“大賢者”と“ガチャ”を得た転生者の冒険譚   作:白の牙

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第05話

 「わざわざ付き合ってもらってすみませんアランさん」

 

 「団長の指示だからな。だけど、本当にやるつもりか?」

 

 「えぇ。こっちのほうが手っ取り早いんで」

 

 訓練を始めて早6日。飛羽真はメルドに無理を言って魔獣と戦わせてくれと頼み込んだ。理由は勿論、ガチャを引く為だ。前に行った異世界では魔物を倒すことでガチャを引くための券をゲット出来ていた。ならばこの世界でも魔物を倒せば券をゲットできるのではないか・・・いやはずだ。それを確かめるためには魔物の討伐は必然。なので飛羽真はメルドに魔物との戦闘をさせてくれと頼んだ。最初は渋っていたメルドであったが、何度も頼んでくる飛羽真に折れ、了承した。

 

 「だけど、変わった剣だな」

 

 「俺達のいた国の剣です」

 

 宝物庫に入って武器を見てみたが大賢者曰く、"すべてとは言いませんランクの低い武器ばかりです”と言われた。なので前から使っていた武器を使うことにしたのだが、ここで一つ問題があった。突然何もない場所から武器が現れたら疑われてしまう恐れがあったため、同じ錬成師であるハジメと共に国お抱えの錬成師の下で錬成について学び、国で保管していた鉱物を使って作り上げたのがこの刀である。カモフラージュとはいえ、名刀に近い出来だと飛羽真は思っており、後で雫に渡そうと思っている。

 

 「もう一度聞くが、よほどのことがない限り俺は手を出さない。それでいいんだな?」

 

 「はい」

 

 「はぁ~~~無茶だけはしないように頼むぞ。大怪我でもされたら俺がメルド団長にどやされるからな」

 

 「ははは、分かりました。んじゃ、行ってきます」

 

 アランに一声かけると、飛羽真は魔物と戦ってガチャ拳を手に入れるために歩き出した

 

 

 

 

 

 

 

 「・・・・ここまでくれば大丈夫かな?」

 

 飛羽真はアランが見えるぎりぎりの所まで来ると、

 

 「アイテム・ウィンド、オープン」

 

 虚空に向け言うとゲームなどでよく見るウィンドが宙に投影される。これはガチャの能力と一緒に手に入れた量子アイテムボックスで、ガチャで手に入れた装備、アイテム、スキルは自動的にこのボックス内へと送られる。"アイテムウィンド・オープン”と唱えると宙にウィンドが投影され、持っている武器、アイテム等の確認が出来る。アイテムはスマホでも確認することが出来る

 

 「まずはこの刀をボックス内にしまってっと」

 

 飛羽真がボックスに入れと念じると持っていた刀が量子化して消え、ボックス内に保存された。それを確認すると、飛羽真はボックス内から武器を念じて取り出す。

 

 「またお前を使うことになるなんてな"斬神刀皇”」

 

 飛羽真が取り出したのは一振りの太刀。ガチャで手に入れた後、主装備として使い、幾度となく戦場で振るった飛羽真の愛刀である。飛羽真は太刀を剣帯に差し込むと、ウィンドを操作して今必要なアイテムがないかを探す。しばらく探していると、目当ての物を見つけ、念じて取り出す。

 

 「相変わらずすごい匂いだなこれ」

 

 飛羽真が取り出したのは魔物を引き寄せる事の出来る食べ物で、地面に置いて放置しておくと染みついた匂いに釣られ魔物が寄ってくるのだ。

 

 「(まぁ、こっちの世界の魔物に効くかどうかは知らないが)」

 

飛羽真はその食べ物を適当なところに放り投げ、魔物が来るのを待つ。ただ待っているのも暇なので素振りをして待っていると、匂いに釣られ沢山の魔物が近寄っていた。

 

 「ひぃ、ふぅ、みぃ、よぉ・・・これまた随分と来たな」

 

 匂いに夢中の魔物達は飛羽真がいることに気づかず、匂いの下へと歩み寄っていく。そして、辿り着くと自分の物だと言わんばかりに餌に喰らい付く。

 

