ONE PIECE プラントオーナー   作:ひよっこ召喚士

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第37プラント 漂う思想?!魚人との交流

 

 

 プラントが独立してからというもの、各国家から声が掛かる機会がかなり増えた。今までは同じ世界政府加盟国であったが、その枠組みから完全にではないが一歩離れたプラントとの繋がりを強化したいらしい。

 

 その他にも非加盟国や海賊などの中で世界政府を嫌っている者達が僅かだがプラントを利用するようになった。こちらに関してはグラン・テゾーロが独立して天竜人がプラントにあまり来なくなったのも関係してそうだが…顧客が増えたのは良いことだ。

 

 他にも細かな所で色々と変化が起きているのだが、彼等がこの地まで訪れたのもそれが影響しているのだろう。

 

「船を数日停めておきたい。休息と食料や物資の補給が主な寄港の目的だ」

 

タイの大アニキなんで人間なんかの国に……

黙っとれアーロン!!何の理由もなく行動する人じゃない

 

 世間を賑わしている奴隷解放の英雄、フィッシャー・タイガーとその仲間と思われる者達がプラントにやってきた。

 

 一緒に船から降りてきているのは幹部的な立ち位置のものだろうか? 何事もない顔をしているが面倒事を押し付けたのを忘れている訳じゃないだろうな。

 

 まぁ、対価を払えば何処の誰だろうと提供するというスタンスを変えることはない。主だった理由以外もあるなら早めに言う様に伝える。それと他の利用者といざこざを起こすようなら追い出すと釘を刺すのも忘れない。

 

「分かってる。お前らここで暴れて俺の顔を潰してくれるなよ。商売上だが平等を謳い、政府関係者でも手を出せないこの地で備えを万全にするぞ」

 

「ああお頭、了解じゃ」

 

「チッ、大アニキがそう言うなら……」

 

 カリスマとでも言うべきか他者を率いるだけのものは持っている様だな。この様子ならおそらくあっちの素質もあるだろうな。とりあえずピアスは呼んでおくとしよう。

 

 


 

 

 魚巨人のピアスがプラントでは近海の警備でよく顔を出すためにプラントに訪れる顔ぶれには魚人への慣れがあるからか変に騒ぐ者がいないのは幸いだった。

 

 タイヨウの海賊団の魚人たちにもピアスをつけてからは多少雰囲気が和らいだ様に感じられる。半分とはいえ魚人の血を引いてるピアスが国の中でも上の立場にいるのも要因の一つだろう。

 

 交渉や貨物の運び込みなどは別の人員に任せてフィッシャー・タイガー、ジンベエ、アーロンの三人はオレとの話し合いの場に出向いてきた。

 

「ここは……?」

 

「プラントの地下だ。政府関係者はもちろん、幹部やそれに準ずる立場の者以外は入れない。水産関係の施設でもあってそこの水は海に通じている」

 

「お茶、どうぞ」

 

 普段はピアスとフィンの二人が働いている場所だ。周囲の目をどうにかするにはこういった場所に来るしかない。

 

 それに水が近くにあるだけで魚人は有利を取れるし、海に通じている事で逃げ道も配慮しているので文句はないと思いたい。

 

 フィンは客に気付くと飲み物とお茶請けを置くだけ置いて直ぐにまた海に潜っていった。近くの隔離されている生け簀では巨人族ばりにでかい魚が跳び跳ねている。

 

「あの魚は自然に存在するものか?」

 

「魚ーターランドという特殊な海域には幾らかいるはずだ。ここのは成分を分析して調整しているがな」

 

 人魚は基本的に魚を食べないと聞くが魚人は普通に食べると聞く。気になるようなら食事として出してもいいし、土産に持っていくかと訊ねる。

 

「いや良い。あれはさっきの子供が?」

 

「あぁ、上にいた魚巨人のピアスと一緒に此処を管理している。流石に人間だから装備無しで深く長くは潜れないが魚人の子供に迫る程の遊泳能力持ちだ」

 

「ほぉ、それはすごいのぉ」

 

「人間が泳ぎで魚人に迫るだぁ?!」

 

 フィンに適正があったからこそだろうがピアスと殆ど共に過ごしている故だろう。I・Qを取り込んだらエラとヒレを獲得してもおかしくない程度に海中で過ごしている。

 

