“大賢者”と“ガチャ”を得た転生者の冒険譚   作:白の牙

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第06話

 

 

 

 「オルクス大迷宮への遠征・・・ですか?」

 

 「あぁ。実戦経験を積ませるために明日から行くつもりだ」

 

 光輝達への訓練を終えた足で飛羽真とハジメの工房にやってきたメルドが2人にそう告げる。

 

 「この遠征は勇者一行全員が参加することとなっている」

 

 「全員ってことは・・僕もですか?」

 

 「あぁ。反対はしたんだが、上は連れて行けの一点張りでな。俺ではどうすることも出来なかった。本当に申し訳ない」

 

 「あ、頭を上げてください」

 

 申し訳なさそうに自分に頭を下げるメルドを見て、ハジメは頭を上げるよう言う。

 

 「でも、丁度いいかもしれないな」

 

 「「え?」」

 

 飛羽真の言葉にハジメとメルドがそろって飛羽真を見る

 

 「飛羽真、お前はハジメが前線に立つのに賛成なのか?」

 

 「まさか。俺がちょうどいいって言ったのは、南雲のことを馬鹿にしたクラスのアホ共に、南雲が、そして“錬成師”がどれだけ凄いのかをわからせるのに、ちょうどいいって言ったんですよ」

 

 そういうと、飛羽真は作業台に並べられている品々を見て笑みを浮かべる。そのあと、メルドは飛羽真とハジメから作っていた物を軽く説明され、驚き、2人を称賛すると、しっかりと準備しておくようにと伝えて工房から出ていった

 

 「はぁ~~とんでもないことになっちゃったな」

 

 「そうだ、南雲お前にこれらを渡しておく」

 

 飛羽真はちょうどいい機会なので、ハジメに渡そうと思っていたアイテムを量子ボックスから取り出し作業台に並べる。

 

 「あれ?これって仮面ライダーの変身ツール?」

 

 「さすがに知ってるか」

 

 「うん。好きだから毎週見てるよ。でも、おもちゃを貰っても・・」

 

 「おもちゃじゃねぇよ。持ってみろ」

 

 「う、うん」

 

 飛羽真に言われ、ハジメは変身ツール兼武器の拳銃を手に取ると違和感を覚えた。

 

 「(あれ?これってこんなに重かったっけ?前におもちゃ屋さんで持った時は軽かったような)」

 

 「次に両手で構えて、壁・・・は危ないから鉱石に山に向かって撃ってみろ」

 

 「撃ってみろって・・・おもちゃなんだから何も・・・」

 

 「いいから、いいから。ちゃんと踏ん張れよ」

 

 「?」

 

 からかわれているなと思いつつも、ハジメは言われた通り足に力を入れて踏ん張れる体制を整えると、トリガーを引く。すると、発砲音と共に銃口から弾丸が撃ち出され、鉱石を砕いた。

 

 「うわぁ」

 

 反動が強すぎたのかハジメは床に尻もちをつく。

 

 「いたたた?何がどうなって・・・・え?」

 

 目の前の光景を見てハジメの時が止まる。再起動したハジメは砕けた鉱石と銃を何度も交互に見る。

 

 「もしかしてこれ・・・本・・物?」

 

 「あぁ。本物だ」

 

 「ど、ど、どうやって作ったの!?見た目だけなら錬成を使って作れるだろうけど内部構造は・・・・」

 

 「どうどう。落ち着け南雲」

 

 「お、落ち着けるわけないじゃん」

 

 今のハジメの状態を例えるなら、推しているアイドルの握手会に行って、握手をしてもらった時のファンが一番合うだろう。内気とまではいかないが積極的に話すハジメは見たことがない。まぁ、それだけ興奮しているということだろう。

 

 「はぁ、はぁ、はぁ」

 

 「落ち着いたか?」

 

 「う、うん。ごめんね」

 

 「はは、気にしてない。さて、南雲が落ち着いたところでさっきの質問に答えよう。俺の天職は知ってるよな?」

 

 「えっと、剣士に僕と同じ錬成師、あとは召喚師だったけ?」

 

