こんな事になるとは思っていませんでした。現在構成は出来てますが、3までしか書けてないので4日で一度更新が止まります。申し訳ありません。
聖地マリージョアに部屋を置く、世界政府の最高権力者、五老星…彼らは一様に顔を顰めていた。
「まさか、この様な行動に移るとはな……ざっと
「儂らも彼を信用しすぎてしまった。いまや彼は世界に必要な存在となっている」
「
「消す訳にはいかん…それどころか、消せるかどうかも怪しい、今は亡き白ひげが世界を滅ぼす力ならあ奴の力は世界を操る力……」
「だが、アレは世界政府だけでなく、四皇にさえ敵対した。もはや世界の変化など望んでおらん……アレはゼットと同じく破滅を望んでおるのかもしれんな」
「対応しない訳にもいかんが、その場が四皇と言う勢力が集まる場でもある以上出し惜しみは出来ん」
「情報を掴んだ革命軍の動きも怪しい……もし、一堂に会する事があれば、場は混沌と化すぞ」
「加盟国や天竜人は黙らせておけ、文句は言わせん。対処できなければ、世界が滅ぶだけだ」
「だが、広めることもままならないだろう。
「今回の声明を見ても、狙いは世界政府と天竜人じゃからな」
「『
「相手はバベル、四皇、革命軍と言う世界の勢力…もはや決定は覆らん」
「表裏も今回は考えていられん」
「海軍とCP動かせる者は全て動かせ」
「七武海も強制招集をかけろ」
「神への反逆者を捕えるのだ」
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バタバタと走り回る者で溢れる海軍本部、五老星からもたらされた情報と出された指示によって政府の動かせる戦力が新世界にある本部へと集結しつつある。
中には緊急として急ぎで七武海の下まで走らされる者も居る。今回の招集は頂上戦争の際よりも強制力は強いものであると伝えられているため、会議には電伝虫での対応にはなるが全員が参加していた。
「それでは時間に成りましたので始めさせて頂きます。今回の会議の司会進行を任されておりますブランニューです。どうぞよろしくお願い致します。今回の会議は海軍の人間はもちろんの事でございますが、CP、七武海の方々も交えての場となっております。また、全員が集まることは出来ませんので別室とも繋いでいます」
そう言う彼の視線の先には設置された映像転送電伝虫だった。彼の手元には普通の電伝虫もあり、それで他の部屋にも声を届けて居るようだ。
「今回の集まりは2年前の白ひげとの戦争よりも危険度と重要度は高い物と考えて頂いて構いません。規模は過去最大ですが、世間への秘匿性も高い物となっております。そのことを念頭に置いて、これからの議題についてお聞きください」
そう言って設置されているホワイトボードに資料を張り、映像電伝虫を使って何かを映し出した。映し出された物は一つの巨大な国家の姿で、ホワイトボードに張られているのはその国の概要と要人についてだ。
「世界で知らない者は居ないと言われている大地が生み出す自然の国、
世界中の事件と明日関わるかもしれない者達であるからして世情に疎い者と言うのは少ないが、いくら有名とは言え一国家の情報を詳しく知ってる者ばかりでなく、初めて聞いた者はその国の強大さに驚きを表した。
「そして、この国は世界政府及び世界への貢献度も高く、所持している力も強い事から、元々は政府加盟国の1つでしたが、7年前に政府公認の
どちらも個人でありながら世界への影響を与える大人物である。彼らだけで世界の通貨の半分を所持しているのだから、普段世界には総量の半分しか出回っていないという事だ。しかし、彼らと今回の招集になんの関係があるのか、集まった面々は測りかねていた。
「アスカル王は独立国家と認められる以前と同じく、公平な取引を掲げ、世界と関わっておりました。黄金帝テゾーロに関しましても政府の介入は拒んでおりましたが、敵対的な行動は一切ありませんでした。ですが、それは3日前までの話でございます!!」
ホワイトボードにバンッと手を叩きつけて映像を切り替える。そこには世界政府に送られた勝手な宣言としか受け取りようのない、あまりにも一方的な文だった。
【『プラント』、『グラン・テゾーロ』の両国は神殺しの同盟『バベル』と名乗らん】
【『バベル』は全ての関わりを絶ち、世界へ、神へと挑む】
【7日後に我らの手によって神は地に堕ち、神の地も沈まん】
【道を塞ぐ者に容赦することはないと知れ】
【『バベル』代表、プラント・アスカル】
「これだけでは何の意味かは分からず、読み取り方によっては政府や海軍に敵対すると言う暗喩にも思えますが、明言はされておりません。ですが、問題点は世界への影響力の強い2名が宣言通り外部との関係の全てを断絶させたこと!!政府は世界の混乱を避けるために現在この情報を世間に秘匿していますが、状況は風前の灯火といっても過言ではありません」
世界に回る食料の半分以上がせき止められ、世界の50パーセントの資産が出回る事がなくなった。半分とただ言えば簡単だが、世界の半分を彼らは牛耳った上で、それを独占しているのだ。その影響は想像するまでも無い。
「この状況が続けば、世界の経済と食が完全に崩壊し、多くの国や人々が……いえ、世界中の人間の命が危険となるでしょう!!世界政府としてはこの状況が続くことを良しとせず、また、
そこまで一気に言い切ると、酸素を取り入れるためにぜぇぜぇと息を少し荒げている。ここに集められていた者達も世界の危機が訪れていると言う話に驚愕を示す者が多い、CPには冷静に情報を整理する者が、七武海の中には不敵に笑う者も居るが、それらは例外だろう。そんな中、手をあげる将校が一人いた。
「なぜ、捕縛なんだ?」
「理由は2つございます。まず、彼らは先ほども言った通り、犯行を明言していません。さらには独立国家である事から世界政府に彼らを取り締まる事は出来ず、罪を上げるとしても取引を無碍にした契約違反だけです。世界を混乱させたと言う曖昧な罪状で裁くことは難しいと言うのが1つ。もう1つは彼らの世界への影響力の強さも説明しましたが、彼らが居なくなった事で現在の事態となっています。そのため、彼らを殺す事は
非常にややこしい事態である事がその質問と答えで分かった。声明を上げてはいるが、その文面に
「さらに重要な情報があります。『プラント』は建国当初から公平な取引を掲げ、政府、海軍、政府加盟国はもちろん、海賊や非加盟国であろうと取引をしていました。その中には新世界に居座る大海賊、四皇『ビッグマム』『カイドウ』『黒ひげ』『赤髪』の4名とも取引があり、生前には『白ひげ』とも関わりがあった事が認められています」
この時点で更なる大物たちの名前の羅列に会議に参加している物は息をのんだ。それぞれが1勢力として強大な力を誇る海賊、世界の均衡を保つと言う名目で手を出しかねている海賊である。
