ワールドバイキングは四年に一度だが運営側が動くのは開催される年だけでなく、開催されるまでのインターバルである三年間も地道に準備に取り掛かる必要がある。
一つは開催地に招待する料理人の選定、自力で開催地に来れる料理人は参加資格ありと見なすが、それ以外にも参加するだけの技術があると判断された者は費用や移動の問題をこちらが負担するシステムがある。
選定には料理の腕前はもちろんだが、人柄や名声など選ばれるに足る理由が揃ってないと不満が出てしまうので中々に慎重になる作業だ。
腕前は何か一つの料理を極めた人もいれば、各料理を使いこなす人も、特別な技法を持っている人、少し特殊だがこの厳しい海で特別な食材を手に入れる技術なども考慮される。
名声とはいったが料理人としてのでなくても問題はない。ようは知名度があれば良いわけだ。人柄はまぁ問題を起こさなければ多少は目をつむる。
辞退した人が多い場合は別の人を選定しないといけないこちら側の理由に加えて、選ばれれた側も準備が必要になるし、予定の調整が必要になる。
船旅が基本のこの世界、遠ければ半年はざら、天候も踏まえれば一年かかる事も考えると二年前くらいが初めの選定の時期としてはちょうどいい。
「東の海、バラティエオーナー、赫足のゼフ様より店を空けられるかと招待をお断りになられました」
東の海で一番とも言われる海のコックの集まった料理店。料理人として元海賊としてネームバリューはかなりの物だが断られたか、残念だ。
「同じく東の海より、黄金の大海賊ウーナンの友であり、卓越したおでんの腕前を持つ岩蔵様、招待を了承なされました。食材の準備はするそうですが移動はこちらにお願いするとの事です」
おでんだけに絞ればその味は世界一と言っても過言ではない。それはオレ自身が足を運んで確かめている。本人の知名度が小さな屋台船の為に無いが、友人の知名度を申し訳ないが利用させてもらう。
「西の海、世界政府加盟国花の国、国王ラーメン様より料理人の招待の許可を快く頂けました。料理店とは現在交渉中、また必要であればラーメン様に仕えている料理人から料理長であるワンタン様を貸し出す事もやぶさかではないとのご連絡も頂いてますがどういたしましょう?」
他の国に国民を寄越す事になるのだからきちんと許可を取っておいて損はない。ワールド・バイキングは各国から注目されているからな。
アピールの場としては申し分ないから協力的な所は少なくないが自身の配下を送る程にとは、中々に買ってくれているのか、それとも恩を売っているのか。そこは慎重に動くように伝えてくれ。
「北の海、世界政府加盟国ホワイトランド王国、国王イワトビ様より料理人の招待の許可を頂きました。料理人のマカロニ様が可能なら腕を示したいと参加の意思を示しています」
こちらは料理人が言い出しているのなら問題はないと思うが、念の為確認を取ってから話を進める様に。
「南の海の薬学大国であるトリノ王国から特殊な薬草を用いた薬膳料理を扱う料理人の招待に成功で〜す」
あそこは文明レベルが高い国であり、島に生える巨大樹に生える植物は本当に貴重なものばかりだ。それらを十全に扱う彼らの技術は招待に値する。誰もが知ってる訳では無いが医療に携わるものならトリノ王国の名は有名な為、知名度も問題ない。
「偉大なる航路、ウォーターセブンより塩使いのバンバン爺様、招待を了承するとの事でした」
トムさんに船を作ってもらいに行ってた頃からオレも食べさせてもらったが、あの人のシンプルだからこそ見えてくる味、食べる人を常に考える姿勢は素晴らしい。ぜひ港で薬膳料理を振る舞って欲しいが、それに従事させるだけでは勿体ないしな。そこいらへんはバンバン爺さんと相談していこう。
「偉大なる航路、美食の町プッチより料理コンテスト優勝者の招待に応えられると市長ビミノ様より連絡がございました」
美食を謳っている様にその島の料理人のレベルも高く、知名度も申し分ない為にワールド・バイキングと提携させて頂いている。
