多くの島を巡って食材を手に入れ、プラント全体はかなりの規模となった。一番の目的である4季の揃った海域は見つかっていないが、イスト聖に良い報告が十分できるので、そろそろ向こうに分身を送るのもありかもしれないと考えていると、海賊用の港に一隻の船がやってきた。
「ボンにちは、手前タマゴ男爵と申しまソワール!!名前だけでも憶えておいてシルブプレ」
これまた奇妙な客人がやってきたもんだと顔を顰めたが、話を聞くにあの大海賊シャーロット・リンリンの使いでやってきたとのことだ。
「こちらの国は海賊とも取引を行うと聞いていたでソワール。そのためさほど心配もなくやってきたが、早速ビジネスの話をしていきたいボン」
世界政府や海軍からはまたつつかれそうではあるが、公平な取引を掲げている以上は客を差別することはしない。とりあえずは向こうの要望を聞くところから始めたが、オレは唖然としてしまった。
「良質な小麦に長糖の砂糖、その他にも乳島のミルクやそこから作られる上質なチーズにヨーグルト、カジュース島の果実、お菓子に合うであろうティーポッ島の飲み物、アクセントに酔う滝の酒、どれも素晴らしい品ばかりだボン。他にも上げてはいないがプラントには素晴らしいボン。今回の提案はそれらの品を我が海賊団に献上して欲しいとの要請でソワール」
何でも四皇として名の知れ渡っているビッグマムの縄張り、庇護下においてやるから毎月指定された量の食材を渡せと言う話だった。はっきり言ってメリットは全くないと言っても問題は無い。そう言う話でしたら断わるとはっきりと伝えた。
「言う事は素直に聞いておくべきだと忠告するでソワール。ママは思い通りにいかない事が大嫌いだボン。それ故に黄身が頷かなければ、黄身達と関わる者に被害が及ぶかもしれんでソワール。黄身自身に繋がりが深い者は居ない様であるが、奥方の故郷となれば話は別でソワール?」
なるほど、体の良い脅し文句である。オレは元在った島では人と関わる事は無く、後からやってきたマニュや小人、電伝虫組、ピアス、サイフォなどの島に要る面々以外に大事と言える相手はいない。となれば標的となるのはオレの身内であるマニュの大事な人になる訳だ。
タマゴ男爵にとりあえずの土産として渡せる物を渡して帰ってもらった。契約前のご機嫌取りだと判断したタマゴ男爵は軽快な足取りで帰って行ったが、オレはすぐさま連絡を入れて行動に移る。幸いな事にスキーラのすぐそばにプラント跡地があり、分身を送り込む事は簡単にできる。
後の事は分身に任せて、本国の守りが出来そうな海域は既に見当をつけている。オレはプラントの国土の大半を土で覆い海に沈めて保護し、最低限の国土を巨大な大渦の中心に置き、ビッグマム海賊団に提示された条件で取引はしないと宣戦布告を返した。
その次の日には夥しい数の船とビッグマム本人がやってきた。天候を従えると言われる要因であるプロメテウスとゼウス、太陽と雷雲のエネルギーは目を見張るものがある。だが、船は大渦で近づけず、プロメテウスやゼウスに乗っかってビッグマムだけが初めにやってきた。
「マママママ、あんたがおれとの取引を断ったアスカルって奴だね。私に従えばみんな幸せになれるって言うのに本当に愚かだよ。おれは優しいからもう一度だけ訊いてやるよ。おれにお前の所の食材を提供し続けろ!!そうすりゃ、引いてやるよ」
悪いが公平を掲げる者としてあんなふざけた要望を飲み込む事は出来ない。地の利は、いや海の利はこちらにある。一部の大きい船と能力者を除けばここまでたどり着く事すら出来ない状態、張りぼての船が脅しになると思うなよビッグマム。
「生意気なまま死ね!!『
ビッグマムは雷雲ゼウスを掴むと思い切り叩きつけようと振りかぶった。図体に似合わない動きで腕を振り下ろして来るが、それより先に防御は完成する。海底から浮かび上がらせた重厚な大地の盾である。
「『
そう言うと忌々しいといった様子でゼウスに乗り換えて今度はプロメテウスを振りかぶって振り下ろしてきた。大地で受け止めるのでも良かったが、火には水だろうとピアスに合図を送る。
「喰らいな『大海槍』」
「ギャァァァァァッ!?」
