少し遅れての投稿になりました。実は活動報告でお知らせしているのですが、パソコンが壊れました。詳しくは活動報告の方を見てほしいのですがしばらくは投稿がこれまで以上に遅くなりそうです。
今日も特別に用意されている区画にて重要な荷物を見慣れた船に積み込んでいく。私達が手伝っていることは知られているのでなにかあった際に向けられるママからの怒りを思うと大事な物は自分たちでやった方が安心できる。
「今回の分はこれで全部よ」
「了解しました。それではカスタード様、エンゼル様、また次の取引物の受け取りの際はよろしくお願いいたします」
船を任されている者からの礼を受け取り、船を見送ったところでようやく一息つけるなと互いに顔を見合わせて笑った。
「ふぅ、普段任されている仕事より緊張するわね」
「アスカル様は強いけど怖くは無いからね」
ママに送られる予定の荷物になにかあればいかに娘と言っても処罰は免れない。それがお気に入りのお菓子やその材料となれば最悪、死を覚悟する必要だってあるのだから。
アスカルから任された仕事であれば手を抜くような真似はしないが安心して、落ち着いて作業が出来るし、なにか問題が起これば上司自らフォローまでしてくれる優しすぎる職場だ。
まぁ、プラントは海賊ではなくただの、と言うには影響力が強いが国である。そのため殺伐とした雰囲気は似合わず、このような在り方でもおかしくはない。
「こっちのミス、というか運送船が壊されて困ってた時には無償で貨物と船をくれるくらいだしね」
以前にビックマム海賊団への報復としてプラントから出た船を襲われた事があった。情けないことに部下はやられて、船も届けられるはずだった荷物も駄目になってしまいどうしようかと困っていたらポンと丸ごと全部代わりの物を用意したのだ。
当時はふたりとも驚いていたのを思い出す。取引という形ではあるが立場的に言えば良くても捕虜、悪けりゃスパイ扱いでもおかしくはないというのに色々と気遣いまでされる始末。
カスタードとエンゼルの両名は色々と悩んでいたのも馬鹿馬鹿しくなってしまい、プラントでの仕事をこなしながらその生活に慣れていった。
時には万国から送られた料理人の指揮をとり、取引や連絡の際に間に入って調整したり、最近ではグラン・テゾーロの手伝いをすることもある。
来客の多いこの島ではイベントが頻繁にあり、その度にアスカル様自身や幹部たちが走り回っており、エンゼルとカスタードもよく駆り出されていた。
「篭絡すんのは無理だろうけどね」
「マニュ様も怖いしね」
「あら?アスカルが望めば私は別に良いわよ。アスカルが望めばね?」
「「ヒッ!?」」
後ろを振り向かずとも声で誰か分かってしまった。アスカル様の奥様、プラントの王妃であるマニュ様がニコニコと笑顔で二人の後ろをとっていた。
アスカル様や幹部の人たちに埋もれていて普段は目立たないがマニュ様も普通に強者の枠に入る人物だ。能力無しの戦いに関しては国の中でも上位に入る。
それもそのはずで、アスカル様や幹部の訓練が始まった頃からたまに参加しており、護身術などを基礎に鍛錬は欠かさず行っているそうだ。
覇気も六式も扱えないらしいが、むしろそんな状態なのに渡り合えるだけの技術に驚かされる。とは言っても気配を消して近寄るのは止めてほしいと内心で思うと二人であった。
「二人はビックマム海賊団に敵対はできないでしょうけど、プラントを裏切る気はないでしょうし、そのうち私に子供でも出来れば、その間の相手くらいは居たほうが良いでしょうからね」
「か、勘弁してください……」
「ママからはそういう事も命じられてるけど、関係ができるとそれはそれでまた面倒になりそうなんですよ」
ビックマム海賊団としては関係性を強めたり、娘を経由してプラントに干渉したりを期待してる節があるが、今の状態で成立している関係から変化するのも避けたい所があるのだ。
仮に関係をもったとする。そこまでであれば問題はない。アスカルの為人は知ってるし、好ましいと感じている。強さや財力などは言うまでもない。
