうこと」
木乃香とシルヴィアは一度、雫の実家に来たことがありその時に飛羽真が毛嫌いする青年と鉢合わせしてしまい、無自覚で馬鹿なことを言って2人を怒らせてしまったのだ。その場に居合わせた雫もそのことを知っており、納得した表情となる。
「ただいま~」
「お、お帰りフェイト」
「お邪魔してるわねフェイト」
「あ、雫、いらっしゃい。木乃香は?」
「2階に上がって着替えてるぞ」
「じゃあ、私もすぐに着替えてくるね」
そういうとフェイトも準備をするために2階の自室へと向かった。そして、数十分後
「2人ともお待たせや~~」
「お待たせ」
着替えを終えた2人がリビングへとやってきた
「おぉ~~2人とも似合ってるぞ」
「えへへ、ありがとうな~~」
「あ、ありがとう」
褒めてもらえたのがうれしかったのか2人も雫と同じように顔を赤くする
「そんじゃあ行くか」
全員の準備が整ったので4人はライブがおこなわれる武道館へと出発する
「八神さんに近衛さん、テスタロッサさん、八重樫さんでしょうか?」
「はいそうですけど」
バスに乗って1時間弱かけてライブ会場についた4人。待っているよう伝えられた場所で待っていると、眼鏡をかけた女性に声をかけられた
「私、シルヴィア・リューネハイムのマネージャーを務めさせてもらっている者です。こちらへ」
4人はマネージャーに案内され関係者用の出入り口から会場へと入り、シルヴィアがいる楽屋まで案内された
「それでは私はこれで」
「案内ありがとうございました」
案内してくれたマネージャーにお礼を言うと飛羽真はドアを数回ノックする
「どうぞ~~」
「失礼しま~~す」
楽屋の主からの許可をとると飛羽真はドアを開けて中に入る。それに続くように木乃香、フェイト、雫も楽屋の中に入ると、紫髪の少女が座っていた
「飛羽真君、木乃香ちゃん、フェイトちゃん、雫ちゃんいらっしゃい」
「調子は・・・いいみたいだなシルヴィ」
「うん、もうばっちり。初めて(こっちの世界では)のライブだから楽しみで楽しみでしょうがないよ」
「野外ライブなら何度か見たことあるんやけど、こういった武道館でのライブは初めてやからすっごく楽しみやわ~~」
「実は私も」
「私もよ」
「ならめいいっぱい楽しんでいってね。それはそうと、3人ともすごくかわいいよ」
「え~~~シルヴィさんのほうが可愛いやん」
「ふふ、ありがとう。でもしばらく私服で可愛い服を着てないし、買ってないかな~~」
「ほんなら今度の休みの日に皆で買い物に行かへん?」
「そうね、そうしようか」
「(いい具合にシルヴィの緊張感をほぐしてるな)」
無意識に紫髪の少女“シルヴィア・リューネハイム”の緊張をほぐしている木乃香を見て苦笑いする
「待ち合わせ場所で待っている間、通り過ぎる観客の話声を聞いていたがすごく楽しみそうにしてたぞ。かくいう俺も楽しみにしてるけどな」
「ふふ、じゃあ私も楽しんで、みんなも楽しんでくれる最高のライブにしないとね」
自分のライブを楽しみにしてくれているファン達と見に来てくれた飛羽真達の為にも最高のライブにすることをシルヴィアは宣言する
「シルヴィア、最終リハの時間です。ステージのほうへ」
「は~~い。じゃあ、みんなまた後でね」
マネージャーに声をかけられ、シルヴィアはステージへと向かった
「ウチ等はどうする?」
「そうだな、近くに飲食店があったからそこに行って何か買って食っておくか。ついでにシルヴィへの差し入れも買ってこよう」
「飛羽真、貴方来る前におにぎりを食べたっていうのにまだ食べるの?」
「腹が減っては戦は出来ぬっていうだろう?」
「そのことわざは飛羽真よりもシルヴィアのほうが絶対に合ってる気がするかな」
呆れる雫に飛羽真がことわざを言うがフェイトはステージで最終リハをしているシルヴィアにこそ合っている言葉だと苦笑いしながらいった
「皆~~今日は本当にありがとう!」
宣言通りシルヴィアは初のライブを最高のライブへし、歌を聞きに来てくれたファンの心をさらにわしづかんだ。そして、シルヴィアは一番前の席でライブを見ている飛羽真達に向けてウィンクしながら軽く手を振る。それに気づいた飛羽真達は軽く手を挙げて答えた。そして、ライブが終わると、飛羽真達は他の観客同様、いったん外にでて、関係者用の出入り口から中へと入り、シルヴィアの楽屋へと足を運ぶと、飛羽真が予約していた高級焼き肉店へと行き、初ライブ成功とお疲れさまパーティーを開いて大いに楽しみ、家へと帰宅した。寝る前にタロットカードで占いをしていた木乃香を見かけ、占ってもらうと、
「“運命の輪の逆位置”ねぇ」
その日は確実に近づいてきていた
ユエをどちらのヒロインに入れるか?
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ハジメ
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飛羽真