みなさまお久しぶりです。
第39プラント 零の時来たれり、幕裏の酒宴
プラント建国から23年、一人娘であるグレーヌが産まれてから12年、集大成であるワールド・バイキング初開催からは10年、気付けばかなりの時が流れた。
当時は14歳の最年少国王などと有る事無い事で騒がれたが今はもう37歳と国王としては若い方であるがそれなりに歳を重ねたと言って良い。ふり返ると感慨深い思いである。
フルコースアイランドや各海に大規模な交易所が完成するのに伴いプラント自体を訪れるのは海賊や冒険者を除けばよっぽど特殊な事情を持つ者だけとなった。
今までは交易に必要だったために公開していたプラントの航路、これは未だにモルガンズを通して世界に提供している。今まではと称したのは公開の理由が変わったからだ。
表の物流において大幅にリードしているプラントが一律の値段で何処にでも何でも売ってしまうと問題が出てしまう。その為に一部の商品は値段の調整を行い、能力行使分の人件費として足し、プラントや採集所と各支部との距離を基に示している。
プラントの動き方次第で値段が変わる商品が存在する以上はプラントの位置情報は重要になってしまう。その為に未だに公開し続けているのだが、これで得をしているのはモルガンズだけだろう。
そのモルガンズ自身は情報の為に未だにあちこち動き回っている様でこの前はビッグマムの所で会ったが、何やら海賊についての情報を集めていたのは覚えている。
その海賊のせいで今は国交の途絶えたドラム王国が滅ぼされたと情報が入ってからはアイツの耳は何処にまで通じてるのかほとほと疑問に思ったものだ。
国交と言えばアラバスタの方はここから先どうなるか。プラントは誰とでも取引すると謳ってる以上はオレとコブラ王の繋がりは印象に影響は与えられない。仮にこのまま反乱が進んだとしてもプラントは国相手に取引を続けるだけだ。
ただグレーヌの良き友人であったビビ王女が行方不明になり2年間、未だに何処で何をやっているのかは疑問に思う。端からただの反乱ではないとは分かっていたが色々と世界に変化が訪れているのかもしれない。
さてと身近な変化の1つを見に、東へと行くとしよう。成長という名の変化を、友人と見守ろうか。食材採集の方は心配せずともあの子達に限って問題はないだろう。
偉大なる航路に初めから存在するが島々には多くの鉱物が含まれており、その鉱物が持つ磁気によって天候などに影響が出ており航海が難しく、とはいえその磁気を
「うわ〜
「ここ、新世界」
「いや〜3つともイカれるのは新世界でも珍しいのね」
帰りの事は
楽園と呼ばれる前半の海で使える針が一つの記録指針では航海できず、新世界で使われる三つの針がある記録指針、それさえも使えない屈指の魔の海域、そこに二人で食材探索に来ていた。
「アスカル様みたいに島の場所を感知は出来ないのね。だから針が当てにならない海の進み方を考えたのね。ポコの考えではより影響の大きい方へ舵をきれば辿り着く筈なのね」
確かに目指している島の影響下でこうなっている以上は間違いではないだろう。とはいえ明らかに事前の情報なしに行き当たりばったりでの考えに胸を張る姿には不安を覚える。
「最悪、泳ぐ」
そう言って海を指差すフィン、だがその海は風が吹き荒れ、波が高く、その波の中に光を反射する様な光沢ある石が混じってたり、明らかに電気を帯びていたりするのが見える。
「フィンでもこの海で泳ぐのはキツイのね。荒れまくってるのは腕前で、ビリビリは装備で防げても、鉱石が混じってるのはどうしようもないのね」
四隊長が幹部に正式になってから専用の装備なども持てるようになり、フィンが要望として出したのは水中での活動を助けるものや水中でも問題なく使える武具などだった。
それらを用いれば大抵の障害はなんとかなる。鉱石に関しても武装色の覇気を使えば当たっても防げるだろうが島の影響の範囲から抜け出すまで覇気の維持はまだ保たない。
「だから、最悪」
「……はっ?!ポコをおいてくつもりなのね?!そうなのね?!」