だが、仮に子をなしてしまったとすると面倒な事になる。今の状態でもビックマム海賊団と関わりがあるとして目をつけられているプラント。
ビックマムの身内となってしまった場合は流石の政府も何らかの動きを見せるだろうし、ビックマムも関係が深まった事を理由に仕掛けてくるだろう。
「ふふふ、縁を結んで引きずり込もうとしない辺りプラントに染まってきてるわね」
「兄弟姉妹も居ますので離縁する事はないでしょうがねぇ」
「ここは居心地がいいからな……」
「裏切らない限りは自由に過ごしなさい。試して悪かったわね。さっきの話は忘れてくれて良いわ」
そう言うとマニュ様は二人から離れていった。小さく、「国民から募ればいくらでも相手はいるしね」と呟いていたのは聞かなかったことにして二人もまた歩き始めた。
「マニュ様や元スキーラ国民のアスカル様至上主義は相変わらずだな」
「アスカル様も苦労しているな。っとこのあとはどうする?」
「いつもみたいに開発室か研究室に顔を出すんで良いんじゃない?今日は予定無いし」
イベントなどで駆り出される事がなければ基本的には、雑務をこなしたり、新しいお菓子や料理の研究などが主な仕事になっている。
その過程でコーヒヒの開発部門や小人達による研究室などには頻繁に顔を出しており、小人と共にお茶会をしたり、コーヒヒたちの顔を見分けられる程度には顔なじみになっている。
新商品作りはもちろん上手くいくばかりではないが試行錯誤を繰り返していくのも悪くないものだ。そう思って開発部門に向かうと、アスカル様がおり、コーヒヒ達と何かを行っていた。
「何をしているんですか?」
「ん?あぁ、カスタードにエンゼルか!積み込み作業はもう終わったのか、ご苦労さま」
「まぁ、ママへの荷物だしな。むしろあそこまで用意してもらって悪いね。それで何かまた作ってるのかい?」
アスカル様は多趣味であり、思いつきで何かを始めることも多い。それによって利益を出したりすることも多いので呆れる事もあるが、まぁ止められることなく行われている。
「実はまだ少し先なんだがマニュの誕生日があってね。パーティ用のケーキやお菓子を試行錯誤してたんだ。今日は主にクリームだね」
そう言うと既に決まっているレシピやパーティの計画書を二人に見せていた。けっこう前から進められていたようで料理の方はイスト聖監修で既に終わっているとのことだ。
「ちょうど良いし二人にも手伝ってもらえないかな?二人も専門家みたいなものだろう?」
「あぁ、ある程度は出来るし、カスタードクリームなら間違いなく専門だな」
「素材はもう決まってるの?」
プラントには多くの食材が集まっており、日々新たに生み出される種もある。それ故に組み合わせなども無限に思えるほどの可能性がある。
「実を言うとそこも含めて試行錯誤中なんだ。色々と用意はしてあるんだが、長糖、クルミルク、メロンエッグ、マツボックリーム、乳島のミルク、十黄卵、バターバッタ、デザートデザートの砂糖虫、ココノッツミルク、獅子糖、取り寄せれば他にもあるけどとりあえずこんなところ」
聞き覚えがあるものから、はじめて聞くようなものまで様々だ。とりあえずは特徴を知るために素材の説明を聞いたり味見を行っていく。
「知ってるのは省くとしてマツボックリームから」
「というかこれって既にクリームとして完成してるんじゃ?」
「マツボックリームは鍋でじっくり煮込むと美味しいクリームとなるマツボックリでね。乳島と相性が良いんじゃないかと思って一部の区画で実験的に植え替えたりしてるんだよね。植物性だからカロリーの心配はいらないし、風邪予防とかにもなるらしいよ」
「クリーミィで良いわね。それに少し香ばしさを感じるかな」
「焼き菓子やコーヒーやココアとかと合わせて使うと良いんじゃないか?生地とかにも香りを高めるのに煮込む前のマツボックリを粉にして使ったりは出来ないのか?」
「なるほど、そっちを使うのは考えてなかったね。たしかに香りは良いし、煮込まないと甘みは薄いけど生地に混ぜ込んだりするには良いかも」
アスカル様はその発想はなかったと面白そうに笑ってメモをとっていた。コーヒヒ達もコーヒーと一緒に混ぜ込んだりをさっそく試している。