優勝者が辞退したり、コンテストが開けなかったりしない限りは最大で四人の優勝者がワールド・バイキングへと参加する。開催年の優勝者は間に合わないので次の開催時に参加し、インターバル中の三人を合わせて四人である。
開催年の優勝者はワールド・バイキングの参加者がコンテストに参加してないとしてランクが下がるのではと一部から懸念の声もあったがそんなことは無いと断言できる者しか今までは参加していない。まぁ、今年も問題はないだろう。
「偉大なる航路、カマバッカ王国女王代理キャロライン様より、新人類拳法師範数名の派遣、了承頂けました」
あそこも独特な文化圏な事に加えて、本来の王が革命軍の隊長の一人だからな。こちらでもあちこち警戒はしておく必要があるな。
「偉大なる航路、世界政府加盟国リュウグウ王国より、料理人の派遣に関しては残念ながらまだ見送るとの事でした」
個人で参加する魚人や人魚は居るがやはり天竜人も来る場所に国家としては参加しにくいか……これに関しては仕方がないと思っておこう。
「凪の海より女ヶ島なんですが……レイリー様とシャクヤク様経由で料理人……一名の派遣をなんとか頷いて貰えました」
それでも一人か……警戒が強いな。こちらとしても事情を知っているから世界政府とましてや天竜人と関わりの深いプラントに一人でも送ってくれるならかなり譲歩してくれたと思っておこう。
「凪の海がインペルダウン調理部門から署長専属料理人毒調理師イロード様、了承頂きました」
『ドクドクの実』の能力者であるマゼランは常人では食す事が出来ない毒すら好んで食べると聞き、その料理を作っている人物について聞けば普通の人でも食べれる毒料理も可能だと知り、政府や海軍経由で連絡を取った。
新しい試みで注目を集めやすいとは思うのだが、取り敢えず配達ミス、調理ミス、誤飲など扱う物が物なので間違いだけは無いように人員の配置を考えておこう。
「赤髪海賊団のコック、ラッキー・ルウ様、現地には赤髪海賊団で来るそうですが、ご自身で見て回りたいのでイベント参加の招待は辞退するとの連絡がありました」
陽気な性格だからのってくれるかと思ったが、そうか食べる事自体も好きだからそっちに回ったか、なるほどなぁ。それは個人の意思だからどうしようもないな。
「ワノ国への侵入は成功し、脱出も問題ないですがその地の料理人の逃亡補助は難しそうです。また百獣海賊団にプラントとしてのコンタクトは難しく、工作員はそのまましばらく潜入を続けるそうです」
『獣憑き』の何人かが動物系の能力者と偽り百獣海賊団に潜入したそうだが、流石に鎖国国家であり四皇の縄張り、何もかも上手くいくなんて甘い話はない。
それでも無事にやり取り出来てるだけでも十分な成果だろう。工作員には無理をしない様に伝えてくれ。
「契約相手であるビッグマム海賊団より総料理長シュトロイゼン様、補助としてWCI31、総勢32名参加の意思確認済みです」
ビッグマムも子供たちも来客としてくるから食い患いに関しては現地で対応できる様にしておけば問題ない。おそらく各大臣も来るだろうし、何が出てくるか楽しみだ。
「招待予定であった白ひげ海賊団、四番隊隊長サッチ様、死亡が正式に確認されました」
死人は招待しようが無いからな。元々の予定ではエース経由で招待をかける予定だったが残念だ。こうなっては他に候補を見つけなくてはな。
世界政府への嫌がらせも含めて四皇から招待を募る企画は失敗だな。まぁ毎年ビッグマム海賊団が大きく動くだけでも厄介だろうがな。
後は目玉となる食材や料理、調味料などの確保だな。特にメインイベントのワールド・バイキング・コンテストの優勝者に与えられる賞品となると食材選びは絶対に失敗出来ない。
初めの開催では巨大化に成功した『カラットジューウシ』のインパクトで誤魔化したと言うのが正直なところだ。
高級で高価なものしか食べない牛で、肉は絶品。とめどなく溢れる肉汁は肉のジュースとも呼ばれており、骨は数千カラットのダイヤで出来ている。
紛れもない高級食材ではある。だが普段食べるのは天竜人や一部の王族ばかりだが一般にも出回る事がある食材だからな。