「事もあろうか『バベル』は彼等との取引も停止させました。その事に四皇も何らかのアクションを取ると考えられ、『赤髪』を除く3人に至っては
会議場はシーンと静まり返った。世界に散らばる全勢力の人間が集まろうとしている。今回の問題である『バベル』に並び、『四皇』、『七武海』、『海軍』の3大勢力と『革命軍』という存在まで一堂に会すると言うのだから、その場は混沌と、地獄と化すことが理解できてしまった。
「我々、世界政府、海軍、七武海の目的を纏めさせて頂くと『バベルの計画を未然に阻止し、四皇や革命軍よりも先にアスカル、テゾーロの両名を捕縛する』です!!」
2年前よりも力は増したとは言われている海軍ではあるが、『白ひげ』と言う年老いた伝説相手に大きな打撃を受けた事を忘れてはいけない。今度は
「それに伴い、今回はかなり特殊な形で命令が出されています。『阻止と確保に重きを置き、向こうから敵対してこない限りはこちらも敵対するな』という物です。これは世界政府より出された命令です」
これには会議室が先ほどと打って変わって騒めきだした。海軍や政府の人間に海賊や革命軍を前にして、手を出してこない限り敵対するなと言うのだ。元帥であり過激派として有名なサカズキがよくそれを承認したなと多くの者が思った。
「彼らの声明には7日後と記載されており、既に3日経っておりますが、不用意に事を構えるのは危険と判断し、戦力を整えてから赴く必要があります。七武海の招集なども含めて、作戦の決行は2日後となりました。現在確認中の『バベル』の正確な位置などを含め、状況の変化の次第によってそちらも変える可能性はありますが、それまでに情報の徹底と共に準備を行ってください。私からは以上です」
会議室ではこの後で質問が飛び交ったり、本部内は作戦決行までの準備に追われたりする者で溢れた。七武海たちは全員参加を表明したが、皆が皆、好きにやらせてもらうと言い、2日後に合わせる事だけを厳命させるので精一杯であったが、これで政府側の戦力は微力だが確保出来た。
世界の命運が掛かっていると言っても全く過言ではない。そんな戦いの始まりに世界がうねりを見せていく、不穏な空気に空も海もどこか澱んで見えた。
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グランドライン後半の海、新世界。ゴムゴムの実を食べてゴム人間となった男、モンキー・D・ルフィの海賊船、サウザンド・サニー号は順調な航海を続けていた。現在は目指している島が近く比較的安定した気候のおかげもあり、皆が比較的のんびりと過ごせていた。
「なぁー、ナミまだ着かないのか?」
「そうねぇ、気候は安定してきてるからもうすぐよ、ちょっと大人しく待ってなさい」
麦わらの一味は新世界のとある島で4年に1度行われる世界最大の食のイベント『ワールド・バイキング』開催の噂を聞きつけ、エターナルポースを用いて開催地を目指していた。
「ナミさんを困らすんじゃねぇ。これでも食ってろ!ナミさ~ん、これ作ってみたスープ何だけど如何?」
「ありがとう、貰うわ。そう言えば今回は食に関わるイベントらしいけど、サンジ君も気になったりするの?」
「あ、いや、そうだなぁ…料理人としては、どうしてもな」
『ワールド・バイキング』と言うのは食の祭典だ。1料理人として、世界中から集まる食材や料理には興味をそそられるものであるのだろうが、それ以上にどこかソワソワしている様子が見られた。
「ふふふ、『ワールド・バイキング』には多くの料理人も集まるから、料理人向けのイベントも多いのよ。料理コンテストやスペースを借りて出店を出したり、このスープもそれに合わせてだと思ったけど?」
「ロビンちゃんには敵わねぇな……最大のイベントともなれば料理人にとっても憧れの場所だ。そこで出すとなると生半可な物じゃダメだからな。向こうで手に入る食材もあるだろうが、ベースと言うか作る物の傾向は今の内から決めておこうと思ってたんだ」
照れくさそうに言うサンジだが、世界中から集まる料理人に負ける気は無く、スープを飲んだナミやロビンからの感想を聞いて、他のメニューや味付けの工夫などを纏めていく。
「ふぅーん、サンジのメシはどれもうめぇからな大丈夫だろ」
「そうそう、って言うかいい香りだな。俺らの分はねえのか?」
「向こうに置いてある。好きによそって飲め」
男と女で態度に差が出るのはいつもの事だ。それとルフィを筆頭に細かい感想などを望める様な連中じゃないので、聞きに行くことも無い。しかし、美味いと言われて多少ではあるが表情は緩んでいた。その様子を聞きながらも関係ないと言わんばかりに上で訓練と見張りを続けているゾロ、ふと船の進路の先に島が見えた。
「遠くに島が見えるが、アレが目的地か?」
「何!?島が見えたのか、ナミ!!」
「いま確認するわ。うん、エターナルポースの針は確かにあの島を指してるわ。あそこが『ワールド・バイキング』の開催地、『フルコースアイランド』よ!!」
いくつもの島で構成され、島同士が大きな橋でつながれているこの島は、世界最大の食料生産国『プラント』の手によって作られた人工島で、それぞれの島でメインやオードブルなどの種類でだいたいが別れている。ドリンク専門の島もあったはずだ。
「お前ら!!島が見えたぞ!!上陸準備だ!!」
「「「おおー!!」」」
島に着いたと言う声は全員に届き、それぞれが島を楽しむための準備を始めた。ルフィやウソップ、チョッパー、ブルックなどのお調子者組は料理を食べる気満々で、ナミは祭りを歩くための衣服を選び、ロビンもどこか楽しそうで、ゾロは酒はあるかなどと考え、フランキーもコーラはあるのかなどと考えている。サンジは調理の準備を再度整えていた。しかし、島に近づくにつれてその雰囲気のおかしさに気付いた。
「なんか、祭りって雰囲気じゃねえな」
「ああ、活気が感じられねえ。何かあったのか?」
4年に1度の大きな祭りの開催地だと言うのに、祭りらしい音楽も無ければ、食べ物の匂いなんか全然しない。ただただ静寂が島を包み込んでいた。取り合えず島に上陸してみたルフィたちだが人が全然見当たらない。
「誰も居ねえのか?」
「いや、人の匂いは向こうからする」
「んー、人が集まってるな。よし、そこに向かうぞ」
ルフィはチョッパーの鼻と見聞色の覇気を頼りにそっちに突っ走って行った。2人をを追いかけるようにウソップ、サンジ、ナミの3人が続いた。情報収集にはそれだけで十分だろうと、フランキーとブルックは船番として残った。ゾロも船に戻ろうとしたが、ロビンが遠くを見ているのを見て、声をかける。
「何を見てんだ?」
「いえ、能力で向こうの島を調べてたの」
「ほぉー、何か分かったのか」
「何の匂いもしない事が分かったわ」