「人と魚人の共存か……オトヒメ王妃が喜びそうな事だ」

 

 オトヒメ王妃……魚人島は一応と頭につくが世界政府加盟国に違いはなくその名前は知っている。だが共存は個人ならともかく全体でとなると難しい問題だらけだろう。

 

「魚人と言うにはピアスはでか過ぎだと思うがな」

 

「ネプチューン王でも敵わないが大きさ自体は近しい。そう対して違いはない」

 

 そう言えばリュウグウ王国のネプチューン王の異名は大騎士だったか……魚人も人魚もその種によってその特徴が大きく違うから大きな魚人がいてもおかしくはないか。

 

「ピアス殿には感謝している。後ほど俺個人としても話をしたいと思ってる」

 

「それは好きにすると良いが、オレからピアスに話せとも話すなとも言わない」

 

 個人間のやり取りにまで口を挟むつもりはないからな。それでもタイガーはそれで十分だと示すように頷いて応えた。

 

「それで観光に来たわけじゃないだろう。こちらとしても言いたいことはあるが、何をしに来た? 船に乗っている人間の子供が関係しているのか?」

 

 これまでも保護された人間の奴隷の多くをプラントの管理地に送り付けてくれたが……政府が手を出しにくくなったプラントに直接連れてきたとかじゃないだろうな。

 

「いや、コアラは関係ない。確かに元奴隷に違いはないがコアラはうちの船の客だ。ここに持ち込む気はないし、俺たちで送り届ける」

 

「お前らが? 政府に目の敵にされ、海軍から追われている状況で抱え込むとはな。そんな余裕があるのか?」

 

 世界政府を、海軍を舐めているとしか思えない。魚人族の海戦能力や操船能力の高さは目を見張るものだ。だがそれ故に活動が出来ているに過ぎない。陸に上がれば話は変わる。

 

「アイツラと同じになるのはごめんだ」

 

「嫌悪感から来る反抗心か…それとも元奴隷としての同情か?」

 

「「ッ?!」」

 

 元奴隷といった瞬間に連れ二人の身体が大きく跳ね、信じられないといった表情のまま視線がオレとタイガーの間を行き来している。知らなかったのなら悪いことをしたか?

 

「………いや、いずれ知られる事だ。死に際に呟くよりはマシだ」

 

 その割にはこちらを射抜くような力強い視線だな。憎悪はそう簡単に消えはしない。腹の中でずっと燃え続けるだろう。

 

「大アニキが元奴隷……?!」

 

「お頭……」

 

「事実だ…俺はあの聖地で天竜人に飼われていた奴隷のうちの一人だった」

 

 それを聞いて浮かべるのは納得と怒りか……これは根が深いな。落ち着くのを少し待ってから話を再開させるとしよう。

 

 


 

 

 そこからは天竜人の所業、自他含めて聖地でのあれこれを、そして逃げ出してから奴隷解放までの話を事細かにタイガーは語った。

 

「クソっ!!人間どもが!!」

 

 憤慨するのも分からなくはないが人間で纏めると苦労するだろう。人間ほど仲間意識が低く、集団意識の高い面倒な生き物はいない。

 

「……タイの頭を助けてくれた事に感謝する。通りでタイの頭が信頼する訳だ」

 

 感謝されても礼はピアスに伝えてとしか言いようがないんだがな。あの時の俺は自分から関わる気は欠片もなかったからな。

 

 それにかなりの傷を負いながらあれだけ覇気(怒り)を感じさせる男だ。おそらく適切な治療が無くとも生き残っていた筈だ。

 

「…俺は認めねぇぞ!!お前もどうせ人間だ!!それに此処は天竜人の一人から保護を受けてんだ!!テメェもあいつらの仲間に変わりはねぇ!!」

 

「おい待てアーロン!!」

 

 それだけを叫ぶとアーロンは海に飛び込んでこの場から泳いで去ってしまった……念のためツチツチの力で地上に連絡はしておこう。

 

「構うなジンベエ!!……話を戻そう。お前の読み通り直接この地まで来た理由がある」

 

 このタイミングなのは訪れやすくなったからだと言う。いくらプラントでは海軍による捕縛がないとはいえグラン・テゾーロがあった頃は天竜人が頻繁に来ていたからその判断は妥当だろう。

 

「幾つかあるが、まずは今後の取引についてだ」

 

