朧気な思い出の中で最も古いのは関係性だけで言えば親とでも呼ぶべき存在達が顔を引き攣らせて銃口を向けている姿。
いつからこの力があったのかは欠片も覚えてないが産まれて直ぐに与えられたということを知っている。
とても硬い物や刺激的な物で溢れたそこでボクは過ごしていた。毎日毎日色々な物を呑み込んで、全てを呑み込んで島がなくなった。
ただ満たされない渇きを誤魔化すため、呑みこむ快感を味わうために本能的に次の場所を目指した。
呑んでも呑んでも満たされない空っぽ。それもその筈、そこにボクはなくて、初めから悪魔が宿っていたんだから。
ボクという自我が生まれるよりも先に悪魔が宿った。ボク自体が悪魔の上で生まれた存在。
その頃には多くを呑んで知識だけはたくさん持っていた。呑んだ存在の全てを混ぜ込んで生まれた出来損ないこそがボクだ。
確固とした自己のない存在が本能を抑える事は出来ない。そのため出来上がったのが人らしく振る舞う悪魔。
自分を抑えず、他者から邪魔もされない。我儘な自由は考える必要を無くし、楽ではあった。
そのまま死ぬまで呑み込み続けて終えると思っていた。だけど誰にも止められなかったボクを止めた人がいたんだ。そう、アスカルだ。
美味しい匂いのする方向へと進む途中でアスカルと出合って戦い、ボクは負けた。そして何故かプラントにボクも住むことになった。
アスカルは根気よくボクに教育を施した。知ってるだけでは意味がないと使い方を教えてくれた。そこで初めてボクは出来損ないではなくなったんだ。
それから特に暴れるでもなく、バレないように隠れながらプラントで食べて勉強して寝ての生活がずっと続いていった。
そして見つからないように気を付けていれば割りと自由に動ける様になった頃、アスカルとマニュに子供が出来た。
周りも騒がしくなり、しばらくお祭り騒ぎで普段とは違う物を色々と食べれたのは嬉しかったけど、全員が忙しそうにしていて少し退屈だった。だけどある時、マニュを見に行った時からそれは綺麗に消えてしまった。それはマニュの小さな一言だった。
「もうすぐラトニーもお姉さんね」
自分が何歳か正確な所は分からないけど身体が小さく、見た目が幼いだけでボクはアスカルやマニュよりもたぶん年は上だ。
それでも二人から子供の様に扱われるのは生物としてはまだしも、人としてまだまだ子供だからだろう。ボクもそれが心地よかった。
そんな時に二人の間に子供が出来たのは嬉しさと寂しさがあった。だけどこの子のお姉さんになって良いんだと知って、産まれてくるのが待ち遠しくなった。
色々と騒動の後で無事に産まれたその姿を見た時には私が教えられる事なんてないかもしれないけど、絶対に守って上げるんだとそう思えた。
だってアスカルとマニュの子供なんだから、ボクの空っぽを埋めてくれる人たちの所に産まれて来たんだから、きっと素敵な物が一杯詰まった子だから。寝ている姿を見て、こういう時になんて言うのかを思い出した。
「食べちゃいたい位可愛いね」
うん、ボクが言うと喩えにも冗談にも聞こえないのは分かったけど、本当には食べないから遠ざけないでボクにも撫でさせてよ。