「匂い?」
何が言いたいのかよく分からないが、確かに食い物の祭りがあるって言うのに食べ物の匂いが一切しないと言うのはおかしいと思うが、それは上陸の前から気づいていた事だろうと首をかしげるゾロ。
「調べてたのは料理の匂いでは無く、食材の匂い。フルコースアイランドはプラントと直接つながっている。プラントの拠点、支部の様な扱いで、料理以前に食材が湧き出る場所がいくつもあるはずなの」
「それなのに、それすら無いって事はそのプラントって言う国の方で何かがあったって事か?」
「まだ、分からないけど。可能性としては十分あり得るわ」
1つだけ確かな事があるとすれば、このフルコースアイランドとプラントの繋がりが切れてると言う事、それだけね。と呟いてロビンも船に戻っていった。プラントについて語る彼女の様子に違和感を覚えたが、特に気にせずにゾロもサニー号に戻った。
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フルコースアイランドの中心地、本来であればありとあらゆる料理が集まるバイキングエリアなのだが、それらしい特徴は欠片も無い。そして、向かった先では何やら騒いでいる人だかりが出来ていた。
「なんで食料が届かないんだ!!」
「開催日まで時間は無いんだぞ!」
「せっかく来たのにどうなってんだ!!」
なにやらトラブルだろうかと、近くにいた人を捕まえて事情を聴くことにした。ルフィは適当に腕を伸ばして、人だかりの外側にいる人間を1人を引っ張った。
「うわぁ、何なんだ君は!?」
「何やってんだ。コレ」
「あんたは黙ってなさい。私たちは祭りの話を聞いてこの島に来たんだけど、この騒ぎはどうなってるの?祭りの気配も何も無いし」
まともに質問が出来ないルフィに変わり、ナミが事情を聴こうと男に話しかけた。ようやく、落ち着いたのか口を開いた男から飛び出てきた無いように全員が耳を疑った。
「「「「「食材が届かない!?」」」」」
「ああ、そうさ。祭り用の食材はもちろん、この島の人間用の食材も3日前からばったりさ。島の人間は常に湧いてくる食料を毎日とって食べてたから、パニックになってな。備蓄も少なくて衰弱してる者も居るみたいだぜ。そこのは祭りに出店予定だった奴らと観光に来た奴らだ。この島の代表も何が起きてるのか分からないって言うんだが、殆どが納得いかずに騒いでるんだ。俺は事態を聞いて呆然としてたんだが、お前に引っ張られたんだ」
「なんてこった。まさか祭りが中止の危機だなんて……」
「サンジ君……」
「えー、じゃあ食い物はねえのか?」
「むしろ、この島の人間が飢えてるぐらいだ。ある訳もないだろ。それじゃ、俺はあそこの塊で騒いでる知り合いを引きずり出しに行くからな。どうせ祭りは開かれそうにないし、食料の補給もままならないから早く帰らねえと……お前らも気をつけろよ」
そう言って、男は人だかりの方に向かって行った。たくさん食べる気で来ていたのに、何も食べれないと知るやルフィはつまらなそうにしていた。サンジは祭りが開かれない事に少し落ち込んでいたが、男の言葉を思い返し、どこかに歩いて行った。
「サンジ!どこ行くんだ!?」
「サンジ、何しに行ってんだろう」
「とりあえず、船に戻りましょう。良いわねルフィ」
「ん-、メシもねえし、戻るか」
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この島は祭り以外の時も人が住む居住区があり、その街には当然人が住んでいる。食料が湧き出るのが当たり前なこの島の人間が島の急激な変化についていく事ができず、弱っている者が多いのか人の姿が見つからない。やるせない気持ちを抱きながらも煙草に火を点けていると子供が近くに寄ってきていた。
「なあ、兄ちゃん。なんか食べ物持ってないか?」
食料が届かなくなって3日、備蓄も十分とは言えないがあるとは聞いたので、やせ細ってはいないがどこか元気が無く、ふらついている。
「あんま食えてねえのか?」
「大人たちが騒ぎ始めてから、1日に1回少しだけ配られる食べ物だけだ」
子どもの口から出たのは1日1食すらまともに食えてないと言う事実だ。食の祭典ワールド・バイキング開催地の名が泣くな。子供の方に向き直り、一つ質問をする。
「そうか……今も腹減ってるか?」
「うん」
「よし、少し待ってろ」
返ってきて当たり前な答えに、点けたばかりのタバコの火を消し、サンジは子供の頭を撫でると、船を止めていた方向へと走り出した。食えない、腹が減った、そんな思いをする人間を前に動かないのは料理人じゃねぇと、心を震わせた。
足には自信を持っているサンジの走る速度は速く、サニー号までは10分も掛からずにたどり着いた。何やら考え込んでいるサンジに、何処に行ってたのかとか以前にどうしたんだと疑問が湧く。
「ナミさん、この後で行く予定だった島までどれくらいかかるか教えてくれ!!」
「えっ、予定していた航路から少し離れてるからクードバーストを多用しても2週間から3週間はかかるわよ」
「ルフィ、この船の食料のストックが許すだけオレに使わせてくれ、頼む」
土下座にでも移行しそうな勢いで頼み込んで来たサンジに対し、ルフィの答えは他の面々には直ぐに予想が付いた。彼の顔はどこか楽しそうに笑ってたからだ。
「シシシ、料理の事は俺には分かんねぇからな。サンジお前に任せる」
「はぁ、海賊が慈善事業ね。使った分は食費とは別に、サンジ君のお小遣いから引くわよ」
「ヨホホホホ、運び込みや配膳などなんでもやりますよ」
「少しは食べてるみたいだけど栄養失調用の薬を用意しとこう。栄養が偏ってる可能性も考えて栄養補助の薬も、後は食べれてないなら弱ってるだろうから胃腸の薬も念のため」
「この辺は今はしないけど料理の匂い、それと特殊な大地からの栄養で海の生物も多いはずよ。3日前からなら、魚や海獣はまだ近海に居るはずよ」
「ちっ、船の食料使って俺達が餓えたらどうすんだか、クソコック」
「海で狩りと行くか、海中探索にシャークサブマージ3号を出すか?」
「よーし、足りない分は俺達に任せとけ」
「お前ら……よし、とりあえず鍋と火さえあれば良い。食料と一緒に運ぶから手伝ってくれ、お前らちゃんと食えるもん取って来いよ」
そうして、海からの食料調達の班と料理場の準備の班に分かれて作業が進められた。サンジは、カマバッカ王国で培ってきた料理の技術を用いて、疲弊している住民向けの料理作りに取り掛かった。
「食ってないと体温も下がるからな。こういった時は心も体もあったまるスープが良い」
だしはこれで良いかと、次の段階へと進めようとしたところで、ルフィたち食料調達班が獲物を持って帰って来た。3頭の海獣の肉、スタミナをつけるには丁度いいが、弱ってる住民の事を考え消化しやすいようひと手間入れていく。
