久しぶりに分身ではなく自分で食材調達に出かける必要があり、小人を引き連れてやってきたのは密蜜列島の一角にあるハニー島。人が普通に住んでいるために危険性はそこまで高くはない。そして名前からも分かる様にここははちみつで有名な場所であり、生息している動植物も適応した種が多い。
例を上げるならばミツベアなんかが挙げられる。蜂蜜を食べて育ち、コロコロとまぁるく育ったクマで、子供は歩くことが出来るが、大人は手足が地面に届かず転がって移動する。
生態とは裏腹にかなり獰猛な性格をしており、縄張りに入った存在をどこまでも追い立てる。肉は甘い香りを放ち、とても柔らかく、野生とは思えないくらいに臭みは少ない。仲間同士のつながりがとても強く、群れでギュウギュウに集まって夜を過ごすとか。
普通のくまであれば他にも色々と食べるのだろうがミツベアは蜂蜜しか食べないで育つのだから驚きである。蜂も幼虫や卵を狙わないと分かっているので取りすぎない限りはミツベアのことを黙認しているようだ。
「島の植物より蜜の量も質も上レスね」
花が至るところに咲き誇っているためホーニィにも来てもらったが同じ系列の花でも違いがあるようで観察したり、何やら話し合ってプラントに植え変わって貰おうと交渉をしている。
花も大事ではあるが蜂蜜を得るために絶対的に必要になってくるのは蜂そのものである。蜂もこの島の固有種がいるらしい。
「ん~故郷には虫の奇術使いがいたので共生してたレスからどこか懐かしいレス」
なんでもムシムシの実という悪魔の実があるらしく、蜂やカブトムシ等のモデルが彼らの故郷では見られたらしい。能力がないと共生は難しいという訳ではなく、この島に生息している蜂は言葉を理解し、頼めば蜜を分けてくれる事もあるそうだ。
そして、面白い性質も持っていて通常であれば群れを作り、集団で生息するのが蜂の特徴に含まれるが、この島の蜂は二匹の番で暮らしているそうだ。名前をハニービー&ダーリンビー、通称では夫婦蜂や仲睦まじい様子からラブビーとも呼ばれている。その中でも長く生きている蜂から可能であれば蜜を分けてもらう予定だ。
ラブビー達は蜂蜜以外も食すのでプラントから持ってきた果物などがお眼鏡にかなうなら良いのだが、上手くいくかは会ってからになるだろう。島の奥の方に歩いていくとあちこちに小さな、とはいっても普通の蜂の巣と比べると大きい巣が見られる。まだまだ若い蜂の巣がここいら辺は多いらしい。
近くにいた蜂に声をかけて果実を味見してもらうと好評のようでお礼にと良いものを教えてもらった。蜂に言われるままに木の洞や地面に空いた穴に手を入れると球状の蜂蜜飴が手に入った。
後から調べて知った事だが、これは花粉転がしというこの島特有の種であるフンコロガシが作り出した天然の蜂蜜飴で多少の薬効を含んでいるんだそうだ。転がし始めたばかりの物の方が薬効は高いらしいが、作り終わった物も蜂蜜飴としての質は高いので穴を見つけたら探してみるのが良いらしい。
試しに1つ口に放り込んで見たが、雑味がなく、風化してザラザラしている感じもないので口当たりはかなり良い。花粉転がし独自の手法なのか熱で酵素が破壊されていないようだ。一定数確保出来るのであれば売り出すのも良いかもしれないが花粉転がし次第で得られる数が変わるのであまり商品には向かないだろう。
リストには載っていなかったが島の人なら知っている事のようだった。現地で探索していると思いがけない気付きや出会いがあるのが時折楽しいものだ。道中も楽しく過ごしていたが奥地へと辿り着くと中々に荘厳な光景が広がっていた。木々を覆い尽くすかのように広がる巣とそこから漏れ出た蜂蜜の滝や泉。
これらの光景をたった二匹の蜂で生み出しているのだからその凄さは計り知れない。普通の蜜蜂だと一生に集めるのはスプーン二杯とは聞いたことがあったが、彼らは一生でどれだけの蜂蜜を集めるのか、少し興味がわいたくらいである。