最悪泳ぐというのは島につけなかったらの話ではなく、推測で船の舵をとるポコに対しての万が一を想定しての話であり、それにようやく気付いたポコが慌てて追求、そして弁明を始める。
「島による異常と天候の異常を見分けたり、見つかる鉱石の数に注視すれば大体の距離感はつかめるのね。幸い命の紙や永久指針もあってそれらのさす方向から自分たちの場所も把握できるのね。だから何も心配ないのね」
「了解」
「そもそも食材の情報を考えれば視界に入ったら直ぐに分かる筈なのね。だからある程度の危険は承知で記録指針が暴れる方へ進むのね」
唯一信じられると言われる記録指針の針さえも狂わせる海域の奥へとひたすら船を進めていく、影響により機械は使えないこの海域で、特別な設備なんて全然ない小型の船を走らせる。
ある時には電気に耐性を持つ海王類に襲われ、またある時には磁気を操り鉱石と共に空を飛ぶ魚の群れとフィンが会話をし、またある時には電気を纏った怪獣をポコが飼い慣らし、電気と磁気、鉱石の溢れる海域にて五日程の航海を続けた。
「左前方、十時、影」
「試しにと保管庫から出してた安物の永久指針がぶっ壊れたのね。使ってる記録指針の方もブレブレ……間違いないのね」
「目的地、フォースマグネ」
「四つの巨大な磁力を持つ島同士が干渉し合う、強力な影響は星にも届き常に磁気嵐に見舞われる危険な島……」
島自体が浮いており、周辺の鉱石を引き寄せたり弾いたり、果てには島同士でぶつかり合い、火花や電撃を発生させている。
「さてどうやって上陸するのね」
「船、危険」
守りも無しに船をとめて行けばまず間違いなく帰りの足を失うことになる。とはいえありとあらゆる機械が使えないこの場で船を飛ばす様な物はない。
島の近くにおける気候帯の影響が強すぎるせいでウェザリア産の技術もろくに使えない。雲などを生み出したとしても直ぐに掻き消えてしまう。
「月歩」
「うへぇ、と言いたい所だけどそれしかないのね……」
二人でここまで来たことから分かる様にそんなに大きな船ではない。新世界に派遣しても問題ない実力者な二人は船を持ち上げて空を跳ぶのも不可能ではない。
なんなら普段から巨大化した動物や魚を相手にしている二人なら一人でも持とうと思えば持てるだろうが安定を取るために協力して運ぶのだ。
しばらく島の動きを観察し、規則性などというあるかどうか分からない存在を見出すのではなく、一時的に乗り上げる為に危険の少ない場所を探す。
そうして幾つかの場所をピックアップして番号をふると海面に触れない様に気を付けながら二人で船を持ち上げながら空気を蹴って上空へと跳び上がる。
「島が変わったのね…4番に向かうのね」
「了解」
幼少期から一緒に過ごして来ただけあり、四隊長は息を合わせるのが得意であり、もの静かなフィンと騒がしいポコも相性悪そうに見えるが余裕で島の高さまで駆け上がった。
島が新しい動きを始める前に上空へとやってくると即座に降下して船をおろし、移動時にすっ飛ばない様に固定して、一息をつく。
「ふぅ、なんとかなったのね」
「疲労」
普段の仕事とは全然違う為に肉体的にはまだしも精神的な部分では多少は疲労している。だがそれくらいで弱るほど軟でもないと歩きだそうとした瞬間に地面が大きく揺れる。
「っとと、危ないのね」
「壁ない、風も危険」
島同士がぶつかり合って起こる衝撃もさることながら島が動く際にもろに吹き抜ける風も支えがなければ空に真っ逆さまに落ちかねない。
より研究がされれば安全に探索する事も可能だがとりあえず二人は足裏で地面を掴むようにして歩いていく。すると突然、茂みから獣が飛び出してきた。
「友好?」
ポコの見聞色は対象の心を読み取る方向に伸びた。その見聞色で特に動物の気持ちを読み取り仲良くなるという特技があった。
フィンも似たような事を魚相手に出来るがポコと違い魚の言語を理解しているから見聞色だけの力ではない。見聞色の心方面の力量だけをみればポコが上である。
だがフィンは広い海で魚の位置を把握したり出来、気配の小さい存在を細かく感知したりする点では優れている。