 「さて・・・・やるか」

 

 意識を戦闘ように切り替えると大量の酸素を取り込み、血液の酸素濃度を高め、集中力と身体能力を上昇させる。ガチャで手に入れ死に物狂いで身に着けたスキル“全集中の呼吸”を発動させる。

 

 「(2年も使ってなかったから“常中”はきつそうだが、あの程度の魔獣相手なら問題ないだろう。)・・・・飛撃」

 

 飛羽真は太刀を抜刀すると同時に斬撃を飛ばして餌の取り合いをしている魔物の1体を断ち切った。餌の取り合いをしていた魔物の1体が倒されたことで餌に群がっていた魔物達はやっと飛羽真の存在に気づき、唸り声をあげると一斉に襲い掛かる。

 

 「無の呼吸 水ノ型 流流舞い」

 

 襲い来る魔物達に焦ることなく飛羽真は水流の如く流れるような足運びで魔物を爪や牙を躱しながら、太刀を振るって魔物を倒していく。数分と立たずに餌に釣られてやってきた魔物達は全滅し、大量の死骸だけが残った。

 

 「いくら俺が弱体化して、ブランクがあるとはいえ弱すぎないか?」

 

 『解。餌の成分に微量ですがアルコールを感知しました。恐らくそれで酔ってしまったため動きが鈍くなっていたと思われます』

 

 「(成程。っとなると別の方法で魔物を引き寄せる必要があるな。大賢者、何かいいアイテムはないか?)」

 

 『解。現在所持しているアイテム内では魔物を呼び寄せる物はありません』

 

 「っと、なると地道にやるしかないってことか」

 

 『グルルル』

 

 「次の魔物が来たか。って、これまた随分とでかいな」

 

 唸り声のするほうに振り向くと、熊の魔物が立っていた。

 

 「餌に食いつかないってことは理性がまだあるってことか?」

 

 『ガァアア!』

 

 「おっと」

 

 飛羽真は魔物が振り下ろした爪をバックステップで躱すと、太刀を鞘に納め居合の構えをとる。

 

 「無の呼吸 雷ノ型 霹靂一閃」

 

 そして、雷が落ちたと錯覚させる程の踏み込みで地を蹴って間合いを詰めるとすれ違いざまに太刀で一閃する。だが、

 

 「っち、浅かったか」

 

 野生の勘でまずいと思ったのか魔物を咄嗟に身体をずらすことで致命傷をさけた。そして、今の一撃で完全に理性を取り戻したのか、空に向かって遠吠えをした後、飛羽真に襲い掛かる。その速さは最初の時と比べ物にならないぐらい速い。弱体化しているとは言え、飛羽真にとっては紙一重で躱すことのできるほどなのだが、2年というブランク、肉体が思考についていけず、傷を負っていく。

 

 「ここまで訛っていただなんてな!『能力向上』」

 

 “全集中の呼吸”だけではブランクを補えないと思った飛羽真はスキルで肉体能力を向上させる思考に追いついていなかった肉体が思考に追いつき、魔物の猛攻を紙一重で躱していく。

 

 「『斬刃』。無の呼吸 炎ノ型 昇り炎天」

 

 魔物の大振りの爪撃を躱すと猛炎の如き勢いで太刀を振り上げ魔物を斬ると、

 

 「無の呼吸 炎ノ型 気炎万象」

 

 返す形で太刀を振り下ろし魔物を斬り裂いた。

 

 「ふぃ~~~。何とか倒せたか」

 

 太刀に付着した魔物の血を振るって飛ばし、鞘に納めようとしたら、森の奥から魔物がよだれを垂らしながら寄ってきた。

 

 「一息つく暇もねぇな」

 

 それから昼食時になるまで飛羽真は魔物と戦い続け、数日かけてなくそうとしたブランクをわずか半日で6割近くまで取り戻すことに成功した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「あぁ~~~~~~疲れた」

 

 「だ、大丈夫八神君?」

 

 「ん?少し休めば大丈夫だ。はぁ~~~前はぶっ通しで戦っていたぐらい疲れることなんてなかったのによ~~」

 

