“大賢者”と“ガチャ”を得た転生者の冒険譚   作:白の牙

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第29話

 

 「お前等には戦闘訓練を受けてもらう」

 

 フェアベルゲンを去り、大樹の近くに簡易の拠点を作り、一息着いた後、飛羽真がハウリア族全員に向けて言う。まぁ、拠点と言ってもハジメとオスカーがさり気なく盗んできたフェアドレン水晶を使って結界を張っただけなのだが。

 

 「え、えっと、・・・飛羽真さん、戦闘訓練というのは・・・?」

 

 「文字通りそのままの意味だ。どうせ10日間は大樹へは辿り着けないんだ。ならその間を有効活用し、お前達、ハウリア族を鍛えあげることにした」

 

 「な、なぜそのようなことを?」

 

 ハウリアを代表してシアが尋ねるとハジメの据わった目と全身から迸る威圧感にハウリア達は震える。

 

 「何故?何故と聞いたか?残念ウサギ?」

 

 「あぅ、まだ名前で呼んで貰えない・・・」

 

 シアの問いにハジメが威圧しながら答える。

 

 「いちいち威圧するなハジメ。話がちっとも進まんだろうが」

 

 「・・・なら、後は任せた」

 

 「任せるなら最初から出しゃばるな。俺達がお前達と交わした約束は案内が終るまで守るというものだ。じゃあ、案内が終ったあとは?それをお前達は考えているのか?」

 

 ハジメに話させると一向に進まないと思ったのか飛羽真が続きを話す。

 

 「その表情を見るに考えてなかったんだろうな。まぁ、考えたところで答えなんて出ないしな」

 

 「お前達は弱く、悪意や害意に対しては逃げるか隠れる事しかできない。そんなお前らはフェアベルゲンという隠れ家すら失った。つまり、俺達の庇護を失った瞬間、再び窮地に陥るというわけだ」

 

 飛羽真の言葉にハウリア族達は皆一様に暗い表情で俯く。飛羽真の言う通りだからだ。

 

 「貴方たちに逃げ場はない。隠れ家も庇護もない。だけど、魔物も人もそんなことは知らないとばかりに弱い貴方たちを狙ってくる」

 

 「このままじゃ、全滅は必定・・・・それでいいのか?弱さを理由に淘汰されることを許容できるのか?運よく拾った命を散らすのか?どうなんだ?」

 

 「そんなものいいわけがない」

 

 恵理と飛羽真の問いに重苦しい空気が辺りを満たすが、誰かが零した一言に触発されたのかハウリア族が顔を上げた。

 

 「その通り、いい訳がない。なら、どうするか?答えは簡単だ、強くなるしかない。自分を大切な者達をその手で守れるぐらいに」

 

 「・・・ですが、私達は兎人族です。虎人族や熊人族のような強靭な肉体も翼人族や土人族のような特殊な技能も持っていません。・・・とても・・・そんな」

 

 自分達は兎人族は弱い。その常識が否定的な気持ちを生む。どんなに足掻いても自分達では飛羽真の言うように強くなどなれないと思っているからだ。

 

 「・・俺はかつての仲間達から“無能”と呼ばれていた」

 

 すると、話を飛羽真達に任せていたハジメが静かに語り出した。

 

 「・・・え?」

 

 「“無能”だ“無能”。ステータスも技能も平凡極まりない一般人。仲間内の最弱。戦闘では足手纏い以外の何者でもない。故にかつての仲間達は俺を“無能”と呼んでいたんだよ。実際その通りだったからな」

 

 ハジメの告白にハウリア族は例外なく驚愕を顕わにした。凶悪なライセンス大渓谷の魔物を苦も無く一蹴したハジメが“無能”で“最弱”など信じられなかったからだ。

 

 「だが、そんな俺を飛羽真や恵理、ごく一部の仲間は見捨てず強くなれるよう付き合ってくれた。特に飛羽真は当時の俺にしかできないことを教えてくれた。そのかいあって、“最強”とまではいかないが、条件次第では一蹴出来るまでには強くなれた。そして、俺がここまでの強くなれたのは奈落に落ちてからだ。奈落へと落ちた俺は強くなるために行動した。“出来るか”、“出来ないか”そんなことは頭にはなかった。出来なければ自分も一緒に巻き込まれた恵理も“死ぬ”・・・そう思っていたからな。その瀬戸際で自分の全てを賭けて戦った。そして、気が付けばこの有様さ」

 

 淡々と語られた内容、しかし、ハウリア族にとっては壮絶な内容だった。

 

 「お前達の状況は、かつての俺と似ている。約束の内にある今なら、絶望を打ち砕く手助けぐらいは出来る」

 

 「自分達には無理だっていうならそれでも構わないよ。でも、その時は今度こそ確実に全滅する。私達は約束が果たされた後まで助けるつもりは毛頭ないからね?」

 

 「・・・それで、どうする?」

 

 ハジメの問いにハウリア族達は直には答えられなかった。自分達が生き残りるには言う通り強くなる以外方法がないことは解っている。解ってはいるのだが、温厚で平和的、心根が優しく争いが何よりも苦手な兎人族にとって、ハジメ達の提案はまさに未知の領域に踏み込むに等しい決断だった。

 

 「やります。私に戦い方を教えてください!もう弱いままは嫌です!」

 

 「わ、私も教えてください」

 

 そんな彼らを尻目に、先程からずっと決然とした表情を浮かべていたシアともう1人の兎人族の少女が立ち上がって樹海の全てに響けと言わんばかりに叫んだ。

 

