「・・・・・・」
あまりの衝撃にその場にいた全員(ハジメ達除く)が目を見開いた状態で硬直する。デビットの頭部を鷲掴んでいた飛羽真が容赦なくデビットの頭部を床に叩きつけたのだから。
「床が木造作りだったことに感謝するんだな」
そう言うと、掴んでいたデビットの頭から手を放し、オーナーの下に行く。
「オーナー、これ食事代と迷惑料、そして修繕費です」
食事代を含めた代金をオーナーに渡す飛羽真。飛羽真から代金を受け取ったオーナーは貰った代金から食事代だけを抜き取り、残りは飛羽真へと返した。
「オーナー?」
「私も先ほどの騎士様の発言や行動には思うところがありましたが、貴方様のお陰でスッキリしました。ですのでお代は食事代だけで結構です。残りの迷惑料と修繕費は教会に払ってもらいます」
オーナーの言葉に話を聞いていた騎士達が目を見開く。
「おや?お払いにならないと?でしたら、教会の騎士はマナーが悪いうえに幼い子供に怒られ、殺そうとしたと色々な人に言わないといけませんねぇ」
「・・・教会を脅すというのですか?」
「脅すだなんてとんでもない。私は事実を言うだけです」
「・・・・・解りました。迷惑料と宿の修繕費はこちらからだします」
不利だと悟った副隊長は迷惑料と宿の修繕費を払うことを了承した。
「ん?『不届き者を成敗した証としてスペシャルガチャ券1枚をプレゼントします』・・・・何じゃこりゃ?」
差出人不明のメールが飛羽真の携帯に届き、差出人不明と書かれた内容に不審がるも、
「・・・本当に入ってる」
アプリにスペシャルガチャ券1枚が確かに入っており、不気味がる飛羽真だったが、腹の虫が鳴ってしまったため考えるのを止め、宿から出ようとする。
「ちょ!や、八神君、何処に行くんですか!?」
「何処って・・夕飯用の材料を捕りに行くんですよ」
「捕りに行くって何処にへ」
「何処でもいいでしょう?ハジメ、中村、後は頼んだ」
後のことを2人に任せると飛羽真は宿から出ていき、人気のないところまで行くと、量子ボックスからトレーラーハウスを出現させ、車の中に入り、今ある食材を確認し、夕食を作ろうとした矢先、ノック音が聞こえてきた。
「(ゼスト達・・ではないな。もしかしてさっきの騎士が報復にもでもきたのか?)」
騎士達だった場合、ドアを開けた瞬間に襲い掛かってくる可能性もあるため、飛羽真は意識を戦闘モードへと移し、直ぐに動けるようにしてからドアを開けると、そこにはいたのは・・・
「・・・園部?」
優花だった。
「えっと、その、ひ、久しぶりね八神」
「・・・・・・そうだな。立ち話もなんだ、上がれよ」
「う、うん。お、お邪魔します」
周囲を探り優花以外に誰もいないことを確認し終えた飛羽真は優花を車の中へと入れると、車を周囲の景色と同化させる装置を作動させた。車の中に入ると、優花は目の前の空間が信じられないのか、辺りを見回しては頬を抓るを繰り返し行い、何度目かの抓りで目の前の空間が現実のものなのだと理解した。
「うぅう~」
「ったく、ほれこれを頬に当てて冷やしな」
抓り赤くなった頬を両手で覆いながら少し涙目になっている優花に苦笑いした飛羽真は氷を入れた袋を手渡し、冷やすようにいう。
「あ、ありがとう」
「どういたしまして。改めて、久しぶりだな園部。元気そうで安心した」
「や、八神も元気そうで安心したわ。でも、無事だったのなら知らせの一つや二つぐらい欲しかった」
「城から追い出された身だからな、おいそれと近づくわけにはいかなかったのもあるが色々とやることがあったんだよ。俺としては園部が城から出ている方に驚いた。あの一件以来、死ぬのが怖くて城に引きこもっている面々が多かったからな」