ティアはコーヒヒと一緒にいたから多少は読み取る力はあるが、力が弱いために相手の力を利用して戦うのでどちらかと言うと相手の動きを読む方が得意だ。
デルは覇気全体が強いがそんなに特徴はなく、よくも悪くも普通な感じだ。見聞色は方向性が違うため純粋な強い弱いは分かりにくいが武装色の強さはデル>ポコ>フィン>ティアとなっている。
「残念だけど仲良くはなれそうにないのね」
ポコがそう言った瞬間に相手は飛び掛かりこちらへ猛スピードで接近してきた。その獣は手足に鉱石の様な爪を持っているのが見えた。
「速さの仕組みはあれなのね」
「電磁浮遊、引力、斥力」
この島の磁気を読み取り利用するだけの知能がある。それでいてこの凶暴性を考えるとかなり自然が厳しい環境なのだと判断出来る。
覇王色はどちらも持っていない為に戦闘を避けることは出来ない。そうと決まればそれぞれ得意の得物を取り出して構える。
「先」
たった一言伝えると水中で魚人レベルに動ける脚力を活かした最速の動きで接近し、銛と似通った
「『
槍に滴る水を伝って突きの鋭さに合わせて衝撃を内へと浸透させる。それを獣の四肢の先にある爪全てに放ち、再び元の距離まで戻る。
相手からすれば一瞬だけフィンの動きがぶれただけに見えるだろう。気にせずに襲い掛かろうとすると何が起きたのか分からないままに自身の爪が割れて砕けるのだ。
普段から磁力を用いて島の動きに対応していたのだろう。爪がたてれないのもあって揺れるがままに身体を倒して動きもままならなくなっている。
ポコは獣の尻尾の様にモフモフとしたハンマーをヌンチャクの様に繋げた物を武器としている。
彼女ののらりくらりと過ごす姿は働き者なトンタッタとは似ていないが、純粋で何処か抜けた所とは通じた様で相性が良く、共に散策して遊んだりして仲もかなり良い。
戦闘訓練が始まってから何人かの友達からトンタッタコンバットを教わり、種族の差で真似できない動き以外はマスターしたのだ。
彼女はトンタッタ族の様に素早く動く事は出来ないが身のこなし自体はとても軽やかでパワーはトンタッタのそれよりも遥かに強い。
相手の目の前でクルリと前宙し、回転の動きを取り入れ、腕に力を込めて、ヌンチャクの振り回しを合わせて衝撃を叩き付ける。
「トンタッタ…『ポコポコハンマー』!!」
人間を半分近く地面に埋める本家の威力にまったく劣らないそれは獣の身体を土で完全に隠し、その衝撃が地面にも伝わり、獣の周囲までも陥没している。
「格付け完了なのね」
「強さ、位置、何処」
「素早い割にはフィンの動きは追えてなかったのね。全体の真ん中くらいじゃないのね」
この島から感じられる気配からも最上位ではないのは分かっていた。おそらくこの獣の動きを見切る事も可能な相手やより重い攻撃を仕掛けてくる相手もいるかもしれないと仮定して動いていく。
それでも一度それなりの相手を完膚なきまでに叩き潰したのは効いたのか近くの同じくらいの気配の獣はこちらを見はしても仕掛けてくる事はなかった。
「探しやすくて良いのね」
妨害がないとは言え土地が土地のために進んでいくには時間がかかる。面倒なのはこの島に目的の食材がなかったら他の島までまた渡らないといけないのだ。
仕事である以上は見つかるまで探索するつもりであるが出来るならば最初の島で見つかってほしいと願う二人。その願いだけは案外簡単に叶うのだった。
「またうわ〜なのね」
「ボス、縄張り」
目的とした食材は運動エネルギーを栄養に作り変えるという特殊な生態を持つ。この島の磁気と反応し、成長した葉の部分が宙に浮かぶ。
浮かんでからは他の浮かんだ葉と干渉し、まるで観覧車の様な姿をとり、回せば回すほど旨味も甘みも増し、シャキシャキになるキャベツ、甘藍車。
溜め込む栄養が増えるほど大きく育ち、大きく育つほど含む磁気も大きくなり、甘藍車の規模も大きくなるそうだ。そしてそんな甘藍車を縄張りにする野生動物がいた様だ。
「コング系」
「トロルコングのボス個体シルバーバック、その亜種のパンクシルバーバックに似てるけど」
身の毛がこすれて発生する静電気で毛を逆立てて威嚇を行うだけでなく、その反発力で地底の超重力にも耐えるシルバーバックの一種。
