【これで赤い土の大陸の半分を染め上げたか】
⁅クギャア⁆
これまで来た道のりを振り返ると、眼下に広がるのは黄金の巨大なライン。世界を二つに分ける大陸の半分を掌握したファーブニル。その体は更に巨大な物になっていた。
【やはりペースが遅いな。まだ生まれたばかりで能力の限界までが早いか。一度補給した方が良さそうだな】
特殊な方法で生まれた金と少量だが土の力を操るファーブニル、その身に宿す力が大きいが故に与える影響も大きかったが操作できる限界、能力の練度自体はまだそう高くない。だが能力を鍛える時間なども無い。それ故に支配した大地に根を張り、エネルギーを吸収して無理やり進むと言う行軍を繰り返していた。
黄金と化した大陸の上でファーブニルと大地を接続しているとファーブニルが上を見上げ、唸った。そちらの方角を見ると積み重なり辺りを暗くさせる特別な雲とそれに隠れてこちらに向かう未だ遠い小さな影。ファーブニルは威嚇をして攻撃を放つ姿勢を取る。
⁅グギャァ!!⁆
【ん、あれは積帝雲か?まさか……】
⁅グギャァアア!!⁆
ファーブニルが黄金のブレスを吐き出すが積帝雲はびくともしなかった。海雲はその名の通り浮いている海、さらに言えば能力者を封じる海楼石の影響も含んでいる。物理的な破壊力の無い染め上げるだけのブレスでは何の影響も与えられない。
「『種籠り解除』なの!!」
「『ゴムゴムの
【ぐ!?奇襲か……やってくれるなぁお前ら!!】
能力の探知の範囲になく空を、ファーブニルの攻撃で被害を受けにくい海雲を使ってやってくる。これだけの事を実力のある海賊とは言え簡単にやってくれるとは思っていない。
【そうか、お前らもそちらにつくか……いいさ、もとよりバベルで最後だった】
麦わらの一味の方についたであろう元部下の顔を思い浮かべながら不敵に笑い、体勢を整えるアスカル。世界の命運をかけた最後の戦いが始まる。
「ふわぁ、なんとか海から出れたな」
「だいぶ危なかったけどね」
奇襲までの流れは麦わらの一味がプラントを出た直後までに遡る。プラントが誇る環境調整技術によりシャボンが使える様でサニー号をコーティングして海上まで上がろうとしたところまでは良かったのだが、世界中で発生しているファーブニルによる被害で海流もメチャクチャでかなり危ない所だった。
「さて出たはいいがそもそもあの黄金の竜は何処にいるのか分かんのか?」
「指針はビブルカードがあるし、新聞の文はみたでしょ」
「ああ、赤い土の大陸を黄金に染め上げてるって奴か」
「今日の新聞でも赤い土の大陸沿いに進んでいる写真が載ってたの。世界経済新聞と連絡出来れば詳細な位置がわかるかもしれないけど、電伝虫が一向に繋がらないの」
こんな状況でも新聞を出し続けている事に感心するが、流石に電伝虫に対応はしてられないのか、それとも電伝虫がひっきりなしにかかっていて順番待ちなのか、どちらにせよ情報はあまりない。
「とは言っても破壊された影響で海図も何も意味がない状況で追いつけるかも分からない敵を追いかけ続けるのは無謀よ」
「海流以外にも海は荒れに荒れてるみたいだしな」
「ん、数日分の新聞か……こっちの記事は『生き残った四皇、黒ひげと赤髪、新世界で相次ぐ縄張り争い、新世界を二分する二人の帝王の行く末は!?』『いきなり現れ暴れ出した伝説の厄災【暴食】、崩れた国々を呑み滅ぼす!?』『崩壊した政府、あくまで海賊を狩る事に専念した元帥サカズキの主導する新生海軍の動きは果たして?』『国の保護に動き出した革命軍とそれに賛同し合流する一部の海兵や元政府関係者、新たな政府の樹立の動きか!?』」
「どこもかしこもお祭り騒ぎってわけか」