幻想的な光景に目を奪われていると一際大きいラブビーが現れた。若い蜂でも人間の子供ぐらいの大きさだったが、彼らは優に大人を超えている。少し迫力に押されながらも話しかけ、持ってきた果物などを材料に交渉を重ねると、果物と交換で定期的に上物の蜂蜜をおろしてくれる事になった。
初回という事でプレゼントを色々とサービスしたら、逆にローヤルゼリー等の希少な物を分けてくれた。とても話が分かる、良い蜂だった。
お礼を言って帰る途中で若い蜂がなぜが数十匹集まっていた。どうしたのかと思い、色々と尋ねるがこちらは相手の言葉はわからないので読み解くのにかなり時間がかかったがどうやらプラントに興味があるそうだ。
正確に言うとこれだけ美味しい果物がなる植物の蜜を集めたらどのような物が出来るか試したいそうだ。他にもお相手が果物自体を気に入ったとかの理由の蜂もいた。小人達が集めている蜜もあるが、蜂が集めるものとはやはり違いが感じられたので分けてくれるのであればとそちらも話をまとめて終わった。
ハニー島でのやるべき事を終わらせるとそのまま休む間もなく次の島へと向かう。こちらはハニー島とは違って小人達の手伝いは必要ではないので一人での探索になる。
「……『黒点』」
訪れた島は見た目こそきらびやかな輝きを見せ、まるで島の全てが水晶かの様に思える幻想的だが、油断は決して出来ない。島に降り立った時から構えていた土製の武器『マルン』を素早く振り抜くと、地面の隙間から襲いかかってきた獣に打ち付けた。
「地面や山も全て琥珀糖か……香りがビッグマムの縄張りに負けないくらい甘いな」
本来は砂糖と寒天によって作られる琥珀糖だが、この島では降り注ぐ雨、いや飴の様な物が琥珀糖へと変化する。飴玉が降ってくるというのはグランドラインではよく見かける。ビッグマムの縄張りではそれぐらいは珍しくもないと言える。
「大気中に寒天やそれと同じ働きをする成分でも溶け込んでるのか?砂糖はおそらく蒸発して混ざったか、火口から上がってる煙、そのまま綿あめに出来そうだ」
火山の途中から流れてきている溶岩もどうやらカラメルの様だ。正直こちらは殆ど焦げているようなもので味については微妙だった。
そう言えば名前も場所もわからないので探索できていないが丸ごとプリンアラモードになっている島があるそうだ。その山は噴火すると美味しいカラメルが出てくると伝承があるが何か条件が違うのだろう。
この砂糖自体も他の島では見かけない物で一つ一つがウサギの形を取っていた。ウサトウと言って優しい味で思わず跳び跳ねたくなるんだとか。味のバランスでは長糖の方が良さそうだが、パーティ等に出されるお菓子などに使えば場を盛り上げるのに使えるだろう。こちらもしっかりと回収していく。
「琥珀糖は島の表面の物は湿ってたり、不純物が混ざってるな……」
試しに口に含んで見るが、寒天特有のプリッとした食感があるわけでもなく、潮風に当たってたせいか結晶化してないのにジャリッとしてしょっぱさを感じる。近場で取れるものは全て自分で食すのにも使えない不良品だ。となれば潮風が当たらず、適度に乾燥している場所に行く必要がある。
琥珀糖が邪魔をして島の土は動かせないので月歩を用いて上空へ跳び、島全体を見渡すと火山からそう離れていない位置に深い渓谷を見つけた。火山の影響で地上付近は少し溶けて固まっていないが、少し下に下がると適度に乾燥して冷え固まった層がある。
「下がりすぎると地熱で溶けるか……」
それに地上よりも生息している猛獣の類がかなり多い。身体を琥珀糖に擬態させる種や琥珀糖の隙間に潜んでいる種、中には溶けた琥珀糖を身体に纏わせて潜んでいる種もいる。見た目が似通っているが戦う際には外骨格なのか、纏っている琥珀糖なのかによって対処を変えないといけないので覇気が使えないと少し面倒だったかもしれない。
常に琥珀糖の雨が降っているという訳ではないのでどの層も結晶化している様に見える。それはそれで美味しいとは思うが、食感の違うものが欲しいので雨が多く溜まりやすい場所を探す。一度に溜まっている量が多ければ表面が先に固まるので柔らかい層を回収出来るはずだ。