特に頭髪には大量の電気が蓄えられ、アフロのように弾けているため、パンクロッカーのような風貌になっているのがパンクシルバーバックだが……
「弾けてる」
アフロどころではなく、毛という毛が完全に伸び切って棘の様になっており、毛と毛の間に電気が走っているのが見えている。
身体に纏う電気が静電気どころではなく、磁気を完全に操り宙に浮いて甘藍車を乗り継いで遊んでいる姿が見える。
「私の場合触れたらアウトなのね」
「潜水服、ゴム入り」
ポコのヌンチャクは耐火や撥水性はあるが生憎と帯電性はない。フィンは武器は金属製だが身につけている装備が帯電性能が高い素材で出来ている。
「宙、数、辛い」
自然と戦いはフィンが請け負う形になるが空中戦は別に得意ではないフィンが自由に飛び回るパンクシルバーバックの群れを相手に戦い続けるのは厳しい。
とは言いつつも排除しなければ食材採取を出来そうにないので果敢に挑んでいくフィン。三叉を片手に空に跳ぶと一番近い相手に思い切り突く。
「硬い」
突き刺さりはせず、なんとか吹き飛ばしはしたものの倒せてはいないだろう。纏う電気で体中の毛が逆だっているがピンピンになった毛が硬さの一因だろう。
長い毛は触れれば切れる鋭さで短い毛はびっしりと生えていて攻撃を防ぐ攻防一体の鎧となっている。毛の段階で攻撃を止められると衝撃が空中に逃げて内側にも届かない。
今度はしっかりと武装色の覇気を纏わせて次に近い敵に突き刺すと今度は毛をへし折って内側まで刺さり、その衝撃を叩き込む事も出来た。
だが次の瞬間に上から鋭い攻撃が届き、三叉を上に構えて防ぐが月歩では踏ん張れず地上に一度落ちる。
「消耗」
纏わせる武装色はもちろん、何処から向かってくるか把握する為に見聞色も使い、常に月歩で走ってと覇気も体力も同時に消耗していく。
再び戦闘に戻るが既に多少は警戒されており、最高速を出さなくては刺しにかかることも難しい。空中移動能力持ちの厄介さが嫌でも分かる。
「あの食材を少し使えば補助出来るかもなのね」
ポコは戦闘を任せる以上はなんとか補助をしなくてはと考え、利用できる物はないかと探してる際に目の前にちょうどいいものがあると思い出した。
収穫の際には甘藍車同士の磁気に気を配らなければ鮮度が著しく落ちるのにくわえ、急に磁気を失った他の甘藍車が思い切り飛び散る。
存在した筈の磁気を急に失えば移動に磁気を用いているパンクシルバーバック達の動きに影響を与えられる。フィンとタイミングを合わせれば一掃する事も出来る。
甘藍車自体はまだ数がある。一つ失ったとしても仕事には影響は出ない。そうと決まるとポコは早速動き出した。
ポコはパンクシルバーバック達がフィンに集中してるのを確認すると気配を消して甘藍車の直ぐ下までやってきて、ヌンチャクハンマーを構える。
「ついでに向こうに飛ばす…『ポコポコスイングハンマー』」
本来のトンタッタコンバットでのスイングは相手を振り回してやる技だが、そのスイングの勢いを乗せてハンマーを叩き付ける。
思い切り吹き飛んだ甘藍車は真っ直ぐに群れの真ん中に飛んでいき、残った甘藍車もあちらこちらへと散らばっていった。
肝心の効果はどうかと見てみると悠々と空を飛んでいたパンクシルバーバックは制御できずに真っ逆さまに落ちたり、なんとか持ち堪えてもふらふらで先程までの素早さは見られない。
「『
簡単に狙いをつけれる様になったパンクシルバーバックを見据えると全体を狙える位置につき、三叉を硬化させると水にも覇気を載せて飛ばした。
『撃水』よりも小さい水の弾は突きと共に無数に放たれ空で身動きが取れなくなった哀れな相手を全て捉えてみせた。
空中のが全て倒され残りは落ちたパンクシルバーバック達と思っていると、どうやら落ちた相手は体内の調整までやられたのか纏っていた電気がなくなっている。
「『ポコポコアッパー』!!」
倒れているパンクシルバーバック達の間をすり抜けるように駆け抜け、すれ違いざまに跳ね上げる様な勢いでハンマーを喰らわし、群れの殲滅を達成した。
「やったなのね」