 今回プラントの本土にやってきたのはオレと直接取引を定めておきたいからだそうだ。海上での強みを活かした戦闘は流石の一言に尽きる。

 

 だが航海を続けていく上で色々と物資は必要になる。さして丈夫とも言えない少女が乗っているなら他にも必要な物は幾らでも出てくるだろう。

 

「支払いは奪った宝からになるが問題はあるか?」

 

 それに関しては一切ないと言える。海賊相手にも商売してるのに真っ白な金銭だけでなんて事は出来るわけがない。払えるのであれば取引は行うがそれだけじゃないんだろう。

 

「宝は多く払う。その余剰分で奴隷を買うってのは出来ないか?」

 

 魚人ではというのもあるが、追われている身ではそもそもヒューマンショップに寄る事すら出来ない。それならば入れる者に正規の手段でという訳か。

 

 プラントで匿えと言うのであれば不可能だと伝える。数年前なら人員不足も相まって奴隷購入も視野に入れただろうが今は人手不足は解消されているのに加え、外部の者をそう簡単に入れる訳にはいかない。

 

「ならば魚人や人魚に絞って解放する形ならどうだ?」

 

 購入したものをどうしようと自由ではある。魚人や人魚であり、体調さえ万全なら再度捕まることなく魚人島へと帰ることが出来るだろうが…それでこちらの利はどうなるんだと訊ねる。

 

「使用した分と同額を納める」

 

 まぁ、妥当か……やるとするならばヒューマンショップの多いシャボンディ諸島でが基本になるだろう。海軍本部やマリージョアと近いために拠点はあるので時間や場所の問題はない。

 

 とはいえオレが直接動いてと変な噂でもたてられればたまったものじゃない。奴隷を手に入れても不思議でない理由が必要だ。そしてちょうどよく元奴隷が運営している天竜人御用達の娯楽施設なんてものがある。

 

「グラン・テゾーロか……」

 

 不安そうな表情を浮かべるのは天竜人との関わりがかなり強いからだろう。彼処のトップが自分と同じだと知ると渋々だが認めた様だ。

 

「次なんだが魚人島についてだ」

 

 これまた面倒そうな話を持ってきたな。自分でも分かっているのか何処か苦い顔をしながら語りだした。

 

「今の、世界から見た魚人島の立場は著しく悪い。地上への移住なんてとうてい叶わない程にな」

 

 自分たちの活動が内外の両方の意識を変えているとタイガーは言った。地上の人間には恐怖や怒りを抱かせ、魚人島からはタイガーを称賛し、地上への好戦的な思考を広めている。

 

 さぁ仲良くしましょうとはとてもじゃないが言えない状況なのは確かだろう。だが、流石に国同士の関わりをこの場では決められない。

 

 そもそもなんの立場もなく追われる側のタイガーの口添えでは聞くわけにはいかない話だ。魚人島側がうちと取引をしたいと望むのであれば対応はするが特別扱いは出来ない。突き放す様で悪いがそれでこの話は終わり、いや無かったことにしよう。

 

「あぁ……悪い。さっきの話は忘れてくれ」

 

 タイガーもこちらの話の方が道理だと考えたようで提案自体を撤回した。それでまだ()()()()()()()があるなら聞く。

 

「あぁ、後は世間話だけだ。プラントに送った者たちがどうなったか聞いておきたかった。それと勝手なことをした謝罪だな」

 

 奴隷たちと共に費用以上の財を置いていなければ彼処まで面倒はみなかっただろうし、代価があろうとなかろうと随分と一方的な手法をとったもんだと当時はどうしてくれようかと思ったものだ。

 

 プラントに帰属することを選んだ者は引き取って兵士…『獣憑き』の隊員となっているが、そこまで詳しく話す必要はないだろう。ぼかしながら一部がプラントで働いてるとだけ伝える。

 

「他の者は?」

 

 プラントの管理地にいつまでも置いておく事は出来ない。それ故に故郷や縁のある地へと送り届けた。だいぶ苦労をしたと付け加えると申し訳無さそうな顔をする。

 

「そうか、奴隷の者達を救けてくれて感謝する。その分も払えるだけ払うと約束する」

 

 ……本当に何も分かってないんだなと呆れる思いだ。昔ならオレも分かりそうにないと考えると随分と黒くなったな。

 