大鍋で大量に作られる料理から漂う匂いは、段々と街を包み込んでいき、人を引き寄せ始めた。居住区で作っていたので、住民たちが多いが、中には外からやってきた連中、料理人も大勢いた。
「君は何をやっているんだ」
「ああ?腹空かせた奴に食わせるのが料理人の仕事だろうが」
「君たちも外から来たんだろう?船旅で食料の貯えが少ないのは危ないぞ」
「それに、こんな炊き出しをしたところで、解決にはならないぜ」
サンジの行動を馬鹿にしていると言う訳では無い。むしろ、心配していると言う思いは感じられる。これがただの一時しのぎな事はサンジも分かっている。だけど、そんなことは……
「関係ねえな。食いたい奴が居れば食わせてやれば良い、腹減った奴ほったらかして何が料理人だ。このまま島を出て行ったとなれば俺が自分を許せねぇんだよ!!」
「!?」
サンジの叫びは炊き出しの会場の周辺に集まっていた者達全員に届いた。解決なんか考えちゃいない、危険なんて百も承知、これは料理人としての信念の問題だ。
「……おい、うちの船の保存食は十分だったろ。日持ちしないものここで処分してくぞ」
「はい!!今すぐ持ってきます」
「粉だけならいくらかあるし、何かしら作れるか」
「大物の調理道具も街にあるから持って来るぞ」
「お前ら帰りは湧かした水だけだ。酒樽全部降ろすぞ」
「そっちに調理場造るぞ器用な奴誰か手伝え」
「おーい!参加者は出せる物をリストに書いてけ」
「肉だけなら結構あるんだな、これが」
「おい、お前ら釣り竿持ってる奴らは港にこい」
「酒だけじゃしょうがないだろ。ジュースが少しあったはずだ」
「オーライオーライ、こっちだこっち」
祭りとは比べ物にならないほどに小さな騒ぎだが、静まり返っていた街に光が戻ってきたかのように感じた。食料を出し合い、それぞれが振る舞える物を振る舞おうと奔走しだした。
「動くなら最初から動けよな。ったく、『海獣の特製スープ』の完成だ。この騒ぎだと、食器も足りるのか?」
「そこいら辺も仕切ってる奴が居るから大丈夫そうだ。それに住民も皿は持ってるだろ」
「それもそうだな。スープ出来たから一列に並べ、住民優先だ。たくさん作ってあるから喧嘩するんじゃねえぞ」
街に響いた声に住民たちは慌てて飛び出して、サンジの前に並んだ。注がれたスープの香りだけでも幸せな気分になり、口にしたものは感謝の言葉を送った。有志の奴らが弱ってて動けない人の所に食事を送り、チョッパーや他の船の医者も同行し、見て回った。
半日近く続いた小さな宴は、人々の心を癒して幕を引いた。サンジ達は片付けに加わろうとしたら、周りの参加者たちから、自前の物を回収したらもう行ってくれて良いと告げられた。
「お前の言葉を聞いて、場が動いたんだ。これ位させてくれ」
「あんちゃんは最高の料理人だぜ」
この場にいる者達や炊き出しを貰った者たちから賞賛の言葉を浴びせられたサンジは礼を言って足早にその場を離れた。感謝されるのは悪くないが、あそこまで注目を浴びると流石に気恥ずかしい思いの方が強かったのだ。
「さすが、サンジのめしだ。それに他の奴らの料理も美味かった」
「あの状況で他の所からも食ってたのかよ」
「お前は少し自重しろ」
「そんな事コイツに出来るわけないでしょ」
「「「うんうん」」」
「なんだぁお前ら!!やんのか!!」
じゃれ合いの様な喧嘩をしながら、暗い雰囲気の晴れた街並みを通り抜けていく。とは言ってもこれ以上出来る事は無く、原因が分からない以上解決してやることも出来ない。
「プラントって所に行けば良いんじゃないか?」
「それは難しいわ、ルフィ」
「何でだ?ロビン」
「プラントは巨大な食料生産国として有名だけどもう一つ、機動要塞国家と呼ばれる、海を自由に航海する国でもあるの、その航路は世界経済新聞に常に公表されている……はずだった」
そう言ってロビンが差し出した新聞をみんなで見るが、そんなことが掛かれている場所はなく、記事の隙間とかもよく見たが、無い物は無い。
「こっちは1週間以上前の物よ。ほら、ここに」
「あら、本当ね『プラント王国航路特別公開』って記事になってる」
「プラントの国王であるアスカルは世界経済新聞の社長モルガンズと直接契約しているはずなのにその状態が続いてるわ。重要な取引相手はプラントの住人のビブルカードを渡されてるはずだけど、まず入手は不可能よ」
常に居場所が違っていて、更にはその情報も無いとなれば流石のナミでもたどり着くことは出来ない。プラントと直接取引を行っているような大物の知り合いなんて無法者である海賊に居るわけもないので、完全なお手上げである。だがそれだけで諦めるルフィでは無い。
「なあ、どうにかしていけないのかそのプラントに」
「何の指針も無いのに行けるわけないでしょう」
「あたし、知ってるよ」
「ほら、こいつが知ってるって言ってるぞ」
「場所を知ってるならどうにか……ってルフィちょっと待ちなさい」
「今の声は誰だ?」
「ナチュラルに混じってきたがお前はなんなんだ?」
「ん?そう言えばお前誰だ?」
「「「おい!!」」」
茶髪で少しはね気味の髪をした少女がいつの間にか会話に入り込んでいた。会話の流れ的にプラントに関わる何かを知ってると言う事なのだろうか?ルフィは特に気にせずに引きよせて指をさしていたが、周りに指摘されてからようやく顔を見合わせて、言い放った誰だと言う言葉に全員が呆れた視線を送る。
「炊き出しの主催者って聞いたから後を着けてきたの、アタシは全部知ってるんだ。プラントは全部の取引を停止したの、世界政府や海軍、加盟国、海賊、ありとあらゆる取引を取りやめたの。この島の騒動はその一端でしかないの」
「すんなりと信じた訳じゃないけど、それが本当だとしたら世界がヤバい事に成るわよ!?」
「どうしてだナミ?」
「プラントってのは世界中の市場に回る食材の半分以上を掌握しているの、そんな国が取引を全部取りやめたら……」
「「「やめたら?」」」
「世界中で飢饉が発生する。そして世界中で多くの人が死ぬ事に成る」
「それだけじゃないわ。食料が手に入らないとなれば、今ある物の奪い合いになる」
ナミの分かりやすい説明とロビンの捕捉によってどういった事態に陥るのか理解した面々は顔を顰めたり、青くする。
「なるほど、世界中で戦争の始まりってわけか」
「そりゃ、やべぇぞ!?」
「だけど、なんでお前がそんなことを知ってんだ?」
本当と信じた訳では無いが、嘘として話すには突拍子も無さすぎる。とりあえずは少女の話を本当だと仮定して進めて行く事にした。
「アタシはプラント…ううん、『バベル』から逃げてきたの、だから少しだけど計画も知ってるの」
「「「「「「「「「バベル?」」」」」」」」」
「うん、『プラント』と『グラン・テゾーロ』が手を組んだ同盟の名前」