見た目通りで水に弱かったようで攻撃は敵わずビッグマムの攻撃は届かなかった。仮に水でどうにかならなかった時ように壁は健在だったが、必要が無くて良かった。ピアスは近づこうとしてくる船と能力者の対応をサイフォと共に頼んだ。あの様子ならあの太陽は使い物にならないだろう。雷雲も何度か攻撃させれば自然と電気が切れるはずだ。
「了解したよ『海神槍』」
そう言うとピアスは船を貫きながら水の中を泳ぎ始めた。魚人ですらない、ただの魚であっても危険で死人が絶えないダツと言う魚の特性をよく活かした戦い方である。見聞色の覇気が使われ突撃を読まれてもこの大荒れの海の中、水中からの攻撃を防ぐ手段はそうそうないようで、次から次に船が沈んでいく。
「船の底が穴だらけだ!?」
「防げるような穴じゃねえぞ!!」
「プロメテウスまでやられた!?」
「ゼウスの攻撃は効いてねえぞ」
「いくらママでもヤバいんじゃねえか?」
「どうにかママの所に、グハァ!?」
「なんだ!?急に倒れたぞ!!」
「狙撃だ!!狙撃に注意し、ガゥア!?」
そこそこ鍛えられている見聞色の覇気、未来を見通すほどの力は無いが、荒れ狂う海で揺れ動く船の上で慌ただしく走りまわる船員を確実に撃ち抜くだけの感知能力と技量をサイフォは持ち合わせている。
「『決め撃ち』、船だけあってもしょうがないな」
落ち着いた様子で焦らずにまるで全て決められているかのように次々に撃ち抜いていく。淡々と流れ作業の様にやられていく船員たちを見て、幹部たちも少し焦りを見せる。船を動かし、維持するだけの人手が足りなくなっていったのだ。やがて、操作を失っていった船は波に呑まれて沈んでいった。
【ママ、船は持たない。これ以上は近寄れそうにもない。邪魔になるだけだから下がらせる】
「ここまで虚仮にされるとは思わなかったよ!!プロメテウス、十分回復したね。ゼウスも来な。ナポレオンは刃に移れ、『
部下や子供からの報告に怒り心頭なビッグマムはプロメテウスの炎を纏った巨剣の一撃を放つ。操作してるだけの大地では受けきる事は難しいだろう。そう、判断するが早く、オレは一番操りやすい土を持ってきて、元々あった壁を覆った。
「『
『産土』生まれた土地を指す言葉であり、プラントの大地となって長い土が段々とこれに変化していく、この土は異様に操作がしやすく、自分の身体と同じぐらいに感じる程だ。それ故に覇気の通りも極めてよく、この土は攻撃にも防御にも持って来いなのだ。
楽々とは言わないが、衝撃をそのまま大地の底へと逃がせるため直接防御するのとは効率が全然違う。だが、自慢の一撃で傷一つ付けられなかったと言う事実を目の当たりにしたビッグマムは初めて顔を歪ませた。だが、そこにビッグマムの電伝虫に連絡が入り、その顔は禍々しい笑みに変わった。
【ママ、ボビンだ。言われた場所へ向かった】
「ハーハッハッハッハ、スキーラとか言う国は燃やしたのかい?」
せめてもの意趣返しなのか電伝虫での会話を聞かせてやろうと大きな声で話すビッグマム。だが、親切なタマゴ男爵が教えてくれたと言うのに対策を取って居ない訳がないだろう。
【いや、違うんだママ。指定された海域に向かったがそこには何もなかった】
「ハァ!?」
【それどころか、プラントの跡地や管理地も消え失せてる】
そうだろうな。こうなった以上はスキーラをどうにか匿わなければいけないと思い、一番は目の届く範囲に置くこと、要するにプラントに統合してもらう事だったのだが、とりあえずやり過ごすために海底のそこまで沈んで貰っている。潜水艇があったとしてもたどり着くことは不可能だ。
「あんたの身体に傷をつけれる自信は無いからな。これで頭を冷やしてこい!!『
オレはありったけの『産土』を身に纏い大地の巨体を作り上げると、腕を引き狙いを定めて掌を押し出すように撃ち放った。掌底の形で放たれた攻撃は地を揺らし始め、その衝撃は海へと伝播する。
「『
雄大な大地よりも遥かに広がる海を打ち砕くかのように放たれた衝撃は『産土神』の掌よりより先の全てを巻き込むように飛んでいき、まじかで喰らったビッグマムも一度吹き飛んだ。慌てて追いかけたゼウスやプロメテウスのおかげでその時は海に落ちなかったが、あまり関係は無い。
「海が!?海が迫ってくる」
「おい、どうにかしろ!!」
「出来る訳がねぇだろ」
「あはははは、魚巨人のアタシでもありゃ無理だよ」
「ボスらしい攻撃だな」
