“大賢者”と“ガチャ”を得た転生者の冒険譚   作:白の牙

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第42話

 「それでは始めましょうか」

 

 「おう」

 

 「今日は全部避けれるかな?」

 

 迷宮から脱出し、ブルックの町に戻ってきてから2日目。町から少し離れた場所でBJを纏ったシュテルと飛羽真、束、ミレディが向き合っていた。

 

 『エグゼイド医療日誌』

 

 『Stage Select』

 

 レジェンドライダーブックを起動し、別空間へと移動する4人。場所が変わったのを確認すると飛羽真を除く3人が宙に浮かびあがり、一定の場所まで上昇する。

 

 「準備はいいかな?」

 

 「“抜刀”」

 

 ミレディの問いに抜刀という行動で返事をする飛羽真。

 

 「緋槍・百輪」

 

 飛羽真の抜刀を合図にミレディが炎槍を100本作り撃ち出す。普通なら逃げるのだが、飛羽真は重力魔法で自身を宙に浮かし、突っ込んでいく。迫りくる炎槍の弾幕は飛羽真は最小限の動きで躱し、躱すことのできないと判断したものは太刀で斬り払いながらシュテル達のもとへと進んでいく。

 

 「パイロシューター」

 

 「アステロイド」

 

 「い!?」

 

 あと少しですべての炎槍を捌ききり、シュテル達のところまでたどり着けると思った瞬間、無数の火球と無数の魔力弾が飛羽真に降り注ぐ。

 

 「緋焱刃、無の呼吸 日の型“灼骨炎陽”」

 

 炎を纏わせた太刀を両手で握った飛羽真はそのまま太陽を描くように太刀を振るうと、焔が水平方向に渦巻くように放たれ、火球と魔力弾を斬り払った。

 

 「(行ける!)」

 

 今度こそ辿り着けると思った時、飛羽真の前の前に蒼い炎が巻き付いた黒い球体が現れ、

 

 「渦巻く蒼穹の星」

 

 ミレディのフィンガースナップと共に球体が爆発した。

 

 「っく」

 

 風の障壁を発動し爆発から身を守った飛羽真だったが、生まれた爆風によって、縮めた距離を離されてしまった。

 

 「ブラストファイヤー!」

 

 「ポジトロンブラスター!」

 

 そんな飛羽真に炎の砲撃と魔力砲が上空から放たれ、飛羽真を飲み込んだ。

 

 『GAME OVER』

 

 

 

 

 

 

 「くそ~~~~!今日は行けると思ったのによ~~」

 

 地面に仰向けになって倒れている飛羽真が悔しそうに表情で地面に拳を振り落とした。その際、地面が軽く窪んだ。まぁ、飛羽真の膂力を考えれば当然なのかもしれないが。

 

 「いや、いや、あの弾幕の中、あれだけ動けるのは凄いと思うよ。私じゃ絶対に無理だもん」

 

 ミレディがからかうことなく本気で飛羽真を称賛する。この特訓は飛羽真と束の重力魔法の特訓とミレディのリハビリ、そして、とある者との戦いを想定しての特訓だ。

 

 「飛羽真君、剣で魔法を切り裂くのは極力やめた方がいいって言ったよね?人形が撃ち出す銀の魔弾には分解能力があるって」

 

 「そんなに危険なんですか?」

 

 「アザンチウム鉱石でも攻撃を受けたり、防いだりしても傷を負っちゃうんだよ。普通の鉱石だと触れただけで塵になっちゃうよ」

 

 「(だとしたら鬼徹や烈火での戦闘は無理だな。不壊である斬神刀皇でも耐えきれるかどうか。もし耐えきれたとしても確実に切れ味は落ちるな)」

 

 飛羽真はミレディの説明を聞きながら分解への対処法を模索する。

 

 「ステータスも高いうえに無限に供給される魔力、全属性への適性」

 

 「出鱈目すぎですね」

 

 「まったくだよ」

 

 ミレディの話を聞きシュテルが思ったことを言うとその通りだと頷く。

 

 「さて、今の反省点を踏まえてもう一回やってみよう」

 

 「次こそは辿り着いて見せる」

 

 反省会を終えると飛羽真達は日が暮れるまで回避の特訓を続けた。

 

 

 

 

 「はぁ~~~結局、1回もたどり着けなかった」

 

 その日の夜、宿泊している宿の部屋で深~~くため息を吐きながら落ち込む飛羽真。彼の肩にはピナが乗っており、遅めの晩御飯を食べている。

 

 「大丈夫か飛羽真?」

 