渓谷を見て回ると罅がはいってる場所を見つけた。奥に行くにつれて狭くなっているが大人が潜っても問題ないサイズなのでスッと降りて行く。下まで辿り着いた所で床を切り取る。気持ち深めに切ったつもりだったがまだまだ全体が結晶のようだ。
土の感覚が感じられないのでちまちまと柔らかい層を探すのではなく、かなり深くまで切れ込みをいれて一気に探す。地層の調査のような事を繰り返し、何箇所か柔らかい層を見つけ、これ以上乾燥しないように気を付けながら回収した。プルンと動く琥珀糖は光を通すとまた違った輝きを放ち、本当の宝石を思わせるくらいの美しさだ。
取れる場所がそれなりに危険だが普通に作るのと比べて色の鮮やかさ等がかなり違うのが素人目でも分かる。食べる宝石という名に恥じないこれらは安定な供給は出来そうにないからこそ価値は高くなりそうだ。イスト聖は甘いものへの関心は高くないし、既に完成した物なのでクチーナさんも興味は薄そうだ。
「主に取引用だな」
身内で大量に消費するような物でもないが、新しく商品が増えたことを素直に喜び、島を破壊しない程度に琥珀糖を回収し、プラントへ戻った。
世界政府からの通達よりも早くモルガンズから情報が入ってきた。情報操作の関係上、世界経済新聞が先に知る事柄が多いのは当然の事だ。おそらく独自の情報のルートもあるだろうしな。
「白鉛病の一斉重症化、周辺国からフレバンスの封鎖……戦争も秒読みか……」
国王は既に国を捨てて逃げ出した様だ。それでもなお世界政府が動かないということはそういう事なのだろう。多くの国があり、その数だけその在り方があるのだろうが、白い街の住人達は酷い外れを引いた。
世界政府や王族が白鉛病を知っていた事は表に出ることはないだろう。戦争が始まれば白鉛病そのものの真実も隠されてしまうだろう。周辺国にも矜持がある。中毒を感染病と間違えて隔離しただけでも恥と考えそうな連中だ。戦争まで引き起こせば意地でも白鉛病は感染病になる。
王族や政府が失態を隠そうとしているのは最早どうでも良いが、病の情報が間違ったまま広がるのは不安だ。しかし、国が位置する海すら違うプラントがこの問題に下手に干渉するのは難しい。
これだけの規模の出来事なら確実に五老星まで話は届いている。オハラのときは天竜人からの依頼という大義名分があったが、それがない状態で首を突っ込めばプラントの立場が悪くなる。
今年のレヴェリーに呼ばれていないのはオレが国王に白鉛病の事を確認した事があるからだろう。万が一にも会議の場で変なことを言われない様にと単純な対策だ。だがレヴェリーは4年に1度、それだけ時間があれば全て終わっている予定なのだろう。そうすれば何を言っても後の祭り……言うだけ無駄、むしろこちらを追及する様にされたらたまったものではない。
そもそも白鉛病を治す手段が確立されていない状態で下手に庇ったとしても、
ツチツチの能力で体内の白鉛に干渉するのは可能だが操作しても排出させる方法がない。無理やり引き出そうものなら皮膚が引き裂かれるだけで済めばマシな方だ。身体中、表面だけでなく内部まで浸透している白鉛を集めるのさえ難しいのだ。
唯一使えないかと思いついたのは溶岩から養分を吸収し巨大に成長する
だが落花星と言う種の成長した姿の巨大さを踏まえると吸収時に与える人体への影響も計り知れない。大きくなるように品種改良を施すのはI・Qの入手により比較的簡単になったのに比べて、小さくするというのは中々に難しい。近縁種との交配なども試したが養分の吸収方法が変わってしまえば意味がなく、トライアンドエラーで研究こそしていたがコレだと言えるものは出来上がらなかった。
こうなる前に完成していればなどと、もしもの話を考えてもどうにもならない。研究は続けるが改良した落花星がフレバンスを救うことは決してないのだ。それでも、悪あがきにもならないだろうが分身に作りかけの種を病院や研究所へと運ばせた。あの国にオレの知らない天才がいてくれたらきっと……なんて非現実的な夢をみるくらいは許されるだろう。