まぁそれでも高級食材の中でも上位の食材には違いなく、ダイヤモンドで出来てる骨の量を考えれば賞品としてのポテンシャルは悪くない。
実際に初開催時の優勝者はとても喜んでいたし、観客たちも賞品の説明を聞いて一気に歓声を上げていたからな。だが誤魔化した分だけ、それ以上の価値がある物を次からも用意する必要が出た訳だ。そして次はプラントだからこそ用意できる様な物が好ましい。
そうして次の開催では『イチジクリスタル』という皮がクリスタルで出来ている種を増やし、十年に一度生る『ダイヤモンドイチジクリスタル』をメインに据えて。
その改良種である『ルビーイチジクリスタル』『サファイアイチジクリスタル』『エメラルドイチジクリスタル』と三大宝石シリーズを賞品とした。
プラントの品種改良の技術がなければ生み出せない代物、正真正銘世界に出回ってないプラントだからこその食材である。
純粋な食材としては少々使いにくいと思われるだろうが、二回目の優勝者はパティシエだったので幾つかの候補の中からこれを選んで賞品としたのだ。
デザート部門の優勝ではなく、総合であるワールド・バイキング・コンテストで優勝したのはかなりの驚きだったが、屈強な男共も満足するデザートの数々は確かな物だった。
話がずれたが優勝者が決まるまではその賞品も秘匿されている。これは一回目も同じで優勝と共に発表した方が盛り上がる為の仕様だ。
だが優勝者が使わなさそうな物だとマズイので余裕が出来たと言うか、一回目の反省を踏まえて二回目からは賞品の候補を複数用意しているのが功を成した。
複数の候補を用意しているのならそこからまた使えば良いとならないのが食材の辛さ。よっぽど特殊な食材でもなければ四年も経てば腐ってしまう。
その年の状況次第ではまた手に入れるのは難しいなんてのはざらで、商品として使われなかった食材を確保には向かうが手に入るのが一個あれば良い方だった。
そして前回のワールド・バイキングだと海の料理人らしい海鮮料理を得意とする者が優勝者だったので特別な育て方をした『船溶かし』を商品とした。
クジラが潮を吹き出す様に溶解液を船に飛ばして沈め、溺れ死んだ人を喰らう人食い貝だが、賞品となる物は生け簀にて卵から育てた完全保証の品だ。
溶解液は必要な時に体内で随時生産するので、調理の際に気を付ける必要はない。食事を繰り返し、際限無く成長、旨味を体内に溜め込む。普通の貝の数十倍濃厚で、とても美味いと語り継がれている。
広範囲に生息しているが木だろうが鋼鉄だろうが構わず溶かす溶解液もあって、魚人や人魚でもある程度実力がなければ扱えない。
栄養を多くして、『魚ーターランド』のバブルの成分を使い、IQも用いて巨大化させたそれは大きな山くらいのサイズになり、その身も小さな山サイズ、さらには豪邸より大きな真珠があった。
溶解液を必要としないレベルで安全で栄養の多い環境を用意すると自然と真珠を作るようで、賞品にする直前に貝が気付く前に仕留めた一品だ。
真珠は光沢を持ち、見方で色が変わって見えるのはよく知られているが、『船溶かし』の真珠は多少の溶解液の成分に耐える真珠層が独特な構造をしているのか、それとも成分的な問題かは知らないが常に七色に変化して輝きを放っていた。
持ち帰るのに苦労していたが、今はその優勝者の開いた店に堂々と飾られているらしい。あのサイズだと普通の手段では盗めないからこそ出来る事だな。
メインコンテスト以外の各部門の賞品はプラントの交易品の最上位から優勝者が望む物を用意するだけで良いのだが、問題のメインの賞品をどうするか。
「鱗や骨が金で出来た鮎の『
「二回連続で水産物と言うのは大地の王であるアスカル様のイメージに合わないのでは……最近『もち石』の鉱物化に成功したとの事ですし、『もち金』や『もちダイヤ』などは大地を感じられるので良いと思うので如何ですか?大量に用意するのは大変かもしれませんが、食感に時代を感じられる深い味わいは格別かと……」