 魔物との戦いを終え、城へと戻ってきた飛羽真。道中、冒険者ギルドに寄って、冒険者登録と回収した魔物の素材を売って来たため、クラスメイトの中では一番の金持ちでもある。

 

 「それより、そっちの作業はどうだ?」

 

 「一応、試験品は出来上がったよ」

 

 現在、飛羽真とハジメがいるのは王国に用意してもらった2人専用の工房。最初はハジメも訓練を受ける予定だったのだが、飛羽真が"南雲には戦闘訓練より天職である錬成師の腕を上げる方が一番いい”とメルドに真言し、身を守る護身術であれば時間があるときにでも自分が教えると言って無理やり訓練への参加を止めさせた。その際、光輝や檜山、その取り巻きが言ってきたが、飛羽真が文句を言った4人に“男殺し”を繰り出して黙らせ、

 

 『知識が豊富な南雲なら、この世界にはなく俺達の世界にあるアイテムを作ることが出来る。例えばスタングレネードとかな』

 

 ハジメにしかできないことを告げ、この工房にてアイテムを作成中なのだ。さらに檜山とその取り巻きが隙を見てくる可能性も考慮して数人の騎士を見張りに立たせてほしいと進言。メルドも檜山らがハジメに取る態度を見てそれを了承した。

 

 「じゃあ明日辺り、魔物相手に試してみるか」

 

 「明日も行くつもりなの?」

 

 「当然。そのためにあのアホ達の前だったのにも関わらず土下座して頼んだんだからな」

 

 「はは、僕にはできそうにないかな」

 

 「何言ってるんだ。南雲だって、中3の時に不良から老人と子供を助けるために自分の財布の中身を渡し、なおかつ土下座してたじゃねぇか。助けないとって思っていても行動に移せる奴は中々いないもんだぜ?」

 

 「そ、そうかな?」

 

 当時に事を言われ、ハジメは照れたように頬をかいていると、2人の腹の音が工房に鳴り響いた。

 

 「「・・・・・」」

 

 「南雲、お前もまさか。昼めし食ってないのか?」

 

 「あはは、作業に集中してて・・つい。そういう八神君は?」

 

 「冒険者登録と回収した素材の鑑定に時間がかかってな。しゃーない、街にでも行って食ってくるか」

 

 「でも、お金は・・・」

 

 「俺が持ってるから大丈夫だ。まぁ、城の豪勢な料理には飽きてきていたところだったから渡りに船だな」

 

 城にいるため出される料理は高級レストランのような料理ばかり。それが悪いとは言わないが、庶民である飛羽真からすればおふくろの味がする料理を食べたいのだ。食べ終えた後、鉱山に直接行けるよう準備をしていると、ドアがノックされる。

 

 「誰だ?」

 

 『雫よ。他に香織と優花、中村さんもいるわ。入ってもいいかしら?』

 

 「・・・・いいぞ」

 

 飛羽真はハジメに視線を向けると頷いたので入室の許可を与えた

 

 「お邪魔するわ」

 

 「「「お邪魔します」」」

 

 入室の許可をもらうと雫、香織、優花、恵理の4人が工房に入ってくる。

 

 「おぅ、おそろいでどうした?」

 

 「ちょっと・・ね。それよりバタバタしているみたいだけど何処かに出かけるの?」

 

 「鉱山に鉱石を取りに行くんだ。まぁ、その前に酒場によって遅めに昼飯を食うつもりだが」

 

 「なら、丁度いいタイミングだったようね」

 

 「どういう意味だ?」

 

 雫の言っている意味が分からずに飛羽真が首を傾げると、優花と恵理がピクニックなどでよく使うバスケットを2人に見せる

 

 「王宮の調理場を無理を言って貸してもらって作ってきたわ」

 

 「王宮で食べてる料理に比べたら豪勢でもないし、おいしくないかもしれないけど一生懸命作ったよ」

 

 「ほぉ~~~そりゃあ楽しみだ。王宮の豪勢な料理に飽き飽きしてたところだからな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 「うん・・・うまい。なんつーか、どことなく懐かしい味がする」