 「あぁ。召喚師で思い浮かぶのは悪魔やら、天使やらそういったものを召喚して使役するって言うの一般的な考えだ。実際俺もそう思ってた」

 

 飛羽真は話を一旦やめるとスマホを取り出し、電源を入れたハジメに見せる。

 

 「ステータスプレートを貰った日の晩。スマホの電源を入れてみたら見慣れないアプリがあってな。押してみたら課金ゲームでおなじみのガチャの画面が表示されたんだ。んで、好奇心に負けて押してみたら、ガチャが回り出して景品が出てきたんだ」

 

 「な、なにが出てきたの?」

 

 「何だったけな~スマホ用の魔力式バッテリーだったかな?電気じゃなくて魔力をチャージさせることでスマホを動かすことが出来るらしい」

 

 「もしかして工房に入って最初に工具を作っていたのって」

 

 「バッテリーを交換させるためだ。んで、バッテリーを交換した後、もう1回ガチャをしようとしたんだが、引くための券がなくてな引くことが出来なかった。最初に引けたのは初回サービスだったんだろう。んで、券を得るためにはどうすればいいか調べてみたら、魔物みたいなモンスターを狩るか、善行をすることで得ることが出来ることが分かったんだ」

 

 「じゃあ、メルド団長に魔物との戦いをさせてくれって頼み込んでいたのは」

 

 「券を集める為だな。勿論、魔物との戦いに慣れておきたいっていうのも事実だ」

 

 飛羽真はハジメに真実と嘘を織り混ぜて話す。飛羽真の話にハジメは疑うことなくそれを信じた。

 

 「んで、ガチャを引いて分かったことだけど、実際にある物だけじゃなく空想の産物も引けることが分かったんだ。例を挙げるなら南雲が持っているそれだな」

 

 「・・・じゃあ、これは八神君が持っていたほうがいいよ。僕が持っていたって宝の持ち腐れだし」

 

 「いやいや、さっきも言った通りそれは南雲にやるよ。剣士である俺が持っていたって猫に小判だからな。あと、これも渡しておく」

 

 飛羽真は疑われないようにガチャで当てた収納ポーチから、シューティングプログライズキー、ハイポーション、身代わりペンダント改×3、収納バッグを取り出して作業台の上に並べる。

 

 「そのバッグ・・・これだけの物が入る大きさじゃないよね?」

 

 「これはドOえもんでいう四次元ポケットと同じ能力を持っているバッグらしくてな。いくらでも物を収納できるらしい。渡す物の説明はこの紙に書いてある。ペンダントは後で中村と清水に渡しておけ」

 

 「本当にもらっていいの?」

 

 「いいに決まってるだろう?そのためにお前を鉱山で鍛えたんだからよ」

 

 「どういうこと?」

 

 ハジメは解らずに首を傾げる

 

 「さっき撃って分かった通り、その銃は公式サイトで説明された通り反動を軽減させる処置が施されてるが、生身で使うには反動が強い。だからその反動に負けないようにするために、踏ん張るための足腰と反動に負けない腕力が必要不可欠」

 

 「僕にその耐性をつけさせるために、わざわざ行く必要もない鉱山に行ってたってこと?」

 

 「そういうことだ」

 

 ハジメの答えに満足したのか飛羽真は笑って頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「後は、雫にこのペンダントと錬成で作った刀を渡すだけだな」

 

 明日からの遠征に備え、各々が準備と心構えを行う中、飛羽真は雫と優花にガチャで当てたペンダントを渡すべく、彼女達の部屋に足を運んでいた。優花に“お守りだ”と言ってペンダントを渡した際、友人の2人に見られひと騒ぎあったが、何とかその場を2人で治めた後、その足で雫の部屋に行ったのだがおらず、香織の部屋に行っているのだと当たりをつけて行ったが誰もおらず、城内を歩いて探しているが一向に見つからない。

 

 「何処に行ったんだ雫の奴。・・・最悪、明日の朝渡すか」

 