「戦闘終了」
戦いを終えてじっくりと甘藍車の対応が出来るようになり、磁気を損なわないように気を付けながら集めきり、苗や種も見つけ出して回収した。
「どう持ち帰る?」
集めたのはいいものの、苗や種はまだしも甘藍車自体はとても大きく乗って来た船に載せるのは厳しい。そうフィンが悩んでいるとなんでもないようにポコが何かを取り出した。
「グレーヌちゃんから『空種』をもらって来てるのね」
アスカルの娘でありアスカルと同じく悪魔の実の能力者であるグレーヌ、彼女が生み出す種の中でも一際便利な収納機能を持った種の中身がないものだ。
「何個?」
「大物だと思ったから幾つかもらったのね」
「…………」
それを聞くやいなや、静かに目を細くさせてポコの事をじっと睨み続けるフィン、異様な雰囲気に負けてポコが自分が何かしてしまったのか訊く。
「な、なんなのね?!」
「船、仕舞えた」
「あっ?!……はははははなのね」
笑って誤魔化されてはくれず、いらない苦労をさせられた分だけ帰り道で働かされたポコだった。
同じく偉大なる航路の後半、新世界を進む船が一隻。この海域を進むに当たって丈夫な金属を使われた無骨な
「よし!!見えてきたぞゴロゴロ海域!!」
「それでは早速動かしますね。
ティアが船の機構を操作すると外輪の前方に調整された海雲が次々と生み出され外輪がそれを掴むように周り船が空中を進み出した。
海雲は浮力が弱いために外輪部分だけで船全体を浮かせるのは難しく、確実に掴ませる為に島雲に少しだけ。近い性質、硬さを持つ様に作られている。
どちらかと言うと船というよりも線路を走る列車に近い動きが出来るのがこの雲道外輪船である。
「それにしても既にわけのわからない海だな!!」
「そうですね。名前の通りゴロゴロ転がってはいますが……っと面舵きります」
前方から空中を走る船を容易く呑み込むであろう海の玉が転がって来て、躱すために舵をきって避けてから再び進路をもとに戻す。
「向こうには土の塊もあれば岩の塊、向こうのは鉱石だろうか?当たれば一溜まりもないな!!」
「ここいら辺に存在する特殊な鉱石が持つ引力……核となる鉱石が大きい程より大きな玉へと成長するらしいですよ」
海の玉が出来上がるのは鉱石が海水に混ざっているからで海水を引き寄せた微小な鉱石を大きな鉱石が引き寄せる事であれは出来上がっている。
船が金属製なのはその微量な金属の影響で普通の木製の船だと結構なペースで削られて使い物にならなくなってしまうからだ。
金属製の船も使われている金属を引き寄せる鉱石の影響を受けてしまうので気をつける必要がある。鉱石ごとに集めやすい物が違い、それらは鉱石が生成される時の条件によって変わるらしい。
生成時の条件は分かっていないがその鉱石を無効化する方法は判明している。近くに少し強い影響を持つ塊に船が引かれているのを確認するとティアは懐から銃を取り出した。
「それはピストルか?そんな物でなんとかなるのか!!」
「これは特殊な代物ですから、試験運用にぴったりです」
そう言ってまだ遠くにある塊に向けてティアが一発の弾を撃ち出すと着弾した瞬間にその弾の範囲内を焼き尽くすかの如くの爆発が発生し、落ちることはなかったが船も大きく揺られた。
「ティア、それはいったいなんだ?!」
「アスカル様が地下深くから見つけました物をわざわざ加工して頂いたダイナ岩を用いた極小弾です」
古代兵器に匹敵するとも言われる威力のダイナ岩、本来であれば危険性から海軍が全て管理しているが、一般的な技術では回収不可能な位置に自然生成された物を研究用にと確保していたのであった。
ゴロゴロ海域を作り上げている鉱石は熱に弱い。弱いと言っても炎程度では効力を失う程にはならないがマグマクラスの熱量を加えると途端に引力を失う。
そして再び効力を発揮するには一度完全に冷え切らないといけない。海水に浸かるなどして冷却すればそのうちまた効力が復活するだろう。
「それでは人目がある所では使えないのか!!」
「いえ、誤魔化しようはいくらでもあります。とりあえず先程までのサイズでしたら対処は可能です。速度は落とさず真っ直ぐに向かいましょう」