「でこれがバターバッタ?虫がバターの代わりになんてなるのね」
「体液がミルクと似通っていてね。外敵を見つけると慌てて逃げ出すんだけど、追い掛け続けられて体温が上がると固形化する体液を排出するんだ。それがこれ」
そう言って取り出されたバターの量はとても少なかった。どうにか体温を上げすぎないように捕まえて増やしているそうだが、バッタ自体が小さく量を確保するのが難しいらしい。
「バタークリームとして活用するには少し足りないでしょうし、お菓子作りにも大物には使えないわね」
「濃厚で虫と聞いていたけど臭みとかは感じられないけど、これじゃあ試作しておしまいになるわよ」
虫と聞いて嫌悪感は少しあったが食べてみると濃厚でありながらくどくなく、優しい味わいだった。これでクッキーとかを作ればそれなりに良いものが出来るだろう。
「でもどこか乳島のバターに似てない?」
「流石だね。最近少し餌の草に乳島の植物を混ぜたんだ。あれはミルクを良質に変えるから何かしら影響はあるんじゃないかと思ってね。でもそこまで違いがないならあえて使う必要性もないね」
「それで後はココノッツミルクねぇ。これはまた面白い食材ね」
「ココナッツとしても美味しいのかしら?」
ココノッツと言う九個の実が合わさった状態で形成されるココナッツ。それから作るココノッツミルクをクリームにして使えないかと言う事だ。
「これまた、濃いわね。流石は九個分といったところかしら?これも香りが良いけどマツボックリームと比べるとそこまでだし、癖が無い分使いやすいんじゃないかしら」
「それにこれが獅子糖ね。ししとうと同じ形だけれど、かじっても問題はないのね」
アスカル様の頷きをみて獅子糖にかじりついてみると、口の中に一気に甘みが広がった。デザートデザートの砂ほどの残留性はないがひたすらに濃い甘さだ。
「甘すぎるぐらいの甘さね」
「量の調整をしないといけないけど味は良いし、インパクトを与えられそうね」
口の中を蹂躙するかのような甘みだが、獅子の名にふさわしい強さを感じられた。上手く手懐ければお菓子を1ランク上に押し上げてくれるだろう。
「クリーム同士の相性も見ていきたいし、しばらくは掛かり切りになりそうね」
「煮るときに少しだけマツボックリームを混ぜたりとかも良いかも」
「長糖と獅子糖とかも配合して専用の物を作れるかな」
「使わない部分は生地に混ぜ込むとして、試作品はどうしようか」
「無難にクッキーやケーキにしときましょう」
試作品を作っては試して、何度も小さなお茶会が開催された。万国でのドキドキするお茶会と違い、忙しいが暖かく感じられる良い時間だった。
ここでは新しいお菓子に出会える機会が多い。それと同時に仕事も増えるのであるがその苦労を軽く上回る喜びもある。
アスカル様やコーヒヒ、追加の食材を運んできた小人も交えての研究は日が暮れるまでずっと続いていた。まだ先だが来たるべきパーティの日までは似たような研究の日々が続くことになりそうだと二人は笑った。
抜けたつもりも無いし、許されないだろうが語るのであれば元ビックマム海賊団の二人と称するべきとさえ思うプラントでの日々。
ビックマム海賊団とプラントとの間に挟まれがちで仕事はちっともあまくはないが、毒気を抜かれるようなあまい人々と甘いお菓子のあふれる日常を彼女たちはどっぷりと浸かっているのだ。
うぅん、こんな感じで良かったかな?どちらも裏切れない立場、それぞれの立場からの板挟みになりつつも楽しみも見つけられる、そんな甘くてあまくない日々を描いたつもりです。
出てきた食材の中には前に出てきた食材を加工した物や新しい食材や一部トリコの食材が混ざっております。トリコの食材の説明はしませんので気になるカタハご自身でお調べください。
次回から外部プラントではなく通常の話を書いていく予定ですが、前書きに書いた通りパソコンが壊れて満足に書ける状態でないので、もしかしたらまた別の外部プラントを書く可能性もあるかもしれません。
それではいつもの挨拶でさようなら。
読んでくれている方々に多大なる感謝を。