 「肉体的にも精神的にも疲れてるが寝れば問題ない。んでハジメはフューレンには馬車で行くってことでいいんだな?」

 

 「あぁ。おばちゃんにはギルドの一室を無償で貸してくれた恩もあるからな目的地関連の仕事を受けてもいいって言ったら商隊の護衛依頼があって空きが1人分あった。同伴はいいかって聞いたら2人なら問題ないって言われたから、俺、恵理、ユエの3人で先に行こうと思ってる。馬車でどのぐらいかかるかって聞いたら約6日の距離だって言ってた。他の冒険者と足並みを揃えるのは手間だって思ったんだが、急ぐ旅でもないし、それに冒険者のノウハウを知っておけば何かの役に立つこともあると思ってな」

 

 「お前がそれでいいって決めたんならそれでいいじゃねぇか?んで?出発は?」

 

 「明日の早朝だ」

 

 「それはまた急だな。準備は?」

 

 「帰りにしてきた。ついでにユエがどうしてもっていうからあのクリスタベルの店に寄ったんだが、町を出るって言った際、襲い掛かられた」

 

 「・・・よく生きて帰ってきた」

 

 

 

 

 

 

 

 

 「お、おい、まさか残りの3人って“スマ・ラヴ”なのか!?」

 

 「マジかよ!?嬉しさと恐怖が一緒くたに襲ってくるんですけど!?」

 

 「見ろよ俺の手。さっきから震えが止まらないんだぜ?」

 

 「いや、それはお前がアル中だからだろ?」

 

 翌日の早朝、ハジメ達を見送るため共に正面門にきた飛羽真達を商隊のまとめ役と護衛の冒険者達が出迎えたのだが、ハジメ達を見て一斉にざわついた。

 

 女性陣の登場に喜びを顕わにする者、股間を両手で隠し涙目になる者、手の震えをハジメ達のせいにして仲間にツッコミを入れられる者等、様々な反応だ。いやそうな表情をしながらハジメが近寄ると商隊のまとめ役らしき人者がハジメに声をかけた。

 

 「君達が最後の護衛かね?」

 

 「正確には俺とこの2人だ。これが依頼書だ」

 

 ハジメは依頼書を懐から取り出し見せる。それを確認して、まとめ役の男は納得したように頷くと、自己紹介を始めた。

 

 「私の名はモットー・ユンケル。この商隊のリーダーをしている。君達のランクは未だ青だそうだが、キャサリンさんから大変優秀な冒険者と聞いている。道中の護衛は期待させてもらうよ」

 

 「(なんか栄養ドリンクみたいな名前だな)」

 

 「まぁ、期待は裏切らないと思うぞ。俺はハジメだ。こっちは恵理とユエ」

 

 「それは頼もしいな。・・・ところで、そこの兎人族を・・・売るつもりはないかね?それなりの値段を付けさせてもらうが」

 

 挨拶もそこそこにユンケルは値踏みするような視線でシアを見る。兎人族で青みがかかった白髪の超がつく美少女、商人の性として珍しい商品に口を出さずにはいられないといった所なのだろう。首輪から奴隷を判断し、即効で所有者であろうハジメと飛羽真に売買交渉を持ちかけるあたり、相当優秀な商人なのだろう。

 

 「う」

 

 その視線を受けてシアは飛羽真の背後に隠れ、女性陣のユンケルを見る視線が厳しくなる。

 

 「ほぉ、随分と懐かれていますな。・・・中々、大事にされているようだ。ならば、私の方もそれなりに勉強させてもらいますが、いかがですか?」

 

 「貴方は優秀な商人のようだ。けどな、俺の答えはもう解ってるんじゃないか?」

 

 そう言うと飛羽真はシアの横に並びに肩に手を添えると抱き寄せる。

 

 「こいつはもう俺の者だ。手放す気はないし、もし強引にでも手にしようっていうんなら商人だろうと、国王だろうと神だろうとぶっ飛ばす」

 

 「・・・仕方ありませんな。ここは引き下がりましょう。ですが、その気になりましたなら是非、我がユンケル商会をご贔屓に願いますよ」

 

 飛羽真の本気度を理解したユンケルは一礼すると商隊の方へと戻っていった。すると、胸部に柔らかい感触を感じ、さらに腕が腰に回され抱きしめられた。

 

 「ウザったい交渉を手早く済ませるために言っただけだ。勘違いするなよ?」

 

 「うふふ、分かってますよぉ~~、うふふふ」

 

 「・・・でも、まぁ、頑張り次第では言ったことが本当になるかもな」

 