「金はまだしも宝石はマンネリに繋がるんじゃないですか〜?『カラットジューウシ』のダイヤに『イチジクリスタル』の宝石の記憶、それらが美化されてたらインパクトに負けますよ〜。そこで私からの提案としてはドキドキ感を追加で全身宝物で出来た馬である『
「優勝賞品がモツだけってのはどうなんだ?!それに優勝者に爆発物を寄越してやるなよ?!でもイベントとしては使えるか…いやそれよりも先に賞品でしたね。王冠の実を付けるオクラの『オクラウン』、中に指輪を作るカリンの『カリング』などの野菜や果物由来のはプラントらしいし、クラウンやリング部分は高価なアクセサリーに成ります。他のアクセサリー系の物も見繕ってセットとしてまとめればそれらしくなるかと」
「私も何か言うべきですかな。それでは『牛島君』なんてどうですか?原種の時点で島と見間違う巨大さの熟成肉を持つ牛の君と呼ぶに相応しい存在。更には地層を象った様な舌の『ストラータン』には多くの資源が眠ってます。生きてる限り自慢の再生力で取っても生えてきますし、派手さはなくとも価値は高いです。大きさと生きてる事でインパクトも十分ではないですか」
金銀宝石、野菜果物、大地そのものにインパクト、それぞれ色々と考えて出してくれているのは本当にありがたい。とりあえず『宝ース』はイベント方面で検討する。
馬肉と言う考えはパッと出て来なかったのでアイデア自体は素晴らしいが特殊調理食材と特殊賞味食材は除いておきたいので賞品には出来ないな。
それ以外は候補としてはどれも申し分ないから取り敢えずリストに入れて、今から準備しつつ開催時に確保が出来るか次第だ。
デザートで総合優勝する人がまた出るとは中々思えないが何があるか分からないのもこの世界。一応パティシエ寄りの物も考えつつ、オレも何かしら新しい食材の確保に出向くとしよう。
とりあえずはイスト聖に食材を受け渡す際に何か聞くのが良いか、自分が食べたい物を容赦なく伝えるからちょうど良い物が分かる。さてまだまだ働くとしよう。
その日はプラントに訪れた海賊たちがいつも以上に騒がしく、それでいて大人しいという妙な雰囲気であった。それもその筈であり、本来なら簡単に顔を出してはいけない相手が港に居た。
「よう久しぶりだな。アスカル!!」
そう言って豪快に一本しかない腕を振り上げてこちらに声を掛け笑みを見せる赤い髪を揺らす男。これ程の馬鹿な知り合いは他にはいない。
「12年を久しぶりの一言で済ますのか、シャンクス?」
有名な船であるレッドフォース号から港へと降り立ったのは新世界に居座る四皇の一人である赤髪のシャンクスだ。最近は大海賊が会いに来るのが流行ってるのか?たくっ……
寄っても別に問題ねぇなと自分で言っておきながらかれこれ12年間もプラントに近付くことが無かったというのに何を考えているんだか。
そのせいでルウに招待を送るのにも縄張りや傘下の海賊などあちこちに手を回して苦労したと言うのに、思い出すと腹が立ってきたな。
「また色々と事情があったんだよ……その事はまたおいおいとして、本題なんだがちょっときな臭い事になりそうでな。安全に補給が出来るだろうってお前がいる時を狙って寄港させてもらった」
堂々と厄介事を持ち込むかもしれないと宣言してくれるなぁ。この調子ならビッグマムとの取引が済んだタイミングも確実に把握している。
元々あまり大きく動くタイプではないがこれまた随分と行動が慎重だな。四皇の一角ともあろうものが何をそんなに警戒しているんだか……
まぁ、とりあえず補給だろう。何が必要なのか目録があるなら寄越せ、最優先で用意させてやる。お前らに文句を言う奴らもいないだろうしな。
「ベックマンが纏めてくれてな。これを……後は何があるのか確認もしたいから交易品の目録は目録で彼奴等に渡してくれ、それと別で用意してもらいたいものがあるんだ」
とりあえず渡された目録を流し見て特別やばい物は無いのでそのまま職員に引き継いで運び込む様に伝える。回し見る程上品じゃねぇから目録は5.6冊渡すようにも言っておいたが、人数分の方が良かったか?