「っ!これまた大物の名前が出てきたわね」
「グラン・テゾーロってあの『黄金帝』と呼ばれるギルド・テゾーロの!?」
「そう、
「そこに行けば食い物が手に入るんだな?よし、行くぞ!!お前ら」
「ちょっと、待ちなさいルフィ、彼女の話が本当でも嘘でも問題がある。むしろ今回に限っては嘘であって欲しいぐらいの相手よ」
少女の話を聞くと、特に理解もしてないが黒幕が居るという事はそこに食べ物もあるだろうという楽観的な思考で船を出す事を決めたが、それをナミが制する。
「ルフィ、相手は『大地の王』に『黄金帝』などと呼ばれるほどのヤバい奴らなの。片や手を出してはいけない王、片や新世界の怪物、そんな奴らの同盟ってだけでヤバいのよ」
「おいおい、なんか不穏な単語聞こえてきたぞ!?」
「なんか、やべぇのか!?」
「黄金帝の戦力は未知数だけど、プラントの正式な国民は世界最少の超少数精鋭、私が聞いたことがある人物だけでも国王を入れて能力者は4人『アスカル』『モーダス』『ホーニィ』『モル』、アスカル以外は小人族よ。それと戦力としては魚巨人の『ピアス』諜報向きの『サイフォ』が居たはずよ」
「っ!?お姉さん、なんでそんなに詳しいの?プラントの情報って外にはあんまり知られてないのに……」
すらすらと飛び出してくる情報に一番驚いたのは目の前の少女であるが、仲間たちもなぜそこまで知って居るのかと疑問の表情を浮かべている。
「20年以上前、私の故郷オハラで国王であるアスカルと会ってるのよ。それで色々と本人から聞かせてもらったのよ」
「『大地の王』と知り合いなのかよ、ロビン!!」
「20年以上前って、確かあの」
「そうね、バスターコールの時にも彼は立ち会っていた。五老星相手に弁護もしてくれたし、逃亡生活だった頃に何度かプラントの拠点に立ち寄らせて貰った事もあるわ」
過去についてそれなりに話してくれたロビンだが、それでも全部を事細かに伝えている訳では無い。とは言えそれほどにロビンと関わりがある人物の話題がこれまで一度も出てないのは何故なのか疑問に思ったが、とりあえずは情報を聞くために話を進めた。
「おいおい、結構な恩人じゃねえか」
「アスカルって言う国王は何でオハラに来てたんだ?」
「あの時は王になって1年目と言ってて、国の為に色々な事を勉強しに来たって言ってたわ。博士たちにお土産を持ってきて、案内した私に果物や野菜の砂糖漬けをくれたわ」
ロビンの説明を聞き少女は情報の出所について納得したようでなるほどと呟きながら頷いていた。
「そう、でもプラントには能力者は1人増えてる。『ラトニー』人間の女性だけど『モル』よりも高額の賞金首でもある。そして強さだけなら彼女はたぶん誰よりも強い!!」
それを聞いたメンバー達はそれぞれ違った反応を示す、少女がそれだけ豪語する強大な存在への恐怖、賞金首が国の主要なメンバーに居る事への驚き、強者の存在に面白そうと笑うなどなど……
「国のメンバーに賞金首が2人もいるのか、金額は?」
「モルは『侵食者 320,000,000ベリー』だよ」
「へぇ、国の精鋭メンバーの割には低いな」
「いやいや、ちょっと待て、億越えな時点でやべぇからな!?」
どうやら懸賞金に対する認識が大きく違うようなのですかさずツッコミを入れるウソップ、そこに更に恐怖を煽る情報が追加される。
「ううん、彼女は形だけ手配されてるの。顔も情報も海軍は把握してないし、その金額は初頭手配時から変化してないだけなの」
「初頭手配で3億越え!?」
「何をやったんだぁ、その小人族は?」
金額で言えばエニエスロビーの後のルフィの賞金より少し上ぐらいだが、それが初頭手配であるとなれば話は変わる。一発目でそれだけの金額がつけられることをしたことになるのだから。
「侵食者の名前は知ってるわ。確か、世界政府加盟国がある島も含めて島22個を壊滅させたとか」
「やってる事の規模が桁違いなんだが!?」
「島ってあの島か!?」
「他にどんな島があるってんだよ」
話しの規模についていけないウソップとチョッパー、ナミも顔を青くしているし、他のメンバーも一体どんな奴なのかと思案顔になっている。
「『ラトニー』って言う方は?」
「『暴食のラトニー 2,666,000,000ベリー』だよ」
「26億6千万!?」
「記憶が確かであれば『黒ひげ』よりも懸賞金は上ね」
「四皇以上って嘘だろ……そこに黄金帝とその部下も加わるんだろ。無理だ無理、ルフィ今回はよそうぜ。俺達の手には余る事件だ。断言できる!!」
四皇よりも懸賞金が高いと言う事実を聞いてウソップが全力でやめる様に進言する。その際に黄金帝の部下を引き合いに出したのはまずかった。
「彼の部下たちは大丈夫なの」
「大丈夫って?」
「黄金帝の部下たちは今回の件にどちらかと言うと難色を示して、現在は牢に閉じ込められてるの。アタシの逃亡を助けてくれたのもその人たちなの」
「同盟つっても一枚岩じゃねぇってことか」
「それなら崩しようもあるか?」
「ねえよ!!『黒ひげ』以上の奴を従えてる奴と敵対って洒落になんねえぞ」
「一番強いのは、お…うさまじゃなくて、ラトニーだよ」
「へっ?トップの奴が一番強いんじゃねえのかよ」
それは結構意外であった。人柄について行くという者もいるが、四皇を超える賞金首がそう言った物だけで着いて行くとは思えないので、てっきり実力で従わせているのだと考えていた。
「うん、準備さえ出来て、真正面からの勝負なら王様や黄金帝よりも全然強いし、なんなら同盟の全員と戦っても勝てるくらい強いよ!!ちなみにラトニーが居ない頃にプラントが四皇のビッグマムとその船団と戦った事があるけどその時の勝負には勝ったよ」
「中止決定!!」
「流石に無理よルフィ!!」
「ルフィ、死んでる奴はオレじゃ治せないからな!!」
臆病トリオが一目散にそこに行くと言う選択肢を除外した。他のメンバーの顔も先ほどより渋くなっている。プラントはビッグマムに勝てる。ラトニーはそのプラントのメンバーにグラン・テゾーロのメンバーが足されても勝てるときた。挑んでもまず勝負になる訳がない。
「ラトニーは
「ちょっとまって四皇に海軍に革命軍……意味が分からないんだけど」
「プラントが全ての相手と取引を辞めたって言ったでしょ。その中には四皇やその関係者も大勢いるの。特にビッグマムとカイドウは確実に本人が来るだろうって話してた。それに世界政府は現状をどうにかするために海軍を動かすしかないし、革命軍も動くだろうって」
「そんな混戦状態の場所に向かえばお陀仏だろうな」
「勢力同士のぶつかり合い、世界が危ない…なんて一言で済ませられねぇな」
「……行く方法はあるのか?」
説明を理解して無いのかと問いただしたいぐらいに意思を曲げないルフィ。とは言っても一味の頭は紛れもなくルフィである。彼の言葉に全員が注目する。
