第1プラント ツチツチと独りの島
偶然か必然か海の秘宝とも呼ばれるその実を手にすることが出来た。食べれば一生カナヅチが確定するし、どんな能力なのかは食ってみてからのお楽しみ、運要素の強すぎるそれからオレは何故か目が離せず思い切り一口で食い切った。まあ、その後で噂以上のまずさに悶絶したんだがな。
俺が食った実の名前は【ツチツチの実】と言うらしく、名前だけ聞くと自然物に思えるので最強とうたわれる自然系の悪魔の実と感じるかもしれないが、正確には土と同化したり、土の状態が分かったり、土を操作することが出来るという能力だった。因みに土人間ではなく
土への干渉能力は非常に高く、オレは自分の持っている土地で農業を始めた。作物に適した土壌の状態を維持し、害獣や害虫は土を操作して締め出した。耕すのも、水やりも何もかもを能力でやっていた。慣れないうちは操作がおぼつか無いので苦労したが、それでも作物の出来はかなりの物に成った。
作った物を売り、順調に金を稼いでその金で新たな土地や作物を手にして、それの繰り返しで島一番の農家と成り、商船の人たちからも高く買ってもらえている。盗みに入るような人間も時には居るが、そう言った奴らには
本来大規模な農業には人手がいるのだが、自分一人で全てを行っている為、そして管理が徹底されている為に利率が高いので収益も大きいのだ。それだけではなく、新たに買い取った山などで山菜や薬草等の自然の中で育つ物を育ちやすいように環境を整える事で更に商いの手を広げた。
しかし、そうなってくるとどうしても他の農家の人間たちは少しずつ仕事から離れて行った。それもそのはず、自分たちは苦労して自分の手で重労働をこなしてやっとこさ作った作物がたった一人の能力で楽して作られた作物に評価で負けているのだから。
自分が作っていない作物や作れない作物を作れば良いと思うだろうが、自然に作物に適した土壌がなんとなく分かってしまうため、気候さえ合っていればオレはどんな作物でも上手く育てられた。そのためオレの作物以外ではこの島の気候で作る事が出来ない物しか売れなかった。要するに外から持ってこられた物しか売れず、市場を完全に独占してしまったのだ。
そうなると
それもそのはず、どんな商品を持っている商売人だって買う人間がいなくなれば、どんなにいい宿屋だって泊まる人間がいなければ意味が無いのだから、最後まで残っていたのは土地の売買の仲介を行っている業者だったが、オレが遂に
今では月に何度かやってくる商船との取引以外では人との関わりは無くなった。その頃には大抵の事は一人で何でもできる様になっていたため、不便は無かった。家畜を飼い、作物を育て、自給自足の生活で金だけがどんどん貯まっていった。
オレは無くなった穴を埋める様に農地の拡大のため海底から少しずつ土を引き上げて島を拡大していった。元々の島の大地や海底に埋まっている鉱石なども多く手に入ったが利用法も無いし、価値もよく分からないので倉庫に死蔵してある。その他には農家らしく品種改良や珍しい植物を育てたりなど色々と行った。その過程でどうしても気候的に育てられない植物も多かったが色々と収穫はあった。農家だけにってか。
今更ながらこの島は
しかし旅の船は勿論、友好的な海賊も結構多く、そう言った者達は歓迎して作物や家畜の肉、そして作物から作った酒などを振る舞った。この酒も今では商船でそれなりの値段で買ってもらっている人気の商品だ。歓迎だと言ってるのに律儀に金や宝を置いて行く奴らも居るくらいだから、気の良い海賊に出会えると気分が上がった。
そうしてたまにしかない人との出会いを楽しみにしている事に気付いてようやく自分が独りである事を自覚し、それを寂しいと感じていることに気付いた。とは言え人を呼んだところでこの島でやってもらうことなど思いつかなかった。そのまま途方に暮れて、変わらない生活がしばらく続いた。