I・Qの改良の第一陣が出来上がった。体へ与える影響を抑え、食用に適した形で繁殖させ、飼料として完成させた。そのために大量に経口接種しなければ変化は起こらないので既存の環境が壊れる心配は少ない。念の為エリアは分けているんだけどな。
「アスカル様、食べすぎてないかチェックとI・Qを外に出さない以外に他になにか注意とかはあるのね?」
この特別な農場は以前から動物を任せていたポコに一任することにした。これまでの働きぶりからみても問題なく任せられると考えての判断だ。
フィン、ティア、デルも合わせた四人組もお手伝いレベルから正式に仕事を始めてから長い。一つのプロジェクトの責任者を任せるにも足り得る人材へと成長してくれている。
指導を幹部陣が行うことが多いのでそれに伴って訓練なども空き時間にやっているようで、グランドラインの前半では生き残れるくらいには強くなっている。
「ないとは思うがここに通ってる事で体調等に変化が起きたらすぐに言ってくれ、体調管理も仕事のうちだ。もし影響があればそれを元にまたI・Qの調整が必要になる」
「ん~ポコも大きく美味しくなるかもなのね」
そうなったとしても喜ぶのはストマックバロンくらいだろう。いや、プラントのストマックバロンは大人しくて友好的なのでそれはないか。最近では養分とは別に提供してる家畜を栄養面から評価してくれるくらいにはすっかりプラントの一員だ。
「ピアスお姉さんみたいになれるなら大きくなるのもありかもなのね」
「巨人族や魚巨人を差別する気はないけど勘弁してくれ」
こういった発言はするのでヒヤヒヤする時もあるが、遊んでいい時とそうじゃない時の線引はしっかりしているので大丈夫……なはずだ。
「フィンの所の巨大魚が羨ましかったから嬉しいのね」
なるほど、フィンには魚ーターランドの水の成分を利用して巨大な魚を養殖するという企画を任せていたな。口数が少ない彼とピアスのコンビは不安もあったが大雑把なピアスと細かい作業も苦と思わないフィンは相性が良いようで仕事はとても良い仕上がりだった。今は養殖で育てた大人しい魚を集めた水族館を作って観光名所にしないかと、見た目重視の魚を育てている筈だ。
「この飼料を魚の餌に混ぜれば成長をさらに促進出来るか……あそこは仕事量が多いからさらに任せるのは悪いか?」
「ん~フィンはティアと違って無理なら無理って言うから伝えて良いと思うのね」
一緒に育ったポコがそういうのなら間違いないだろう。実際に意見を言うときなど臆してる姿は見たことがないのでこのままの足で伝えに行くとしよう。
「それじゃあ、任せたぞ」
「アイアイサーなのね!!」
自分の身体に種がついでないかチェックし、花粉なども落としてから土の中に潜り込むと仕事場である養殖場まで一気に進む。
「ん、アスカルか!なにか仕事か?」
「フィンもここにいるよな」
「アスカル様、来た、用事?」
気配を探ったが姿が見えないと思ってるとちょうど海から顔を出した。土の上にはおらず巨大魚の気配のせいで覇気を使っても探りにくいがオレが来たのを察知してわざわざ上がってきてくれた様だ。フィンは仕事柄水と関わることが多く、水中での行動はピアスについでプラントで二番目に上手い。
まぁ、プラントの人員の大半が能力者なのも相まってだろうがな。だがきちんと道具を使えば子供の魚人にも負けないレベルだとピアスから太鼓判を貰っているのは普通に凄いだろう。
「ああ、さっきまでポコの所に居たんだが、I・Qを利用した飼料については聞いてるか?」
「既知」
「それを魚の餌に混ぜて巨大魚の育成を促進できないか試してもらいたいんだが……正直ここは人手が足りてないから余裕がある時で良い」
「了解、問題なし、場所確保」
「貝の養殖は安定してるし、巨大魚の生態もだいぶまとめられてきたから大丈夫だってさ。だけど試験するのに場所だけは別で用意して欲しいって、可能なら私とフィンのふたりとも出入りしやすいと助かるね」
ずっと一緒に行動してるからかピアスがフィンの言いたいことを四人組の他三人と遜色ないくらいに読み取れる様になっている。そう言うことならそのまま頼むが、場所を用意するのに少し時間がかかるので本格的に始めるのは来週からで良いか?