 送り届けた者達が助かる訳がないだろう。無事に故郷へと帰ることは出来てもそこから先が安全な訳がないだろう。

 

「どういう事だ?」

 

 奴隷たちの情報程度調べようと思えば簡単に調べられる。逃げられてカンカンの天竜人達がそれをぼーっと許す訳がないだろう。

 

 分かりやすく故郷なんかに帰れば即座に捕まり、また奴隷へと逆戻り。良くてもその場で殺されて終わりだろう。だから初めに言ったんだ少女(コアラ)なんて乗せてる余裕があるのかとな。

 

「……待ち伏せされてると言うのか?」

 

 少女(コアラ)を狙っているのならまだマシだな。あれがお前らを狙うために用意された餌の可能性の方が高いとオレは思うがな。

 

 目的を確実に達成するにはその少女の故郷の協力も必須、少女の知らないところで取引があってもおかしくはない。

 

 分かりやすい所で言えば少女を見逃してやるから魚人を捕まえるのを手伝えとかな。ありきたりだが良く効くだろうな。

 

「そこまですると言うのか?!お頭によって助かったというのに……」

 

「…………」

 

 平気でそういった事をするのが世界政府だ。真っ当な運営がされているなんて思わない方が良い。タイガーは思い至る所がある様だな。

 

「そんな善意を利用するような真似を、悪魔の様な事をするのか……?」

 

 欲を持つものを悪魔と呼ぶならば何かを成し遂げたいと願う者も誰かの幸せを願う者も悪魔になり得るんだろうよ。

 

 だが真に無欲な聖人なんて存在がいたらそれこそ人とは思えない。別の化け物だとオレは考えるがな。それでこの話を聞いてどう選択する。

 

「コアラを送り届ける事は変わらない」

 

 なら準備だけは、覚悟だけはしておく事だな。どういう結末になろうと後悔だけはしたくはないだろう。

 

 そこまで言うとタイガーは黙って頷き、呆然としているジンベエと呼ばれた男を連れて戻っていった。

 

 


 

 

 地上に戻ると堂々と歩き回ることが出来るということでそれなりの人数が船から降りて観光している魚人の姿が見られた。

 

 その輪の中には先程までしていた話の中心とも言える少女の姿もそこにあった。何人かが引率するかのように近くを歩き、話し、笑い合っている。

 

「アスカル様、少々よろしいでしょうか?」

 

 遠くから眺めていると『獣憑き』の隊長格の一人から声を掛けられた。何か問題でも起きたのかとも思ったがその者が非番なのに直ぐに気付き、何かの私用だと判断し落ち着いて対応する。

 

「『獣憑き』の者で彼らへの接触を希望する声が上がっています。許可を貰うことは可能でしょうか?」

 

 聖地から逃したタイガーはもちろん。一部のものは彼等の手で管理地まで送られたのだから話したいと思うのは分からなくもない。

 

 人数を聞くとそこまで多くはない。詳しく聞いていくとタイガーに一言お礼を言いたい者、魚人達全体にお礼を言いたい者、見覚えがある元奴隷仲間に声をかけたい者に別れている。

 

 タイガーに礼を言いたい者については向こうに声をかければ場所は用意出来るので楽な方だ。問題は残りの二つだ。

 

 『獣憑き』はプラントの兵としてそれなりに知られてにている。タイヨウの海賊団全体と話せば何をしているのかと怪しまれる。

 

 そして元奴隷仲間と話したい者については無茶を言うなというのが正直な所だ。顔を合わせずにその場を作るのは難しいし、そうなると証拠の提示等も必要だが、あってはいけない痕跡を自ら用意するようなものだ。

 

 タイガーへの面会希望は向こうに伝えて許可が出たらオレも拒否しない。タイヨウの海賊団への声掛けは荷物の受け渡し時にひっそりと行えるなら許可を出そう。だが最後のは流石に却下だ。

 

「そうですか……お時間を頂きありがとうございます」

 

 一瞬だが残念そうな顔をしたがもしかして元奴隷との会話を望んだ一人だったか?

 

「いえ、危険な提案なのは承知していました。アスカル様の判断に従います」

 

 『獣憑き』の面々は危機管理をしっかりさせるために見つかった者がどうなったのか、その末路を知っているだけありとても従順だ。

 

 任務などでも成果を上げつつある。この前のパーティでの動き等も含めると報いてやりたい気持ちはあるが、こればかりはな。

 

 魚人や人魚にだけ伝える事が出来れば他の提案も含めて色々と取れる手段が増えるだろうが………ん、そう言えば……いけるか?

