アサルトしないリリィ   作:坂ノ下

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本作は短編集なので、一応各話独立した話になっています。


アネモネ (夢結×梨璃)

 頭に濃緑の草を這わせている切り立った岩肌。その狭間から、銀色に鈍く煌めく巨体が姿を現す。

 丸みを帯びた胴体から太く短い四つ足を生やし、二本の腕は丸太の如き威圧感を放っている。動き自体は機敏ではないのだが、何せサイズが違う。全長は優に10メートルを超えるだろう。故に一歩一歩が大きいので歩みが速く感じる。その巨体が合計で三体、並び立つ岩の狭間を抜けて横一列になった。

 ラージ級ヒュージ。それが巨体の正体だった。

 そしてそんなヒュージに相対するのは九人の少女。レギオン一柳隊のリリィたちだ。

 

「お姉様」

 

 レギオンの最後方で、憂いを帯びた一柳梨璃(ひとつやなぎりり)が小さく呼び掛けた。

 だが梨璃の声が届くことはない。呼び掛けられたその人は、レギオンの最前列で敵と対峙しているのだから。

 

「こっ、攻撃、きます!」

 

 悲鳴にも似た叫びが耳に入り、梨璃は遠のきかけていた意識を引き戻す。

 梨璃と同じく最後方に布陣する二川二水(ふたがわふみ)が、赤い輝きを湛えた両目で前方を凝視している。戦場俯瞰のレアスキル『鷹の目』の力を行使したのだ。

 ヒュージの背部左右に生えた第三・第四の腕は指先が太い管となっている。その管の中から、白煙と共に飛翔体(ミサイル)が飛び出した。大気を突き破り高空に達した後、三十もの飛翔体は山なりに向きを変えて地上へと落下する。狙いは無論、一柳隊である。

 

BZ(バックゾーン)! 対空迎撃!」

 

 今度は隊の中央から、凛とした声が響く。鋭角的で流麗なフォルムのチャームを構えた(かえで)J(ジョアン)・ヌーベルが、一柳隊の司令塔が指示を飛ばしたのだ。

 梨璃を含むBZの四人が各々のチャームを空へと向ける。その中でも際立っていたのは、長銃身のライフルを思わせるチャーム『アステリオン』。流れるように弾丸を数発発射すると、同じ数のミサイルを漏れなく撃ち落としていった。

 梨璃にそのような芸当はできないため、訓練での指導通りに弾幕形成を試みる。チャーム『グングニル』をシューティングモードで構え、銃口に発砲炎を灯してばら撒くように連射した。

 

「重いっ」

 

 絶え間なく襲い来る射撃の反動で、梨璃の腕にいつも以上の負荷が掛かる。しかし休めるはずもなかった。弾倉が空になったグングニルを前後逆に構え直し、機体後部のスリットからレーザーを奔らせる。

 その甲斐あって、空に舞っていた飛翔体を見事に全滅させた。自分が幾つ墜としたのかは分からない。そんなことよりも、梨璃は遠く前方で走りゆく後ろ姿に目を凝らす。

 艶やかな黒髪を靡かせて突き進む少女の横合いから、新たなヒュージが迫る。

 球状の体に、かぎ爪状の脚を三本持つミドル級のヒュージだった。ミドル級とは言え、全高は3メートルにも達する。それが十体余りも。

 

「お姉様!」

 

 思わず叫び、チャームをかざす。だが誤射を恐れて引き金に掛けた指が止まってしまった。

 迷う。

 そして迷っている内にミドル級ヒュージの脚が振り上げられて。

 伸びてきた光の奔流に呑まれ、砕かれ、爆発四散した。ヒュージの方が。

 

夢結(ゆゆ)様、援護します」

「ええ、行きましょう鶴紗(たづさ)さん」

 

 右肩に短砲身のチャームを担いだリリィが前に出る。砲は瞬く間に剣へと形を変えて、ラージ級の盾と化したミドル級へ操者と共に突っ込んでいく。

 薄く透き通った金糸のようなポニーテールを靡かせて、ヒュージの眼前に飛び込み一閃。着地と同時に、逆袈裟で別のヒュージに一閃。遅れて巻き起こった二つの爆風に、リリィの小柄な体が包み込まれる。