「了解、奮闘」
「了解っとそれじゃあ仕事に戻らせてもらうよ」
キビキビと働いて、作業自体を楽しんでいるようだが今後の事を考えれば真面目に新しい人材は用意しなくてはいけないだろうな。可能であれば魚人か人魚等の水中で活動出来る種族が良いが彼らはなかなか出会えないから難しいだろう。魚人島へ行ければとも思うがそれはまた別の問題があるからしばらくは頑張ってもらおう。
「I・Qの品種改良の立役者にも伝えておくか」
品種改良を行っている部門はコーヒヒの室長とティアがそれぞれ仕事を回している。人手だけは多いので最近ではモーダスとホーニィが常にいる必要がなくなっており、他の作業に集中出来る様になっている。
こうしてそれぞれの場所の責任者が育ってくれたおかけで一々オレが確認する必要が減ったのはかなり有難いことだ。全員がよく働いてくれてるがきちんと休んでるのか心配になる。……そう溢したところ「あなたがそれを言うの?」とマニュに呆れられたんだったか。それでもここの人員よりは休んでいると思っている。
「あら、アスカル様。なにかご要件でしょうか?」
「キキッキキキキ!!」
コーヒヒはブレイクタイムを取っているのを見かけるのでまだ良いが、室長はコーヒヒの中では明らかに働き過ぎだし、あちこちへ駆け回っているのをよく見かける。ティアは研究所に籠もりっぱなしになっているのは些か問題だと思う。
コーヒヒは大切な仲間であるが、年頃の女性がヒヒの群れに混ざって泊まり込みで寝食を共にしているというのは常識的に考えると少し問題があるように思える。いや、そういった点を責めるのであれば未だに四人組で同じ家に住んでるのも注意しなくてはいけないんだろう。だがそれは小さい時からだしどうなんだろうか……いや、ここに来てから考えてもしょうがない。待たせるのも悪いので先に要件を伝えるとしよう。
「I・Qについてなんだが完成させてくれた物をポコに渡して来た。何かあればポコと連携して推し進めて欲しい。それと巨大魚関係にそのまま応用出来ないかと実験的にフィンに試して貰ってる。データの共有をして、魚向けに調整も可能であれば頼みたい」
「ぜひとも私にお任せください。今は動物全体ヘの微量な効果ですがいずれは種族ごとに適したI・Qの開発を目標としています。データはあるだけ嬉しいですし、哺乳類と魚類での効果の差が判明すれば新しいアプローチの仕方も見つけられるかもしれません。そもそもプラントの食材の中には恐竜や爬虫類、両生類、鳥類に貝類など幅広いですからね。いずれは効果の方向性もより細かく、多様にしてみせます」
元々真面目で丁寧な性格だったが、研究の仕事はとても彼女にあっていたようで喋り声こそ優しげなのだがどこか圧を感じさせる。
「キーキキキ、キキキーキ、キキキキキ!!」
「ええ、室長の言う通りコーヒヒへの進化適用のプロジェクトも進めており、こちらは室長が担当しており、結果は別に纏められています。もちろん、上がってきている品種改良の原案の方も別途で進行しており、完成した新種と改良された品種については次回の会議にて資料と共にご説明させて頂きます」
コーヒーへの情熱が強い彼らは味の向上の為に全員で日々研究に明け暮れている。単純にコーヒヒ達の方が先にI・Qを触り始めたからそちらの方がデータも多い筈なのに先に結果を出しているティアの優秀さは計り知れない。
それにしても身振り手振りやイントネーションで分かりやすくはあるが、文字を書いてもらってもいないのにコーヒヒの言葉を完璧に読み取れるのは凄い技術だな。おそらく研究を共にする上で自然と分かる様になったのだろう。
「ああ、いつも助かっている。新種の種は既にモーダスとホーニィに渡しているのか?」
「はい、試験的に育てて貰っています。次の交易品の目録の更新の際には取引に応じられる様に進めています」