下手に動いて巻き込まれればアスカルを追うどころの話では無いという事だ。戦いの事も含めてどうしようかと考えていると船の上に声が響いた。
「空を行くって提案はどうだ?」
「サイフォ!?」
「こいつまたいつの間に!?」
「気配を消すのが上手すぎるぞ!?」
船上にいつの間にか姿を現していたのはプラントに居たはずのサイフォだった。最初から船に乗っていたのかそれとも追いかけて来たのかは分からないがその提案自体は不思議と耳に残った。
「空を行くって?」
「海雲を作ってそこに船を乗せて文字通り空を飛んでいくんだ」
「ああ、雲流しって奴か?でもそれって処刑方法じゃなかったか?」
「昔、プラントが出てまだ間もない頃に空島を探すときに王が使っていた技術が残ってる。海雲や島雲のメカニズムについては共同研究で更に進んだからな。今では雲の操作もコツさえ掴めりゃ誰にでもできる。そっちの航海士は優秀なんだろ?」
「お前らの船を運ぶ作業はアタシがやってやるよ。海雲の生成については小人組が進めてるからそろそろ形が出て来るだろ。ほらっ」
そう言ってピアスの指を指した方向には小さな雲が空高くに出来上がり、積み重なるごとにその厚さを増していった。元より敵対的では無かったが、アスカルを倒すのに協力的でなかった面々の登場にグレーヌが戸惑っている。
「あそこでの戦いが最後だったんだ。後は好きにしなって伝えられてた。否定的だったのは無茶をするアンタを心配してだったんだけど、そこの海賊さん達から随分とまぁ諦めの悪さを学んじまったようだしね」
「それにマニュ様から『助けてあげてください』って命令があったからな。それを聞いて小人組も手伝ってるってわけだな」
騙されやすい小人たちはアスカルとマニュからの命令しか聞かない。アスカルからの命令が無い今、マニュからの命令が優先される。アスカルに恩義があるモーダスやホーニィ達は複雑な心境だがマニュからのお願いに頷くしかなかった。
「途中までは同行させてもうらよ。あたし等も用があるからね。邪魔はしないから安心しな」
「それとこれを渡しておこうかな」
「これ、エターナルポース?『カムリィ』ってどこよ?」
2人の話す用件と言うのが気になったが渡された物にも注目が集まる。渡されたのは全て同じ場所を示すエターナルポースだった。グレーヌも聞き覚えのないようで首を捻っている。
「『プラント』になる前の島があった場所でな。暖かく落ち着いた雰囲気の良い島だった。ファーブニルに全て使われた産土の殆どがその『カムリィ』の土だからアスカルでなくファーブニルを追いかける際に役立つかもしれないな」
「そうか、アスカルとファーブニルが離れて行動したら追いかける方法が無くなるのか」
「おそらく一緒に行動はしてるだろうが、どうなるかは分からんだろうし、持っておいた方が良さそうだ」
アスカルやファーブニルの居る場所へたどり着くための準備は整いつつある。そうなると次に浮かび上がってくる問題もある。
「それでどう戦おうか船長?」
「ファーブニルにアスカル、どちらも強敵だぜ」
「おれはアスカルって奴をぶっ飛ばす」
「あたしもお父さんと戦う」
「それじゃあ、他の面子でドラゴン退治か?」
「一緒に戦われたら対処も難しくなるし、単純だが分けるのは悪い手じゃないだろ」
細かい作戦などいつも有ってない様な物だ。敵がいるのであれば倒す、決める必要があるのは誰がどの敵を相手に戦うのか程度だった。
「準備は出来た様だね。それじゃあ海雲まで飛ばすよ『海龍一本背負い』!!」
「勢いが早い!!落ちたらひとたまりも無いわよ」
ピアスの生み出した大きな海流は海雲のある高さまで簡単に届いた。サニー号は宙に向かって進む細い海流の上をスイスイと進む白い海の上に浮かんだ。
「よっと、無事かお前ら?」