 

「アスカル様?」

 

 急に固まって考え始めたオレを不安に思い声が掛けられたがゆっくりと答える暇はない。もしかしたら直接ではないが話せるかもしれないとだけ伝えて、とりあえず待機命令を出してピアスの所へと急いだ。

 

 


 

 

「アスカル様、ありがとうございます」

 

 電伝虫越しにはなってしまうが希望した『獣憑き』全員がタイヨウの海賊団の者たちと会話する事が出来た。突拍子もない思いつきだったが上手くいってよかった。

 

「魚の言葉について詳しく教えてくれっていきなり言われた身としては驚いたよ」

 

 今回はピアスにはけっこう無茶を言ったからな。多少の嫌味は受け入れるし、報酬もしっかりと用意させてもらおう。

 

 魚の言葉も周波数は違えど振動であることに違いはなくダイヤルを用いて記録することは可能だった。後は言葉や文章を構築するのに必要な数だけ、母音や子音に当たるものやその組み合わせ等を記録すれば他に伝わる事はない安全な会話が可能になった。

 

 対応するダイヤル等を覚えるのはそれなりの作業だっただろうが話すことを希望した者たちはそれを苦とせずに頑張ったのだ。

 

 こちらから向こうへの伝達手段としては問題ないが、相手から魚の言語で伝えられてもこっちは聞き取れないという問題がある。

 

 そのために相手からの声は一度記録して、流してその波長を観測して翻訳するという高度な技術が必要になったが、どうにかなったとだけ言っておく。

 

「そのままプラントの暗号にでも使えそうだね」

 

「『獣憑き』のうち8割は既に習得済みです」

 

 魚人や人魚には筒抜けになるだろう。海軍や政府に所属していなくても、魚人や人魚を雇っている組織や国がないとは限らない。

 

 だがそのまま使えないというだけで間接的に利用する分には有用かもしれない。身内にしか伝わらない合言葉を魚語で伝える……うん、まず部外者にバレる心配はないだろう。

 

 まぁ、『獣憑き』の面々に喜んで貰えたのは普通に良いことだ。副次的な効果として一部の魚人達からの反応も良くなったし、突飛な思いつきの結果としてはこれ以上ないだろう。

 

 


 

 

「こ、こんにちは」

 

 あぁ、こんにちは。昔と違って服装や覇気等で多少の威圧感を与えやすい。腰を下ろし、目線を合わせて挨拶を返しながら、視線でこの状況を作った者に問いかける。

 

「ニュ〜、すまねぇアスカルさん。俺たちの話を少し聞かれて会ってみたいと言われてよぉ」

 

 タイヨウの海賊団の中でも珍しく人間に対しての悪感情を余り持っていないタコの魚人。彼が少女、コアラの面倒をよく見ているらしい。

 

 『獣憑き』との電伝虫での会話について船内で話した魚人がいたそうだ。船内に部外者は入れないだろうが気を抜き過ぎではないか。

 

 それで興味を持ったらしく、あまり我儘を言わない……悪く言うと元奴隷らしく自己主張の少ない少女の願いを叶えたかったそうだ。

 

 とは言っても『獣憑き』の面々と会わせるのは如何なものか……いや、魚人達と比べるとまだおかしくはないがな。

 

 同じ元奴隷に興味を持ったのではなく、プラントの精鋭である兵士に興味を持って子供らしく話してみたいと望んだ……それなら辻褄は合うだろう。

 

「ニュ〜、ありがとう!!」

 

「ありがとうございます……」

 

 『獣憑き』とそれの統括をしているサイフォに連絡を入れて場を整えて二人を送り出した。なんやかんや便宜を図りがちだが許容範囲だろう。

 

 それにしても子供か……大人向けの娯楽施設はグラン・テゾーロが独立してからその補填として幾つか作られたが子供向けのはまだ少ないな。

 

 食材の採れる地の幾つかは観光出来る様になっていたりするがもっと遊びらしいものもあった方が良いかもしれないな。それこそマニュのお腹の子が産まれ、大きくなるまでに用意するか。

 