新しく食材を見つけたり、研究所で作られて新しい種が出来る度に貿易の品は変化している。取引の更新時にはこれまでの種にするか変更するかなどを決めて貰ったりする。中には廃止する種等もあるし、説明などがややこしいので取引所は年々忙しくてなっているそうだ。こちらは人員の増加でどうにかなっているが、全体を纏めているマニュには頭が上がらない。
「そうか……研究は引き続き任せるが、必ず休息を取るのと、家には帰る様にしなさい」
「……善処いたします」
「他の三人も心配しているし、オレも心配している。身体を壊す前に休みを取りなさい」
「……了解しました」
少し落ち込んでいる様子のティアを室長が励ましているが室長も同じだからな。コーヒヒ内での役割の仕事があるのは知っているし、こちらが趣味に近いのも理解しているが、それでも働きすぎには変わりないんだからな。
「キキ……」
これだけ言っておけば大丈夫だろう。家にちゃんと帰ったかどうかは他の三人に訊ねればすぐに分かることなので誤魔化せはしない。まぁ、もとからティアは誤魔化しとかをするような性格ではないけどな。
ここまで来たらデルにも会いに行くとしよう。とはいっても何処で何をやっているのかわからないからな。覇気と能力で居場所を探るとしようか……あぁ、今はサイフォの所に居るみたいだ。土に潜って向かうとサイフォがデルに稽古をつけている途中だった。
「とりゃっ!!」
「刀の扱いは良くなってきているが足運びがまだなってないな。武器が変われば間合いも変わるからな。そこを意識しなければ学べないな」
こうしてデルが幹部陣から稽古をつけて貰っているのは珍しい事ではない。四人組は指導の関係上少なからず稽古は受けているが中でもデルはその時間が多い。
モーダスとホーニィの仕事が減ったことや収穫などの単純な作業はコーヒヒ達が手伝ってくれる様になってからデルの手伝いの仕事は格段と減った。
だがデルはそれをどうしてもやりたいと思っていた訳ではない。役にたちたい、とにかく働きたいという意識を持っていた為に悲しむことはなく、手伝いが必要ないと自分で判断した瞬間に何か他に出来ることはないかと訊きに来ていた。
それからというもの努力家な彼はとにかく人手の足りない所に助っ人に行っては色々な仕事を覚えてプラント中を駆け回り始めた。
一箇所で仕事を続けている他の三人よりも幹部と出会うことは多く、彼に新しい仕事を教える上で技術等の指導も一番多くなる。
その結果、彼はたいていの事はそつなくこなせる様になり、戦闘技術においても他の三人より頭一つ分飛び抜けているのだ。
四人組の纏め役、リーダーの様な役割まで担っているがそれを重荷に思わずに相応しいようにと自分を高め続けている彼のことは全員が気にかけている。全員にとって弟子のような存在と言える。
「ここまでにしような。気付いてるだろうがボスも来ているからな」
「ご指導ありがとうございました!!」
どうやらオレが来ていた事には二人共気付いていた様だ。オレが何も言わずに見守っていたから緊急性はないと判断したんだろう。
「それでボスはどちらにって、訊くまでもないな。デル、お前への要件だな。しかと聴いてくるんだな」
「はい!!アスカル様、俺に何のご要件でしょうか!!」
相変わらず元気な子だな。この元気をそのまま努力に注ぎ込めるのだからこの子には感心するばかりだ。オレにはない熱意を感じる。
「今日は他の三人にも会ってきてね。それについての連絡と報告書じゃなくてたまには直接君の最近の仕事について聞いておこうと思ったんだ。鍛錬の邪魔だったら申し訳ないね」
「いえ、わざわざ俺の為に有り難い限りです!!」
真っ直ぐこちらを見ているデルにオレは今日あった他の三人について概要を伝えた。聞き終わると「全員が新しい仕事を進めているなら疲労とか気をつけて見ないとな」と小さく呟いていた。リーダーとしての適性は高いが、周りを優先しすぎないか少し心配になるな。だから全員が見守っているんだろうけど。それで最近は何をしていたのか訊いても良いかい?