それで悠長に話してる暇もないと言った様子だから12年のゴタゴタはもう良い。此処に来るまでの経緯とこれからについて……話をしたいなら聞くぞ。
「あぁ、頼む」
それならば場所を変えよう。ここではまだ何処の目があるのか分からないからな。土でオレとシャンクスの身体を覆うと一気に地下へと潜る。
能力無しでは辿り着けない、道のない部屋。植物を利用して送られる空気で呼吸は問題なく、これまで何度も使用してきてその都度設備が追加されているので居心地も悪くない。
「以前招待された王城と遜色ないな。娯楽品や飲食含めればそれ以上か?」
これでも王族だからな。それなりの物は使ってるし、プラントは今となっては多くの物を生産している。それらを置いておけば適当でもそれなりには見える。
うちの王城の応接室の方が価値の高いものは多いが、使いやすさも含めればこちらのが個人的には好きなぐらいだ。私室に至ってはここより使いやすく、ここよりも安いだろう。
くだらない事を考えながら席に座るように促して、互いにテーブルを挟んで向かい合う。空気が変わり神妙な顔つきへと変化する。
「ルフィの事をお前は見送ったのか?」
これでも後見してきた様なものだからな。育てとしても支えとしてもかなり目をかけたつもりだ。見送らない理由はない。
まぁ、見送ったと言っても顔は見せずにプレゼントを出航祝いにくれてやったぐらいだが、お前は手配書を見て知った口か?
この前に出た3000万ベリーの手配書は東の海出身としては破格の額と言える。まぁ、偉大なる航路で活動しているオレやお前からしたらはした値段だが、
「あぁ、この時が来たかと胸が踊り、船員と鷹の目と宴をして祝ったさ。それで……ルフィの兄であるエースの事をお前は昔から知ってたな」
既に予想はしているだろうが、あの頃に山に行ってた理由はあいつの様子を
幼少期からは比べ物にならないくらいに礼儀よくなったからな。あれはマキノちゃんの手腕を褒めて然るべき成果だ。
それであいつが今何処の所属かは言うまでもないだろう。同格の敵船に乗ってるあいつの事で何か思うことでもあるのか?