 不退転の決意を瞳に宿したシアと震えながらも真っ直ぐに飛羽真を見る少女。その様子に唖然として見ていたカム達ハウリア族は、次第にその表情を決然としたものに変えて、1人、また1人と立ち上がっていく。そして、男だけでなく、女子供も含めてすべてのハウリア族が立ち上がったのを確認するとカムが代表して一歩前へ進み出た。

 

 「皆さま・・・よろしく頼みます」

 

 言葉は少ないが、その短い言葉には確かに意思が宿っていた。襲い来る理不尽と戦う意思が。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「とーくん、これはそっちにお願い」

 

 「あいよ」

 

 霧が晴れるまでの10日間の間、ハウリア族を鍛えることを決めた飛羽真達一行。最初に立候補したシアともう一人は恵理達女性陣が鍛えることとなり、他の面々は最初の6日間はハジメが鍛え、残りの4日間は飛羽真が鍛えることが決まった。残った束とオスカーはハウリア族の新しい集落ともしもの為の隠れ家を作っている。

 

 「だけど、こんな立派な樹の中に隠れ家なんて作って大丈夫なんですか?」

 

 「問題ないんじゃない?監視用のガジェットを通して他の集落の様子を見てみたけど、どの集落も樹の中をくりぬいて家を立ててたもん」

 

 「だったら問題ないな」

 

 束の報告を聞いた飛羽真はそれならば問題ないと束とオスカーの指示通りに動く。

 

 「君達の世界は随分と技術が発達しているんだね」

 

 オスカーは目の前にある巨大なモニターと映し出される映像に感心する。

 

 「まぁ、技術が発達しているのは事実ですけど、短期間でここまで出来るのは束さんだけです」

 

 「にゃははは~~敬えたまえ~~」

 

 飛羽真に褒められたのが嬉しかったのか束は胸を張る。

 

 「それにしても・・・・本当に大丈夫なのか心配になってくるね」

 

 オスカーはモニターに映し出されているハウリア達を見て何とも言えない表情をする。ハジメの指導の下、ハウリア達は魔物を倒しているのだが、

 

 『ああ、どうか罪深き私を許してくれぇ~』

 

 『ごめんなさい!ごめんなさい!それでも私はやるしかないのぉ!』

 

 っと、魔物を倒すたびに昼ドラさながらのドラマが繰り広げられているのだ。

 

 「「「・・・・・」」」

 

 「そろそろハジメの堪忍袋の緒が切れそうな気が・・・・あ!ついに切れた」

 

 映像の向こうではとうとうハジメがキレ、周りにある花などを容赦なく散らしていき、更には、言ってはいけない単語を復唱しながらハウリア達を追い詰めていく。

 

 「「「・・・・」」」

 

 3人はこれ以上見ていると頭がおかしくなりそうな気がしたのでハジメの訓練の様子を映している映像のみ切った。

 

 「・・・俺、ハジメの後であいつ等(ハウリア)を鍛えるの嫌になってきた」

 

 

 

 

 

 

 「「「「「よろしくお願いします!」」」」」」」

 

 「いや、変りすぎだろう」

 

 ハジメの訓練が終わり、とうとう飛羽真がハウリア達を鍛える日がやってきた。気が乗らない飛羽真を余所に、まるで軍人のように姿勢をただし、整列するハウリア達。数日前までのおどおどしていた面影はなく歴戦の戦士のような面構えに飛羽真はそれしか言えなかった。

 

 「訓練を始める前にお前達がどれだけ成長したのかを見せてくれ。そうだな・・・・各自魔物を10体倒してこい」

 

 「「「「「サー!イェス!サー!」」」」」

 

 飛羽真の指示を聞くとハウリア達は忍者の如く散らばっていった。そして、15分後、ハウリア達は飛羽真のノルマを見事こなし戻ってきた、のだが、

 

 「数が多くないか?」

 

 飛羽真がハウリア達に命じたのは各自10体の魔物を倒してくること。なのに、彼らが持ち帰ってきた戦利品は明らかに10体以上はあったからだ。

 

 「生意気にも殺意を向けてきやがったので丁重にお出迎えしたんです。なぁ?皆?」

 

 不敵な笑みを浮かべながらカムが後ろにいる皆に尋ねると全員がカムと同じような笑顔で頷いた。

 

 「(はぁ~~~恨むぞハジメ)」

 

 飛羽真はハウリア達をここまで豹変させたハジメを恨み。彼等の訓練を行いつつ、変ってしまった精神を出来る限り元に戻すことを決めた。

 

 「お前達の力は大体わかった。それではこれより訓練を開始する。お前達には俺が習得した武術、“変幻無双流”を覚えてもらう。この武術は弱者が理不尽な強さを持つ強者を倒す為に生まれたものだ」

 

 「弱者が強者を、我々にぴったりな武術ですね」

 

 飛羽真の話を聞きカムは自分達が覚えるのにぴったりなものだと歓喜する。

 

 「この武術を覚えるに至って重要なことが1つある。それは“気”を扱えなければならないということだ」

 

 「“気”でありますか?」

 

 聞き覚えのない単語にハウリア達は首を傾げる。

 

 「“気”とはすべての生命が持ち、発するエネルギーの事だ。俺達人間は勿論、亜人であるお前達、周りにある草や木、花、大気といったものが発している。才のある者でも見えるようになるまで時間がかかるが、お前達なら直に、とは言えないが習得するのにそう時間は掛からないと俺は思っている」

 

 「どういうことですか?」

 

 「常に自然と共に生きてきたお前達なら・・な。それでは訓練を始める」

 

 こうして飛羽真によるハウリア魔改造+性格の修正が始まった。




 この話で出てきた隠れ家はアニポケアローラ編でのロケット団の基地を想像してください。

続編を書くとしたらどの世界がいいですか? 期限は5月16日まで

  • 異世界はスマートフォンとともに
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  • 英雄伝説
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