「はい、今日は交易用の食材の狩りにサイフォさんと共に出向き、スープレックスを含めた恐竜の討伐を行いました。昨日はモルさんと共に菌エリアの整備、一昨日はピアスさんと共に魚ーターランドまで天然物の巨大魚の確保を。その前の日は海賊向けの取引所の警護にて騒動の鎮圧を交代までに3回行いました。後は最近だとピクル湿地や空島にも行ってきました。それと業務外ですがガープ中将にお会いした事もあります」
おそらくガープ中将の感覚がデルの何かを察知したのだろう。話を詳しく聞く限りどの日も鍛錬は欠かせずにやっている様だし、ガープ中将とも戦ったそうだ。
「サイフォ、ちょっと良いか?四人って覇気についてはどんな感じだ?」
「見聞色は全員出来てるな。方向性はそれぞれ違うけどな。武装色は兆しは見えるがちゃんと出来てるのはデルだけだな」
実戦を経験しているかどうかの差はやはり大きいだろうな。それ以外にも他の三人は国の外に出る機会もあまりないし、そういった所も経験させてやりたいものだ。
「励むのは良いことだけど詰め込みすぎないようにな」
「ご心配ありがとうございます!!」
「ボスもほどほどにな」
オレの場合は代われない仕事が多いから働いてる部分もあるのだけどな。まぁ、頭の片隅にでもいれてその場をあとにした。
「……プラントの未来は安泰か」
最も本当に未来の事を考えると跡継ぎの事とかも問題になってくるんだけどな。お義父さんこと元スキーラ王国の国王もなにかと期待してさり気なくしているつもりで促している。まぁ、実際にはまだ先のことになるだろう。今は今できることをやるだけだ。
大変遅くなりました。実は風邪にかかり熱が39℃出てちょっと先月は力尽きておりました。1週間寝込んでたのが遅れの一番の原因です。
パソコンが壊れてから一切買い替えの話が出てないのでまだまだ更新は遅くなると思います。
ちなみに最近、スマホも壊れまして、画面が外れてパカパカしており、電話がかかっても相手の声が聞こえません。こちらはもうじき買い替える予定です。なので執筆が完全にとまることはありませんのでご安心ください。
さてここからは本編の話をしていきます。久しぶりの食材の話、他にもネタはまだあるけどどのタイミングで入れるかとか色々と悩んでます。公開してないデータとかもいつかは全部出したいけど、とりあえずは本編の執筆優先でやってます。
フレバンスのことについて少し触れました。こちらに関してはまぁ特に言及はいたしません。どうなるかは決めてますが、ネタバレは無しです。
I・Qに触れつつ、おそらく外部プラント以来の登場ですかね。四人組の話ですね。あれから年単位で時間は経ってますのでまるっきり子供だった時からは成長しています。これからは経験を積ませるためにアスカルと一緒に外に出る機会ももあるかも?
ということで今回はこれぐらいでお別れとさせて頂きます。待ってくださっている方々に謝罪と深い感謝をこめていつもの挨拶でさようなら。
読んでくれている方々に多大なる感謝を。