「なんとかな。ここで倒れてたら戦うも何もないだろ」
「それじゃあ行くぞ。此処からは船の航海とはわけが違うからな俺たちに任せときな。向こうが気づくギリギリまで近づくぞ」
「今更だけど海雲って平気なの?気付かれやすそうな見た目だけど」
「ファーブニルの遠距離攻撃に物理的な攻撃力は無いのはお前らも体験してるだろ。それに海は黄金化しないし、海雲や島雲には海楼石の成分が含まれてるから大丈夫だろう。王も同じで大地を用いる技が多いから空の上までは簡単に攻撃は届かないな」
その説明に納得すると全員道中は比較的安全だと思い、戦いに備えて準備を始めた。身体を休ませる者も居れば戦いに備えて温めて置く者、コーラの補充や弾丸の整備、種の準備などそれぞれが戦いに備えた。
「見えて来たな!」
サイフォが空の上からでも青い海を見渡す覇気でアスカルの位置を把握した。まだそれなりに距離があるが、ここからは落ち着いて動いて行く、海雲が気づかれたと判断した段階で一気に飛び出せるようにサニー号に麦わらの一味とグレーヌが乗り込みタイミングを見る。
「しまった、ファーブニルに気付かれた。ブレスが来る……被害はねぇだろうが奇襲は失敗だ」
「いや行けるの!ルフィ、サンジ!!」
「おう!」
「何をすればいいグレーヌちゃん?」
「ルフィと私でブレスの中を突っ込む、ブレスは種で防ぐから、サンジは種をファーブニルが居る方に蹴り飛ばして『種籠り』」
「なるほど、密閉すれば中に影響は無いってか、それじゃ後は俺の仕事だな『
空島から落ちる様に進んでいく種、重力による加速も相まってその速度はとても早くなっている。ブレスによって種の表面が黄金化していくが完全に密閉された種の中にまでは届かない。
「『種籠り解除』なの!!」
「『ゴムゴムの
上空から振り落とした一撃はファーブニルの上に乗っていたアスカルをぶっ飛ばした。ダメージもまだ少ないが確実に与えることが出来ただろう。目の前で主を攻撃されたファーブニルは今度こそブレスで黄金化させてやろうと攻撃に移った。
「『ミルキーボール』!!ここは任せて早く飛んでったアスカルの方に向かいなさい」
「おう、ありがとな」
⁅グギャァ⁆
吐き出したブレスはファーブニルのすぐ目の前に作り出された球状の海雲によって全て防がれてしまった。ナミがその間にルフィとグレーヌをアスカルの下へ送り出した。ここまで来るとブレスでは仕留められないとファーブニルも気づき、その巨体に似合わぬ素早い動きで腕を振るい、敵を爪で切り裂こうとする。
「ナミさんに何をする気だクソトカゲ『悪魔風脚
⁅グギャァアアアアア⁆
攻撃を拒まれ、腕を弾き飛ばされたファーブニルは怒りながらも広範囲に攻撃をしようと羽を動かし空に一度逃れようとする。
「おいおいどこ行く気だ『鬼気九刀流 阿修羅』!!」
⁅クギャァアア⁆
次々と船から降りてファーブニルに好きに動かれない様に攻撃を始める麦わらの一味、ファーブニルは苛立ちを増して暴れようとする。攻撃が通って上手く言ってるように見えるが攻撃を加えてる面々の表情はあまりよくない。
「ちっ、直ぐに直りやがる」
「あれもバベルにいた分身体と基本は同じなんだろ」
「大地だけでなく黄金も操れるし、エネルギー量が桁違いらしいがな」
「動きも人型とは大きく違うみたいね」
「柔力強化でいけるかな」
「ブレスは私が防げるから。海雲を盾に使って」
「ヨホホホ、大きな敵ばかりで大変ですね。骨が折れそうです」
「言ってる場合か、的はでかいが効くのか微妙だぜ」
【麦わらの一味VS『黄金竜』ファーブニル】
【ブレスを掻い潜ったのはお前の種の力か……ここを見つけ出したのはサイフォか?船を運んだのはピアスだろうなぁ…この様子だと小人たちも手を貸してるか?そしてアイツもだろ?はははははは!!】