 その時、迎え撃つミドル級の胴体が上下に割れた。中から伸びてきた無数の触腕はさながら黒い槍のようで。炎と煙に巻かれたリリィ目掛けて一斉に襲い掛かる。

 ところが、ミドル級の反撃は全て空を切った。

 金髪のリリィはまるで先々の展開が読めているかの如く、極太の触腕を紙一重で回避して、剣の切っ先を敵の下腹部に刺し込んだ。

 この時点で、ヒュージ側の隊列は意味を成さなくなっていた。

 

「鶴紗さんは一度下がって、(まい)様は前進してミドル級の残敵を! 夢結様、大物はお願いしますわ!」

 

 楓の指示に従いレギオンが動いていく。

 梨璃は可能な範囲で援護射撃に徹しつつも、その様を憧憬と焦燥に挟まれた心で見入っていた。

 視界の先で、長い黒髪が再び翻る。遠く離れていても見逃すはずがない。

 ラージ級の一体へ、黒髪のリリィが瞬く間に懐へ入り込むと、振り上げられたチャームの刃が巨体を切り裂く。堪らず膝を突いてよろけたヒュージに、至近距離から銃口が向けられた。先程つけられたばかりの裂傷へ、続けざまに三発。

 それで十分だった。下腹部から青の体液を滴らせ、ちょっとしたビルにも匹敵する体躯がその機能を完全に止めた。

 

「夢結ッ! 次くるゾ!」

 

 猛進からの連続射撃で、生き残りのミドル級を的確に仕留めていた梅が吼えた。

 二体目のラージ級が敵討ちとばかりに剛腕を振るう。横薙ぎにされた大地は表面が抉れ、土や草花が宙を飛ぶ。

 ところがそこには誰も居ない。

 代わりに、ラージ級の天辺よりも更に高く、太陽を背にして舞う人影が。

 ヒュージ背部のミサイル管から放たれた凶弾を潜り抜け、チャームの無骨な刃が巨体を上から下へと叩き切る。

 あっという間に二体。

 そこから先は消化試合だった。

 

 

 

 

 

「いや~、終わってみれば早かったですねえ」

 

 校舎の廊下を進みながら、肩の力が抜けたような調子の二水が隣の梨璃へと声を掛ける。

 恐らくは静岡方面から、ケイブを通って侵入してきたヒュージの一団が補足されたのが今朝のこと。一柳隊に出動命令が下り、学院保有のティルトローター機で百合ヶ丘西方に赴き、任務を達成した後またこうして学院に戻ってきていた。

 

「ヒュージの数、思ってたより少なかったよね」

「ラージ級が三体にミドル級が十五体。それだけしか送り込む余裕がなかったんでしょう」

 

 当初の見積もりよりも実際の敵戦力は少数であった。あの程度であれば、一柳隊なら苦もなく相手にできる。

 ヒュージの等級というものは、外見のサイズによって大まかに決定されていた。無論、同じ等級といえどもその脅威度はピンからキリまで。ギガント級に匹敵するラージ級も存在すれば、異質な能力でどんなヒュージよりも厄介足り得る()()なるものも確認されている。

 ただ今回はそういった稀なケースには当たらず、危なげなく学院に帰還できていた。

 

「それにしてもBZの我々はともかく、夢結様と梅様のお二人は流石です! 何というか、動きからして格が違いました! それに楓さんの戦闘指揮も本当に的確で……やっぱり気配りの人ですね!」

「うん、そうだね」

「あと、今回は鶴紗さんも凄かったです! レアスキルの力もあったんでしょうけど。夢結様や梅様についていけるのは、うちでは鶴紗さんぐらいですよ」

「そう、だね」

 

 隣を歩く梨璃の心情をよそに、二水が興奮して熱弁を振るう。

 一方の梨璃は『心ここに在らず』といった様子で、戦闘終了直後に目にした光景を思い返していた。

 

 