「……お前は黒ひげと言う海賊を知っているか?」
お前が話題に上げるほどの奴だとは知らなかったが、最近になって暴れ始めた海賊でちょっと前にドラム王国を滅ぼしたと新聞屋経由で聞いたよ。
「それだけでも耳に届いてる方だが、付け加えるとあいつは昔から白ひげの船の船員で、エースが務める二番隊所属で船を降りた際に仲間を、四番隊の隊長を殺している」
なるほど白ひげ海賊団の仲間に手を出してはいけないと言うのは海賊の中でも暗黙の了解として伝わる程だ。四皇に挑もうとしている者でなければ戦闘自体を避けることが多い。
そんな船で裏切り行為を、それも多くの船で禁忌とされている仲間殺しを行い逃げているとなれば落とし前をつける必要が出てくる。これだけ情報を落としてもらえば簡単に想像がつく、それがあいつなんだな。
「あぁ、下手人である黒ひげを追って偉大なる航路を逆走しているそうだ」
それだけなら知り合いの兄として心配はしてもおかしくはないが他の船の人間の事だし、口出しするのはタブーに近いんじゃないか。
「惚けるつもりか?」
そう威圧してくれるな。おそらくお前の予想であってるとして、仮にあいつが捕まればどうなるかくらいは分かるさ。
お前が不安に思うくらいだから今のあいつが勝てる可能性は低いんだろう。それでもプラントとしては手出しする事はない。それをして良い立場ではないからな。
お前だって形振り構わないと言うのであれば勝手に黒ひげを殺してやるくらいは訳無いだろう。そこん所を弁えているのなら後は賭けるだけにしておけ。手が足りなくてもオレを煽ってくれるな。
「わるい……酒を特性の容器でくれ、俺の故郷の酒なんだが……」
こいつの故郷のとなると西の海のかそれなら問題ない。流通経路が確保されてから買いやすくなった分、求める人が増えて様々な作り手がその生産量を増やしている。
例外があるとすれば農作物だが、それも予想よりマシな状況で落ち着いている。と話がずれたがその酒はそれなりの量を用意しても取引に支障は出ない。直ぐに用意しよう。
「……俺は重ねてるだけだが、お前は本当にそれで良いのか親代わりみたいなもんだろ?」
今日はしつこいな。そんなにねちっこい男じゃなかっただろお前は。支えを自ら失い、四皇の一角という重みで歪んだか?
ルフィには実の親父と祖父がいる。あいつは親父とあったことなさそうだがそこは関係無い。それと違ってあいつに関しては親族すら居らず、あいつの親代わりはオレとダダンの奴がそれになる。
だが既に自立して親元を離れ、ましてや寄る辺を見つけているのだ。何から何までやってやらなきゃならない赤ん坊ではない。
それに親になった事もなく、
互いに引き時を見失う訳にはいかず、取引を淡々と済ませると気不味さもあってか直ぐに出港していった。それにしても交易の殆どが潰れたのは大損害だ。
今後あいつが来るかは分からねぇが、来なかったとしても問題はない。元より用がなければ12年顔も見せない奴だ。とは言っても残念だな。
過去に囚われるのもマヌケだが、未来を見てる奴は何かと忙しない。オレにはそんな芸当は出来ないが、つまらない奴にはなったのかもなお互いに……
っとそんな事を考えていると出港した赤髪海賊団と入れ替わる様にグレーヌがマーケットから帰ってきた。きちんと目的の物を手に入れている様だが、他にも幾つか気になるものがあるな。
まぁそこまで目くじらを立てて言及する事では無いからな。とりあえず、宝樹アダムは研究所の方に送ってくれ。それぞれ品種改良とIQの部屋、そう小人組の所とティアとコーヒヒの所だ。
「分かったなの。それじゃ手配を終えたらアタシは休暇をもらうの」
うちの国は式典とかはそんなに多くないし、普段から多くの賓客が貿易関係で来るから対応も簡略化が許されてるから王女が国を離れていてもそこまで問題はない。
年齢もまだ若いので仕事はさせつつも結構自由にさせているのだが、これは主にオレの方針だな。マニュは今のうちから色々と仕込みたがっているが、一応オレの判断とグレーヌの自主性に任せてくれている。