「うん、ビブルカードがあるからいけるよ」
「どんな奴らが居るとかは関係ねぇよ。バベルとやらに乗り込むぞお前ら!!」
「四皇、海軍、革命軍…心配が要らねえのは革命軍だけか?」
「怖いなら一人で残っても良いんだぞ」
「誰が怖いつったか、えぇ!!下ろすぞ!クソマリモ!!」
「サニーはどんな所でもスーパー負けねぇ!!」
「ヨホホホ、背筋が凍る思いですね。私凍る背筋無いんですけど。ヨホホホホホホ」
「ドクター、もしかしたらオレそっちに行くよ」
「あ、諦めるなチョッパー、お、俺様、勇敢なる海の戦士きゃ、っきゃ、キャプテンウソップ様がついてる、ぞ」
「声も足も震えてるわよ、ウソップ」
「はあぁ、こうなるなんて……行く方法があるなら連れてくわよ。まったく、その代わりヤバかったらすぐ逃げるからね。わかった、ルフィ?」
行くと決めたら行くのがルフィで船長の行きたい場所に船を進めるのが航海士である。方法が無ければ否定し続けられたのにと嘆きつつも出向の準備を整える。
「バベルに本当に行くの?」
「おう!!お前も一緒に来いよ。えっと、そういやお前なんて言うんだ」
「アタシはグレーヌ、よろしく」
「おう、オレはルフィだ。よろしくな」
こうして、麦わらの一味は情報提供者であるグレーヌを連れて、世界最大の紛争地帯となる『バベル』へと針路を定めた。
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金ピカで目が痛くなるような牢の中に閉じ込められている者達、彼らは直接逆らった訳では無く、少し意見をしただけで相いれないと牢に落とされた者達だ。この場所が金だけで造られているのはせめてもの温情だろうか。
「するるる、世界を巻き込む事に難色を示しただけで、もう2週間くらいこのままです」
「あの少女は生きてるだろうか?」
「ありったけの幸運を預けたから生きてるはずよ。私も逃げたかったけど、きっと
「とは言ってもいつまでこのままってわけにもいかないでしょ」
タナカさん、ダイス、バカラ、カリーナ、更に隣りの牢の全員で協力してキーとなりえる少女を外に出すことが出来たが、バベルの外は海である能力者でもある彼女、手はあると言っていたが、どうなったかまでは分かる訳も無い。隣りからもやるせない気持ちからかため息が聞こえる。
「あの男を責める事は決して出来んが、あの小娘が救いとなってくれればと、信じるのも勝手が過ぎるか」
「何も出来ないのに関係ない所で悩んだところで変わりはしないよ。ま、私もあんたも、生きてるだけめっけもんだろうさ」
アスカルの言葉通りであれば、本来マリージョアにいる二人、イスト聖とクチーナも攻撃に巻き込まれるのは確実だった。許されはしないが、
「それでも、契約を破った我はあの時、裁かれるべきだったであろうな」
「アレは馬鹿の仕業だ。あんたは
「だが、
10年前のあの日、アレが全ての引き金であった。それによって今があり、その一番の被害者である少女がアスカルを止めるべき動いている。一つ抜け出した小さな歯車が、何を引き寄せるか、その結果がせめて救いとなる事を祈るばかりだ。
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大地と黄金の塔『バベル』の最上階、土の壁と黄金の床があるだけの殺風景な部屋、そこにそれぞれが能力で作り出した椅子に座っている。
「決行から2週間、宣戦布告から
「時ってのは無情にも過ぎ行くものだな」
何をしようとも、何も出来なくても、変わらずに進み続ける時間。時代の流れに寄り添いそこにあり続ける大地と時が過ぎても失われない輝きを持つ黄金は似て非なる物なのかもしれない。
「お前の部下には悪い事をしたな」
「……いや、良いさ。万が一が許されねぇ。少しでも乗り気じゃない場合は切るって言うのが同盟の条件だからな」
今更過ぎる言葉に何も無いように振る舞って返した。それに『これはグラン・テゾーロの為でなく、俺の復讐でしかない』などとテゾーロは考えているためむしろこれで良いと考えている。
「それに、そっちは
「言うな、まんまと逃げられたんだからな」
そう言いながら手元の紙を恨みがましい目で見つめる。牢に入れた殆どがテゾーロの部下だったため、確かめる意味合いもあり、牢の周りは黄金で造らせ、自分は関与しないでおいたのだがそれが仇となった。テゾーロ自身の裏切りで無いのがむしろ面倒な事態となっており、死んでいない事を素直に喜べない現状を早く終わらせてしまおうと立ち上がる。
「ビブルカード、能力者のガキが海に落ちて生き残るとは……あいつらで共謀したか?」
「どちらにせよ、全て終わってから回収するだけだ。さて、始めよう」
宣戦布告前からも準備はしていたが、ようやく塔の準備が完了した。塔の中心に立つとその身に宿る悪魔の力を振るう。やはり深くまで力を伝えるには火山を利用した方が良かったようで『ピリオ島』を選んだことは正解だったとアスカルは静かに笑う。
「『
星の中心にまで届けた力は4つの海を隔てるレッドラインへ干渉し、その高さを少しずつ上げていった。元よりかなりの高さにある聖地マリージョアであるが、これにより何者の干渉も出来ない場所となり、天竜人を封じ込めた事になる。
「これで、他の海どころか楽園からも来ることは叶わない。秘密裏に進めていた政府と海軍も万全とはいかないだろう。そして、あの高さでは天竜人は降りる事は出来ない」
「魚人島も塞いだのか?」
「船が通れなくなってるぐらいだ。彼らも政府の被害者、手荒い真似はしない」
世界をぐるりと一周する巨大な大陸へと干渉したアスカルには多少の疲労が見えた。全ての拠点を放棄し、分けていた力を集め、覚醒の域に至っているこの男でも厳しい物があったかと、テゾーロは笑う。しかし、それはこの状況下においても
「これからは詰めの作業に入る。後は任せたからな」
「ああ、にこの地には誰も近づかせん」
壊れた者同士、同じ恨みを抱く同志として、神々の終わりを告げるために動き出す。これから先の3日間は動けないアスカルに代わり、この地を守る必要がある。部屋を後にして、アスカルの部下の所に顔を出すテゾーロ。
「テゾーロ殿レス!!」
「アスカル様はどうなったレス?」
「こっちは作戦通り待機中レス」
「さっきの揺れ、本格的に始まったな」
「アタシもそろそろ海に待機しとこうか?」
「許されてるからもう行っても良いよね?ボクもう待ちきれないよ!!」
一癖も二癖もある者ばかりだが、全員が世界の中でも上位に入る実力者。そして、アスカルを慕う者、アスカルと同じく怒りを宿す者、ただついて行く者、思いは違えど向かう方向が同じな『プラント』に強さを感じる。既に細かい指示は渡されている。テゾーロは彼らに頷きだけを返し、何も言わずに自分の持ち場に向かった。