この機能満載の船を使えば特殊な海域とは言ってもそこまで苦労はしない。海域に入ってから3日も経ったら玉が見られなくなり、空気が少し暑くなって、そして……
「島が見えたぞ!!」
「鉱石単体での反応の確認されない火山島……情報に間違いはなさそうですね」
島に上陸してみると空気からも分かっていたがかなり暑く、触れる場所によっては熱いくらいの地面もあり、厳しい環境なのが窺える。
この島は鉱石の産地でありながら鉱石の効力が失われているという面白い島である。実をいうと興味を持った研究者が調査するまでは何処から鉱石が出てきているのか謎だった。
まさか鉱石の特徴が見られないこの島が産地だと誰も思わなかったそうだ。鉱石は火山が噴火する際に噴出される溶岩や噴石に混ざっており、冷まされながら削られて海水や土壌に混じる。
そうしてまだ効力を発揮する前の段階の鉱石を養分と共に吸収し成長するこの島の作物は様々な物に対して引き寄せられ自然と転がり出す。
「あったな!!あれらがゴロゴロお野菜か!!」
「普通は料理に含まれる大き目の野菜の事ですが…まさにゴロゴロしてるお野菜を見るとは、中々興味深いですね」
何を引き寄せやすいか性質も分からない内から吸収するために決まった軌道はなく、不規則に転がる作物。
その取り込んだ鉱石の何割かは作物の栄養となり得る物質を吸着し、作物は触れた部分から吸収してどんどん育つ。
成長してからも鉱石は取り込むためさらに栄養を集め大きくなり、鉱石を取り込む空間も増えて、さらに引力は増し、さらに栄養を引き寄せと際限なく成長する。
ちなみに作物の適応なのか進化なのかは分からないが鉱石は作物の外側に蓄える性質があり、葉物なら外葉が、根菜などは皮に鉱石は貯まる。
食べる際には鉱石の存在しない場所に安置し、一週間経ってから硬質化している部分を除いて調理するそうだ。
大きな鉱石の影響なくゴロゴロ転がるのはこの野菜たちくらいで、本来なら微量な鉱石だけではこの様な挙動は見せない。そもそもこの島は地熱がかなり高めの温度になっているため鉱石が冷え切らず効力は出ない筈なのだ。
おそらく野菜が取り込んだ水分などによって一部の鉱石が冷やされていくのだろうが、流石に設備もない環境では検証する事は出来ず少し残念そうなティア。
「これはどうやって回収するんだ!!」
「とりあえず先にこの島の作物の種と鉱石及び鉱石が含まれている土壌を大量に回収します」
「おう!!プラントでも育てられるか実験用だな!!それで作物本体はどうするんだ!!」
ゴロゴロ転がる野菜は海域とは違ってしっかりとした地面があるのでそれなりの速度が出ており、外側が硬質化している影響でかなり危険である。
「作物なのでマグマクラスの熱を与える訳にはいきません。隔離してからの時間経過以外に鉱石を取り除方法はありませんので、力ずくですね」
「おう!!……え?」
珍しく勢いが落ち、声が小さくなるデル。その顔は少しばかり引き攣り、目だけでマジ?とティアに聞き返している。
「作物が生きてないと鉱石は取り除けませんし、猛獣食材用の檻に入れるしかないでしょう。捕まえて来てください」
「……小さめのでも良いか?」
「全種全サイズ五個ずつあれば足りるでしょう。海王類用の檻も載せてあるので問題はありませんよ」
せめてもの抵抗をしてみるがそれも儚く終わり、その為にこの編成になったんですよと船を操作して檻などの設備を準備するティア。
デルは頑張った。武装色の覇気を全力で使い、ガス欠になって回復してを繰り返し、ほぼ丸一日かけて全ての野菜を捕獲した。
「温度は高めでも大丈夫、水も温めで頻度は少なめ、大サイズ野菜の鉱石が活性化しない様に調整出来てますね。環境設定完了、それでは帰還しましょう」
「おう……」
ヘトヘトのデルを横目に生きたまま管理しないといけないゴロゴロお野菜用に船内の特別倉庫の状態を変更し終えるとプラントに向けて舵をとるのであった。
久々に生身でやってきたフーシャ村、まだ日も出て来ていない時間だ。まだルフィはダダンの所にいるのだろう。