「鶴紗さん、ありがとう。おかげで助かったわ」

「いえ……」

「何だ何だ鶴紗ー。美人の先輩たちに褒められて照れてるのか~?」

「梅、揶揄わないの」

()()じゃない。梅様は入ってないからな」

 

 

 そんな一連のやり取りが、梨璃の頭の中でぐるぐる回る。

 どうしてあの時、輪に加わらなかったのか。遠巻きに立ち尽くしてしまったのか。いつも通りに笑顔を向ければよかったのに。

 しかし、ここで考えていても始まらない。

 もやもやを振り払うために、梨璃は廊下の真ん中で立ち止まる。

 

「二水ちゃん、やっぱり先に帰ってて。私はお姉様たち待ってるから」

「えっ? あ、はい。それじゃあお先に」

 

 踵を返して来た道を戻り始める梨璃。向かうは一柳隊のレギオン控室。

 レギオン全体での反省会の後、更にポジションごとに反省点を話し合っていた。今回、BZの課題はそう多くない。せいぜい乱戦時の位置取りと、各人の射撃精度を向上させる点ぐらいだろう。

 故に、梨璃たちBZのメンバーは一足先に控室を去っていた。今から戻ればまだ会えるかもしれない。

 期待を胸に、走り出しそうな衝動を抑え、早歩きで校舎を行く。

 次の角を曲がって直進した先に目的地がある。早速曲がろうと顔を覗かせたところで、梨璃はお目当ての人物を視界に捉えた。

 腰まで届く黒髪のリリィ、白井夢結(しらいゆゆ)がこちらの方を向いて立っている。その手前、夢結と向かい合っている金のポニーテールは安藤鶴紗(あんどうたづさ)

 

「もう終わったんですか? 途中までご一緒させてください」

 

 そう言って夢結のもとへと出ていくはずだった。

 しかし実際は声を上げられなかったし、曲がり角からも動けなかった。

 背の高い夢結の上体が前に傾き、顔の高さが鶴紗と重なる。右手が鶴紗の頬に添えられ、二人の距離は更に縮まっていき――――

 

「……っ!」

 

 弾かれたように、梨璃の体は向きを変えていた。

 

 

 

 

 

「はあ? 何かの間違いじゃないのか?」

 

 旧校舎横の木陰で昼寝を決め込んでいた梅が、梨璃に起こされ気だるげな声を上げた。

 初めは寝惚け眼で、次第に訝しむような表情になり、しかし真剣に後輩の訴えを聞く梅。

 

「夢結と鶴紗がチューしてたとか、あの二人に限ってそんな……」

 

 そう言いかけたところで梅の口が止まり、ややあって再び動く。

 

「まあそれはそれとして。仮にチューしてたとしたら、梨璃は何で腹を立ててるんだ?」

「腹は立ててませんけど! だけど、おかしいじゃないですか。女の子同士でキッ、キスなんて」

 

 勿論、海外からの留学生が多い百合ヶ丘ではそういった行為による挨拶も珍しいものではない。だがあの二人は日本人だし、あの時のアレは決して挨拶などではない。遠目からだったが、梨璃にはそう断言できた。

 

「うーん、じゃあ、何でおかしいって思うんだ?」

「何でって……」

「理由がないとおかしいなんて思わないだろう」

 

 梅の至極当たり前な疑問に対して返答に窮した。

 百合ヶ丘に入る前は、()()()()()()だと深く考えることなく思っていた。入った後も、自分には無縁なものだと思っていた。女の子同士の関係が存在すると知識で知ってはいたが、身近に降りかかることはなかったのだ。あるいは単に梨璃が認識してなかっただけかもしれないが。

 

「……昔。昔テレビで偉いおじさんが言ってました! 『非生産的な』って!」

「そりゃいつの話だ……。まあそういう考えもないわけじゃないが」

 

 梅は腕組みして考え込む。少しの間唸っていたが、やがて昼寝の体勢から勢いよく起き上がり、梨璃をその場から連れ出した。

 旧校舎を横切り、新校舎へ。

 新校舎の中に入って辿り着いた一室は、梨璃もよく知る部屋だった。

 