 とは言ってもどういったものが良いのか、一から考えるのも良いがとりあえずは既にあるものを真似させて貰うとしよう。後日、何か良い案はないかと幹部たちにも訊ねたところ、サイフォとピアスから同じ案が出た。

 

「シャボンディパークを真似たらどうかな?」

 

「せっかくシャボン技術があるんだから使わない手はないだろうよ」

 

 なるほど、シャボンディパークを基にしてバブルやウェザーボールも使えばもっと色々と幅が広がりそうだな。

 

 


 

 

 プラントの管理地では海賊たちも海軍を警戒する必要がないために長期的に停泊することもそれなりにある。

 

 その中でもピアスがいるプラント本土は魚人に対しての意識も世間と比べるまでもなく良い為にタイヨウの海賊団も長く留まっていたが、今日出港すると言われた。

 

「世話になった」

 

 あまり世話をしたつもりはないがな。迷惑をかけられた部分はあるが、まぁ取引の範囲だと思っておく。

 

「それと追加の件もよろしく頼む」

 

 あぁ、フールシャウト島の永久指針が手に入ったら確保しておく。管理地に立ち寄ったらそこの係の者か、オレの分身がいたら訊ねると良い。

 

「お前からの忠告、気に留めておく」

 

 最後にそう呟くと自分の船に乗り込み、出港の合図を出し、プラントを去っていった……あれは生き方をそう変えられる男ではないだろう。

 

 取引の関係上で伝手がとにかく多いために直ぐに永久指針は手に入れられるだろう。

 

 見聞色はあまり得意とは言えないが永久指針を渡したらどうなるかは簡単に予測できる。だからどうしたと言えばそこまでだ。

 

 こちらから関わるなんて気はさらさらない。取引についての話だけを進めていく。とりあえずはテゾーロへ奴隷の件を話すことからやっていこう。

 

 


 

 

 久しぶりにフーシャ村へと訪れると相変わらず赤髪海賊団の姿が見えたがその頭の姿が大きく変わっていた。

 

「こりゃあ、気にすんな」

 

 お前ほどの奴が左腕を丸々無くしておいて無茶を言うな。だが、ここいらにそれほどヤバイ奴が現れたという話は聞かなかった。

 

 そしてシャンクスの姿を見た時、僅かにルフィの表情が変化したことから察するにそういう事なんだろうが、もうちょいやり方があっただろう。

 

「あいつが無事ならこれぐらい安いさ。それとお前にも行っとくがもうすぐ俺たちはここを離れる」

 

 そうか、元々こんな辺境の海、最弱の海と呼ぼれる様な場所に居るのがおかしいレベルの海賊団だ。出ていくというのも当然と言える。行くのは新世界かと訊ねる。

 

「そうだな。この海での目的は果たした。向こうで動き出すつもりだ。たぶん大丈夫だとは思うがルフィのことは頼んだ」

 

 お前らがいるからガープの爺さんはオレを寄こしてるんだ。お前らが居なくなればおそらくルフィはガープの爺さんが見るはずだ。

 

「仕事じゃなくても顔見せてる時があったろ?山にも顔を出してるようだしな」

 

 時間に余裕があれば顔は出しておく、ガープの爺さんに止められたらそこまでだがな。それと新世界に来るんなら本土に寄って金を落とせ。

 

「ははっ、そうさせてもらう」

 

 数日後、赤髪海賊団はフーシャ村から完全に撤退した。残されたルフィの頭には見慣れた麦わら帽子が鎮座していた。まだまだ不格好だが悪くないじゃないか。

 

 


 

 

 それなりに深く関わってしまった海賊団の出港をこうも立て続けに見送ることになるとはな。まぁ、先の奴らとあいつらでは印象が全然違うがな。

 

 そんな事を考えながら少しばかり意気消沈しているルフィを軽く撒いて山に登るとこれまた見慣れた山賊小屋へと顔を出す。

 

「アスカル!!来てたのか?」

 

 ちょうど外へ出る所だったのか入り口を開けて入って直ぐでエースとばったり出くわした。まぁなと軽く挨拶をして土産を渡しながらダダンが居るか訊ねる。

 

「あぁ、奥に居る。今日は何をしに来たんだ?」

 

 報告と世間話だな。定期的に来ていたけどこれから先は来る機会がたぶん減るだろうからいつもより多めに色々持ってきてもいる。

 

「アスカル来なくなるのか?!」

 