「おや、あんたは確かアスカルさん!!」
そうかまだ村全体が起きている訳では無いが漁船なんかは早いところだと出ててもおかしくはない時間だったか。騒がしたい訳では無いので軽く挨拶をすると黙っててもらう様に伝える。
「あんたも見送りか」
「なるほどサプライズなのか」
顔を見せるつもりはないさ。いやプレゼントは用意しているからサプライズには違いないがな。そう言うと不思議そうにはしていたが納得し、そのまま分かれた。
ある程度立場があると一々説明をしなくてもきっと理由がある。何かしらそうする必要がある。なんて相手が考えてくれて便利な時がある。
フーシャ村の港に酒場、コルボ山の小屋近くに森奥、不確かな物の終着駅、ゴア王国の壁の内側、あいつが過ごした場所、訪れた事のある場所を巡り、ドーン島の各地を歩いた。
この地で育った生意気な種がこれでようやく全て芽吹く訳だ。20年近い年月をオレもかなり足繁く通って見守ってきた。
とても長い期間を、それこそ建国してからの国の運営期間と3年しか違わない時間をだ。そりゃあ思い入れも深くもなるし、多少は贔屓している自覚もある。
そこいらへんもなんとなく計算に入れてそうな所はあの爺さんにしてやられた気分だが、まぁそれすら悪くないと思えてしまう時点で負けだろう。そう、オレはルフィの味方なのだ。
大き目の波にのまれただけで転覆してしまいそうな小さな小舟、それに乗っているのが完璧な金槌であるのだから笑えるな。
のんびりとした船出を遮るのは因縁のある近海の主と呼ばれる存在。船ごと呑み込もうとするその相手をなんなく拳一つで倒してみせた。
「海賊王におれはなる!!!」
偉大なる航路の海獣達と比べればまだまだだがここいら辺の主を一撃か。あの赤ん坊だった…生意気なガキだったルフィが強くなったんだな。
「強くなったなァあいつ」
「すげェ近海の主を一撃…」
村の人達に気を使った結果だろうがそこまでこそこそ隠れて見なくても良いだろうに……色々と不器用だな。贈り物も済んで後は
『プルルルルルプルルルルル』
先程から音を隠していたが懐からずっと鳴り響いて振動を届けていた電伝虫を取り出す。こんな時に取り出すんだから嫌な予感になれてるダダンは直ぐに気付いた様だ。
「その電伝虫…まさか?!」
ジェスチャーで静かにしている様に伝えて受話器を持ち上げると見慣れた面に変わった。
『出たか……どうじゃったか?ルフィの様子は』
「何も問題なしでしたよ」
『そうか、妙な予感がしたんじゃが気の所為じゃったか』
いきなりお前もしかして東の海にいるか?と電伝虫がかかってきた時には流石の勘だなと驚いたが、これぐらいは構わないだろう。
「あんたのその胆力には呆れるよ」
ひどい言い様だな。そっちだってわざわざこっそり降りて見守ってんだ。ルフィ達の為ならあの人を殴り飛ばすくらいはしそうだと思うが。
まぁ、追求はしないでおこう。さて…帰ろうかとも思ったが本格的に顔を出す事は無くなりそうだ。
「まぁ、ルフィまで巣立ったらなァ」
これで最後って訳では無いだろうが、せっかくのめでたい日なんだ。呑んで騒いでも文句は言われないだろうよ。
「こんなんが国王なんだから。世の中わかんねェもんだね」
本当に言ってくれる。そんな国王にタメ口を聞く山賊だっているんだ。世の中何があってもいいもんだよ。ほれ、ルフィに……
「ルフィに……」
とりあえずこれまでのまとめに食材系の話、そして原作開始の合図となる話でした。ありきたりと言えばありきたりでしたが、見守り人が一人増えたルフィ。
贈り物と仰々しい言い方しておきながら登場してませんが、そこまでとんでもない物ではないです。そのうち普通にサラッと出てきます。
基本的にプラント視点とルフィ視点での時の流れと食材探索、もしくは食材を食べる話が入る予定です。
さてもう11月です、後一月もすれば年末、来年までそんなに時間がない訳ですが…来年のIF単発もそろそろ見据えないとなぁ。次の投稿でアンケート載せるかも。
それではいつもの挨拶でさようなら。
読んでくれている方々に多大なる感謝を。