「というわけで、専門家に助っ人を頼んだゾ!」

「専門家ではないのですが……」

 

 床の上の絨毯に車座となって腰を下ろしている一同。部屋の主の片割れである郭神琳(くおしぇんりん)が困ったような笑みを浮かべる。

 梅から事情を聞くと、神琳もそのルームメイトの王雨嘉(わんゆーじあ)も二つ返事で相談に応じてくれた。

 

「もう一度確認しますが、梨璃さんは女性同士でお付き合いしていることに異議がある、というわけですね?」

「はい」

「では、お二人が本当に好き合って関係を持たれたとしても、梨璃さんは反対しますか?」

 

 そう質されて、梨璃ははたと気付く。これではまるで、自分が二人の幸せを妨げているみたいだと。

 神琳の語気は決して強くなく、むしろ穏やかなぐらい。それでも梨璃は責められているような心地に陥る。

 

「自分たちの想いを、よりにもよって梨璃さんにおかしいとか非生産的とか言われたら、きっと夢結様も鶴紗さんも悲しい気持ちになりますよ」

「けど、だって! 私そんなつもりじゃ……」

 

 本当に相手を慮っていたかというと、否である。その自覚があったからこそ、梨璃の言葉は尻すぼみになっていく。

 

「落ち着いて梨璃。女の子同士で好きになっても何もおかしくないよ。背の高い人が好きとか、明るい人が好きとか、そういうのと同じことだから」

「全然違うよぉ!」

 

 それまで神琳と梨璃の様子を窺っていた雨嘉がフォローを試みた。しかし効果は無く、かえって混乱させるだけ。

 以前はこんな風に悩むことなんてなかったのに。楓や亜羅椰(あらや)に迫られた時でも、こんなことを考えたりしなかったのに。

 それとも、これが自分の本性。自分はこんな嫌な子だったのか。梨璃は自問する。

 

「そうですね。それでは私事(わたくしごと)で恐縮ですが――」

 

 神琳がそんな前置きをした。

 

「私、雨嘉さんとキスをしてます」

「神琳!?」

「それも一度や二度ではありません。勿論挨拶でしているわけではないですよ」

「ちょっと神琳! 何言ってるの! 神琳ってばぁ!」

 

 横から雨嘉に肩をガクガクと揺らされる神琳だが、お構いなしといった調子で告白を続ける。

 一方で梨璃は突然のことに反応できない。隣の梅に視線をやると、「知ってた」と言わんばかりに平然としていた。

 

「キスの後は、一糸纏わぬ姿でお互いの体に触れ合っています。愛し合っているんです」

 

 もはや雨嘉は神琳の口を閉じさせるどころではなくなっていた。両手で顔を覆い、耳たぶまで真っ赤に染まっている。

 

「梨璃さんはこんな私たちのこと、気持ち悪いと思いますか?」

「……思わないよ。びっくりしたけど、そんなこと思わない」

 

 梨璃は話の意図を量りかねていた。それでも感じたままを言葉にして紡いでいく。

 

「でしたら、もし夢結様が鶴紗さんか他のどなたかと、そのような行為をなさったら?」

「それはっ、嫌」

「何故でしょうか?」

「分からない。分からないけど、嫌なんです。苦しいんです。鶴紗さんは確かに綺麗で、可愛くて、頼りになるけど。でもお姉様とだなんてっ」

 

 あの時の光景の続きが梨璃の頭の中で展開する。

 二人が見つめ合って。唇がゆっくりと重なって。

 部屋の中に二人きり。何も纏わず。大切な宝物を引き寄せるように抱き合って。

 そこから先は無理だった。頭がぐちゃぐちゃになって、胸の奥がひりひりと痛む。

 

「おそらくそれは、独占欲という感情でしょう」

「独占? 私が、お姉様に?」

 

 神琳にそう指摘されるものの、梨璃は首を傾げる。

 確かに、お姉様に構ってもらえず寂しい思いをする時もあった。しかしそれが恋愛感情によるものだと考えたことなどなかった。これまでは。

 