「・・・怖くないっていえば嘘になるけどじっとしていてもどうしようもないもの。だから、愛ちゃんの護衛のお手伝いをすることにしたの。まぁ、天然で鈍感な愛ちゃんをあの騎士達から守るっていう意味もあるんだけど」
「もしかしてと思ったんだが、やっぱりそうだったのか」
デビットの発言と黙るように言われたときと軽蔑するような視線を受けたときの過剰なまでの反応で愛子に好意を抱いているのではないかと思っていた飛羽真だったが、優花から話を聞いてその考えが当たっていたことに苦笑いする。
「ならさっきの行動と発言で好感度は0を通り越してマイナスに入ったな絶対」
「でしょうね」
“ざまぁ”と2人して笑っていると、飛羽真の腹の虫が再び鳴り響いた。
「・・・・・・」
「そういえば、八神は夕飯を食べられてなかったわね」
「あぁ。あの糞騎士様のお陰でな」
「・・・食材はあるの?」
「ん?あぁ、食材に香辛料、一通りの物は揃ってるぞ」
「・・・そう。・・・よし。八神、ちょっとキッチンを借りるわよ」
「お、おう」
飛羽真から許可を貰った優花はソファーから立ち上がるとキッチンへと向かうと、棚を開け、何処に何が入っているのかを確認した後、冷蔵庫を開けて必要な材料を取り出すと、調理を始めた。
そして数分後、
「お待ちどうさま」
完成したオムライス、サラダ、スープを飛羽真の前に置いた。
「家の定番メニューよ。さすがにソースまでは作るのは無理だったけど、この手作りケチャップをかけて食べて頂戴」
「うまそうだ。んじゃ、頂きます」
目の前に並べられた品々から漂ってくる匂いを嗅いだ後、飛羽真は優花が作った料理を食べ始めた。
「ぷはぁ~~~美味かった!ご馳走様でした」
腹が減っていたせいもあったのか飛羽真は10分弱で優花が作った料理を完食、満足そうな表情で腹をさする。
「ゼスト以外の料理を食べるのは久しぶりだったけど、美味かったぜ園部。料理の腕、上がったんじゃないか?」
「そう・・かな?」
飛羽真に褒められたのがうれしいのか優花は指で髪をいじり始めた。
「や、八神、今まで何をしてたのか教えて。私も何をしていたのかを教えるから」
「・・・そうだな。園部になら話してもいいかもな」
今日までのことを教えて欲しいと優花に頼まれ、少し考えた後、飛羽真、これまでの事(トータスの事実を除いて)を話し始めた。
「私達が挑んだオルクス迷宮がただの本当の迷宮に挑むための試しに作られた場所だったなんて」
「しかも、一度入ったら攻略できるまで出ることが出来ないから」
「よく攻略できたわね」
「運が良かったんだよ。んで、俺がいなくなってからそっちは何があったんだ?」
優花に自分達のこれまでの旅をかいつまんで教えたあと、城を出てから起こった出来事を飛羽真は尋ねた。
「ふ~~ん帝国の皇帝が雫に求婚をねぇ・・・」
雫が帝国の皇帝に求婚されたことを聞いた飛羽真の機嫌は一気に下がり、額に青筋がいくつも浮かびあがる。
「ふぅ~~~さて、飯も食べたことだしそろそろ宿に戻るとするか」
「もっと話していたかったけど、八神は明日速いんだったね」
「おう。詳しくは言えないが仕事で北の山脈に行くんだ」
ステルスを解除してから車を降りると、飛羽真は車を量子ボックス内へと収納する。あれだけ大きかったものが一瞬で消えたことに優花は目を見開く。
「え?え?」
「行くぞ、園部」
「ちょ、八神。ここにあったトレーラーハウスは何処に行ったの!?」
「ん?悪いが企業秘密だ。それより早く行くぞ。これ以上遅くなったら先生に何言われるか分かったもんじゃないからな」
「ちょ、待ってよ八神」
そう言うと飛羽真は宿へ向かって歩きだし、優花は慌てて飛羽真を追いかけ、追いつくと一緒に宿まで戻っていった。