どこか懐かしいものを見るような色を目に浮かべ、盛大に笑うと静かに敵を見据える。そこには王としての姿も父としての姿もない。
【一応訊いておこう。何をしに来た?】
「「お前/お父さんをぶっ飛ばしに」」
【そうか……では計画の為、オレもお前らを倒させてもらう】
そう言うとまだ金に変わっていない大地を身に纏い鎧に変質させた。分身体と違いその身を武器に変えることは出来ないために手にアダマスの鎌を持っている。その鎧も鎌も完全に黒く染まり、その覇気の強さは手を合わせずとも感じられる。
【その命を刈り取らせてもらおう!!】
「やられてたまるか、いくぞグレーヌ!!」
「うん、ルフィ!!」
アスカル、ルフィ、そしてグレーヌ、三者の攻撃がぶつかり合う、それぞれが持つ覇王色の覇気がせめぎ合う。大地の王、未来の海賊王、そして大地の王の娘、世界をかけた戦いの火ぶたがきられた。
【ルフィ&グレーヌVS『大地の王』アスカル】
アスカルとファーブニルを相手に戦う者達を見送り、そしてとっくに黄金に染まっていた大地の上で見慣れた顔を相手に相対している。
「やっぱり来たのか」
「お前はアスカルが好きだからな」
「ん~、なんで二人が邪魔すんの?役目が終わってやる好きな事ってのがアスカルの邪魔なの?」
「はぁ、モーダスやホーニィ以上に懐いてるお前は必ず来ると思ってた。それに作戦が開始してからお前はずっと空元気だったからな」
「お前が呑んだって報道された国、全部世界政府加盟国だったからすぐに分かったよ……なぁラトニー?」
こちらを敵対心は無く、睨みさえもしない。会話はしているが決してその眼はこちらを見ていない。その先に居るアスカルの事を見ている。だが今だけは動きを止めて問答は続いて行く。
「質問には答えてくれないの~?余裕が無いのかな?」
「お前が相手だと余裕は無くなるよ。グレーヌが答えを出そうと頑張ってるんだ。見守るのが大人の役目だろう?」
「そう言ったお前はなんでここまで来たんだ?」
「ボクは好き勝手やってたけどプラントは好きだったんだよ~?みんなもそうだし、アスカル様にもちろんマニュ様もね~だからさぁ、こんな世界滅んでも別に良いでしょ?」
「グレーヌやマニュ様がそれを望んでいないけど?」
「アスカルが望んでるならそれで良いんだよ~ボクはそれだけあればいいんだよ」
狂っていると言う訳では無い。アスカルに止められ、教えられ、育てられた。実の娘であるグレーヌとは立ち位置こそ違うがその親愛の深さに違いはない。そしてラトニーにとってのアスカルだけでなくマニュへの想いもひときわ大きい。
「あの時、襲撃者を逃したのを気にしてるのか?」
プラントを襲ったマニュを狙った襲撃、世界会議が開かれ、アスカルだけでなく多くの幹部が島を離れていた。残って居たのは外に出せないモルにラトニー、それとビブルカードの役目があるピアスだけだった。襲撃に気付き対処に当たっていた二人に対し、覇気が使えなかったラトニーはマニュの近くに居たのに襲撃されたその瞬間まで気づけなかった。そして目の前でマニュを殺された。
「ん~、少しは思い出してたかな?だけどボクだってリリーカーネーションでマニュ様にあってるし、泣いて、謝って、許されたよ~……だけどボクがボクと世界を許せないんだよ~」
世間話をするように話しながら向かってくるラトニー……国を呑み、人を呑んで【厄災】と恐れられていた時の姿そのままにただ邪魔だからという理由で襲い掛かった。
【『刺突』ピアス&『先読み』サイフォVS『暴食』ラトニー】
9話で戦い全部書いて10話でエピローグ。
4月には一話読み切りのIFを書くから3月までに終わらせる予定。