オレが生まれたこの島は既にオレが知って居たはずの姿を失っており、一回りも二回りも大きくなっていた。あまりにも暇な時に作った土で作った城に街、島を守るための防壁なども存在し、その規模から見てもたった一人だけの国の様だった。これが本当の独裁国家というものだろうか、いやここは島であって国では無い。
この島で作られる食料は質が良く、量も凄いという事で取引をしている商船は数多く居た。最近では他の島の代表や国からの命令で買いに来る船もいるぐらいだった。それを知ってからはお偉いさん相手なら便宜を図っておくべきだろうと少し安くそして多めの量を売っていたら多くのお偉いさんとの繋がりが出来た。
そのお偉いさんの中には特別感謝を示し、こちらに対して下手に出てくる人までいた。何でも国が飢餓に陥っている際にダメもとで打診したら多くの食料を売ってくれたからだと直接出向かれて言われた。飢餓って餓えて人が死んでしまうって事だよな。そんな状態なら大変だろうし言ってくれたらただで食料を援助するぞと伝えたら泣いて頭を下げられた。お付きの人もまるで聖人でも見るかのようで見てきて、少し居心地が悪かった。
何の因果かその国とオレとの間で友誼を結んだ。とりあえず友達みたいな関係に成ったのならと思い、復興の最中なら物資はあった方が良いだろうと食料や酒、肉類なども渡せるだけ渡した。嬉しさと申し訳なさの入り混じった表情で「いつか、いつか必ず返す、この恩を我が国は忘れない」と言われた。風の噂で聞くとその国にオレの銅像が立ち、街の学校で偉人として習うそうだ……もう気にしない事にしよう。
一つの国を救った者として近隣の国々に知れ渡ってからは更に多くの島、多くの国との商談が入ってきた。今まではオレ一人でどうにかしていたがこうなってくると商談に関する仕事が追いつかないので今こそ人を雇うべきでは無いかと思い至った。友誼を結んでいる国王に話すと「要するに優秀な秘書となる人材が欲しいのか」と言われたので頷いた。ちなみにこの国王様はよくうちの島に遊びに……いやいや、訪問に来る。何故かと言うとオレは作物や家畜の世話で島を離れられないからだ。
国王が言うにはうちの国で募集すれば多くの者が働きたいと名乗りだすだろうが、相手取るのが海千山千の者ばかりとなればそれなりの人材でないと捌ききれないだろうと言い「良し、いい案があるので次に遊びに来るまで待ってて欲しい」と言って帰られた。いや、国王本人が遊びに来ていると明言しちゃダメだろう……
そして何とか農地の更なる拡大と並行して商談を裁いていると約束通り国王がやってきた。いつものお付きの人々だけでなく、始めてみる凛々しい綺麗な女性が着いてきていた。挨拶をするとどうやら国王様の娘らしく、なんでもオレに感謝しているらしく仕事を手伝わせて欲しいらしい。国王様からは「嫁いだとでも思って使ってやってくれ」と言われたんだが……深く考えないで手伝いが増えたと考えたと思っておこう。「よろしくお願いします旦那様」と呼んでくる王女なんてオレ知らない。
まあ、とりあえず仕事に関してはマニュ様が来てからかなり効率的になった。マニュ様って誰だって?王女様だよ、文の流れで分かれよ。名前で呼んで欲しいと言われて、様も要らないと言われたがとりあえずこれで呼ばせてくれとお願いしたんだよ。困っているのを感じ取ってくれたのか許してくれたんだが、その結果お互いに様付けで呼び合っている……なんとなくおかしい関係だ。
ああ、そうだ仕事が効率的になった話だったな。正確な収穫量の計算から取引に使える量を割り出したり、商船や貿易船の来る日程を纏めたりしてくれたおかげでロスがだいぶなくなった。今までは必要以上に作って余った分は飼料にしたり、加工して誤魔化していたのだが無駄が無くなった。まあ、加工した物は加工した物で結構なペースで売れていたので必要以上に作る事には変わりないのだが、気持ち的な面で大きく変わった気がする。これでオレは独りでは無いのだから。
本日連続して次の話が投稿されます。
これが1話目です。
修正
『特にこの大海賊時代呼ばれる今の海は海賊が多かった。』を消去。