「私、お姉様をそういう風に見てるんでしょうか? だからお姉様と鶴紗さんのことを、あんな、おかしいだなんて……」

「それは梨璃さん自身にしか分かりません。あるいは、いっそのこと夢結様に思ったままを打ち明けてみては?」

「えっ、でも、いきなりこんな話されてもお姉様困るんじゃないかな。嫌がられたりするかも」

「ふふっ、お困りにはなるでしょうが、嫌がられるようなことはないと思いますよ。私の見立てではありますが。一応これでも、専門家らしいので」

 

 胸の()()()こそ取れないが、梨璃は徐々に落ち着きを取り戻していた。心の内を聞いてもらったおかげか、はたまた神琳の話術の賜物か。

 落ち着き、いつもの調子が戻って来たなら、梨璃本来の物怖じしない性分が発揮される。

 

「お姉様とお話してみます。本当にお姉様と、そんな関係になりたいのかは分かりませんけど。でも、あの廊下でのこと確かめないと! 先に進めませんから!」

 

 最初からそうすれば話は早かったのだが。

 しかし気が動転していたのもあるし、初めて味わうような例えようのない不安もあった。

 結局、相談という儀式が必要だったのだ。信頼できる隊の仲間がいるなら尚更に。

 

 

 

 

 

 梨璃が皆に礼を言って飛び出した後、梅と神琳もまた部屋を離れていた。

 二人が向かったのは、もう片方の当事者の所。

 

「夢結様と廊下で? ……ああ、そう言えば目に入ったゴミを取ってもらったけど」

 

 突然現れて奇妙な質問をしてくる先輩と同輩を前に、鶴紗は怪訝そうに目を細めながら答えた。

 

「やっぱりだ。そんなことだろうと思ったよ」

 

 そう納得すると、梅は未だしかめっ面でこちらを見てくる鶴紗に一部始終を説明してやる。

 

「何だそれ。てか、私や夢結様に聞けば済むのに」

「まあそうなんだけどな。いつかまた似たようなことがあるかもしれないから、この際梨璃本人にはっきりさせようって思ったんだ」

「だからって、そんな面倒臭いことを」

 

 鶴紗の怪訝な顔は呆れ顔へと変わっていた。そこまでする必要性を感じなかったのだろう。

 とは言え、必要性を感じていた人たちは今回の結果に満足しているようで。

 

「梅は上手くいくって最初から分かってたゾ」

「ですが梅様、内心不安になられていませんでした?」

「おお、流石リンリンだな。実はちょびっとだけ冷や冷やしてた」

 

 神琳の推測を、梅はあっさりと認めた。

 実際、夢結と梨璃の破局は考え得る最悪の結末だろう。結果的にそんな事態にはならなかったが、()()という言葉が通用しないのが人の心というものだ。

 もっとも、梅と神琳の態度を見るに、限りなく絶対に近い賭けだったようだが。

 

「それよりも、リンリンがいきなりぶっちゃけたことの方が驚いたゾ。ワンワンは大丈夫なのか?」

「ええまあ。かねてから一柳隊の皆様にはお話ししようと、雨嘉さんとは決めていたんです。想定とは随分違う形になりましたが。ですがあの場では必要な行為だったと、その内雨嘉さんにも分かって頂けるはずです」

 

 淀み無い返答に、梅は取りあえず表面上は心配するのを止めた。

 何にせよ、これで梨璃たちに関しては上手く事が運ぶだろう。

 梅たちは一先ず解散することにした。

 

()()()がすぐに来るといいけどな」

 

 憮然とした鶴紗の危惧だけを残して。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「リンリン! 昨日はサンキューな! 梨璃の奴、いつもみたいに戻ってたよ。上手くやったんだろう」

「そうですか。それは重畳」

「どした? 浮かない顔して、何かあったのか?」

「あれから、雨嘉さんが口聞いてくれないんです」

「あっ……。まあ、そういうこともあるさ」

「…………」

「梅の肩で泣くか?」

「はい……」

 

 鶴紗の「それ見たことか」という顔が思い浮かぶようだった。




ラスバレOP、謎の神×梅の真相。

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