 

 雫と優花作のサンドイッチを食べながら飛羽真は感想を言う。因みにハジメのは香織と恵理作の物で2人はハジメの隣に座って味の感想、何を作っているのかを尋ねていた。

 

 「傍から見ると美女2人を侍らす男にしか見えないな」

 

 「ちょっと、聞こえてるからね八神君!?」

 

 飛羽真の言葉が聞こえたのかハジメが抗議の声を上げるが飛羽真は無視して食事を続ける。

 

 「そう言えば鉱山に行くって言ってたけど」

 

 「あぁ。鉱石を取りにいくんだ」

 

 「何で態々取りに行くのよ。国お抱えの錬成師がいるんだからその人達からもらってくればいいじゃない」

 

 国王は城の者達に出来る範囲で飛羽真達の言うことを聞いてあげろと伝えている。

 

 「最初の2日はそうしたが、試作品を作ったりするとなると大量に必要でな、だったら、自分達で取りに行くってことになったんだ。歩いて行くから体力も付くし、鉱石を取るためにつるはしを振るうから筋力も上がる。帰りは取った鉱石を運搬車を使って戻ってくるから筋力と体力も付く。鉱石も手に入れられて、身体を鍛えることも出来る、一石二鳥だろう?」

 

 「「た、確かに」」

 

 飛羽真の論に雫と優花は納得する。

 

 「何なら雫と園部も経験してみるか?」

 

 「・・・遠慮しておくわ」

 

 「わ、私も」

 

 その後、先に食べ終えた飛羽真はハジメが食べ終えるまで雫と優花と世間話をしながら待っていたが、香織がぐいぐいと詰め寄り、ハジメの食が進まないことにいら立ち、拳骨を落として“俺達の邪魔するなら出禁にするぞ”と言って黙らせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、その日の夜

 

 「さて、引きますか」

 

 ベッドに腰かけ、飛羽真はスマホのアプリをタップしてガチャを起動させる。

 

 「今日の魔物との戦闘で手に入れた券は35枚か。30回は引けるな。よしまずは1回目」

 

 飛羽真は“10回”のボタンを指でタップすると、ガチャが始まり得たリストがスマホに表示される

 

 1 消費アイテム ハイポーション(転スラ) 1ダース

 2 人物召喚 ゼシカ(ドラクエ8)

 3 食材 エア(トリコ)

 4 武器 ゼイネシスクラッチ(PSO2)

 5 消費アイテム マジックポーション10個

 6 食材 米1俵

 7 調理スキル

 8 幻獣の卵

 9 食材?きのみ(ポケモン) 各種1箱(10個入り)

 10 胃薬

 

 

 「・・・・これって当たりって呼んでいいんだよな?ってか“食材?”ってなんだよ!?」

 

 ガチャで手に入れたリストを見て飛羽真は大声を上げるも、深呼吸を繰り返し心を落ち着かせ、ガチャをつづけた。残りのガチャで飛羽真が興味を引いたのは、

 

 -エイムズショットライザー

 -プログライズキー“シューティングウルフ”

 -身代わりのペンダント改×5

 -人物召喚 シュテル・ザ・デストラクター (リリなの)

 -収納バッグ(ショルダータイプ)×2 

 

 の5つだ

 

 「このエイムズショットライザーとプログライズキー、収納ポーチは機を見て南雲に渡すか。そしてこの“身代わりペンダント改”は致命傷となる攻撃を5回だけ代わりとなって受けてくれるか。此奴も南雲にも渡しておくか。後、雫と園部、中村に清水にも渡しておこう。残る問題は・・・これだな」

 

 飛羽真はアイテムボックス内から一振りの刀を取り出す

 

 「雫に渡そうと思ったが・・・・渡して下手に何かあったら困るんだよな~~~。やっぱり俺が持ってるしかないのかね~~」

 

 飛羽真が取り出した刀。一見普通の刀に見えるが、その正体は“妖刀”。名を“二代鬼徹”。

ユエをどちらのヒロインに入れるか?

  • ハジメ
  • 飛羽真

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