お義父さんなんかはグレーヌに相手してもらえれば別にどうでも良いみたいだし、色々と教えつつもかなり甘い。あの人もう国王やめてるし、スキーラは併合されたから王族ですらないし気楽なんだろう。
ところでグレーヌ、休暇は好きに過ごしても良いが今回は何処に行く予定なんだ。プライベートまで管理する気は無いが危険な海だから場所は知っておきたい。
「
前半は距離まではわからないし、後半は使わなければ問題ないが使う事になれば今の段階では寿命が縮まる技だろうが……というか使う事になる様な事態を想定して動くな。
「冗談なの。まぁ気を付けておけば危険はないと思うの。今回行くのは釣り、レッツフィッシングなの」
プラントの敷地内なら安全……とは言えないが何かあってもたいおうできるが、問題は何処に行くかだ。何を釣りに何処へ行くんだ。
「えへへ、食材リストにあった『リト
『リト鱒』か…どんな水質環境にも適応する生存能力の高さを持つ鱒で、水がアルカリ性か酸性かによってその色を変えると言う。
人間にとって危険な水に住んでいる程、ようは酸性やアルカリ性の強い水に居るやつ程その味は良くなると言う。ただ、その味を保ったまま食べれる様にするには技術が必要になる特殊調理食材の一つでもある。
中性に近い物なら一般的な調理でも問題なく普通のマスよりは美味しい程度の物となる。だが、リストにあったのは危険地帯の筈だ。
「耐性装備全身一式あれば問題ないの」
いや、別に行くなとは言わないがそれで果たして休まるのか?休みに釣りに行くと言うのは休暇の過ごし方としてはまぁ聞く話だが、食材確保にするとほぼ仕事だろ。
「それは全然平気なの…釣りがしたいなぁ〜って思ったときにみつけてちょうど良かったからついでなの」
どんな水質でも住めるって事は少なからず浄化作用を持っているって事だ。濃度が高い水は何かしら反応して熱を持ってたり、冷たかったりもするがそれでも生きていける。
そんだけ強ければ砂漠でも耐えれるだろうし、淡水海水関係無いから海水の逆流が発生してる川にも適してる。ほぼ泥みたいなオアシスでも生きれるかもな。
浄化作用があれば本来なら使えない水も使ったあとの水も時間をおけば使えるようにしてくれる。そうすれば多少の不足は補える。
「…………」
他国の事に勝手に手を出すのはご法度だ。それらが友人の国で危機に陥っていたとしてもな。と言ってもそれだけじゃ納得しないだろ。
あそこにも管理地を置かせて貰ってる。交流を始めたばかりの頃に手を施した水脈、地脈に明らかに別の手が加えられている。あの水不足はおそらく人為的な物だ規模からしてオレ等と同じく能力者だろう。
それがどんな奴らなのかは分からないが、お前が動けばアラバスタ王家の面子を潰すし、国を傾けようとしてる奴らの怒りもかう事になる。変に手を出すのは止めるんだ分かったな。
「……はいなの」
友人として力になりたいお前の気持ちは分かるさ。さてそれじゃあオレも仕事は一段落しているんだが一緒に『リト鱒』釣りに行くか?
「えっ……?!」
ビビ王女の失踪はおそらく自ら起こしたものだろう。イガラム護衛隊長も一緒に消えてるんだ。そう考えた方が辻褄が合うだろう。
何者かが攫うために襲ったとしてわざわざ護衛を無力化して連れ去る意味が無い。そして王女を攫ったのに王家に何も要求が無いのもおかしい。
お前と負けず劣らずのお転婆な王女だからな。黙って攫われることはしない。護衛隊長がその場にいて報せられない訳もない。ならば何処かで戦ってるんだろう。
戦いが終わったらプレゼントしてやれば良い、復興支援と言う名目であれば手を貸すことも出来る。それまでは無事を祈って、信じてやれ友達なんだろ。
「うん、ありがとうお父さん!!それじゃあ釣りに行ってくるの!!」
割り切るのはまだ難しい年頃だから受け取り安い様な話をしてしまうのはやはり甘いんだろうな。だがいつもの元気を取り戻したから良しとしよう。