全てを巻き込むと言った通り伸ばされた先の海も海面から海底までの全ての水を巻き込んで何もかもを飲み込む壁となってビッグマムとその後方にいた船を襲った。生憎と幹部や子供の乗っている船は無かったようだが、そちらはそちらで船長が海に沈み、流れていく様を見てすぐにその場を後にした。
干上がったかのように水が無くなった海底はしばらくそのままだったが、しばらくして波が帰ってきて段々と水が満たされていった。この付近に島は無いので被害は出てないと思うが、改めて無駄な時間を過ごしてしまった。
「ビッグマムがあれで死ぬとは思えないな」
「サイフォの言う通り、あれだけやられて報復を考えない奴らじゃないだろうね」
向こうは海賊、欲しい物があるとくれば奪い取ると言うのは至極まともな考え方である。だが奪うどころか返り討ちに会ったままと言うのは向こうの沽券に関わる。舐められたら終わりな海賊稼業、このままと言う事は無いだろう。
「しばらくの間は厳戒態勢を取り続ける。普段の取引は政府と海軍の助力を受け、指定の位置でのみ行う。一番の懸念であるスキーラは海底を進み、合流を急いでいる状態だ。向こうが攻めてくる限り、守りに徹すれば負けは在り得ない。英気を養い、次に備えろ!!」
小人の特徴や能力の都合上、荒れ狂う海が戦場では戦いにくいと判断し、入念な準備の出来ない今回は参加を見送った。だがそれは総戦力でもないのにビッグマムを追い払ったという事であり、この事実を知った政府と海軍からの反応もそれは凄い物だったが、今はどうでも良い。
この様な事態になった以上はスキーラ王国は巻き込まない為にも庇護下に置いた方が良いと考えた。国王や国民は事態の全容を知った上でプラントに、ひいてはオレに従うと言ってくれている。安全を確保するためにスキーラ王国はプラント王国に吸収されることが決まった。
「何時になるかは分からないが、必ずまた来るだろう。それを乗り切れば勝ちとも言える」
数だけを揃えても意味が無いと判断したビッグマム、今度は幹部だけを纏めて、渦に負けない船を揃えてやってくることだろう。だが、それさえも凌いでしまえば向こうに打つ手は無くなる。向こうも痛手を喰うだけの事に時間を取り続けるのと面子を潰された事を飲み込むのとどっちが良いかは分かるだろう。次は小人も参加できる作戦を考えて迎え撃つ予定だ。さあ、プラントに手を出したことを後悔させてやろう。
投稿が遅くなり申し訳ありません。
私は新成人の新社会人でございまして、火曜日から研修が始まりましたので書く時間が全然取れていないんです。まだ、仕事に慣れていないので帰ってからは疲れて休む事も多く、全体的に執筆は遅れてます。次の話を待ってくれてる方々には申し訳ありませんが、首を長くして、温かい目で見守っていただけるとありがたいです。私事で本当にすみません。
さて、少し急展開ですが、そろそろ進めないといけないと思いましたので、国力強化の話は終了、ストーリーが進んでいきます。感想などでも多くの人が危惧していましたビッグマム襲来です。これは話を書き始めた時点で必要だと感じ、予定しておりました。
今回はモブの様な部下と少しの名前持ち(というかボビンだけかな)しか登場してないですが、次回は総戦力戦となるので、主要なキャラは出せたらなと考えてます。
プラント、スキーラを吸収合併。国民(人間)が大量に増えました。機密があるからと拒んでいたので、そんな事を考えてられない状況にしちゃえば良いと言う判断です。構想時は考えてませんでしたが、途中で思いついた展開です。
ビッグマムを終わらして、オハラの問題と前から言ってたテゾーロ&ステラをどうにかする話と、四季の海関連の話と続いて行く予定です。その後はまた数年ほど関わるイベントが無いけど、四季の海の問題が解決した後は国力強化の必要性は殆どなくなるので結構すっ飛ばす予定。ビッグマムの事を聞いて、他のヤバい奴らが寄ってくるとかも考えてるけど、ネタがあるのは金獅子ぐらいなんだよな。まあ、なる様にしよう。あ、もう1人だけプラント主要メンバーとしてオリキャラを出す予定なのでその期間に追加するか。
なんか、久しぶりに一気に書いてたら疲れました。
そろそろいつもの挨拶でさようなら。
読んでくれている方々に多大なる感謝を。