 「っ!?」

 

 シアのことはそれなりに気に入っている飛羽真は本気にさせてみろとシアだけに聞こえる声量で囁き、その囁きの意味を理解したシアは飛羽真に抱き着く力を強めた。

 

 

 

 

 

 

 「じゃあ、6日後に」

 

 「おう、フューレンで会おうぜ」

 

 商隊の護衛で先行するハジメ達を見送ると、飛羽真は未だ抱き着いているシアに話しかける。

 

 「いい加減離れろ」

 

 「もう少しこのままでいさせてください~~」

 

 「この3日間でやっておくことは一杯あるんだ・・よ!」

 

 「うきゃ!?」

 

 飛羽真はシアの脇腹を軽く擽り、力が抜けた瞬間、首根っこを掴んで放り投げた。投げ飛ばされたシアは驚いたものの宙で体勢を整えると体操選手のように華麗に着地した。

 

 「そう遠くない未来、シアも飛羽真と同じ領域に入るかもしれませんね」

 

 

 

 

 

 「そうかいあんた達も行くんだね?」

 

 「えぇ、この町にいる間、お世話になりました」

 

 ハジメ、恵理、ユエの3人がブルックの町を出発してから2日目の昼。最短で本日受けた討伐依頼を終えた飛羽真とエルザはキャサリンに依頼完了の報告と明日、町を出るということを伝える。

 

 「寂しくなるねぇ~。2日前に行っちまった3人にも言ったけどあんた達が戻ってきてから賑やかで良かったんだけどねぇ~」

 

 「賑やかすぎだったの間違いじゃないですか?泊ってる宿屋の看板娘の奇行に、服飾店の巨漢の乙女、踏まれたいと言って土下座してくる変態、“お姉さま”って連呼しながらストーキングする変態、決闘を申し込んでくる阿保共・・・・この町で出会った人達の7割が変態で2割が阿保、とんでもない町だったっすよ」

 

 「ふふふ、それハジメって呼ばれてた男の子も言ってたよ」

 

 飛羽真がハジメと同じことを言ってたと笑いながら告げるキャサリン。

 

 「まぁ、何だかんだで活気があったのは事実さね。それで、あんた達は何処に行くんだい?」

 

 「2日前に出発した3人と同じでフューレンさ」

 

 「だったら、一緒に・・・あぁ、さすがに全員一緒ってのは」

 

 「無理だったんだなこれが。んで、配送の依頼ってないっすか?」

 

 「う~~~ん、今のところそういった依頼は無いねぇ~~」

 

 「そうですか」

 

 依頼は無いと聞いた飛羽真は移動ついでに資金も稼げればと思っていたがそれが出来ないと知りため息を吐く。

 

 「あの子達にも言ったけど体に気を付けて元気でおやりよ?この子に泣かされたら何時でも家においで。あたしがぶん殴ってやるからってここにいない子達にも言っておいておくれ」

 

 「はい」

 

 「あんたもこんなにいい子達を泣かすんじゃないよ?精一杯大事にしないと罰が当たるからね?」

 

 「忠告とお気遣いありがとうございます」

 

 キャサリンの言葉に飛羽真は苦笑いしながら返答する。そんな、飛羽真にキャサリンが1通の手紙を差し出した。

 

 「これは?」

 

 「あの子達もそうだけど、あんたも色々と厄介なものを抱えてそうだからね。町の連中が迷惑をかけたお詫びのようなものだよ。他の町でギルドと揉めた時は、その手紙をお偉いさんに見せな。少しは役に立つかもしれないからね。それと、これはおまけだよ」

 

 キャサリンは渡されていた飛羽真のステータスプレートを返す。

 

 「おいおい、勝手にこんなことしていいんですか?」

 

 返されたプレートを見ると赤だったランクが紫に変わっていた。

 

 「問題ないよ。金とまではいかないけど黒にまで上げてもいいとあたしは思ってるんだよ?」

 

 「そんなことしたら上にいるお偉いさんが黙ってないんじゃ?」

 

 「大丈夫、大丈夫、上もあたしがそう判断したのならそうなんだろうって思うから。おっと、詮索は無しだよ?いい女には秘密がつきものさね」

 

 「・・・解りました。手紙とランクアップ、有難く頂戴します」

 

 「素直でよろしい!色々あるだろうけど死なないようね」

 

 謎多き片田舎の町のギルド職員キャサリン。ハジメ達同様、そんな彼女の愛嬌のある魅力的な笑みと共に飛羽真達は送り出された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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