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「ちっ、何でわしらが先行せにゃいけないんだか、まったく」
『全部隊の合流が不可能になり、バベルの拠点がエンドポイントの一つであるピリオ島だからだ!!無駄に電伝虫を繋いでないで部下の指揮をとれ!!』
バベルの攻撃と言えるのか分からないが、レッドラインへの干渉によるすべての海同士の隔離、情報の伝達は現状何とかなっているが、人の行き来は完全に封じられている。秘匿されているエンドポイントの占拠に対しても問題視され、先だって動ける人間が向かわされた。
『サカズキは上とのやり取りで手一杯、緑牛は出向いていたマリージョアの方に取り掛かり、今回ばかりは黙って従え』
本部と新世界側の支部の人員を集めるため、また新世界側に来れていない七武海を呼び集めるためにも人員は必要で先行して来ているのは『ガープ』『センゴク』『おつる』などと古株ばかりである。
「ふん、今回の事件だって政府の尻拭いだろうに」
「それはどういうことですかガープ中将?」
電伝虫が切れると同時に嫌な物を語るかのように政府への悪態をつく中将に対して、今回の作戦に同行しているコビーとヘルメッポの2名が尋ねる。
「あー、他に言うなよ。今回の件は世界政府が仕出かしたことへの復讐じゃろう。テゾーロは知らんが、わしとアスカルは建国時からの付き合いがある友人みたいな間柄だった。だからこそ、当時のアスカルの様子を思えば、ああそうか、と現状に納得がいくくらいだ」
「復讐と言いますと、世界政府にですか?」
「正確には天竜人とそれを守る世界政府にと言ったところだろう。あの文に政府の文字が無いように、政府が潰れるのはついでくらいの考えだろうな」
「世界最大の組織を潰すのがついでだって言うのかよ!?」
「それはあまりにもスケールが大きすぎます。政府、と言うより大地の王アスカルは天竜人に何をされたんですか?」
世界政府をどうにかしたいのではなく、その結果世界政府がどうにかなると言う、意味通り世界を巻き込んだ復讐に今回の任務の大きさを再認識する。
「あいつの妻、マニュ王妃をくだらない腹いせで殺されたんじゃ。それも、理由は後見になっていたイスト聖と言う変わり者の天竜人への嫌がらせが目的だった。アスカルは抗議を行ったし、イスト聖も訴えを出したが、変わり者を嫌う天竜人の連名でその殺害が進められた事が分かり、政府は形だけの謝罪で全てを納める様にアスカルに伝えた」
「そんな事が!?」
「アスカルは残された娘を育てながら国の運営に身をやつしておった。レヴェリーにも呼ばれれば行き、政府との取引も続けておったから、上の連中は許されたとでも都合良く考えてたんだろう。その結果がこれじゃ……政府も政府だが、天竜人なんかのために働くのが正義なのか甚だ疑問だな」
いうだけ言うとガープは何かあったら呼べとだけ伝えて船内に戻って行った。残された二人はまだ見ぬ、首謀者への感情をしまい込み、仕事に戻った。周囲の警戒を行いながらも船を進めていると、数時間後に二人のよく知っている海賊旗を見つけ、慌ててガープ中将に連絡を入れた。
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グレーヌから渡されたビブルカードは数人分あったがどれも同じ方向を指している様で、それを指針に真っ直ぐに船は進んでいる。
「そう言えばアスカルって奴は何でそんなことを始めたんだ?」
「えっ、ああ、確かに理由は教えてなかったの。アスカルは天竜人への復讐目的なの、政府や世界が大変な状況になるのはその過程で起こる事なの」
「ついでに世界が滅ぼされるなんて笑えねぇ話だな」
「復讐って事は理由があるんだろ?」
「うん、王様は奥さん、要するに王妃様を天竜人に殺されてるの」
「本当に天竜人ってのは碌な事をしねぇな」
シャボンディ諸島で出会った天竜人の事を考えると、何をしてもおかしくないとさえルフィたちは思った。跪く事をしないだけで市民に銃を放つ、あれは下手な海賊よりも害があるだろう。
「それでもアタシは王様を止めたくて、そうしたらテゾーロおじさんの部下と同じ牢に入れられたの。その人たちに協力してもらってどうにかバベルから出れたんだけど、堕ちた先が海だったの。慌てすぎて咄嗟に能力も使えなかったんだけど、ポケットに入れてたこの子のおかげでどうにか漂流することが出来て、辿り着いたのがフルコース・アイランドだったの」
「おいおい、それはポップグリーンのボーティーバナナじゃねぇか!?」
グレーヌが取り出したのは小さな種にも見えたが、ウソップはそれが何か直ぐに気が付いた。それもそのはずで普段からウソップが使ってる植物だったからだ。なんならサニー号で育てていて毎日水を上げているのだから気が付かない訳がない。
「知ってるの?バロンちゃんの島の植物さんから分けて貰ってるの」
「バロンちゃんってのは知らねぇが俺はポップグリーンを武器に使ってるからな」
「へー、そうなんだ。それとバロンちゃんはプラントに居るストマックバロンの事なの」
「ストマックバロンって、ボーイン列島を形作ってる巨大食肉植物だぞ!?そんな物まであるのかよ」
「あっ、もし小人と戦うならポップグリーンは使っちゃダメなの。3人の小人の中で2人は植物を操る能力を持ってるの」
「うげっ、緑星が使えねぇじゃねえか」
「それに二人が戦う場所にもきっとポップグリーンはあるから気を付けた方が良いの」
こっちは使えずに向こうだけが使えると言うのだからやってられないなと思いつつ、普段から自分が使っているのでその有用性も分かれば弱点も分かる。他に攻撃手段が無い訳では無いので、今から対策を考え始めた。ウソップとグレーヌの会話を聞き、他にどんな敵が居るのかと言った質問も増え、他に回されるであろう戦力も含めて話していたのだが、ナミからの号令がかかった。
「みんな、船を動かすから来て!!場合によっては戦闘になるわよ!!」
「なんだってんだ!?もうバベルとかの近くに来たって言うのか?」
「違う!!近くに海軍の軍艦を見つけたのよ!!」
ナミから伝えられた言葉を聞くとすぐに全員が船を動かすためにそれぞれ行動を始めた。
「クードバーストの準備はいるか?」
「まだどうなるか分からないけど、一応お願い」
「了解だ。オレはコーラを補充してくる」
「飛ぶ時に帆を直ぐに畳めるよう上で待機して置くぞ」
「指針から少しずれるけど、急いで離れるわ」
「あの空中の奴、こっちに向かって来てねえか?」
「えっ!?」
そう言われて全員が示された方向を向くと今は少し遠いがその影はぐんぐんサニー号に近づいていた。向こうのスピードだとクードバーストは間に合いそうにない。一戦交える覚悟でそれぞれが準備を始めるが、それにまったをかける声がその影から発せられた。