 オレが来ていたのはガープの爺さんの代わりだ。ガープの爺さんが来れなかった理由がなくなったから、定期的に来ることがなくなるが、全く来なくなるわけじゃない。

 

「そうか……今日は飯食ってくのか?それならこれで何か狩ってくるぞ」

 

 そう言って鉄パイプを振り上げてみせる。それなら頼むと伝えると少しだが嬉しそうに笑い山道へと駆け出していった。

 

 勝手に飯を食うことを決めたがダダンなら断りはしないだろう。そう思いながら道中の山賊達に手を振りながら奥に居るダダンの所に顔を出す。

 

「アスカルか、またこんなとこまで来たのかい?」

 

 憎まれ口は相変わらずだな。それとオレが来る頻度は減るだろう。これからはガープの爺さんが顔を出すと伝えるとダダンたちの顔が一気に引きつった。

 

「げっ嘘だろ?!なんでまたそんな?!」

 

 前から言ってたがここ最近、オレばかりが来ていたのは下にそれなりの海賊が居てガープの爺さんが動きにくかったからだ。

 

 そいつらが拠点にしていた村を去った。邪魔がなくなったからにはあの爺さんは時間をみつけては顔を出すだろう。それと今日は飯時まで居させてもらう。

 

「マジなのか最悪だ……ここ最近は襲来に怯えなくて済んでたってのによぉ……飯は勝手に食ってけ、お前は土産を寄越すし、どうせ肉を狩るのはエースの奴だからな…はぁ……」

 

 だいぶテンションが下がったな。まぁ、伝えないよりは覚悟が出来る分マシだと思う。あの人は本当に唐突にやってくるからな。

 

 その、なんだ…最近の調子はどうなんだ。山賊に訊くのもなんだと思うが、稼業は順調か?

 

「変な気を使うんじゃねぇ!!ったく、あんたが取引の品を運んでくれるおかげで他の連中よりは上手くいってるよ」

 

 共犯者のよしみって訳じゃないが取引を行うためにはプラントの管理地までは来てもらう必要があるところをダダン達に限りこの拠点まで配送している。

 

 拠点である船ごと入れる海賊と違い、山賊だと帰り道を狙われる可能性が高く、プラントを利用しようにも難しい部分がある。

 

 それがなく安全に適正価格で物資の入手が容易な分だけダダン達は動きやすいという訳だ。まぁ、ガープさんから遠回しに頼まれてるエースのサポートの一貫だ。

 

「そういうあんたはどうなんだ?つっても国なんかの事はわかりゃしないけどね。最近、また新聞に記事が載ってただろう」

 

 面倒事がけっこう立て続けに起こったがなんとか乗り越えたと言えるかな。苦労と見合ってるかは微妙だけど総じて利益的には上々と言えるよ。

 

「互いに命があって、儲かってんなら悪くないんじゃないかい……そう言えば子供の話はどうなったんだ?パーティがあったのは記事に載ってたけど」

 

 あぁ、母子ともに無事に産まれたよ。まだ政府にも世経にも伝えてないけどね。奇しくもまた世間よりダダンの方が知るのが早くなった訳だ。

 

「早く知った所でなんの得もないだろう。それとも世経にたれ込んでいいのかい?」

 

 モルガンズの奴なら即座に対応しそうなもんだけど。たれ込んだ瞬間からオレとお前の関係性を調べるだろうし、ガープの爺さんやエースにたどり着かれたら終わりだぞ。

 

「冗談に決まってんだろ。それでその子の名は?」

 

 意外と興味を持ってくれてるんだな。その子には()という意味を持つ言葉を名付けたよ。いつか必ず芽を出すようにと……

 

『グレーヌ』

 

「良い名じゃないかい」

 

 




いつもより書きやすかった。

ですが痛みで眠れない中で書いたので変なミスしてる可能性は高いので誤字脱字ありましたら教えていただけると助かります。いつも報告してくださる方々には頭が上がりません。

あ、痛い原因は親知らず抜いたからです。常に口の中が血の味がして不味いです。抜いた日は一睡も出来ませんでした。ただひたすらに辛い……

皆さま、アンケートにご協力頂きありがとうございます。アンケートの結果、去年の続きを書くことになりました。というかもう書きましたので4/1をお楽しみに。

それではいつもの挨拶でさようなら。
読んでくれている方々に多大なる感謝を。
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