 その際、一悶着ありそうだな~と考えていると、微かに風切り音が聞こえてきた。飛羽真はもしかしてと思い、音を頼りに歩いていくと中庭にたどり着く。そして、そこで見たのは一心不乱で素振りを行う雫だった。飛羽真は量子ボックスから水とキャンプ用のポットとコンロ、マグカップ、アウトドアチェア、折り畳み式のテーブルを取り出すと広げ、湯を沸かしながら雫の素振りが終わるまで待つことにした。雫の素振りが終えるとのほぼ同時にお湯が沸き上がる。

 

 「な、なに!?って、と、飛羽真?」

 

 「よ!遠征の前だってのに精が出るねぇ~」

 

 驚く雫を他所に飛羽真はマグカップに緑茶の粉末をいれて、湯を注ぐとテーブルに乗せる。

 

 「ほれ」

 

 「きゃ!?これって毛布?」

 

 「風邪をひかないようにそれを羽織っておけ」

 

 「う、うん。って、そんなことより!これは何!?」

 

 「何って見ればわかるだろう?キャンプ用品だ」

 

 「それは見ればわかるわよ。私が聞きたいのは、なんでそのキャンプ用品がここにあることよ!」

 

 「簡単にいえば俺の天職が関係してる」

 

 騒ぐ雫に飛羽真はハジメにしたのと同じことを雫に話した。

 

 「・・・チートにもほどがあるわね」

 

 飛羽真の話を聞き雫は頭が痛くなってしまった。

 

 「このことは誰にも言うなよ?」

 

 「何で?」

 

 「嫉妬心からいじめを行う奴等や止めもしない奴等、本質も見ないで好きかっていう奴らの為に使う気はさらさらねぇ」

 

 飛羽真の言葉に雫は呆れる。

 

 「雫、誰にも言わないでくれるのであればこれをやろう」

 

 「そ、それは!?」

 

 飛羽真は収納バッグから猫のぬいぐるみを取りだし見せた。

 

 「どうだ?」

 

 「・・・解ったわ。誰にも言わない」

 

 「交渉成立だな」

 

 飛羽真は猫のぬいぐるみを雫に渡す。ぬいぐるみを受け取った雫は嬉しそうな顔をしながらそれを抱きしめる。

 

 「日々のストレスが無くなっていく気がするわ~~」

 

 「(あの表情、想像以上に溜め込んでたみたいだな)」

 

 恐らく香織と自分、地球にいるフェイト、木乃香、シルヴィアの計5人しか、今の雫の緩んだ表情を目にした者はいないだろう。

 

 

 

 

 「ふぅ~~すっきりしたわ」

 

 心行くまでぬいぐるみを抱きしめた雫は緩み切った表情から一転、いつもの凛とした表情に戻っていた。

 

 「さて、雫のストレスも抜けたことだし本題に入るか」

 

 飛羽真は収納バッグから錬成で作った刀、脇差、ペンダント、ハイポーションの4つを取り出し、テーブルに置く。

 

 「これって・・・」

 

 「刀は俺が錬成を使って作った物だ」

 

 「見てもいいかしら?」

 

 「あぁ」

 

 飛羽真の許可を得ると雫は刀を鞘から抜き、刀身を見る

 

 「前に行った村正展で見た刀身をイメージして作った。贋作だが、切れ味は保証する」

 

 「改めて錬成師が凄いんだって思い知らされたわ」

 

 「そうか。これはペンダントと薬の効果を書いたメモだ。寝る前にでも読んでおいてくれ」

 

 「解ったわ」

 

 「んじゃ、夜の秘密のお茶会はこれでお開きだ」

 

 淹れたお茶が全部無くなったので飛羽真は取り出した道具を収納バッグへとしまう。

 

 「遅いし部屋まで送るわ」

 

 時間も遅いので雫を部屋まで送り届けることにした飛羽真。部屋までの道中、どこかに行っていた香織と遭遇したが、その格好を見て雫が注意したが、逆になんで飛羽真と一緒にいるのか、手に持っているぬいぐるみは何処で手に入れたのか等々を聞かれ、飛羽真に助けを求めようとしたが、触らぬ神になんとやら、巻き込まれる前に退散しており、一人で香織の相手をすることとなった。

ユエをどちらのヒロインに入れるか?

  • ハジメ
  • 飛羽真

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