「すみません!!ルフィさん!!」
「ん、この声って、ゾロ!!」
「おいおい、こんな所であいつと再会するのか」
視認できる距離まで近づいてきた事により、ウォーターセブンの後で仲間になったブルック以外もその影の正体に気が付いた。知り合いとは言え海軍と海賊、どうなるのか分からないが、わざわざ声をかけてる事を考えると戦闘にはならないだろう。
「やっぱり、ルフィさんだった。皆さんもお久しぶりです」
「コビー!!あっちの軍艦に乗ってたのか」
「はい、ガープ中将も乗ってますよ」
「げっ、じいちゃん居るのか」
和やかに談笑を始めたルフィとコビーだったが、段々と軍艦も近づいてきてるのが見えるので話をぶった切ってナミが割り込んだ。
「はいはい、話は後にしてね。コビーくんは何でこっちに来たの?いくら向こうの軍艦がルフィのお爺ちゃんが指揮してても、海賊船にわざわざ飛んでくるなんてありえないわ。何か要件でもあるから来たんじゃないの?それとも軍艦が来るまでの時間稼ぎかしら?」
「い、いえ違いますよ!!内容は話せませんが、現在は海軍総出で一つの事件に当たってまして、それが解決するまでは無駄に戦力を消費しないため、こちらから敵対しないようにと命令が出ているので、皆さんから攻撃されない限りはあの軍艦が攻撃することはありません」
海軍に出されている異例としか言いようのない命令を聞き、普通なら嘘だと考えるところだがその事件と言うのに心当たりがある面々はそれを聞いて納得した。
「ふーん、なら爺ちゃんに挨拶してくか」
「ルフィ、攻撃されないって分かってるとはいえお前なぁ」
「いえ、聞きたい事もあるから船を向こうに寄せましょう」
「ナミ!?」
聴きたい事って言うのはきっとバベルに関することだろうが、海賊船を軍艦の隣に持って行くと言う乗り込んで戦う時以外に聞くことが無い動きを指示したナミに驚きの声が上がるが、コビーが電伝虫で軍艦に連絡を入れてくれたのでスムーズに船は動き、海軍と海賊の船が仲良く並走することになった。
「おお、ルフィ久しぶりじゃな」
海軍と海賊と言う関係性もなんのそのと、全く気にせずに家族として接している。2年前に頂上戦争で殴った事も既に気にしてないと言うより忘れているんじゃないかと思えるぐらい自然な声掛けだ。
「シシッ、久しぶり。じいちゃんたちもバベルに向かってんのか?」
「んな!?政府が隠蔽していると言うのになんでそれを知ってるんですかルフィさん!?」
「ほう、『も』ってことはバベルに向かう気か、ルフィ?」
「ああ、ワールド・バイキングに行ったのに食べ物がなくてよぉ。他の奴らも困ってたから取りに行こうと思ってな」
「ぶはははは、何が目的かと思えば食い物って、笑える……しかし、アスカルは強いぞ。あいつに戦い方の基礎を教えたのはわしじゃからな。って、ん?そこに居るのはグレーヌか!?」
とんでもない発言にコビーたち海軍側も、ルフィたちも驚いているのだが、それ以上にグレーヌを見つけたガープの方が驚いているように見える。そもそも、なぜグレーヌを知って居るのかとルフィたちはそちらにも驚いた。
「知ってんのかじいちゃん。こいつがビブルカードくれたからバベルに行けるんだ」
「知ってるも何も、こいつはアスカルの娘、プラントの王女だぞ」
「へっ?」
「えっ?」
「へー王女なのか、グレーヌ」
「「「「プラントの王女!?」」」」
「そりゃ、内情に詳しいはずだ」
「牢に入れられたって言ってたが、自分の娘を牢に入れるとはクソ野郎か」
「アスカル王の娘って重要人物では!?」
「ガープ中将、どうするんですか!!」
双方ともに驚き、その中心にいるグレーヌは慌てふためいている。グレーヌには聴きたい事があるが、海軍側もバベルに向かうのは確定。グレーヌがバベルの関係者と見なされれば、一緒に行動していた麦わらの一味も怪しまれ、戦闘になる可能性もある。この場の指揮を任されてるガープに注目が集まる。
「……ふがっ、はっ!!なんじゃ、騒々しい」
寝てて聞いていなかったのか、その場の多くがずっこけそうになったが、あまりふざけても居られない空気を察してガープが口を開く。
「お前ら落ち着け、分かっとる。バベルについての認識を共有するためにも、まずは話し合うとしよう。コビーとヘルメッポ、つい来い。流石に艦内までは入りたくないだろうわしらがそっちの船に行く」
突然の申し出に戸惑うがこのままの状況が続くよりはよいと了承し、サニー号に3人を招いて話をする事になった。そして、麦わらの一味側がまずグレーヌから聞いて知って居る事を話し、ガープは内容の捕捉とアスカルが事件を起こした理由をグレーヌに確認してから部下2人に聞かせた時と同じ内容を伝えた。アスカルの過去であり、グレーヌにとっても辛い話を聞き、麦わらの一味の面々は悲痛な表情でグレーヌを見てしまう。
「ふむ、テゾーロ側の戦力が減ってると言う情報は有り難いな。さて、グレーヌ、お前さんがバベルから逃げたことは聴いたが、それ以外に何か知ってる事はあるか?」
「ううん、計画の詳しい内容は教えて貰ってないの。ただ、マリージョアを沈めるとは言ってたの」
「なるほど、四皇の相手を『暴食』、海軍と革命軍の相手を『先読み』、そしてそのフォローに『刺突』、まあ配置としては妥当じゃな。しかし、刺突がこちらにいるとなると迂闊に軍艦を進められんな。バベルの内部にも『草花』『侵食者』『黄金帝』『大地の王』、現状だと攻め込めるかも微妙じゃな」
「じいちゃんたちでも無理なのか?」
「そもそも人員がな。わしと『センゴク』と『おつる』ちゃんだけが先行しているんだが、軍艦3隻でどうにかなる相手では無い。大将『黄猿』と『藤虎』が新世界に来れない七武海を迎えに行き、準備が整い次第他の連中もやってくる。それでも『刺突』の事を考えると迂闊に近づけんな。『藤虎』の奴なら宙を行けるだろうが……」
ルフィたちもプラントの戦力の詳しい情報を聞いてるだけあって数で攻めればどうにかなるほど簡単では無いと分かっている。双方がどうした物かと考えているとガープ中将が声を上げた。
「そうじゃ、ルフィ、お前の船も空を飛べたな。海軍の一斉攻撃に合わせてお前らだけで内部へ入れ」
「おう、分かった」
軽くお使いにでも行って貰うかのように告げられた情報に2人以外の全員が騒いだが、周りに言われて意見を変える様な物ではなく、爺孫揃うと非常に厄介で作戦はそれに決まってしまった。
ラトニーと言うキャラはメインの方でも出す予定です。と言うよりは本当はメインの方で先に出しときたかったんですが思ったより話を進められなかった。アスカルは設定的にも能力的にも強めになっていますがメインは植物や食材です。なのでアスカルの代わりに戦闘メインのキャラを用意しようと考えた結果生まれたキャラです。