それはともかく、オレと一緒に行くって提案は頭からすっぽ抜けてるみたいだな。はぁ……次の仕事を前倒しで進めるとするか。
「おい、ルフィ。さっきまで喜んでたってのに自分の手配書見ながら何を考えてんだ?」
「こいつに同意するのは甚だ遺憾だがらしくはねぇな」
ルフィの手元には満面の笑みの顔写真とDEAD OR ALIVEの文字、そして3000万ベリーと言う堂々としたお尋ね者を示す書。
海上レストランバラティエにてクリーク率いる一団を倒し、サンジを仲間として迎え入れた。
船を取り戻しにやってきたコノミ諸島、そこで島の事情とナミの過去を知ったルフィ達は魚人海賊団相手に殴り込んだ。
アーロンパークにやってきたルフィ達が手下と幹部を蹴散らした後、建物内でルフィとアーロンとの一騎打ちになった時だった。
「人間は下等な存在だ!!そうでなければいけねぇんだ!!あの人が認めた大地の王だって変わらねぇ!!」
「大地の王?アスカルの事だよな?」
「その名を俺の前で呼ぶんじゃねぇ!!」
自分から話題にする様な事をしながら名を呼ぶ事は錯乱したかの様に否定する。何処かちぐはぐな様子にルフィすら少し気圧される。
「あいつは分かっていながら結局あの人を見捨てた!!あのクソ共となんら変わらねぇ!!」
「アスカルを馬鹿にすんな!!」
「人間なんて所詮自分が一番可愛いに決まってる。この東の海にもプラントの拠点は数多にあるってのにこうして虐げられてる奴らは居るんだからな!!その点、俺は仲間は大事にする」
後はアーロンなりの理屈があってのナミの扱いをツラツラと語り、部屋を壊し、ルフィの戦斧によってパークごとアーロンを終わらせた。
瓦礫を押しのけ山の中から這い出る直前に、息も絶え絶えで殆ど意識が無いアーロンが口を開いていた。
「あいつの身内側があいつを擁護したって何も見えてねぇんだよ……あいつは自分の手の中の物しか見てねぇ…あの人は決して認めても友とは呼ばなかった……あいつがそう思ってなかったのを理解していたからだ……テメェもいつか裏切られる……その時の絶望と失望が今から楽しみだ……シャハ…ハハハ………」
んなもん知るかと一蹴して瓦礫へと腕を振るい、外へと出てナミを仲間にした。それなのに手配された理由の要であるあの時の最後をルフィは何故か思い出していた。
「おい、なんか島が見えるぞ?」
「見えたか……あの島が見えたってことはいよいよ"偉大なる航路"に近づいてきたっこと!」
柄にもない思考に囚われそうになっていたルフィを引き戻すかのように仲間の声が耳に入り、目を開く。
「あそこには有名な町があるの『ローグタウン』別名"始まりと終わりの町"かつての海賊王G・ロジャーが生まれ…そして処刑された町」
「海賊王が死んだ町……!!」
「行く?」
ナミの問いかけに対する答えは聞かれるまでもなく決まっていた様なもので、それにより無駄な思考も完全に搔き消え、賑やかな町の喧騒に消えるのだった。
料理人の名前はアニメオリジナルや映画からかき集めても足りなかったので、現在名前だけですが捏造やオリジナルも登場させています。
オリジナル食材とその紹介が多めに載っていますが、いつか食べてる所や捕獲や養殖時の様子も描けたら描きたい。
そして最後はルフィ側の大体の進行状況ですかね。あまり変化はなく、アーロンが色々と喋ったくらいですかね。
偉大なる航路に入ったくらいから変化が増えるだろうし、もう少し書く量が増えると思います。
それとアンケート締め切ります。まぁ、私も分かっていて出した様なもんですがトリココラボに決定しました〜!!
もはやIFではないですがエイプリルフールに投稿しますね。既に書いており、四話構成になってるので4/1から1日1話ずつ投稿する予定ですのでそこまで期待せずに楽しみにしていただけると(←どっちだよ)
と宣伝もここいら辺にしましょうか。
それではいつもの挨拶でさようなら。
読んでくれた方々に多大なる感謝を。